転移世界 与えられたのは100×∞連ガチャ!

黒烏

地龍鎮圧戦 1

啓斗が馬車に乗り込む約1時間前。
シーヴァとゼーテは、完全に暴走状態に陥ったルカに苦戦を強いられていた。

「くっ!はぁっ!」
「ガア!ゴルルルアア!」

ゼーテもルカに攻撃を入れようと動き回りながら剣を振るうのだが、龍人状態のルカの驚異的な反射神経でほとんど回避され、更に当たっても強固な龍鱗のせいでダメージを与えられない。

「ちっ、このままじゃジリ貧……でも、私が退いたらルカはどこかへ飛び去ってしまうかもしれない……」
「一体、どうすれば……」

ルカが繰り出す爪攻撃を皮1枚で避けながら、ゼーテは突破口を模索する。
出会ってからまだ2週間ほどだが、既に数年来の親友のような感情をルカに対して持ってしまっているゼーテは、ルカに必要以上の怪我を負わせたくなかった。
しかし、そんな甘い考えが通用するほどルカの状態は良好とは言えない。
今のルカの両眼には純度100%の狂気が宿っており、説得に応じそうには見えない。
それでも、ゼーテは微かな希望にすがりついてルカに言葉をかける。

「ルカ!お願い!目を覚まして!貴女を傷つけたくないの!」
「ガルルア!!」

やはり、ルカはゼーテの言葉には耳を貸さない。
完全に「野生の化け物」となってしまっている。
その様子をずっと倒れながら見ていたシーヴァだったが、自分のダメージが回復したと見ると急いで立ち上がり、ゼーテに叫ぶ。

「ゼーテ!手加減して勝てる相手じゃない!「黒眼」を使うぞ!」
「ダメよ!アンタがやったら死んじゃうかもしれないじゃない!」
「しかし!この状態じゃ確実にやられる!打開策はこれしかないんだ!」
「……………っ!!!」

最後の最後までゼーテは躊躇していた。
しかし、それによって隙が出来てしまう。

「あっ……………!!」
「………ゼーテ!!!」

ゼーテの顔を、龍の爪が深く切り裂いた。
彼女の右頬から鮮血が飛び散る。
その様子を見て、シーヴァは自分の体の痛みなど忘れて飛び出した。
走りながら右手に「シャドウブレイド」を作り出す。

「ルカァァ!!」

そのままルカの体に向かって剣を横薙ぎに振る。

「ガアッ!!」

どうやら、龍鱗は魔法攻撃には物理攻撃ほど耐性が強くないらしく、僅かではあるが手応えがあった。
さらに初ダメージということで動揺させる効果があったようで、大きく距離を取らせることに成功した。

「ゼーテ、無事か?」
「……何とかね。応急処置は自分で出来るから、ルカの動きを見てて」
「了解だ」

ゼーテが治癒魔法で顔の出血を応急処置をしている間、シーヴァはルカの動向を警戒する。

「…動かないな。何をしてるんだ?」

ルカは、シーヴァ達から10メートルほど離れた場所で上半身を屈ませている。

「ゴオオ……」
「……!ゼーテ、急げ!」
「やってる!どうしたっていうの!?」

シーヴァは、最初はルカが傷の痛みを気にしているのかと思っていた。
しかし、途中から体の震えが止まり、まるでパワーを溜めているような雰囲気を醸し出し始めたのだ。

「何か来る……!ゼーテ、避けるぞ!」
「ちょっと、まだ終わってないのに!」



「バオオオオオオオォォォォォ!!!」

ルカの口から放たれた暴風のブレスが、地面を抉り取りながら双子に迫り来る。
2人は、同時に別々の方向へ跳ぶことで回避した。
ブレスは、避けた2人の間を通過して練習場の壁に到達し、その部分に深い溝を作った。

「……まずい威力だな。空気を体内で超圧縮して口から放出しているようだ」
「確かに、あんなのまともに喰らったら人間じゃ真っ二つね」

応急処置を終えたゼーテは、シーヴァに倣って「シャイニングブレイド」を作り出す。
シーヴァも「シャドウブレイド」に更に魔力を送り込み、威力を上げる。

「彼女をこのままで街に逃せば、必ず大惨事になる」
「そうね。それに、この状態のルカに対抗出来るのは、この国じゃ私たちか賢者様くらいなレベル」
「応援を要請するのも手だが、どうにかして僕達だけで彼女を止めたい。軍に拘束なんてシャレにならないからね」
「そこは同意見。じゃあ、全力で行きましょう。私達で暴走を沈静化させる!」
「よし、僕達「ダブルアイズ」の力を見せるときだな!」

最後のシーヴァのセリフに、ゼーテは嫌そうな顔をした。
理由はと言うと……

「ねぇ、やっぱり「ダブルアイズ」」ってカッコ悪くない?」
「確かにな。よし、じゃあこれが終わったらもっとベストな二つ名を考えようじゃないか!」

こういう「日常会話」を本気の戦闘直前にするのが2人のルーティン。
「生きて必ずその話をする」ことを目標とし、生存意欲と連携力を高める狙いがあるのだ。

「さて……」
「じゃあ……」

二人同時に深呼吸をし、精神を統一する。

「バトルスタートだ!!」
「戦闘開始ね!!」

それぞれの得意魔法を具現化した剣を持つ双子は、暴走した地龍を鎮めるため、本気の戦闘を開始した。

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