ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
2章4話 説明、そして戦慄(2)
「だからこそ、今回の迎撃において、王国側は私も含めて特務十二星座部隊に所属する【金牛】、【双子】、【巨蟹】、【獅子】、【処女】、【天秤】、【天蠍】、【人馬】、【磨羯】、【宝瓶】、最後に【双魚】、総じて11人の王国最強を導入することを決定いたしましたわ」
「特務十二星座部隊のうち、11人が最前線に……ッ」
これはどのように捉えるべきだろう。
無論、特務十二星座部隊の11人が最前線に出てくれるのならば、ロイを始めとする王国側は喜ばしい限り。彼らはみな、一騎当千の実力を持っており、それはロイだってよく知っている。アリシアと戦った時も、フィルと戦った時も、ロイの剣は1回も、1mmも、2人には届かなかった。しかも、どちらの時も2人は全力の半分も出していない。
で、だ。
今回の激突では、特務十二星座部隊の11人が出るとのことだが、逆を言えば、彼らが出撃しなければならないほど、魔王軍は深刻にして激烈な戦いを仕掛けてくるのではないだろうか。
「――あれ、な……っ、っ、なら、最後の1人は……?」
ロイは思考の奥から戻ってきて、今の話を聞いたならば普通に浮かんでくる謎をアリシアに訊く。
すると、アリシアは口元を優雅に緩める。
「最後の1人、特務十二星座部隊、星の序列第1位、国王陛下より【白羊】の称号を授かった王国最強のロイヤルガード、エドワード・ノーブ・ル・ニューエイジは、たった1人で、王都で国王陛下と姫様をお守りしますわ」
「なっ――、たった1人で!?」
「その結果、本来、国王陛下と姫様をお守りする役目の人員を戦場に回せますし、元来、ロイヤルガードとはそういうモノですもの」
と、アリシアは上品に微笑み、今まで口に付けていなかった紅茶に口を付ける。
絶句するロイ。まず大前提として、星の序列第1位ということは、エドワードの方がアリシアよりも強いということである。それだけでも想像の埒外だというのに、いくらロイヤルガードとはいえ、国王をたった1人で守るなんて、1万人も人がいたとしても、誰も信じてくれないだろう。だというのに、それには国王の許可が必要なはずだから、国王が認めているということは、それだけの実力を、正当に国王から認められるぐらい、否、信頼されるぐらい、その身1つに備えているということなのか。
その重圧は凄まじいはずだ。
1人でその任務に挑むということは、万一、国王が討たれたら、その責任は全て自分に圧しかかるということなのだから。
「ということは、一先ず戦闘が始まる前の比較的落ち着いた状況で、ボクの任務はエドワード様がくるまでの場繋ぎですか? ヴィキーを相手に」
「厳密には、違いますわ」
と、アリシアが首を横に振る。
「エドワードさんが『守る』のは姫様のその命、加えてその身体。対して、ロイさんが『支える』のは、姫様の御心です」
「ちょっと、アリシア! そう言われると恥ずかしいですわ!」
顔を耳まで真っ赤に染めるヴィクトリア。
だが、特に気にした様子もなく、アリシアは続ける。
「ふふ、国王陛下のお心遣いですわね。ロイさんには申し訳ないかもしれませんが、戦争が始める前に、ご自分の娘に友達との時間を作ってあげたかったのでしょう」
確かに、アリシアの言っていることは理解できる。
あの中で七星団の団員として戦えるのはロイだけだ。矛盾した言葉だが、半強制的な志願兵に少し近い名目でこの要塞にヴィクトリアの友達を連れてくるのならば、シーリーンやアリスはいささか難しい。
「さて、それではロイさん、次の質問はありますか?」
アリシアはロイを促す。
一応、かなり長くなったし重い話ではあったが、ロイの『なぜ国王と姫がツァールトクヴェレにいるか?』『この王国になにが起きようとしているのか?』という疑問には答えられたはずだ。
ゆえに、アリシアは話を進めようとする。
「……ボク自身のことなので、一応、尋ねておきたいのですが」
「はい、なんなりと」
「ヴィキーを支えている時と、支え終えたあと、ボクは七星団に仮入団している立場だそうですが、所属はどうなるのですか?」
「先刻、ロイさんは馬車に乗ってここまできたはずですが、その時、ガクトさん、という第37騎士小隊の隊長の男性と一緒ではありませんでしたか?」
「はい、覚えています」
「そもそも第37騎士小隊の今回の任務もロイさんと同じように、距離感は違いますが姫様の近辺警護ですので、そこに配属という形なる、と、私は人事の方から説明されましたわ」
先ほどよりもかなり落ち着いて、そして柔和な感じでアリシアはロイに説く。
で、アリシアの説明を受けたロイは、少し、胸をなでおろす感じで息を吐く。
いくら聖剣使いといえども、所詮、ロイという少年は学生にすぎない。すでにロイは魔物を倒している、という反論も出そうだが、あれはほぼ奇跡に近い。前世の心理学、この世界にはまだ広がっていない知識を駆使して倒しただけであり、純粋な戦闘の、強さは同等でも、上手さでは明らかに劣っていた。
初っ端から前線に参戦する、ということではなく、ゆえに、ロイは息を吐いたのだ。
……一国の姫の護衛という以上、重要度はこちらの方が上なのだが。
「そうなんですね」
「もちろん、一国の姫を警護するのですから、第37騎士小隊だけというわけではありませんが、少なくとも、ロイさんが所属するのはそこです」
言外にアリシアが伝えたかったことは2つ。
1つは、自分たちの第37騎士小隊以外にもヴィクトリアの護衛はいるのだから、他の騎士小隊とコミュニケーションが必要になるかもしれない、ということ。もう1つは、今のうちにどこに所属するのかを教えるから、同じ小隊のメンバーと仲良くしておいた方がいい、ということ。
ロイはそこまで頭が悪いというわけではなく。直情径行にあるというだけであり、察しもよく、頭は平均よりも回る方なので、アリシアの伝えたいことを早々に汲《く》む。
「わかりました」
「そして――」
「そして?」
どうやらこれで、アリシアが言いたいことは最後になりそうだ、と、ロイは彼女の雰囲気から察した。事実、アリシアにとってはこれが最後の伝えたいことであったし、彼女はなんとなく、自分でもわからないが、少しタメを作ってから、ロイに伝える。伝えようとする。
「――先ほどお話した約6週間後の迎撃において、ロイさんは、小隊ごと私の部下になってもらいます」
「それってまさか――っ」
「うふふ――はい、特務十二星座部隊の【金牛】の直属の騎士、ということですわ」
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