異世界スキルガチャラー
暴龍の底力
『いいですか?あくまでも「たかがSR」のこの飛行スキルでは、一度の飛行で3分が限界です。しかも、そのうちまともに戦えるのは2分が限度でしょう』
『残りMPも少ないですし、接近した瞬間に最大火力たたっこんでその後は最後の最後以外、絶対に無駄な行動をしないでください』
上昇しながらナビゲーターが念を押す。
つまり、空中にいる状態で3分が経過してしまうと、その場でスキルが効力を失って落下してしまうということ。
それは間違いなく死に直結するので、彼女は啓斗にしつこく確認しているのだ。
「分かった分かった。注意する」
『本当に分かってます!?まあ、私が時間経過を逐一報告しますから、別にアレですけどね』
「頼む。戦闘に集中しすぎると忘れかねないからな」
『分かってないじゃないですか!この高さから落ちたら確実に命落とすんですからね!』
そんな会話を交わしているうちに、地龍の姿がはっきり認識できる距離まで接近していた。
街の上空に君臨するように滞空しているその龍は、美しい深緑の龍鱗を体中にびっしりと生やしていた。
しかし、それと対照的に周囲の空気は荒れ狂う暴風と化し、その両眼は狂気と悪意に満ちた禍々しい輝きを放っている。
その近くで、例の「融合」状態になっているシーヴァが魔法と思わしき光る槍を大量に作り出している。
ゼーテはどうやらあの竜巻の中を既にくぐり抜けているようで、ぼんやりとしか姿が見えない。
どうやら、あの巨体相手に接近戦を仕掛けているようだ。
下を見ると、現代でも相当昔に発明されたであろうレベルのプロペラ機に乗っているマリーが目に入った。
どうやら、あちらも何やら魔法を使って飛行を可能にしているらしい。
『なーんかこう見ると、啓斗様だけパワー不足と言いますかなんと言いますか……』
「それは1番俺が理解している」
『そうですか。あ、そんなこんな言っているうちに、ほら、目の前ですよ』
言われて上を見上げると、結界のように荒れ狂っている暴風のすぐ近くまで来ていた。
このまま近づけば、真下に吹き飛ばされるか、もしくはこの高密度の風のバリアに真っ二つにされかねない。
『まさかとは思ったがケイト君、まさか飛んでいるのか?』
突然のシーヴァからの連絡に、啓斗は軽く驚いた。
「ああ。しかし、この風の防御壁をどうしようかと考えてるところだ」
『ふむ、そういうことなら任せろ。一時的に無効化させられる』
「そんなに簡単に可能なのか?」
『僕だけなら厳しいが、ゼーテの力がこの身に宿っている今ならできる。まあ見ていろ』
そう言ってシーヴァは通信を切り、精神を集中する。
(僕達の「眼」の力は融合によって消えたわけではない。逆に、力は体中に巡っているのだ)
「ふふ、まあ見ていろ。行くぞ!【破呪銀光】!!」
彼の左眼が白銀の輝きを帯びる。
その光は、まるでレーザーのように風の障壁へと発射され、着弾した瞬間に風壁を消滅させた。
「なるほど。やはり威力は3割減と言ったところか。能力を融合させた故に、個人の持つ「個性」は少々弱くなるらしいな」
「それでも、別に支障はない。何故なら、僕達は強いからだ。特に、我が国の近接戦闘部隊隊長様は……な」
「うおおおおりゃああああぁぁぁぁ!!!」
叫んで自分を鼓舞しながら、ゼーテは緑龍の巨体に刺突を浴びせ続ける。
時おり彼女目がけて飛んでくる風の刃や、いきなり目の前に発生する竜巻を全て紙一重で回避しながら、ゼーテは着々とダメージを蓄積させ続けていた。
脚に、首に、顔に、胴体に、尾に、翼に、普通の人間では目が追いつかないスピードで接近しては一撃を浴びせて移動する。
いくら怪物級の体力を持つドラゴンでも、回復もできず、防御も出来ないなら無力に等しい。
それでも、最後の抵抗とばかりに無差別に攻撃を撒き散らす。
しかし、ゼーテは全て避けた。
打ち消すことなく、避けてしまった。
ここは大都市の真上だというのに。
「……はっ、まずい!!」
風の刃が一陣、勢い衰えず眼下へと飛んで行く。
その方向は……
「城に直撃する!!」
シーヴァ達は、狙いが自分たちに向いており、更にここまで傷を負わせた状況ならば、他の街や城には攻撃が届かないだろうと考えていた。
しかし、それもまた楽観的な考えに過ぎなかったのだ。
なんの障害もなくまっすぐ飛んで行った風刃は、ヴァーリュオン城の外壁に直撃。
石の壁をバターのようにあっさりと切断し、内部の部屋をいくつか吹き飛ばした。
「ガアアアアアアオオォォ!!!」
地龍は今までで最も大音量の咆哮を上げると、やたらめったらに風のブレスを口から放出し始めた。
龍の口から放たれる超高圧の空気の渦は、真下の既に崩壊した街を更に破壊し、遠くの街まで到達しては建造物を吹き飛ばし、ブレスの通過点に小型の竜巻を発生させた。
それを全方位に被害をお構い無しでいきなり放ったのだ。
シーヴァや啓斗はおろか、すぐ近くまで接近していたゼーテですら、止めることは出来なかった。
突如、街に線上の破壊が起き、更に大量の竜巻が襲う。
そんな異常事態に、一般人は何ができるだろうか。
無論、何も出来ない。
ただ、ひたすらにパニックを起こすだけだ。
「な、なんだ!?」
「竜巻ぃ!?」
「に、逃げろ!」
「い、家が…………」
市場が吹き飛び、家が消え、人が一瞬で死ぬ。
圧倒的威力の風のブレスは、ヴァーリュオンの東西南北全ての街に災害と恐怖を振りまいた。
だが、これもまだ力の一部に過ぎない。
「……ルカ、何をする気だ!?」
直撃せずとも、今にも吹き飛ばされそうな強烈な風圧を浴びた啓斗には威力の想像がつく。
体の至る所に深紅の血液が付着し、翼にも穴が空いている。
そんな状態でも戦意を一切失わずに攻撃を続ける龍。
そして遂に、龍は文字通りヴァーリュオンを「崩壊」させかねない力を解放した。
ヴァーリュオン城内。
城の損傷度合いを確認しに現れた、国王専属の執事、バルドー。
彼は、壁に空いた風穴から戦いを見つめていた。
「……破滅的被害は避けられない、ということですな」
「ならば、終わった後の処理と修復に手を回すべきでしょう。急いで王に進言しなければ」
バルドーは早足でその場をあとにした。
『啓斗様!やばいです!このままだと、本当にまずい事態に!!』
「何が起きるって言うんだ!?あのブレスでも十二分にやばいだろう!?」
『あんなの比較になりませんよ!ですから急いで………あ』
『手遅れ、ですね………』
「ーーーーーーーーーーー!!!!!!」
発音にならないほどの絶大な咆哮と共に、「大地の崩壊」が始まった。
五聖龍の一角、「地龍」グランドラ。
太古の昔その力は、常に大地の豊穣と恵みに使われてきた。
地龍本人が死に、力が弱まった後も、エルフの隠れ里を守護する目的でのみ使われた。
暴走も、早い段階で発見されたお陰で低い損害で済んできた。
だが、今の龍は狂気に憑かれ破壊を繰り返す「暴龍」。
その巨大な力が人に牙を剥けば、大量殺戮も容易い。
【大地崩壊】
効果範囲内に超極大地震を引き起こす。
建造物なら30秒で倒壊し、人間は1ミリも動けない。
大地の隆起、陥没、液状化が範囲内全てで巻き起こし、全てを「崩壊」させる。
「……街が!!?」
突然始まった大地の崩落にゼーテが意識を奪われた瞬間、龍の前脚が彼女を捉えた。
「……っ!キャアアアアアアア!!!」
龍の怪力に叩き落とされ、ゼーテは為す術なく地面へと墜落して行った。
「ゼーテ!?」
シーヴァは、妹を救出しようと急降下した。
が、彼のいる位置にピンポイントで竜巻が発生し、巻き上げられて身動きを奪われる。
そして、シーヴァは龍の翼から放たれた無数の風刃を全てまともに喰らった。
「はは、嘘……だ……ろ……?」
身体中から出血し、脱力した彼もまた、揺れ動く大地へと落下して行った。
「………っ!?」
『……マジすか。さっきまでの優勢ムードが一瞬で消えましたね』
視界の両端で落ちていく双子。
今すぐにでも救出したいが、啓斗もそれが叶わない。
いっそう禍々しさを増した瞳をしたルカが、大口を開けて彼を狙っているのだ。
どうやら、他人の救出などと言っている場合ではないらしい。
『幸い、龍になったルカさんの体力はもう残り10%を切ってます。こっちが死ぬ前に向こうを倒しましょう』
『しかし、残り飛行可能時間も2分を切ってます。短期決戦!気合い入れて行きますよ!!!』
「……やるしかない、か」
啓斗は覚悟を決めると、【サウザンドダガー】を出現させ、【貫通増強】を付与した。
『残りMPも少ないですし、接近した瞬間に最大火力たたっこんでその後は最後の最後以外、絶対に無駄な行動をしないでください』
上昇しながらナビゲーターが念を押す。
つまり、空中にいる状態で3分が経過してしまうと、その場でスキルが効力を失って落下してしまうということ。
それは間違いなく死に直結するので、彼女は啓斗にしつこく確認しているのだ。
「分かった分かった。注意する」
『本当に分かってます!?まあ、私が時間経過を逐一報告しますから、別にアレですけどね』
「頼む。戦闘に集中しすぎると忘れかねないからな」
『分かってないじゃないですか!この高さから落ちたら確実に命落とすんですからね!』
そんな会話を交わしているうちに、地龍の姿がはっきり認識できる距離まで接近していた。
街の上空に君臨するように滞空しているその龍は、美しい深緑の龍鱗を体中にびっしりと生やしていた。
しかし、それと対照的に周囲の空気は荒れ狂う暴風と化し、その両眼は狂気と悪意に満ちた禍々しい輝きを放っている。
その近くで、例の「融合」状態になっているシーヴァが魔法と思わしき光る槍を大量に作り出している。
ゼーテはどうやらあの竜巻の中を既にくぐり抜けているようで、ぼんやりとしか姿が見えない。
どうやら、あの巨体相手に接近戦を仕掛けているようだ。
下を見ると、現代でも相当昔に発明されたであろうレベルのプロペラ機に乗っているマリーが目に入った。
どうやら、あちらも何やら魔法を使って飛行を可能にしているらしい。
『なーんかこう見ると、啓斗様だけパワー不足と言いますかなんと言いますか……』
「それは1番俺が理解している」
『そうですか。あ、そんなこんな言っているうちに、ほら、目の前ですよ』
言われて上を見上げると、結界のように荒れ狂っている暴風のすぐ近くまで来ていた。
このまま近づけば、真下に吹き飛ばされるか、もしくはこの高密度の風のバリアに真っ二つにされかねない。
『まさかとは思ったがケイト君、まさか飛んでいるのか?』
突然のシーヴァからの連絡に、啓斗は軽く驚いた。
「ああ。しかし、この風の防御壁をどうしようかと考えてるところだ」
『ふむ、そういうことなら任せろ。一時的に無効化させられる』
「そんなに簡単に可能なのか?」
『僕だけなら厳しいが、ゼーテの力がこの身に宿っている今ならできる。まあ見ていろ』
そう言ってシーヴァは通信を切り、精神を集中する。
(僕達の「眼」の力は融合によって消えたわけではない。逆に、力は体中に巡っているのだ)
「ふふ、まあ見ていろ。行くぞ!【破呪銀光】!!」
彼の左眼が白銀の輝きを帯びる。
その光は、まるでレーザーのように風の障壁へと発射され、着弾した瞬間に風壁を消滅させた。
「なるほど。やはり威力は3割減と言ったところか。能力を融合させた故に、個人の持つ「個性」は少々弱くなるらしいな」
「それでも、別に支障はない。何故なら、僕達は強いからだ。特に、我が国の近接戦闘部隊隊長様は……な」
「うおおおおりゃああああぁぁぁぁ!!!」
叫んで自分を鼓舞しながら、ゼーテは緑龍の巨体に刺突を浴びせ続ける。
時おり彼女目がけて飛んでくる風の刃や、いきなり目の前に発生する竜巻を全て紙一重で回避しながら、ゼーテは着々とダメージを蓄積させ続けていた。
脚に、首に、顔に、胴体に、尾に、翼に、普通の人間では目が追いつかないスピードで接近しては一撃を浴びせて移動する。
いくら怪物級の体力を持つドラゴンでも、回復もできず、防御も出来ないなら無力に等しい。
それでも、最後の抵抗とばかりに無差別に攻撃を撒き散らす。
しかし、ゼーテは全て避けた。
打ち消すことなく、避けてしまった。
ここは大都市の真上だというのに。
「……はっ、まずい!!」
風の刃が一陣、勢い衰えず眼下へと飛んで行く。
その方向は……
「城に直撃する!!」
シーヴァ達は、狙いが自分たちに向いており、更にここまで傷を負わせた状況ならば、他の街や城には攻撃が届かないだろうと考えていた。
しかし、それもまた楽観的な考えに過ぎなかったのだ。
なんの障害もなくまっすぐ飛んで行った風刃は、ヴァーリュオン城の外壁に直撃。
石の壁をバターのようにあっさりと切断し、内部の部屋をいくつか吹き飛ばした。
「ガアアアアアアオオォォ!!!」
地龍は今までで最も大音量の咆哮を上げると、やたらめったらに風のブレスを口から放出し始めた。
龍の口から放たれる超高圧の空気の渦は、真下の既に崩壊した街を更に破壊し、遠くの街まで到達しては建造物を吹き飛ばし、ブレスの通過点に小型の竜巻を発生させた。
それを全方位に被害をお構い無しでいきなり放ったのだ。
シーヴァや啓斗はおろか、すぐ近くまで接近していたゼーテですら、止めることは出来なかった。
突如、街に線上の破壊が起き、更に大量の竜巻が襲う。
そんな異常事態に、一般人は何ができるだろうか。
無論、何も出来ない。
ただ、ひたすらにパニックを起こすだけだ。
「な、なんだ!?」
「竜巻ぃ!?」
「に、逃げろ!」
「い、家が…………」
市場が吹き飛び、家が消え、人が一瞬で死ぬ。
圧倒的威力の風のブレスは、ヴァーリュオンの東西南北全ての街に災害と恐怖を振りまいた。
だが、これもまだ力の一部に過ぎない。
「……ルカ、何をする気だ!?」
直撃せずとも、今にも吹き飛ばされそうな強烈な風圧を浴びた啓斗には威力の想像がつく。
体の至る所に深紅の血液が付着し、翼にも穴が空いている。
そんな状態でも戦意を一切失わずに攻撃を続ける龍。
そして遂に、龍は文字通りヴァーリュオンを「崩壊」させかねない力を解放した。
ヴァーリュオン城内。
城の損傷度合いを確認しに現れた、国王専属の執事、バルドー。
彼は、壁に空いた風穴から戦いを見つめていた。
「……破滅的被害は避けられない、ということですな」
「ならば、終わった後の処理と修復に手を回すべきでしょう。急いで王に進言しなければ」
バルドーは早足でその場をあとにした。
『啓斗様!やばいです!このままだと、本当にまずい事態に!!』
「何が起きるって言うんだ!?あのブレスでも十二分にやばいだろう!?」
『あんなの比較になりませんよ!ですから急いで………あ』
『手遅れ、ですね………』
「ーーーーーーーーーーー!!!!!!」
発音にならないほどの絶大な咆哮と共に、「大地の崩壊」が始まった。
五聖龍の一角、「地龍」グランドラ。
太古の昔その力は、常に大地の豊穣と恵みに使われてきた。
地龍本人が死に、力が弱まった後も、エルフの隠れ里を守護する目的でのみ使われた。
暴走も、早い段階で発見されたお陰で低い損害で済んできた。
だが、今の龍は狂気に憑かれ破壊を繰り返す「暴龍」。
その巨大な力が人に牙を剥けば、大量殺戮も容易い。
【大地崩壊】
効果範囲内に超極大地震を引き起こす。
建造物なら30秒で倒壊し、人間は1ミリも動けない。
大地の隆起、陥没、液状化が範囲内全てで巻き起こし、全てを「崩壊」させる。
「……街が!!?」
突然始まった大地の崩落にゼーテが意識を奪われた瞬間、龍の前脚が彼女を捉えた。
「……っ!キャアアアアアアア!!!」
龍の怪力に叩き落とされ、ゼーテは為す術なく地面へと墜落して行った。
「ゼーテ!?」
シーヴァは、妹を救出しようと急降下した。
が、彼のいる位置にピンポイントで竜巻が発生し、巻き上げられて身動きを奪われる。
そして、シーヴァは龍の翼から放たれた無数の風刃を全てまともに喰らった。
「はは、嘘……だ……ろ……?」
身体中から出血し、脱力した彼もまた、揺れ動く大地へと落下して行った。
「………っ!?」
『……マジすか。さっきまでの優勢ムードが一瞬で消えましたね』
視界の両端で落ちていく双子。
今すぐにでも救出したいが、啓斗もそれが叶わない。
いっそう禍々しさを増した瞳をしたルカが、大口を開けて彼を狙っているのだ。
どうやら、他人の救出などと言っている場合ではないらしい。
『幸い、龍になったルカさんの体力はもう残り10%を切ってます。こっちが死ぬ前に向こうを倒しましょう』
『しかし、残り飛行可能時間も2分を切ってます。短期決戦!気合い入れて行きますよ!!!』
「……やるしかない、か」
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