異世界スキルガチャラー
壱の本 「地龍の里、その成り立ち」
ページを開いたということは、覚悟があると看做そう。
では、まずはこの里の存在する意味から語ろうか。
この里は、エルフ族が住む巨大な森林から離れ、「地龍」、エルフの信仰の対象となっている聖龍を祀るために作られた。
森のエルフ達はからは「聖地」と呼ばれている。
地龍を祀る巨大な神殿が森の最奥に建てられ、その周辺には結界が張られている。
そして、その結界を更に囲むように壁や門が作られ、門には毎日監視役のエルフの戦士が1人以上いる。
この里に住むエルフは約200人程度。
神官、司祭、それを束ねる大僧正。
そして祈る者たちを守護するための戦士達だ。
この森に神殿を作ってから数千年経つらしいが、森に襲いくる脅威は、神殿を財宝の保管庫などと勘違いして探しに来る間抜けな冒険家や犯罪者、森に古くから住む狼の群れが主だ。
冒険家や犯罪者は、門前払いで何も問題は無い。
迷い人がウロウロしているだけでは辿り着けないような術式も里全体にかかっている。
これは、術式をかける前に1度だけ迷い人を救出して生きて帰した際、その人間が数十人の仲間を引き連れて襲撃してきたことを教訓にしたためだ。
よって、外部から里に入れるのは、
「エルフの本拠地から来た新しい仲間」
「同じく本拠地から来た伝言者」
「結界を突破できるほどの力量を持った敵」
そして、例外的にもう1つある。
それは、
「偶然結界の内側に飛ばされた人間」
である。
この第4ケースは、今までに1度しか起こったことがないが、1度起こったのだから2度起こりうる、ということで認定されている。
さて、話題を変えよう。
「地龍」についてだ。
私達は3000年の間変わらずその龍を崇めてきた。
大昔のことではあるが、我々エルフ族と地龍は共存しており、お互いに助けあって生活していたらしい。
例えば、地龍では難しい細かい作業をエルフ達が請け負う代わりに、エルフ達が危機に瀕した場合に地龍がその圧倒的な力をもって敵を退ける、というような具合だ。
しかし、3000年前。
初代の「魔王」が現れ、世界を滅ぼさんと災厄をばらまいた。
その邪悪な力は、エルフの森にまで侵食した。
森の木々は次々と枯れ、生き物達は邪悪な波動に当てられて凶暴化した。
エルフ達は死力を尽くして戦ったが、到底手に負えるものではなかった。
勇敢な戦士が殺されていく中、当時の司祭たちは地龍に助けを求めた。
地龍はこれを承諾したが、一つだけ条件をつけた。
その言葉は、こうだ。
「私だけの力では、勝利するのは難しい。しかし、たった一人。たった一人、命を賭して私と共に戦う者がいれば勝利を約束します」
この言葉を聞き、真っ先に「命を捨てて戦う」と決断したのは、ある若い男だった。
彼は、当時のエルフの中では最も弓の扱いが上手かったが、ほとんど喋らない寡黙な男だったため周囲から距離を置かれていた。
しかし、彼は誰よりもエルフ族全体のことを考えていたのだ。
「俺が死ぬだけで他は全員助かるんだろう? なら、名誉以外の何物でもないさ。地龍様、俺が行く。異論は認めない」
その男はそう言い、地龍の背中に乗って飛び去ってしまった。
約束の通り、地龍と男は災厄を退けたが、男は戦場から戻ってくることはなく、地龍も森を修復すると同時に白骨化し、頭蓋骨以外の部分は塵になって消えてしまった。
しかし、地龍の命が消えた次の日、里の広場の中心に女の赤子が突然現れた。
一体どこから現れたのかと里の全員が不審に思ったが、当時の大僧正が引き取るということで簡単に皆納得した。
そして、地龍の頭蓋骨を祀る祭壇を森の中心に建設した。
赤子は問題なく成長し、里の一員として生活するようになった。
少女に異変が起きたのは、彼女が16歳になった頃だったという。
ある日、少女が祭壇で祈りを捧げていると、頭の中に女性の声が響いた。
その声は、祭壇に祀られた頭蓋骨に触れるように指示したらしい。
それに従って頭蓋骨に触れた途端、謎の力が彼女に発現した。
彼女の周りでは風の方向がめちゃくちゃになり、足元の草や植物が規格外に成長するなどの異常事態が起こるようになった。
その異常を聞いて駆けつけた司祭たちが少女を調べたところ、
「エルフではない」
ことが判明した。
正確に言うと、エルフと龍族の混血だったのだ。
可能性は1つ。
地龍と、彼女と共に戦った男の子供だということだ。
その力を知った司祭達は、地龍の血族が続いたことを喜び、また恐怖した。
人間とは、自分達と違う者に得体の知れない恐怖を覚えるもの。
そこで、もっともな口実をつけて少女を森から追い出すことにした。
少女を「龍の巫女」として崇めると共に、自分達のような俗物と触れ合ってはならないとして、少数の司祭と戦士、そして地龍の頭蓋骨と一緒に森から「旅立た」せたのだ。
そして、力を使いこなすための修行を積みながら旅を続けた巫女と少数の仲間は、小さいが深い森を見つけ、そこに小さな里と神殿を建て、神殿の地下深くに頭蓋骨を祀った。
最初にこの里を「聖地」と言ったが、それはある意味で嘘だ。
ここは、「守り人の里」などと言う大層な場所ではない。
「追放者の里」である。
ここまでが、この里の成り立ちだ。
弍の本では、「巫女」とされた少女に発現した力、そしてこの小さな里について詳しく話そう。
では、まずはこの里の存在する意味から語ろうか。
この里は、エルフ族が住む巨大な森林から離れ、「地龍」、エルフの信仰の対象となっている聖龍を祀るために作られた。
森のエルフ達はからは「聖地」と呼ばれている。
地龍を祀る巨大な神殿が森の最奥に建てられ、その周辺には結界が張られている。
そして、その結界を更に囲むように壁や門が作られ、門には毎日監視役のエルフの戦士が1人以上いる。
この里に住むエルフは約200人程度。
神官、司祭、それを束ねる大僧正。
そして祈る者たちを守護するための戦士達だ。
この森に神殿を作ってから数千年経つらしいが、森に襲いくる脅威は、神殿を財宝の保管庫などと勘違いして探しに来る間抜けな冒険家や犯罪者、森に古くから住む狼の群れが主だ。
冒険家や犯罪者は、門前払いで何も問題は無い。
迷い人がウロウロしているだけでは辿り着けないような術式も里全体にかかっている。
これは、術式をかける前に1度だけ迷い人を救出して生きて帰した際、その人間が数十人の仲間を引き連れて襲撃してきたことを教訓にしたためだ。
よって、外部から里に入れるのは、
「エルフの本拠地から来た新しい仲間」
「同じく本拠地から来た伝言者」
「結界を突破できるほどの力量を持った敵」
そして、例外的にもう1つある。
それは、
「偶然結界の内側に飛ばされた人間」
である。
この第4ケースは、今までに1度しか起こったことがないが、1度起こったのだから2度起こりうる、ということで認定されている。
さて、話題を変えよう。
「地龍」についてだ。
私達は3000年の間変わらずその龍を崇めてきた。
大昔のことではあるが、我々エルフ族と地龍は共存しており、お互いに助けあって生活していたらしい。
例えば、地龍では難しい細かい作業をエルフ達が請け負う代わりに、エルフ達が危機に瀕した場合に地龍がその圧倒的な力をもって敵を退ける、というような具合だ。
しかし、3000年前。
初代の「魔王」が現れ、世界を滅ぼさんと災厄をばらまいた。
その邪悪な力は、エルフの森にまで侵食した。
森の木々は次々と枯れ、生き物達は邪悪な波動に当てられて凶暴化した。
エルフ達は死力を尽くして戦ったが、到底手に負えるものではなかった。
勇敢な戦士が殺されていく中、当時の司祭たちは地龍に助けを求めた。
地龍はこれを承諾したが、一つだけ条件をつけた。
その言葉は、こうだ。
「私だけの力では、勝利するのは難しい。しかし、たった一人。たった一人、命を賭して私と共に戦う者がいれば勝利を約束します」
この言葉を聞き、真っ先に「命を捨てて戦う」と決断したのは、ある若い男だった。
彼は、当時のエルフの中では最も弓の扱いが上手かったが、ほとんど喋らない寡黙な男だったため周囲から距離を置かれていた。
しかし、彼は誰よりもエルフ族全体のことを考えていたのだ。
「俺が死ぬだけで他は全員助かるんだろう? なら、名誉以外の何物でもないさ。地龍様、俺が行く。異論は認めない」
その男はそう言い、地龍の背中に乗って飛び去ってしまった。
約束の通り、地龍と男は災厄を退けたが、男は戦場から戻ってくることはなく、地龍も森を修復すると同時に白骨化し、頭蓋骨以外の部分は塵になって消えてしまった。
しかし、地龍の命が消えた次の日、里の広場の中心に女の赤子が突然現れた。
一体どこから現れたのかと里の全員が不審に思ったが、当時の大僧正が引き取るということで簡単に皆納得した。
そして、地龍の頭蓋骨を祀る祭壇を森の中心に建設した。
赤子は問題なく成長し、里の一員として生活するようになった。
少女に異変が起きたのは、彼女が16歳になった頃だったという。
ある日、少女が祭壇で祈りを捧げていると、頭の中に女性の声が響いた。
その声は、祭壇に祀られた頭蓋骨に触れるように指示したらしい。
それに従って頭蓋骨に触れた途端、謎の力が彼女に発現した。
彼女の周りでは風の方向がめちゃくちゃになり、足元の草や植物が規格外に成長するなどの異常事態が起こるようになった。
その異常を聞いて駆けつけた司祭たちが少女を調べたところ、
「エルフではない」
ことが判明した。
正確に言うと、エルフと龍族の混血だったのだ。
可能性は1つ。
地龍と、彼女と共に戦った男の子供だということだ。
その力を知った司祭達は、地龍の血族が続いたことを喜び、また恐怖した。
人間とは、自分達と違う者に得体の知れない恐怖を覚えるもの。
そこで、もっともな口実をつけて少女を森から追い出すことにした。
少女を「龍の巫女」として崇めると共に、自分達のような俗物と触れ合ってはならないとして、少数の司祭と戦士、そして地龍の頭蓋骨と一緒に森から「旅立た」せたのだ。
そして、力を使いこなすための修行を積みながら旅を続けた巫女と少数の仲間は、小さいが深い森を見つけ、そこに小さな里と神殿を建て、神殿の地下深くに頭蓋骨を祀った。
最初にこの里を「聖地」と言ったが、それはある意味で嘘だ。
ここは、「守り人の里」などと言う大層な場所ではない。
「追放者の里」である。
ここまでが、この里の成り立ちだ。
弍の本では、「巫女」とされた少女に発現した力、そしてこの小さな里について詳しく話そう。
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