転移世界 与えられたのは100×∞連ガチャ!

黒烏

暴走の終焉

「………死、ぬかと思った。割と本気で」

揺れ動く大地の上で、ゼーテは仰向けに倒れていた。
つい数秒前に空中から叩き落とされ、地面に墜落した彼女だったが、どうやら死んではいないらしい。
大地震の中、ゆっくりと顔を上げ、口内に溜まった血を吐き出す。

「……プッ。ああもう、口の中が血の味しかしない」
「はあ…一応生きてるけど……痛っ!」

背中に激痛を感じ、起き上がるのを断念する。
どうやら地面に激突した時に背中を強打してしまったらしい。

「うう……衝撃緩和の魔法を使っても、ここまでのダメージだなんて……」

そこでゼーテは、自分の腕の異常に気がついた。
左腕が、肘の関節と曲がっている。

「……あーあ、使えない腕。まあ、痛みが無いだけマシかしら」

未だに続いている大地震の中、ゼーテは辺りを見回す。
10メートルほど先にパーシヴァルが刺さっているのが見えた。
うつ伏せに体勢を変更し、右腕だけでほふく前進のようにして移動を試みた。
が、崩れ落ちた家屋の瓦礫が目の前に落ちてきたため、立ち上がらない限り身動きが取れなくなってしまった。

「……地震が止むまで待たないと駄目ね」
「情けないわね。ケイトにあれだけ啖呵切って、「融合」までして、この有様」

ゼーテは再び仰向けになると、自嘲気味にフッと笑った。
しかし、すぐに考えはのことにシフトする。

(シーヴァ、無事……よね…?)

まだ効果が残っている合体の力を使って兄に語りかけるが、応答は無い。
妹の不安は募りに募って行った。







『啓斗様、マジで一瞬の勝負ですから気を引き締めて下さい!』
「言われなくても分かってる。それに、一刻を争いそうだ」
『ですね。だって、見る限りお城以外ほとんどの街が壊滅し始めてますし』
「よし、行くぞ!」

千本の刃を背後に従えた啓斗は、すぐそこまで迫る巨大な龍を見据える。
地龍ルカは、啓斗のほんの少し上空からきりもみ回転しながら急降下して襲いかかってきた。
回転によって発生する風圧を体の周囲に留め、更に攻撃力を上げる。
竜巻が塊と化したような姿となり、啓斗目掛けて轟音を立てながら接近してくる。

(狙え……ギリギリまで引きつけろ……)

万が一あの巨体があんな状態で人間に衝突したなら、致死率は100%だろう。
だが、啓斗はあくまでも冷静にタイミングを見計らう。


そして、龍の鼻先が啓斗に触れようとした瞬間だった。

「【ジャストシールド】!!」

言葉と同時に啓斗の1ミリほど前方に出現した無敵の障壁に、龍は思い切り激突した。
超高速の急降下を無理やり止める絶対的な「バリア」。
緑龍は、頭蓋から出血しながら落下していく。

「行け、サウザンド……ダガァァァァァ!!!」

地面へと落ちていく龍を追いながら、啓斗は千本の刃に指示を出す。
貫通力を増大させられた短剣が全てその巨体に襲いかかり、既に瀕死である龍に追い討ちをかけた。
美しい深緑の体から無数の紅い飛沫が噴き出す。

『残HP…9%…8%……』
『急いで追いかけてください!
「ああ!理解している!!」

啓斗もダガーとルカを追って急降下する。
地面に目を向けると、先程の地震とは比べ物にならない大きさの地割れが起きており、更に建造物が見える範囲全てで瓦礫に成り果てていた。

(これは……戦いが終わった後も色々とまずいことになりそうだな)

啓斗は、事態の収束後に起きるであろう問題を考え、内心でため息をついた。

(まあ、俺はルカが元に戻ればそれでいい。後始末も俺がやればいいだけの話だ)
『残り7%…6%……もう少し!』
「よし、ここならすぐに回収に移れそうだ!」

啓斗は落下していく龍のすぐ下に回り、残り体力が規定値にまで下がるのを待つ。








「…………う、あ」
「……はっ!!??」

シーヴァは、自分が落ちていく感覚に無いことに驚き意識を取り戻した。
体を動かそうとするが、どうやら大分深刻な傷を負ってしまっているようで両手両足動かない。
辛うじて動かせる首を回して状況を確認する。

どうやら、小型の飛行機らしきものの座席にすっぽり腰から収まっているらしい。
というか座席にハマっているようだ。

(……いやいやいやいやどういう状況だこれは!?)

しかし、シーヴァの疑問は直ぐに解決した。
後頭部の側からひょこっと少女が顔を出したのである。

「おにいちゃんだいじょーぶ?」
「……そうか、お嬢さんか。君のお陰で助かったよ。ありがとう」
「えへへ、わたし、やくにたった?」
「ああ、とってもな。地面のグラグラが終わったら下に降りてくれ。できれば、ゼーテお姉ちゃんの近くがいいな」
「わかった!さっきみつけたからちかくまでいくね!」

マリーがそう言った途端、飛行機は高速でUターンして移動し始めた。

(やれやれ。一命は取り留めた、と言ったところか。ゼーテが死んでいるわけはないし、引っ張り出してもらえればどうにかなりそうだ)

そこで彼は気づく。
まだ「融合」の効力が残っているならばゼーテと会話できるはずだと。

(こちらシーヴァ。ゼーテ、聴こえているなら応答を
(シーヴァ!!)

応答を頼む、まで言い終わる前に反応を返してきたゼーテに少し笑みをこぼす。

(なんだ?まさか僕を心配してたのか?え?)
(いやっ!し、してる訳ないでしょ!?なに適当言ってんのよ!!)
(分かった分かった。落ち着け。とにかく、今からそっちに行く。待っていてくれ)
(了解。……って、どうやって?アンタも、ていうかアンタの方が重傷のはずでしょ?)
(マリー嬢に助けて貰ってね。見れば分かる。しかし、確かに重傷かもしれない)
(……大丈夫、なの?)
(おや、やはり心配してくれてるのか?)
(だから違う!アンタに死なれたら騎士団の戦力が下がるから言ってるだけよ!)
(そうかそうか。なら良いんだ。じゃあ、もう少し待っていてくれよ)

そうして兄妹は会話を終えた。









『残HP……5パーセントォォ!!元に戻ります!上手く受け止めてくださいよー!!』

ナビゲーターが叫ぶと同時に、龍から閃光が放たれる。
その瞬間、深緑の巨体が消え去り、エルフの少女が姿を見せた。

「……ルカ!!!!」

少女の名を叫びながら、啓斗はその華奢な体を抱き留めた。
【サウザンドダガー】は既に消し、空中で腕の中のその姿を見下ろす。
体中に魔法によるものであろう火傷や刺傷、切り傷を負い、力なく目を閉じているルカ。
その痛々しい状態に、啓斗の目からは涙がこぼれそうになる。

「すまない。俺が、目を離したからだ。俺が、自分の力を試したいなんて身勝手を言ったからだ」
「もう、二度とお前を独りにしない。これから続く旅でも、絶対に孤独にしないから……」
「だから……これも必要なことなんだ。もうこれ以上、お前を暴走させたくないから」

そう言って啓斗はルカの顔を持ち上げ、自身も顔を近づける。
そして、静かに唇を重ねた。















『それで、陽動ってどうやるんです?』
「簡単だ。森を燃やしてやればいい。辺り一帯の森林を焼き尽くされれば、嫌でも俺を狙うだろう」
『なるほど。ああそうそう、啓斗様だけにお話します。体力を削った後にもしなければならないことが』
「何?まだあるのか?」

ナビゲーターは真剣な表情でこう言った。

『体力を低下させて人の姿に戻したら、ルカさんに【災厄的デッドエンド劇毒・ポイズン】を流し込んでください。体内に直接』
「……どういうことだ」
『まあ、簡単に言うと、ドラゴン系統のボス級って往生際が悪いんですよ。大概。恐らく、今のルカさんも同じでしょう』
『多分、ピンチに一回、瀕死にもう一回は体力を全回復させるはずです。その2回目を阻止するためです』
「つまり、何が言いたい?」
『分かんないんですか?つまり、死にかけで放置したらまた体力MAXにして襲いかかってくるってことですよ。人に戻した数十秒後には』
「だから……復活させないために……常人なら即死するレベルの毒を流し込むと?」
『はい。ああ、死にはしませんよ。回復と毒で相殺されて、ただの瀕死の少女になるだけです』
「本当だな?」
『これでも天使です。見立ては間違えませんって。それと、暴走時の回復を止めるだけですから、明日には全快してるでしょうね。ヤバい治癒力ですよホント』














そして今この状況に至る。
口付けをし、啓斗の口内で生成した猛毒を舌を通して直接体内に流し込む。
お互いの舌が絡み合っている状態だが、啓斗には何のいかがわしい感情も湧き上がらない。
それほど必死なのだ。

「……プハッ。これでいいか?」
『ええ、結構結構。確認しますねー』

ナビゲーターは少しニヤニヤしながらその光景を見つめていたが、啓斗の真剣な表情を見て仕事に戻る。

『うわ、すごい。体力メーターが行ったり来たりしてる!うわっは!初めて見ましたよこんなの!』

ナビゲーターはその後10秒ほど画面を見つめていたが、おもむろに顔を上げて言った。

『はい、オッケーです。5%でピッタリ止まりました』
「助かった……のか」
『はい。いやぁ、長かったですね!あ、急いで降りた方がいいですよ。あと40秒しか飛行スキルの効果もちませんから』
「もっと早く言え!」

ルカを抱きかかえた啓斗は、もうすぐ夜の帳が降りる空を降下して行った。

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