ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

4章9話 帰還、そして初夜



 数日後――、
 ロイ御一行はようやく癒しの都ツァールトクヴェレから王都オラーケルシュタットに帰ってこられた。余談だが、ロイが一度別荘に帰った時、彼は本当に感動あまり少々子供っぽくはしゃいでしまったが……無論、別荘は別荘。王国の住民票に記載されている現住所は七星団学院の寄宿舎ということになっている。

(でも、みんなあそこで、あの別荘で、ずっとずっと、ボクの帰りを待っていてくれたんだよね――。今回の戦いの、いわゆる自分の帰る場所があの別荘で、そこに実際帰ってこられた時、改めてみんなに、おかえり、って言われて、本当に涙ぐんじゃうほどだったなぁ――。でも……)

 と、『でも』という接続詞を心の中で呟いた瞬間、少し、ロイは落ち込んだ表情になってしまう。
 なぜかというと、言わずもがな、果てしなく長い、そして肉体的にも精神的にもきつい旅路になってしまったが、よくよく当初の目的を思い出すと――、

(あはは……、全然、1mmたりとも慰安旅行じゃなかったなぁ……)

 そう、もともとイヴが温泉のチケットをクジ引きで当てて、そこで、ロイは「最近、死にかけすぎぃ!」ということで、身体を休めるために冬休みを利用してツァールトクヴェレを訪れていたのだ。

 しかしリザードマンとの戦いでは両腕を燃やされて――、
 ガクトとの戦いでは失明して、両足をダメにされて、雪が降る森に残されて――、
 最後の戦闘では、本当に死んで――、

 ロイが穏やかな性格でなければ、これのどこか慰安旅行だ!? ふざけるもの大概にしろ!? なんて暴れまわっても、なんら不思議ではない旅行である。

 しかもその上――、

「あと少しで学院かぁ……」

 遠い目をするロイ。背中には哀愁が漂っている気さえする。
 普段講義を休まない真面目な彼であったが――サボりたかった。追加で1週間……いや、1日だけでいいから冬休みを延長したかった。それはもう、切実に。

 グーテランド七星団学院の冬休みはかなり長い方で、ロイの前世の日本の学校の長期休暇なんて比べ物にならない。と、いうより、日本の休暇が、前世の他の国々から見ても、あるいは現世のグーテランドの教育機関と比べても、ありえないぐらい短いだけなのだが、それは置いといて、とにかく学院の冬休みはロイの体感的にかなり長いはずだったのだが――、

「冬休みって、『冬』の『休』暇って書いて冬休みだよねぇ……。おかしいなぁ、ボク、休んだ記憶がないなぁ……」

 なんてことを、ロイは今、『とある部屋』のベッドに腰かけて嘆いていた。その部屋はロイの寄宿舎の自室の5倍以上も広く、天井も3m以上、5m近くということでかなり高く、ベッドは3人が身体を『大』の字に広げても余裕があるほどで、しかも天蓋付きである。

 そして、このとある部屋の主は今――、

「ロイ様――、今、シャワー終わりましたわ……」

 と、部屋のドアが開いて――ネグリジェ姿のヴィクトリア、つまり、ロイと結婚してしまったグーテランドのお姫様が姿を現す。

 それを視界に入れて、思わず、ロイの心臓はドキッと跳ねる。赤面もした。
 白百合のように穢れを知らない白い柔肌は呼吸を忘れるほど綺麗で、トパーズをはめ込んだような瞳は潤んでいて、不安げに揺れている。これからすることを思うと、なにかを触っていないと落ち着かないのか、自分の幻想的なまでの美しい銀髪を、細くて長い指先で弄る所作は、とても初々しくいじらしい。

 一国のお姫様のこのような姿を見られる男性は、世界中でただ1人、ロイしかいない。

「綺麗だよ、ヴィキー」
「~~~~っ」

 ロイがヴィクトリアのことを褒めてあげると、彼女は顔を赤らめて、しかし恥ずかしがらずに彼の隣に座った。百合のようないい匂いがする。気を確かに持たないと、ドキドキしすぎておかしくなってしまいそうなほどの匂いだ。次いで、ヴィクトリアはロイの腕に抱きつき、自身のやわらかい豊満な女の子の象徴を、むにゅ、と、形が変わるぐらい押し付けてくるではないか。。

 同じさわり心地がこの世のモノとは思えないほどの胸であっても、シーリーンも、アリスも、ヴィクトリアも、絶妙に差異があった。大きくてやわらかいのがシーリーンの胸。感度が良好で形がいいのはアリスの胸。そしてヴィクトリアの胸はというと、まだ腕に押し付けられているだけなので、そこから判断するしかないが、シーリーンとアリスよりも、ハリがあって瑞々しい気がする。

「ロイ様」
「? なに?」

「シーリーン様とアリス様は、その、なにか仰っていましたか?」
「シィは帰ってきたらシィの番だからね! って約束してきて、アリスは愛情を注ぐなら3人平等に、つまり全員に同じぐらいの愛情を注ぐこと! って注意してきたよ」

「そ、そうでしたか……」

 どうして今、『このような状況』になったのかというと――まず、すでにロイはヴィクトリアと結婚して王族の一員ということになっていたのは前述のとおり。でないと【聖約:生命再望】をキャストできなかったのだから当たり前だが……。それで、結婚から数日経っているが、本日王都に戻ってきて、落ち着くことができて、いわゆる初夜という時間を2人は過ごすことになったのである。

 アルバート曰く、なにをするのも勝手だが、なにをするにしても、まず、2人でゆっくりと語り合う場、落ち着ける時間を設けなさい、とのこと。これにいやらしい意味は100%ないとは言えないが、しかしほとんどなく、流石に、ロイの最近の出来事は千変万化という言葉が可愛く思えるほど波乱に満ちていたので、心の整理をしたまえ、という意味で、配慮してくれたに違いない。

 で、シーリーンとアリスの反応はロイが説明したとおりで、無論、アルバートが配慮にどのようなニュアンスを込めたとしても、結婚をすませた男女が、初めての2人きりの夜にすることといえば、どう考えても1つしかない。

「ヴィキー」
「は、はいっ!」

「目、瞑って?」
「――――」

 ロイに言われたとおりにヴィクトリアは目を瞑る。女の子らしい夢見がちな長いまつげが不安に揺れて、まるでロイのことを扇情しているようである。華奢な両肩はわずかに震えていて、しかし唇を自分から突き出してきているあたり、恐らく、不安と期待が今、ヴィクトリアの中で入り混じっているのであろう。

 そして――、
 ――ロイはヴィクトリアのあごを、クイッ、と上に向かせて、

「――――」
「んんっ――、は、ぁ、んっ――――」

 ついに、ヴィクトリアはロイにファーストキスを捧げた。
 やわらかい、やわらかい、同じ人間という種族でも、女の子というだけで想像を絶するぐらい唇がやわらかい。瑞々しくて、小さくて、可愛らしくて、愛くるしくて、そして、やはりどうにもこうにもやわらかい。

 ロイはヴィクトリアのことが好きで好きで、もう一生、息が吸えなくても唇を離したくないとさえ思ってしまう。

 一方でしかし――ファーストキスで、ヴィクトリアの女の子としてのスイッチが入ってしまったのだろう。初めて思春期というモノを、言葉ではなく、感覚として知ったのだろう。

 どうにもこうにも我慢できず、自分を抑えることができず、なんとヴィクトリアはファーストキスなのにも関わらず、キスしながらも、ロイの手を自分の胸に誘導した。

 ロイに胸を揉まれて、感じて、いじらしく身体を揺らすヴィクトリア。
 しかしそれだけで彼女の中に溜まるなにかを彼女は発散できず、なんと今度は、またもや自分からロイのことをベッドに押し倒した。結果、ヴィクトリアはロイに馬乗りになる形に。

 と、そこでロイは薄々と察してしまう。
 シーリーンとの愛し合いの特徴が〈永遠のエーヴィヒカイト・処女ユングフラオ〉による精力強化で、アリスとの愛し合いの特徴が。【夢のような愛の繋がりイデアール・リーベゼクス】による感度100倍なら、きっと、ヴィクトリアとの愛し合いの特徴は、ヴィクトリア本人の淫乱さなのだろう。

 十中八九、スイッチが入ったヴィクトリアはシーリーンよりも、アリスよりもエッチなのである。

「~~~~っ、ろ、ロイ様――」

「なに、ヴィキー?」

「――その、い、淫乱な処女は、お嫌いですか?」


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