名無しの英雄

夜廻

66話

アルカナはドラゴンの攻撃を避ける
「おい!正気を保て!」
アルカナは叫ぶ
しかしドラゴンに声は一向に届かない
「無駄ですよ?隷属の首輪は絶対ですから」
太った男はニヤリと笑う
「なら!!」
アルカナは全力で男に攻撃を仕掛ける
「ドラゴン!」
攻撃を繰り出そうとした瞬間にドラゴンが間に割って入る
「邪魔だ!」
だがアルカナはドラゴンを殺せない
アルカナはダンジョンマスターだ
ダンジョンに生息する……いや、全ての魔物の親とも言って良い立場にある
所謂、魔王と呼ばれる存在なのだ
そんなアルカナが子と同然なドラゴンを正気なら兎も角として正気じゃないドラゴンを殺す事はアルカナは出来ない
だがドラゴンはアルカナに容赦なく攻撃してくる
「くっ!」
アルカナは爪の攻撃を受けたが辛うじて避け、大した攻撃は貰っていない
「どうにか出来るか……?」
ドラゴンが正気を取り戻すためには2つほど方法がある
1つ目は使役している男を殺す事。殺した瞬間に使役している魔物は解放され、正気に戻る
2つ目はドラゴンの首に着いている首輪を壊すか外す事が出来れば正気に戻る
「………」
アルカナは考える
1つ目の方法はドラゴンが邪魔をしてドラゴンまで殺してしまう可能性があるので却下
なら2つ目の方法しか無いが……
どうやってやる……?

男はワタシをなかなか殺せずイライラしているのかドラゴンに高威力の攻撃の命令を出し始めた
「まずい!このままだと」
後ろを振り返る
そこにはまだ住民が避難している
ドラゴンが息を吸い、ブレスの用意をする
このままではダメだと判断したワタシは1歩も退かなかった



全く!いつまであの女を殺せないんだ!
「ドラゴン!高威力のブレスを放て!」
ドラゴンに命令を下す
これでいくら何でも死ぬだろう
女の後ろに住民がいるが気にする程の事でも無いだろう
ドラゴンがブレスの発射準備を終える
「ん?あの女なんで避けようともしない?」
不思議に思うがこの攻撃で消し飛ぶ筈だから関係ないか
「やれ!」
ドラゴンにブレスを吐き出すように命令する
ドラゴンはその命令に対して逆らう事なくブレスを発射した
女とブレスがぶつかるが……
「!?」
一瞬にしてブレスが消える
その次の瞬間には男の体は燃えていた


「ふぅ……」
アルカナは疲れた顔で座り込む
アルカナはスキルを使ってブレスを跳ね返したのだ
あれだけ協力な攻撃を無傷で跳ね返せる訳も無く全身に火傷を負っている
「これは動けないかな…」
試しに動かしてみるがやはり痛くてどうしようも無い
「助けてくれて有難う。感謝します」
そう声が聞こえる
首だけ辛うじて動かして声がした方を見る
そこには正気を取り戻したドラゴンがいた
「いいって、ワタシが勝手にやったんだしな」
「それでも礼を言いたかった」
「ならその言葉を受け取っとくよ」
アルカナは微笑み、そのまま意識を無くした

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