家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

32話 嘘と想いの交差点



 (やばいやばいやばいまずいまずいやばいやばいまずいやばい不味いやばい!)

 楽しかった温泉旅行を終え、今は自室のベッドでうつ伏せになりながらもだえていた。

(死にたい死にたい死にたい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい死にたい)

 春鷹はやってしまった。温泉旅行の初日の夜中、姉とキスしてしまったのだ。姉弟の関係でありながら、してしまった。不意打ちとはいえ事実は変わらない。

「ファ、ファーストキスだった......」

 顔から火がでそうなぐらい恥ずかしい出来事だった。
 瑠美姉は確かに可愛いし、好かれていることを嫌だとは思わない。いつもホワホワしているけど、いざとなったら頼りになる自慢の姉だ。
 ......けど......。

「流石にキスはなぁ......アウトだろ......」

 帰りの車の中でも気まづかったし、目も合わせられないし、少し顔を見ただけで昨日の事を思い出して羞恥心のあまり気絶しそうになる。......でも......

「嫌......じゃなかったな......キス」




 ......
 ......
 ......
 ......
 ......って、何言ってんだ俺わァァァァァァァ!!その思考こそ完全にアウトだろうが!!!馬鹿じゃねぇーの!!バーカ!バーカ!血の繋がってる姉とキスして嫌じゃないとか馬鹿か俺は!!


ーーコンコンッ


 その時、ドアがノックされた。

「は、はーい」

 ベットから起きあがりドアへ向かう。

「誰だー..................って、る、瑠美姉......」
「ごめん春くん。話があって」

 そこに居たのは、数秒前まで春鷹が考えていた人。瑠美だった。

「う、うん。どうぞ入って」

 二人はスタスタと歩き、お互いベッドに腰を下ろす。

「そ、それで話って......?」
「そ、その......昨日の事で......」

 春鷹が考えていたように、瑠美もその事について色々と考えていたようだ。

「あー......えっと、そ、そうか!昨日の事か!いやぁ楽しかったね、温泉旅行!」

 春鷹はわざと知らないふりをした。そんな事なんて無駄だと分かっていた。瑠美からあの事について話を切り出す事も春鷹はなんとなく分かっていた。それを分かっていたうえで、別の話題を出した。

「うん、確かに温泉旅行は楽しかった。でも、そうじゃなくて......」

 瑠美の顔は深刻になる。彼女にとって、あの行動は勇気を出した結果だった。好きな人に本気で好きだと伝えた。姉弟としてじゃなく、男と女として......。

「る、瑠美姉......?」
「......どう思った?昨日の事......」
「え......?ど、どう思ったって......」

 正直に言えばいい、嘘なんかつく必要は無い。瑠美のあの行動を本気の告白だと受け取り、返事してあげる。それが礼儀だ。心の中ではそう思っている自分がいる。
 でも、春鷹の口から出たのは違う言葉だった......。

「......な、何でしたの?俺達は血の繋がった姉弟だろ?俺のお風呂勝手に覗いたり、抱きついてきたりとかは、心開いて許してきたよ」

 でもーーと春鷹は続けた。

「ーーこの年代で姉とキスするとか、黒歴史の他ないよ......」
「ぇ......、」

 どれだけ瑠美が勇気を振り絞ってあの行動を行ったか、どれだけ勇気を振り絞って春鷹の部屋へ来たのか。

 春鷹は......理解出来ていなかった。

 瑠美と春鷹の関係は......完全に通行止めになった。









 ーー作者から

 どうも、甘草秋です。今回は少しシリアスな展開にしてみました。
 いつもみたいに主人公が異性の家族たちにツッコミをいれる展開を期待していた皆さんには申し訳ありませんが、そろそろ恋愛も発展した方が良いかと思い、このような回になりました。
 まだまだ未熟者ですが、今後とも応援よろしくお願いします。


 そういえばコメント欄で、春鷹の血が繋がってないことはいつ教えられるのかというコメントがありました。
 それについてお答えすると、正直、自分でも分かりませんというのが本音です。血が繋がってないことは追追明かされると思います!乞うご期待を!

それではまたーー。

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コメント

  • ペンギン

    期待していますね!w

    2
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