異世界転生~神に気に入られた彼はミリタリーで異世界に日の丸を掲げる~

鈴木颯手

第九話 アインザックの領主様

Ryouta Sideアインザックには比較的早く着くことが出来た。アインザックはエルナのいう通り壁に囲まれているがところどころに罅が入っていたしあまり丈夫とはいえなさそうであった。それでも最東端の都市なので閉じられた門の近くによる。
「それ以上踏み込むな!」
すると上から声がすると同時に車両の前に矢が放たれた。それを見た俺は全車両を停止させる。そして俺の代わりに東谷が車両を降りて声を張り上げる。
「我々は日本帝国の使者である!アインザック領主にお目通り願いたい!」
壁の上の兵士に聞こえるように大きな声で言う。壁の上からは困惑の声が聞こえてくる。当たり前だろう。今まで日本帝国なんて国は聞いた事がないのだから。やがて壁の上から返答があった。
「貴様の言う日本帝国など聞いた事がない!」
「一年前に出来た新興国だ!」
壁の兵士に向かって東谷は声を上げる。それに負けじと兵士も大声を出す。
「そんな与太話信じられるわけがなかろう!」
「信じようが信じまいが構わん!だが!領主に合わせるというなら相応のものを用意してある!」
相応のものと聞いて再びざわめきが起きるが先ほどとは違い喜ぶ様な声だ。恐らくおこぼれにありつけないか考えているんだろう。そこへ東谷がとどめと言える発言をする。
「もし!領主に合わせてくれるのであればそなたらにも相応のものを与えると約束しよう!どうだ!?」
この言葉を聞いた兵士たちは少し悩んで返答する。
「暫し待て!領主様に確認を取ってくる!」
そう言って喋っていた兵士が壁の奥に引っ込んでいった。想定通りだ腐敗する国や領主に仕えるものたちは総じて一緒に腐敗している事が多い。その為よほどの事がない限り賄賂と言う物は役に立つのだ。これなら領主にも通用しそうだな。
暫くすると兵士が再び壁から身を乗り出した。
「領主様はお会いになるそうだ!ただし!中に入れるのは使者を含めて五人まで!それ以外の人はここで待機してもらう事になる!」
まあ、妥当なところだな。恐らく領主は部屋かもしくは外に大量の兵を置いておくだろう。別にあちらから攻撃してこない限り特に何をするつもりはないが。
俺は五人を厳選する。東谷には残った者の統率を任せる。俺も含めて五人が門の前に立つと門が少しだけ開き兵士が出てきた。
「早くはいれ」
兵士がそう言うので中に入るとすぐに門は閉まった。東谷達には何かあってもいいように車内で待機するように言ってある。そう言うわけで改めて都市を見ると酷い有様であった。外に出ているものはおらずゴーストタウンの様な静けさが街を支配していた。よくこんな状況になるまで重税できるものだ。国内にいたら即座に殺している所だ。
俺は領主の所に向かう前に兵士に硬貨を渡す。硬貨は白金貨、金貨、大銀貨、小銀貨、大銅貨、小銅貨に分けられており小銅貨で大体10円、大銅貨で100円、小銀貨で1000円、大銀貨で一万円、金貨で十万円、白金貨で百万ほどの値がついていた。俺が渡した硬貨の入った袋の中には大体大銀貨と小銀貨が合計五十程は入っている。これだけあれば十分だろう。
俺は兵士の案内に従って領主の館に向かう。館は街の中央に建てられており周りを兵士たちが囲んでいた。どうやら治安が悪いのは本当のようだな。
館はきれいに整えられておりところどころには高価なもんが飾ってあた。
「ここで少し待っていろ」
通されたのは小さな一室。そこにある椅子に俺は腰かけて待つ。少しすると扉が開き肥満体の男が入ってきた。裕福なものを食べているせいか動く度に腹の肉が動き見ていて気持ち悪かった。
「お待たせしましたな。私がこのアインザックの領主、パルトロ・アインザックですぅ」
何とも人を馬鹿にしている様な声だが我慢して俺は挨拶する。
「初めまして。日本帝国総統、鹿島良太です」
「ほう、総統ですか。それはどの程度の階級なのですかな?」
あ?こいつは何をぬかしていやがるんだ??馬鹿なのか?
「…総統は実質二番目の地位にいます」
それを聞くとアインザックは驚いたような、…人を馬鹿にしたような芝居がかった様子に拳銃を抜きたくなる。
「おお!そうでしたか。ぜんぜんそうは見えないのでつい勘違いをしてしまいました」
…こいつはもう殺しても問題ないな。むしろ殺した方が世のため人のためだ。実際こいつが治めているこの都市は酷い有様なのだから。
「…話を戻しましょう。私が求めるのはシードラ王国国王との面会です」
「ほほう、面会ですか」
アインザックは相変わらず人を馬鹿にしたような表情としぐさで相槌を打つ。
「そのためにアインザック殿には面会をするための取次役を頼みたいと思いまして」
「そうですか」
アインザックは嫌そうな顔を隠そうともしないで言う。明らかにめんどくさいという顔だ。
「残念ですが私では荷が重いようです。お引き取り願いましょうか」
アインザックはそう言って呼び鈴を鳴らすと部屋に屈強な兵士五名が入ってくる。
「この者たちをさっさと都市から追い出せ」
「了解しました」
兵士たちは俺の肩に手を置くが無理やり連れだそうとはしない。 恐らくこの兵士たちもあまりアインザックを快く思っていないのだろう。俺たちに向けてくる目が同情している。
「…分かりました。それではこれで失礼する」
俺は立ち上がり兵士の護衛監視の元都市の外へと連れ出された追い出された。ったく、とんだ無駄足だったな。まあ、アインザックに来たのはあくまでい《・》だったというだけだからな。他の方法なら確実にこちらの意図を知らせられるし何より日本帝国の国力をいい具合に勘違いしてくれるだろう。とにかく今は一旦帝都に戻るか。
「総統閣下、どうでしたか?」
「失敗だ。第二案に切り替える。急いで帝都に戻るぞ」
「はっ!」
出迎えた東矢に軽く伝えて指揮車に乗り込む。見ていろよアインザック。俺を案内しなかったことを後悔させてやるよ。
俺は今後の予定を組みつつ心の中でそう言うのであった。

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