不死者の俺は平和に生きたい

煮干

不死身のお仕事 後編

横でルンルンと鼻唄を歌って幸せそうなジェミーと絶望する俺。まったく、ポッポさんは優しすぎる。

「お待たせしました。」

玄関の前にいつものようにリムジンが止まる。

中から黒いスーツを来た、いかにも怪しい大柄な男が一人出てきた。

「ジェミーさん、この人は鳥谷とりやさんです。」

「どうぞ。」

サングラスで目は見えなかったが、口は笑っていた。

「ありがとう。」

俺は鳥谷さんに頭を下げると車に乗る。ジェミーも続いて車に乗った。

「運転手は鳥山とりやまさんだよ。いつもこの二人が送迎してくれるよ。」

ジェミーは俺の話なんか耳に入ってないようだ。それよりもワインセラーや真ん中にあるテーブルに興味津々だ。俺なんかは見慣れてしまって、時々ワインセラーのワインが変わったときに気になる程度だ。

「そちらのかたがジェミーさんですか?」

ジェミーは未だにキョロキョロしている。話が耳に入ってないようだ。

「そうです。こちらがジェミーさんです。」

俺がうなずくと鳥谷さんはワインセラーの隣の冷蔵庫からジュースを取り出した。ジェミーはそれにすら気づかない。本当に子供にしか見えない、だから鳥谷さんは悪くない。

「えっと、鳥谷さん。ジェミーさん吸血鬼で七十越えてます。」

おばさん、その言葉を何とか飲み込んだ。

「左様でございますか。私としたことがこ無礼を…。」

「いや、でも大丈夫です。さすがに酔っぱらわれると面倒なので。」

どうなるかは知らないが家に連れていくのは俺だ。介抱とかもめんどくさい。

「ジェミーさん飲み物です。」

鳥谷さんがワイングラスに注ぐとやっとジェミーは気づいた。目の前に注がれたジュースは色的にブドウジュースだろう。

「美味しそうなワイン・・・…。」

大人の雰囲気を醸し出して、恍惚とした表情でワイングラスを傾ける。俺は思わず吹き出した。

「なんで笑うのよ!」

ジェミーはムッとする。だがこれを笑わないで我慢なんてできるはずがない。カッコつけて飲もうとしたのがブドウジュースのようなもの。ジェミーの背伸びが空回り。

「ブドウジュースだよ...たぶん...。」

息も絶え絶えに言いきる。ダメだ、抑えようとすると余計に笑う…鳥谷さんなんて冷蔵庫を整理するふりして笑っている。

「ゴフッ!?」

腹にジェミーのパンチがめり込む。痛い、痛くて笑えない...。

「理不尽だ...。」



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