異世界スキルガチャラー

黒烏(クロイズク)

決戦の数分前

「もっとだ!もっと攻めろ!」

シーヴァは更に勢いを増した魔法弾を無数に生成して発射する。
もはや容赦などないと言わんばかりの隙のない魔法攻撃。
相手が巨大でも一体ならば、この双子のコンビネーション攻撃に対応出来る者はほとんどいない。

「さっさと……くたばれぇぇぇぇ!!!!」

ゼーテは怒号を上げながら地龍ルカの体の至る所を刺し貫く。
そこで怯んだ瞬間にシーヴァからの魔法による追撃。
しかも、【異体同心スピリット・リンク】の効果によりゼーテはシーヴァが放った攻撃がいくつで、どう飛んでくるかが「分かる」。
そのため、兄の攻撃が妹に着弾するといった不測の事態も起きない。
双子は、完全に暴走した地龍ルカを圧倒していた。

(よし!このまま押し切るぞ!)
(言われなくても!そのつもりよ!)

だが、ここで終わるほど地龍ルカも甘くはなかった。







「………っ!?これは!」
『わわわわ!?森が枯れていく!?』

啓斗とマリーが北の森に到着した瞬間、「それ」は起きた。
森の木全てがみるみるうちに枯れ、朽ち果てていく。
まるで養分を一瞬で全て吸収されたかのように。

「まさか、植物のエネルギーを無理やり体内に取り込んでいるのか!?」
『そのようですね。……うーわぁ、体力満タンになってしかもパワーアップですか!正念場が来たようです!』
『啓斗様、急いで御二方に連絡を!現状報告を急いで下さい!』

ナビゲーターに慌てた様子でそう言われ、啓斗は腕時計の通話システムを呼び出す。

「こちら啓斗。二人とも聞こえるか?」
『ああ、聞こえている。どうしたんだい?』
『なによ!せっかく今良いとこなのに!』
「聞け。今、ルカの体力が最大の30000まで全回復した」
『…なにぃ!?』
『はぁ!?』
「だが、それは回復手段を全て消費して使った最終手段だったようだ。逆に言えば、もうルカは不死身状態じゃなくなったってことだ」
『……なるほど。つまり、トドメが刺せるという訳だな』
『ちょっとシーヴァ。トドメは刺しちゃダメでしょ!』
「……もし刺したら、俺はお前を妹ごと墓場に送るぞ?シーヴァ」
『悪かった!だから脅すな!ケイト君、そんな性格してたか!?』
「今はその話はいい。とにかく、ルカをどうにかするのが先だ!」
『了解だ。なぁに、僕達の全力をもってすれば追い詰められるはずだ。だろう、ゼーテ?』
『はいはい、いつものセリフね。まあ、任せなさい。ケイト、アンタに1回不覚を取ったけど、本当の実力は私達の方が数段上なんだって、思い知らせてあげる』

そう言うと、ゼーテは向こうから一方的に通信を切った。

『おっと、ゼーテがせっかちなのは相変わらずだな。では、僕も本腰を入れないといけないので失礼するよ』
「分かった。肝心なところがお前達頼みなのはやはり悔しい……が、それしか道がない。任せたぞ」
『ああ、期待以上にやってみせよう!』

シーヴァも通信を切った後、啓斗は思い切り枯れ木に拳を叩きつけた。

「……くそぉっ!何が「ルカを助ける」だ!森を燃やしたところでこんな手があったなら無意味も同じだ!」
「本体の追撃は双子頼み!俺は……指をくわえて見てなきゃならないってのか!」

ギリギリと歯軋りを繰り返しながら忙しなく歩き回り、地団駄を踏んだり頭を掻きむしったりし始める。
そんな様子の啓斗を、マリーはほんの少し怯えながら見つめている。

(ほぉ、「苛立ち」の感情は初めて見ましたね。先程の「暴走」の影響でしょうか?)
(何にせよ、この「取引」を持ちかけるにはベストタイミングですねー)

ナビゲーターは、イライラの頂点に達している顔をしている啓斗に話しかける。

『啓斗様、双子の方々が自由に空を飛びまわり、戦っているのがお気に召しませんか?』
「………………」
『啓斗様、「飛行」のスキルが欲しいですか?』
「……どういう意味だ?」
『ふふ、条件次第では、今の啓斗様に必要なスキルを工面して差し上げられますよ?』
「なに!?どうすればいい!?」
『わ、そんなにがっつかないでください!ここからは啓斗様が自由に使える「設備」の話じゃなくて、私と啓斗様の個人的な「取引」の話です!』

明らかな焦りの色を見せる啓斗を言葉で押し留めて、ナビゲーターは話を続ける。

『私は、啓斗様のスキルを混ぜ合わせてこねくり回して、「別のスキル」に変化させられます』
『同レアリティのスキル5つで、材料になったスキルと同じレアリティのスキルを1つ作成できます』
「……それなら、飛行のスキルを作れるのか?」
『可能です。しかし、この技は本来、天界のルールで禁止されてるんです。それを破るには、それ相応の利益が私も欲しいんですよ』
「…何をしろと?」
『まあ、具体的な内容は後ほど。とにかく今は、取引に応ずるか応じないかを決めてください』

いつになく真剣な表情で語りかけてくるナビゲーター。
啓斗は、加勢したい一心で頷く。

「分かった。頼む」
『決断がお早くて助かります!では、今回は私が使わなさそうなSRを見繕って、SRの飛行スキルに変えて差し上げます』
『えーっと、コレと、アレと、ソレと……よし』
『では、早速始めますね!……行きますよ!』
『【技能変貌スキルメタモル】!!!』












「遂に、飛んだか!」

シーヴァは警戒を強めながら呟く。
地龍ルカは、4本の足の裏に張り巡らすように生やしていた木の根を引きちぎり、翼を広げて空中へ飛び立った。

「な、待ちなさい!」

巨体に見合わぬ物凄いスピードで空高くまで飛んで行った地龍ルカを追ってゼーテも上昇する。

「追撃しろ、鴉達よ!」

シーヴァは更に【犠牲サクリファイスクロウズ】を召喚しつつ地龍ルカを追う。

「オオオオオオォォォォ!!!!!!」

地龍ルカは、辺り一帯の空気を渦巻かせて竜巻を大量生成し始めている。
それは、まるで自分の身を守るように。
自身に、如何なる敵も近づかせないように。

「マリー、君は飛べるかい?」
「えーっと、あ!うん!」
「よし、じゃあ行こう。絶対に、ルカの目を覚まさせないとならない」

そう言うと、啓斗は垂直に跳ぶように地面を蹴った。
そのまま彼の体は上空へと上がって行く。

SRスキル【3分間のインスタント空中遊泳・フライハイ
使用から3分の間だけ空を飛ぶことが出来る。
制限はあるが、3分飛んだ後に着地してもう一度使用すれば連続で飛行可能。

「マリーも!ひこうきさん!わたしをおそらにつれていって!」

マリーがそう言ってクルリと回ると、小さな旧型プロペラ機がバラバラと音を立てながらいきなり出現した。

思い出いっぱいハッピー・メモリー・夢いっぱいドリームズ
マリーの記憶に残る「モノ」を一時的に再現して召喚する。
例えば、兄が大切に使っていた魔法の杖。
例えば、家族で隣の国に旅行に行った時に家族と一緒に乗った「飛行機」。
この形のある「記憶」は、実物となんら変わらない動きをする。
更に、機械の場合、思っただけで動いてしまう。

「れっつごー!!」

操縦席にストンと収まったマリーが声をかけると、小型飛行機は空に浮かぶ巨大な龍に向かって飛び出した。

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コメント

  • 常葉 シア

    ゴーストタウン編がとても面白かったです!

    0
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