家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

11話 嘘と忘れ物


ーキーンコーンカーンコーン♪


「で、近衛君〜。何で遅刻しちゃったのかな〜?」
「へっ?ち、遅刻ですか?何言ってるんですか。僕は遅刻なんてしてません」
「じゃあ何で君は今職員室に呼ばれているのか分かる?」
「ま、まったく分かりません」

 俺は頑なかたくに認めない。
 高校生1年目の1学期から遅刻なんて恥ずかしい!

「嘘は良くないな〜。朝のホームルームの時いなかったでしょ〜?」
「い、いましたよ。何言ってるですか先生。酷いですよ。回りくどく「あなたの影は薄いよ」とか言わないでくださいよ」
「そんなつもりはないんだけどな〜」

 良し。このまま適当な事を言っておけば、なんとかなるんじゃないか?

「どうしました?宇佐美先生」
「あら。伊藤さん」
「げっ!」

 俺の後ろから現れたのは、クラス委員長の伊藤さんだった。
 ま、まずいぞ。俺が朝のホームルームでいないことがばれてしまう!

「ねぇ伊藤さん。朝のホームルームの時、近衛君いなかったよねぇ?」
「......?近衛君ですか......?」

 伊藤さんが隣にいる俺の顔を見る。ガン見している。
 ちょ、ちょっと。そんなに見つめないでよ。俺を妊娠される気か!

「えっと............誰ですか?」
「ぐはっ!!」

 俺の事、知らないんかーい!
 まぁ、ある意味助かったよ!でも何故だろう。俺のHPが少し削られている!

「せ、先生。ほら、言った通りでしょ......?僕が最初からいたからこそ......伊藤さんも気にしなかったんですよ......」
「そ、そう......?」

 俺は九死に一生を得た。










「ふぅ〜。危ない危ない」

 今は教室に戻り、自分の席に座る。

「おい、春鷹。どうしたんだ?」

 前の席にいる亜紀斗が話しかけて来た。

「いや......なんとか遅刻を誤魔化したんだよ」
「まじか。お前すげぇな」
「まぁ、少しダメージをくらったけどな」
「なんで?」
「なぁ、亜紀斗。俺って影薄いのかなぁ?」

 まぁ、目立つつもりはないけど。

「うーん。普通じゃね?」
「そ、そうか......普通が一番だよな」

 そっかー。普通かー。わーい。

「なんかおかしいぞ。春鷹」

 もういいや。何で伊藤さんに悩まなきゃいけないんだ。
 別にいいか。伊藤さんに認識されなくても。

「何でもないよ」







ーお昼休み

 俺はいつものように、亜紀斗、柔風、大星の四人でお昼休みを満喫していた。

「やったー!飯だー」
「飯ぐらいで騒ぐなよ亜紀斗」

 お前の元気はどっから来てんの?と疑問に思いたいレベルだ。
 まぁ、それはそうと。

「俺も飯食おうー」

 俺は鞄の中に手を突っ込み、弁当を探す。
 その時、俺には嫌な予感がした。
 鞄の中を漁る。そして気づく。

「弁当が......ない!?」
「えっ!?春鷹、弁当忘れたのか?」

 う、嘘だろ......。どうして......?
 そうか、朝急いでいたから弁当入れるの忘れてたのか......。

「近衛君。私のお弁当、少しあげようか?」
「大星......」

 女神だ!ここに神がいる!
 俺が大星の優しさに酔いしれっているとー


ーガターンッ!!

突然教室のドアが開けられた。

「鷹君!お弁当を届けに来たよ」(ニコッ!)

「あ、あーちゃん......。何で?」

 教室にいきなり現れた美少女。
 俺の許嫁がいた。



 

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