名無しの英雄

夜廻

1話

「こらー!アーク!またイタズラして!」
今日も元気な母さんの怒号が飛ぶ。もちろん逃げる
「あははっ!」
俺、アークは今年で12歳になる。母親の黒髪と父親の赤目を受け継いで俺はこの国でも珍しい髪色と目を持っている。俺の数少ない自慢だ。それはそうとイタズラをするのは年頃だししょうがないと思うんだよなーだって楽しいもん
「またイタズラしたの?」
「ん?あぁランか」
話しかけてきたのは幼馴染のランだった
ランは金髪ロングで青い目を持った本が大好きな静かな少女だ。お世辞抜きで可愛いと思う。あぁそう言えばこの前もフラれてるヤツがいたな…
なんでも好きな人がいるって言って断ってるらしい…俺は関係ないけどなー
「アークって本当にバレないように行動するの得意だよね」
「イタズラにしか使えないスキルだけどな!」
この世界にはスキルが存在して10歳の時に教会に行って教えて貰える。大体の人は2つ持ってる。まぁ例外的な人もいるんだけどね…覚えるスキルは人それぞれでユニークスキルなんてモノまであるらしい。しょうがないこればっかりは才能だちなみに俺にはない…
「そういうランだって世界でも貴重な回復魔法を使えるじゃんか」
そう魔法もあるのだ。魔法は1人につき基本的に2つ覚えられる。魔法は属性ごとに別れていて、火属性、水属性、木属性、光属性、闇属性、無属性の6つだ。その中でも別れていて例えば火属性なら赤炎と蒼炎と黄炎とに分かれているのだ。この中だったら赤炎、黄炎、蒼炎の順に強くなっていく。才能ある人はいきなり蒼炎が出せるらしいし、才能ない人は生涯赤炎しか出せないらしい。ちなみに回復魔法は光属性だ。
「回復魔法なんて魔力消費大きいし、パーティー組んでも便利屋みたいな立ち位置だから…」
魔法は属性や種類によって魔法消費量が違う。俺のいる町には無いが、大きい町に行くと冒険者ギルドがあってパーティーを組み、魔物を狩って稼いでいる人が沢山いるらしい。
「俺のステータスなんて平凡だし、イタズラしろって言ってるようなスキルと魔法だぞ?それに比べたらマシだろ」
ステータスはステータスオープンと言えば目の前に表示される。ちなみに俺のステータスはこんな感じだ

名前   アーク
HP     1000
MP    800
STR  100
AGI    100
VIT    80

スキル ・気配遮断
            ・武器作成

魔法     闇属性(闇)
            無属性(部分強化)

こんな感じだ。他の12歳と比べると敏捷(AGI)が高いぐらいしか特徴がない…
闇属性魔法は慣れてくると影の中を移動出来たりする便利な魔法だ
武器作成はまだナイフくらいしか作成できないいつの日か剣を作成できる日がくるのかな…
「改めて見てもイタズラしかすることができないステータスだなぁー…」
いかん、自分で言ってて悲しくなってきた…
「そんなことないんじゃない?使いようによってはかなり使えるんじゃないかな?」
「それってどういう…
「うわぁぁ!」
「なんだ!?」
悲鳴は町の入口から聞こえてくる
「盗賊だぁぁぁ!!」
そう誰かが言った瞬間に他の人にパニックが伝染していく。あっという間に町中がパニックになってしまった
「アーク!ラン!来なさい!」
母さんが俺とランの手を引っ張って自宅の地下に押し込んだ
「ここに隠れていなさい!」
俺は頷くことしかできなかった
そして母さんは自宅のドアを閉めてどこか行ってしまった
外からは悲鳴や、金属音が聞こえてくる
俺は震える体を必死に止めようとした、だがなかなか震えが止まらない
何分たっただろうか、それすらもわからないほど頭が真っ白になっていた
悲鳴が聞こえなくなってからしばらくしてランが
「ちょっと様子を見てくるね」
と言い地下から出ていった。俺は呆然とランが出ていくのを見ることしか出来なかった


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