転移世界 与えられたのは100×∞連ガチャ!

黒烏

☆ VS「銀眼の騎士」ゼーテ

「じゃあ……行くわよ、ケイト。勝敗決定は、気絶か降参ってことで。私も7割本気を出すわ。大ケガしても、恨まないでね!」

ゼーテは手元に魔法剣を出現させる。
シーヴァの「シャドウブレイド」とついなるように編み出した「シャイニングブレイド」だ。
その白く光る刀身を確認した啓斗も「マジックソード」を手に持つ。

「はぁぁぁ!!」

ゼーテがこちらに向かって高速で近づいてくる。
スピードで言えばシーヴァの1.5倍といったところだろうか。
啓斗は「騎士王剣技」をすぐに発動、正面からの激突に備えた。
だが、一瞬でゼーテの姿が視界から消える。周りを見渡してもどこにも見えない。
可能性は残り1つ。啓斗は、上空から襲来するゼーテの剣を辛うじて受け止めた。

「へぇ、結構良い反射神経してるじゃない。まぁ、まだ序の口だけど…ね!」

空中で逆立ちのような格好のまま啓斗と剣を交えているゼーテだが、ゼーテに不利な状態ではない。
何故なら、啓斗が両手でゼーテの剣を受け止めているのに対し、ゼーテは右手一本で問題なく啓斗を押し込んでいるからだ。

「こういうのもどう!?」

ゼーテの左手の平から閃光が発せられる。
啓斗はまともにそれを見せられ、目が眩む。
その瞬間にゼーテの剣が啓斗を斬りつけた。

「ぐあっ……」

両腕を同時に斬られた啓斗は、思わずバックステップする。
ようやく目が元に戻った時には、彼の魔法剣は消えており、ゼーテが数m先でこちらを見据えていた。

(やはり真正面から戦っても勝ち目はないな。ならば…)

啓斗は意識を集中させる。
空中に突如として「燃え盛る鳥」、砂の上に「冷気を放つ犬」が現れる。
更に、砂がどんどんと集まっていき、巨大な人形を形作る。
「炎獣」と「氷獣」、そして「ゴーレムメイク」によって作成された「サンドゴーレム」。

「ふーん……なるほど。魔法陣みたいな技術が無いと同種の召喚獣は2体以上召喚できないけど、別種なら問題ないね、確かに」

ゼーテは感心したように言う。
だが、その目は鋭い光を放ったままだ。
更に啓斗は「ドッペルメイカー」を使い、10人の分身を出現させる。

「分身達、そして召喚獣。ゼーテの四肢を動かなくさせろ。手段は……問わない」

そう命令すると同時に、召喚獣と分身が一斉にゼーテへ襲いかかる。

「ここから本番って訳ね。じゃあ、8割出そうかな!」

ゼーテもの中に飛び込んでいく。
氷犬の噛みつきをかわし、分身が攻撃する前に腹を切り裂く。
炎鳥とゴーレムも襲いかかるが、ゼーテの超高速回避に着いていけない。
その神速の剣技と(確認できた限りで)10種の強力魔法によって、炎犬は氷漬けになり、氷鳥は八つ裂きにされ、ゴーレムは跡形も無く吹き飛んだ。
分身達も次々と殺害されていく。
普通に剣で斬られた者もいれば、砂を固めたらしき弾丸に頭を貫かれた者もいる。
生成からわずか2分。召喚獣はただの残骸にされ、分身は全て血だらけの死体となって転がっていた。

「勝負あり、かしら?ケイト。シーヴァの実力を私は「確かなもの」と言ったけど…」
「私はアイツより強い。シーヴァは絶対認めないけど、全てにおいて私の方が一枚上手」

言いながらゼーテは、残った啓斗本人をじっと見つめる。先程から彼は目を閉じて何かに集中しているように見える。
何に集中しているかは、すぐに分かった。
分身の死体から流れた血が全て弾丸となり、ゼーテに襲いかかったのである。

「な……!?」

ゼーテの周り、ほぼ360°全てに分身の血は撒き散らされている。
それが全てゼーテに向かって飛来する。
啓斗の狙いは最初からこれだった。召喚獣は真意を悟られないためのフェイクに過ぎない。
つまり、分身達をゼーテを囲うように上手く配置して流血させ、血で結界を作ったのだ。
そして、全方位射撃ならばゼーテも咄嗟に躱すことは不可能だろうと啓斗は考えたのだった。
だが、ゼーテは回避しなかった。
できなかったのではなく、本当にしなかった・・・・・
ゼーテは、眼帯を外したのだった。
その銀に輝く左眼が、まばゆい光を放つ。
「C・バレット」によって作成された弾丸は、全てただの血液となって地面に飛び散った。

「無駄。私にそういう魔法の小細工は通じない。まあ、これが妥当な結果よね」

啓斗は、かなり動揺した。渾身の作戦を簡単に打ち砕かれたのだ、無理もない。
だが、啓斗に打つ手が無くなった訳では無い。
再び魔法剣を出現させる。今度は、両手に(先程受けた腕の傷は軽傷だったのでヒールで治せた)。
更に、剣は輝きを増し始めた。


SRスキル「マジックエンチャント」
魔法で作られた武器に更に魔力を流し込み、強度、破壊力を上げる魔法


そして「騎士王剣技」、「3倍速」、「ダッシュアップ」を同時発動。
ゼーテに引けを取らない神速で襲いかかった。
しかし、ゼーテは初撃を見事に躱してみせる。

「真っ向勝負って訳ね。いさぎよいじゃない!受けて立つ!」

素早く眼帯を装着すると、ゼーテもスピードを上げて斬り掛かる。
決闘場に砂塵が常に立つ高速戦闘が開始された。

「はっ!ふっ!甘い!」
「くっ!おおっ!ぐあっ!」

しかし、すぐに戦況はゼーテに有利になっていく。
元々ゼーテは高速で相手を撹乱して仕留める戦法を得意としており、敵とスピード勝負をしたことも多々ある。
だが、啓斗はここまでの高速戦闘をしたことがない以前に、まともに剣で戦ったのも今回がほぼ初戦といっても過言ではない(シーヴァ戦では開幕にしか剣を使わなかった)。
力量差は歴然である。
1分もすれば、ゼーテに動きを読まれ、手痛いカウンターを喰らう。
2分すればもう、啓斗はゼーテにとって練習用のカカシ同然だった。
回復手段を奪うため、敢えて致命傷一歩手前の斬撃を放つ。
ゼーテは昨日、啓斗の不自然に無傷な体と、何かが叩きつけられたように折れている木を目撃し、啓斗に何か秘密の超回復手段があると判断したのだ。
それによって、啓斗は既に「ピンチヒール」を2回分使い切っていた。
そして遂に、ゼーテの剣が啓斗の脇腹を貫いた。

「ガハッ……うう……ハァ……ハァ……」

そのまま地面に仰向けに倒れ込んだ啓斗をゼーテが見下ろす。

「……今度こそ勝負ありね、ケイト。……ハァ」

彼女も相当疲弊しているようだ。

「剣と身体能力強化していたようだから敢えて無効化しなかったけど、した方が良かったかも……」

疲れた笑みを浮かべてそう言う。

「私の勝ちね。降参したら?そうしたらベッドで目を覚ます羽目にならずに済むけど」

ゼーテがそう提案する。だが、啓斗はそれを拒否した。

「いや、気絶させてくれ。その方が決着としてまだ格好がつく」
「良いね、それ。王国最強の「煌白の騎士」をここまで疲れさせたんだから、光栄に思いなさい」

そう言ってゼーテは魔法で啓斗の脳を思い切り揺さぶった。

朦朧もうろうとしていく意識の中、啓斗はボソリとこう言った。

「だが、勝敗は……」
「引き分けだ!」

その瞬間、啓斗の全身から怨念の波動が吹き出し、ゼーテを包み込む。

「なっ!?これは……そんな手をまだ持ってた……なんて……」

波動をもろに受けたゼーテは地面に倒れ込んで意識を失う。

「ガフッ……なるほど、こういう技か。なるべく使う場面には出会いたく…ない…な…」

波動を放った啓斗も気絶する。
決闘場には、気絶した一組の男女と、血液の大量に染み込んだ砂だけがあった。



URスキル「ラストカース」
戦闘に「勝利不可能」になった場合にのみ発動する。
敗北、もしくは死亡する瞬間、その戦闘で最も良い「引き分け」の形になるよう怨念の波動が発射される。
自分が気絶する場合、相手も気絶。自分が死亡する場合は、相手も死亡する。





啓斗とゼーテは、部屋にいないことを不思議がったシーヴァによって発見され、城の治療室へと運ばれた。

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