異世界スキルガチャラー

黒烏(クロイズク)

終戦後の兄妹

「……俺、こっちに来てからまともに「就寝」って形であんまり寝てない気がする」

ゼーテと引き分けた後、啓斗は病室で一人、目を覚ました。
脇腹の傷は治っておらず、ベッドから出ようとするとズキズキと痛んだので、再び横になり、何となく腕時計を眺める。
腕時計は午前11時を指していた。ならば、啓斗は6時間気絶していたことになる。
それを確認すると、啓斗は再び目を閉じた。
まだ午前中ということは、昼食の時間にでも誰か来るだろうと思ったからだ。
かなり気絶していたはずだが、案外あっさりともう一度眠ることが出来た。


啓斗はその後、体を激しく揺すられる感覚で目を覚ました。

「……起きたね。お昼、持ってきといたから食べて。じゃ」

無理やり人を起こしてさっさと出ていこうとする。

「ちょっと待て。用がある」

しかし、啓斗は強い口調で強引に引き止めた。

「……なに?勝負は引き分けで良いわよ、他に何かある?」

明らかに不機嫌な態度でゼーテは啓斗に向き直る。

「何も言わずにちょっとそこに座れ」

有無を言わせぬ語調で近くの椅子にゼーテを座らせ、じっと見つめる。
啓斗はゼーテのステータスを確認しておきたかった。
これをやっておかないと、レベルがどれくらいの基準で強さを表示しているか分からないからだ。


ゼーテ・ナイトブライト
人間(ヴァーリュオン人)
 Lv61 HP 4000  MP 1600
特殊スキル「破呪の銀眼」


と表示されている。
先日のルカと比較すると圧倒的に高く、逆に分からなくなった。

「よし、もう大丈夫だ。すまないな」

啓斗は体を起こして頭を下げる。

「何が目的か分からなかったけど、まあいいわ」
「あ、シーヴァ達も後で行くって言ってた。それじゃ」

ゼーテはいつもの雰囲気を崩すことなく部屋を出ていった。


30分後、昼食を食べ終わった直後にシーヴァとルカが連れ立って部屋に入ってきた。

「ああ、ケイト!ゼーテがすまないことをしたようだ!あの馬鹿に代わって深く詫びる!」

シーヴァは入って来るなりそう言って土下座に近い体勢で座り込んで頭を下げる。
ルカもなにか言おうとしていたのだが、シーヴァの勢いに飲まれて何も言えなくなっていた。
啓斗はそのオーバーアクションを無視してシーヴァのステータスも確認する。


シーヴァ・ナイトブライト
人間(ヴァーリュオン人)
 Lv59 HP3400 MP 1200
特殊スキル「力操の黒眼」


確かに、ゼーテより幾分いくぶんか能力が低い。だが、恐らく強いのは間違いないだろう。
そのまま何となくルカに目を向けてみると、啓斗は危うく声を上げそうになった。


ルカ
エルフ族 
Lv25 HP1400 MP 370
特殊スキル 詳細不明


レベルが21も上がっている。
恐らく一昨日の訓練で上がったのだろうが、上がり幅がおかしい気もする。

(まあ、RPGでも低レベルだったらすぐ上がるからな……)

啓斗はそういう風に納得することにした。
だが、やはり詳細不明のスキルが物凄く気になる。だが、知る手段が無いので、またむずがゆい思いをするだけだった。

「実は、今日にでも君らの入団式をしようと思っていたんだが、そのケガでは難しいだろう」
「だから、明日に延期することにした。じゃあ、明日にまた。僕は急用があるんでね」

シーヴァは早口に言い切ると、素早く部屋を後にした。

「私は、ここにいる。どうせ今日は何もする気起きなかったから」

ルカはそう言ってベッドの横に腰掛け、ニッコリ笑った。










「ゼーテ、一体何のつもりであんな事をしたんだ!特別入団試験だなんて嘘までついて!」

駆け出した勢いそのままゼーテの部屋に駆け込んだシーヴァは、ゼーテを問い詰めていた。

「………………」

ゼーテはシーヴァと目を合わせずに黙りこくっている。

「答えろ!僕に勝っていた時点で実力は十二分に分かっていただろう!それなのにお前は!!」

シーヴァの剣幕にも一切反応を示さずに横を向いたままだ。

「おい!ゼーテ!聞いているのか!?ゼー…」
「聞いてるよ!いちいちうるさいのよアンタは!」

シーヴァの言葉を遮ってゼーテが叫ぶ。

「理由!?そんなの、決まってるじゃない!」

その目には涙が光っていた。

「アンタが…アンタが負けたからよ!アンタの強さは1番私がよく知ってる!」
「それに、魔力に枷がはまってる・・・・・・・・・・としても、アンタは私より……!」

だが、最後まで言い終わる前にシーヴァが口を塞いだ。

「ゼーテ!やめろ!お前の方が上なんだ!人前ではそういう風にする・・・・・・と約束しただろう!」

必死にそう言うが、ゼーテの目は悲しみと虚しさに満ちている。

「……この話は終わりだ。彼は僕に勝ち、お前とも引き分けた。それに人柄もいい」
「……そうね、分かった。確かに、彼は良い人だし、友人になりたいとも思ってる」
「なら良い!じゃあ、明日を楽しみにしようじゃないか!必ず素晴らしい式になる!」

つい数秒前までの言い争いはどこへ行ったのか、シーヴァはいつもの調子を取り戻した。

「じゃあ、また後でな。さっきまでのことは忘れるんだ。いいな」

そのまま部屋を出ていき、ドアを静かに閉める。



「……でも、私のせいでこんなことになったのに」

ゼーテは人前で絶対に見せない自身の「素」で独り言を言う。

「……お兄ちゃんに全部背負わせたままじゃダメなのに」

そのままゼーテはベッドに突っ伏して嗚咽おえつを漏らして泣き出した。





ドアの向こうでそれを聞いていたシーヴァも、両目を覆って呻いていた。

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