不死者の俺は平和に生きたい

煮干

家の玄関を開けると暗闇の中からジェミーが飛びついてきた。腰にしがみつき、声も殺さずに泣いている。

「ただいま...。」

そう言って優しく頭を撫でると、一段と声をあげて泣いた。それから長い時間、俺はなにも言わずにジェミーをなだめた。


俺は大きなため息をついた。

「どうしたんだ明君、そんなに大きなため息をして。」

ポッポさんはコーヒーを運んでくると、ソファーに座った。

「昨日いろいろありましてね...。」

あの後ジェミーは恥ずかしさからなのか俺の顔に強烈なビンタをしてきた。今でも赤く、くっきりと手の跡が残っている。

「それよりも昨日は本当に俺の家付近で不発弾の処理があったんですか?」

「本当だよ。だから君の住んでいる町の人が全員避難したんだよ。それにしても爆発しなくて良かった。君は不死身だからいいけど、ジェミーちゃんは不死身じゃないからね。」

「そうですね。」

目の前に置かれたコーヒーを一口飲む。

教会という謎の組織は何を目的に活動しているのか?ただ一つだけ確かなのは、教会に歯向かわなければ俺とジェミーは平穏に暮らせる。

「ジェミーちゃんは海に興味はあるかな?」

「急にどうしたんですか?」

「いや、借りてる別荘があるんだけどね、今年の夏は忙しくて行けそうにないんだ。使わないよりは使った方がいいからね。二人で行ってみないかい?」

そういうことか、ジェミーの機嫌を良くするだろうし行ってみるか。

「お言葉に甘えてぜひ。」


砂浜は白く、マリンブルーの海は透き通って、真っ青な空に輝く太陽の光を反射する。

テレビで見たような美しい海が目の前に広がる。俺はカメラを取り出すと、その風景を写真に収めた。風景が美しく、自分の実力を過信してしまうほど綺麗な写真。

「我ながら素晴らしい写真だ...後でジェミーに見せるか。」

俺はカメラをしまうと軽く浜辺を歩いた。波の音が気持ちよく、海風が心地いい。堪能していると携帯が振動する。たちまち俺は現実に引き戻された。相手は…ジェミーか。

「はいもしもし。」

「まだなの?お腹すいた。」

時計を見ると短針は十二を指す。時間が経つのは早いものだとつくづく感じる。

「ごめん、何か食べたいものはあるか?」

「海の幸。」

「了解。」

電話を終えると俺は大きなため息をついた。

海の幸…海鮮丼でいいか…。財布の中は二千円か…銀行でおとすか…。

俺は再び携帯をポケットから出すと、インターネットで検索する。

さすがに海に近いだけあって魚を扱う店が多いな。いくら、ウニ、マグロ、イカ…他は後で決めるか。


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