ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
3章5話 昼過ぎ、そしてランチ(1)
ヴィキーの言う次のお店とは、近場のレストランのことだった。
きてみればすぐに気付くが、もうすぐでランチタイムという時間帯で、ロイも、他のみんなも、実のところ少々おなかが空き始めている。ヴィキーのレストランに行きたいですわ! という提案も、こうなってくると中々に妥当なモノだった。
それで、レストランの店先で――、
「へぇ、これが噂に聞くレストランですの」
「ほぇ? ヴィキーさん、こういうところ初めてなの?」
「むっ、なにか問題ありますの?」
「まぁ、シィも気持ちもわかるわ。ヴィキーさんって私と同じで、貴族っぽい感じがするもの」
というシーリーン、アリス、ヴィキーのやり取りから察するに、どうやらヴィキーは、意外にもレストランにくるのが初めてだったらしい。
それならば、と、ヴィキーに初めてのレストランを楽しんでもらうべく、ロイは早々にランチはここにしようと決める。
「いらっしゃいませ、何名様でございますか?」
「9名です」
「かしこまりました、こちらへどうぞ」
ウェイトレスに案内されたのは店内の一番奥の席だった。9名というのは普通に考えて大人数なので、奥の方になるのも仕方がない。
次いで、ウェイトレスが6人掛けのテーブルを2脚くっ付けて、合計で12人座れるエリアが完成。そこに、ロイたちは座ろうとした、が――、
「ああっ! ヴィキーさんがロイくんの隣に座っているの!」
「ヴィキーさん! ロイの隣はシィと私って決まっているのよ!?」
「あら? そうでしたの? 別に席を変わるぐらいいいですわ――」
よ、とヴィキーが言おうとしたところで、今度は別の女の子が反応する。
言わずもがな、このようなタイミングで出てくるのはイヴとリタだ。
「違うよ! お兄ちゃんは恋人さんよりも妹を優先してくれるはずだよ! だからお兄ちゃんの隣はわたしだよ!」
「なら逆隣りはアタシだな! シィセンパイとアリスセンパイから、ロイセンパイを横取りしてやるぜ、にひっ」
「あ、あのねぇ? イヴちゃん、リタちゃん? こういう時、周りはさり気な~く、恋人同士を隣の席にするように察するものなの。OK?」
シーリーンは笑顔なのに、目が笑っていなかった。笑顔なのに、見た者を凍らせるぐらい冷たくて怖かった。
そして、アリスもそれに肯定する。
一方で、ロイはヴィキーにこう言われていた。
「ロイ様、モテモテですわね」
「正直、男の子としては嬉しいね」
「あら、意外ですわ。こういう時、あなたみたい男の人は、そんなことない、とか。少し騒がしいけどね、とか。それでもケンカするのは勘弁してくれ、とか。言いそうなものとばかり思っていましたわ」
「嬉しいものは嬉しいから、ボクはそんなヤレヤレ系みたいな態度は取らないよ?」
「意外と肉食系ですわね。厳密に言えば、ロールキャベツ系ですわ」
ロールキャベツが肉をキャベツという草で巻いている食べ物なのは説明するまでもない。
要するに、一見草食系だけど、中身は肉食系なのですわね、と、ヴィキーは表現したいらしい。
「肉食系とか草食系とか関係なく、ヴィキーは嬉しくない?」
「?」
「男性でも女性でも、友情でも恋愛感情でも、他人から好意を抱かれるのは、すごく、人として喜ばしいことだと思うけど?」
瞬間、ほんの一瞬だけ、ヴィキーは呆気に取られて言葉を出せなくなる。
しかし次の瞬間には、ロイに対して笑みを向けた。
「あなたみたいな人が増えれば、きっと、世界は平和になると思いますのに」
「ぅん? それってどういう意味?」
「さぁ、どういう意味だと思いますの?」
ロイに対してイジワルを言うヴィキー。流石に情報が少なすぎて、ロイにはその発言の意味は推測すらできなかった。
ロイは発言の意味を考えるのをやめると、なんとなく、先ほどから口論になっている4人の方に視線をやった。
どうしようか、と、迷ったが、ロイ自身がなにか行動を起こす前に、メイドであるものの、いや、メイドだからこそみんなのストッパー役になっているクリスティーナが4人に言った。
「お嬢様がた、僭越ながら、他のお客様の目もあることでございますので、手軽にジャンケンなどでお決めになられてはいかがでございますか?」
と、いうことで、唐突に始まったジャンケンタイム。
この際、ということで、4人の他にも、ヴィキー、マリア、ティナの3人も参加することに。ちなみに、ロイの席は最初から真ん中で、クリスティーナはメイドなので、一番下座の席でいいとのこと。
で、ジャンケンの結果、シーリーン、ヴィキー、ロイ、ティナ、マリア。対面に、アリス、イヴ、リタ、クリスティーナ、みんなの荷物、という席順になった
「ヴィ、ヴィキーさん……、さっきアリスに、別に席を変わるぐらいいい、って、言ったと思うの。でね? そのぉ……」
「お断りですわ」
「ほぇ!? シィ、まだなにも言っていないのに!? あと、さっきと言っていることが違うんだけど!?」
「先ほどのは譲り合いの精神ですが、仮に今あなたに譲ってしまえば、それは譲り合いの精神ではなく、ジャンケンとはいえ、自分が勝利したという事実を放棄するということですもの。譲る気は微塵もありませんことよ」
「がーん!」
涙目になるシーリーン。
流石にアリスは普段の自分のイメージが壊れるのが嫌だったのか、ジャンケンで100%決まってしまった今、この段階でヴィキーにシーリーンのようなことを提案しはしない。
が、それでもなんの罪のないロイに向かって、悔しそうな、恨みがましそうなジト目を向けるのだが。
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