異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?
40話 仲間 II
「ふぅ〜 これでこの階層の鉱石は、大体掘り尽くしたな!」
「ナー!」
「まさか、本当に穴ぼこだらけにするとは....」
 ダンジョンの93層の降り階段付近で、取れた鉱石を前に、ホクホク顔の祐とそれを真似するシュナがガッツポーズしている。
「この階層、魔物1匹居ませんでしたが、どういう事なんでしょうか」
「「........あ〜」」
 2人の反応を見て、全てを察したミスラ。
「....祐、貴方はシュナの教育上、とても悪い。と判決が下されました。抹殺します」
 祐から見るミスラの背中には、くっきりと閻魔みたいなのが、出現していた。
「ミ、ミスラさん....? 後ろに閻魔みたいなのが出てるんですが........? 貴方、転生の神様だよね? なんで地獄の大王が....? 」
「ははは 何を言ってるんですか。あ、もしかして誤魔化してるんですか? 」
 初めは顔だけだった閻魔様が、どんどん具現化が進み、肩まではもう完全に出てきている。
「誤魔化してないんですって! まじでミスラさんの後ろに閻魔が!! ちょ....シュナさぁぁん!助けてぇ!」
 唯一の助け舟に縋ろうとするも、その船は今、鉱石を見て目を輝かせている。声さえ届いていない。
「シュナは見てないようですね。これなら多少見せては行けない場面になっても大丈夫でしょう」
「待ってミスラ!話せば分か──」
 「問答無用!」
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
***
「さぁ、そろそろ出発しますよ。シュナ」
「分かっタ でも、ナンデ ユウ 丸焦げ?」
 近くにはこんがり焼けた祐が倒れていた。
「きっと変なものでも食べたんですよ」
「そんな危ないモノ あるのか.... コワイ」
 シュナは哀れんだ目で祐を見る。
「ほら、祐も早く行きますよ」
「....はい」
 妙に素直になった祐は、立ち上がる。
 ミスラのお仕置きがあったとはいえ、この階層では魔物が出てこなかったから、ある程度の休息にはなったようだ。
「っと....ちょっと待ってくれ、そろそろステータスカードの確認をしたい」
 90層のボスを倒してからも見てなかったからな。新しいスキルが、発現しているかもしれない。
「ステー..タス?」
 シュナには、ステータスカードがなんのことか、理解できないようだ。
「ステータスカードというのは、自分の力量を、数値で知ることの出来るアイテムですよ」
 ミスラが説明を加えると、理解出来たシュナは羨ましそうにカードを見る。
「シュナも、地上に上がったら作るか? 」
「作ル!」
 今までで1番嬉しそうだ。人間の姿になったとしても、やっぱ『強さ』にはこだわりがあるのだろう。
「さて、じゃあ早速」
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名前: 佐野  祐
種族:人間
Lv:  56
体力: 153880
攻撃力:189050
防御力:190566
魔力:360560
知力:230540
運:386990
スキル:
言語理解、進化、魔法適正、幻刀、潜伏、鑑定、マッピング、蓄積、付与、気配感知、剛力
称号:
転生者
転移者
世界に呪われし者
######
######
---------------------------------------
 
桁がひとつ増えた。
「ユウ..強く なっタ?」
「あぁ、うん、強くはなったよ」
 ステータスカードをシュナに見せるが、数字が読めないのか、まったく理解出来てなさそうだ。
「うわ、また変な上がり方してますね」
「うわ、とか言わないで? 」
 強くなることに越したことない。と言い訳してきたが、少しだけ不安なのだ。どんどん人外になっていく自分に。
 この世界の人ならそんなこと思わないんだろうけど、俺は元々、特別な力なんてない一般人のまま生き、そしていつか死ぬはずの人生だったのだ。いきなりこんな力を手に入れれば戸惑うし、少し怖くなる。
 そんな俺の心配を見越してか、ミスラが口を開く。
「まぁ、大丈夫ですよ。貴方の夢が変わらない限りは、その力は絶対に祐にとっては良いもののはずです。勿論、私やシュナにとっても」
「....あ、あぁ」
 確かに、そうなのかもしれない。けど、もし俺が暴走したら....
「....ユウは 強い」
「シュナ..だけど俺は──」
「力 だけじゃナイ」
「え?」
 シュナの言ってることが分からず、聞き返してしまう。
「ユウは 心も 強イ。 ユウと戦っタ から 分かル」
 てっきり、戦闘面で強いと言っているのかと思っていたが、違ったようだ。
「....まいったな..」
 シュナは見た目も手伝ってか、まだ子供だと思ってたが、心はとっくに大人だ。
「まいっタ? シュナ 勝っタ? 」
「ははっ  ..あぁ、負けた負けた。シュナには敵わないな」
「....ダメ........嬉しいけド  ..ユウとは 戦って 勝ちたイ」
 ふとした時に帰ってくるな....シュナの武道精神..
「昔、神王が言ってました。力を正しく使える者は、自分の力を常に怖いと思っているらしいですよ? 」
「言ったのが神王でなかったなら、泣いてたな」
 今後の人生、神王がどんな名言を残したって響かない自信がある。不思議だ。
「失礼ですよ?」
「それ君が言っちゃう?」
 神王の事を話す時だけ、めちゃくちゃゴミを見るような目だった君が?
「良いんですよ。私は神ですから」
「いいのかなぁ....」
 だって王だよ? 長だよ?
「カミ?」
「ん? あぁ、シュナにはまだ言ってなかったな。実はな、ミスラは転生の神さま──」
 最後まで言おうとした俺の口は、シュナの顔の変化により、止まることになった。
 シュナの顔は、凄く、いや、もうこれ以上なく、可哀想な人を見る目だったのだ。
 ヤバい、これあれだ。俺の威厳がなくなるやつだ。 確かに、いきなりこんなこと言っても、信じれるわけがない....どうする....!?  
「....──って言ってる人だから、あまり気にしなくていいぞ」
「ん?....祐?なんかニュアンスがおかしくありませんでした?」
 ....すまん、ミスラ 許せ。 俺にこの目は耐えられない。
 案の定、シュナによる可哀想な人を見る目。いや、それが進化した、痛い人を見る目はミスラに移った。
「ミスラ....悩み  あル?」
「え? え? ちょ、どういう事ですか? なんでシュナは私を痛い人みたいな目で見てるんですか?」
 あれ、珍しい。直ぐに察して俺に殺気を飛ばしてくるかと思ったが、まさか自分が神である事を、信じると疑わなかったとか?
「....シュナ、こういうのはそっとしておいてあげるのが1番なんだ」
「そうなノ? 分かっタ ソっとする」
「ちょっと!? どういう事ですか!? 祐!」
「....さて、そろそろ進もう。こんな所で時間を食ってちゃ仕方ない」
 ミスラ、いい奴だったよ。
 こうして、3人は94層へ足を踏み入れるのだった。約1名、ずっと騒がしいのはいたが。
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コメント
月
面白い!続き早くみたいです。