ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
3章13話 決闘のあとで、疲れ果てた少年は――(2)
「――――」
しかしアリシアは、なにも言わずに姿を瞬間的に消してしまう。アリスは理解できなかったが、アリエルはすぐに把握する。概念をその身に宿し、自らが概念になる魔術、【神様の真似事】を使い、自分自身が『速さ』になったのだ。
まさか、あの神の領域に踏み入る魔術を完成させいていたとは――。
アリエルは実の娘に学者として負けたこと、そして他の全てのことを差し置いて、まず戦慄が一番に先立った。
そんなアリエルが改めてロイの方を向くと――、
「あれ? 身体がなんともない? えっ、え?」
「~~~~っ、ロイ!」
なんと、信じられないことにロイの身体が完全回復していた。
で、そんな彼のことを、アリスは強く、強く、存在を確かめるように強く抱きしめる。
レナードも、今回ばかりは邪魔に入ろうとしない。ここで割って入ったら、完璧に水を差すことになる。自分はアリスのことが好きだが、しかし、ダサい男になったつもりはないのだから、と、レナードは小さく、満足気に息を吐く。
感動的。
だからこそ、そしてそれだけで、今だけはロイにアリスを奪われてもよかった。
「ロイ君、そしてレナード君」
「アリエルさん」「侯爵」
ゆっくりと、改めてアリエルは2人に近付く。
その瞬間、3人のやり取りに集中すべく、周りにいた全員が無言になり、静まり返った。
シン、と、まるで水を打ったような静寂。
誰もが3人に注目し、ある者は息を呑み、ある者は固唾を飲んだ。
そして――、
アリエルは――、
「一切の文句なく、君たちの勝ちだ」
「それじゃあ――っ」
「アリスは!」
「ああ、学院に戻そう」
「~~~~っっ」
感極まって、アリスは両手で口を押えて涙を零す。
そして、ロイも、レナードも、片手をグーにして、互いにコツンと軽めにぶつけ合わせた。ロイは優しい微笑みで、レナードは元気よさそうな笑顔で。
一方で、アリエルは近くで状況を見守っていたカールにも一言。
「オネス・ト・エ・フォート公爵、申し訳ございません」
「ハァ、残念ではあるが、エルフ・ル・ドーラ侯爵が謝ることではない」
「しかし――」
「勘違いしているな」
「――? と、申しますと?」
「私は、エルフ・ル・ドーラ侯爵が2人に負けたから結婚を諦めるのではない。私自身がレナード君に賭けで負けたから、結婚を諦めるのだ」
「オネス・ト・エ・フォート公爵」 と、呆然と彼の名を呟くアリエル。
「私は世間ではロリコンと言われているが、決闘の内容を反故にするほど、貴族として落ちぶれた気は毛頭ない。勘違いしないでもらおうか」
「――はっ、ありがとうございます」
と、アリエルとカールのやり取りが終わった、その時だった。
どうやら、ようやくロイが立ち上がったらしい。
「ところで先輩。ボクはアリシアさんのおかげで回復しましたけど、先輩は?」
「アリシアは俺たちの事情を知っていて、だから次になにをするかも知っているだろ。俺もことも完璧に治してくれたよ。たぶん、ロイに【限定的な虚数時間】っつー、よくわかんねぇ魔術を使った時に、ついでに俺にも、な」
「――なら、問題なしですね」
「バカにすんな。問題があったって、俺はテメェと決着を付けるぞ」
ふいに、2人はギラついた双眸で互いに睨み合う。
だが別に嫌い合っている雰囲気はなく、むしろ、好戦的ではあるが、清々しく笑っていた。
「アリス、悪いんだけど、今からすぐに、王都に戻れるかな?」
「ロイ? えっ、でもウェディングドレスを――」
「ちょうどいいじゃねぇか。そのままのカッコでこいよ」
「先輩!? ドレスって高いんですよ!?」
「いいじゃないか、アリス」
「――お父様?」
「その格好のまま、2人についていきなさい」
「――――」
話は決まり、と、言いたげに、ロイとレナードは互いに言った。
「やっぱり、ラスボスを倒したあとは、ライバル同士の一騎討ちですよね」
「テメェにアリスは渡さねぇ。そしてルーンナイトに昇進すんのも、この俺だ」
「上等です。ボクだって、アリスも、ルーンナイトへの昇進も、先輩にやる気は微塵もありませんよ」
「ハッ、それじゃあ、往こうか」
そして2人は声を重ねて――、
「「――決戦の舞台に」」
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コメント
ノベルバユーザー359879
オネスもかっこいいやんけ
rui
先輩かっこいいけど、アリスの気持ち的ね……(。_。)
ペンギン
やったー!2人が勝ったー!おめでとう!