ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~
1章8話 挑発のあとで、決闘を――(2)
「なら、突っ込む!」
「な……っ!?」
この時初めて、アリエルの表情に焦燥が浮かんだ。
そして1秒後にはロイは【魔術大砲】に撃たれて、【魔術大砲】は爆発する。
爆発といっても炎が発生するわけではない。魔力という大気を漂う素粒子が、発動時に高密度に圧縮されて、形をなし、可視化され、今回で例えるならば、ロイが自分から突っ込んだ瞬間に、まるで風船が破裂するように圧縮状態から解放される。
だが、だからといってダメージが軽いわけではない。
事実、ロイは頭から血を流し、腹部にも衝撃があったのか、制服を焦がしていた。
「君は、怖れを知らないのか?」
「この決闘に負ける方がよっぽど恐ろしいですから」
ロイの英断のおかげで、【魔術大砲】の爆発はアリエルにまで届いた。
アリエルも、わずかにダメージを受けている。
しかしロイの本命は、それではない。
「魔術は術式を組み合わせないと発動しない。術式は、魔力を操作しないと組み上げることができない。そして今、この場の魔力は【魔術大砲】のせいで狂いまくっている」
「面白い戦い方だ。私にダメージを負わせることではなく、近場の大気中の魔力を乱すのが本命か」
フッ、と、アリエルは笑った。
やはりアリエルの目に狂いはなかった。この少年は本物だ。
しかし残念だ。若い、青い、甘い、所詮はまだまだ学生。
何気なく、まるでお日様の下で散歩するみたいに気軽に、アリエルは左手の親指と人差し指を鳴らす。
「バカな!? ヒーリングが発動した!?」
「魔術は発動するにしても、少なくとも詠唱破棄は封じたつもりだったか?」
通常の詠唱を使っての魔術発動と、詠唱破棄、この2つには互いに長所も短所も存在する。特筆すべきは詠唱破棄の長所と短所。長所は詠唱を必要としないため、敵は魔術が発動してからでないと、どのような魔術が発動したかを知ることができない。翻って短所は、逆に詠唱があった場合よりも時間がかかるということ。
(詠唱破棄は脳内で術式を組み上げるだけであって、ノータイムで魔術を発動できるわけじゃない! むしろ、雑念があり、集中力に欠けると、通常詠唱よりも時間がかかる場合があるのに!?)
動揺しながらも、考え事をしながらも、ロイはアリエルに斬りかかる。右から左に、左下から右上に、上から左を経由して右下に。風を斬って鳴らすような目にも止まらぬ速攻斬撃を連続させる。
同時に、ロイは考え事も並行で処理していた。
間違いなく、ヒーリングが発動した時、アリエルは詠唱を使っていなかった。だが、詠唱破棄を成立させるほど、時間も経っていない。詠唱ありとなしで時間なんて1秒未満しか変わらないが、それでも、多少なりとも魔術を使える者にはわかってしまう。
「いい太刀筋だ。鋭く、速く、的確で、フェイントも混ぜて決して一直線というわけではないのに、まるで無駄がない」
「…………ッッ」
ロイはエクスカリバーのスキルを発動させる。
聖剣の切っ先の次元が屈折を起こして、4つの斬撃が同時にアリエルの首を狙った。
斬撃の四重奏、レナードとの決闘でも使ったエクスカリバーの技の1つ。
アリエルに迫る聖剣の刃。回避できるタイミングなんて存在しない。そもそも、ロイが回避できるタイミングを与えないタイミングで放ったのだ。
さあ、凌げるものなら凌いでみろ。
アリエルが相手するのは正真正銘、ロイが今の実力で振るえる聖剣の極致の1つ。
「チッ」
と、舌打ちをするアリエル。
同時に、アリエルの首を一周するように、魔術防壁が展開された。全身を守るように展開されたのではない。攻撃が当たるピンポイントを的確に守ったのだ。
しかも、ロイは絶句してしまう。驚愕を隠せない。
(また詠唱破棄!?) と、ロイは戦慄してしまうではないか。
完全の悪手だ。戦況を読み間違えた。
ロイは肌の表面に意識を集中させて、大気中の魔力を感じる。
視覚といえば目。聴覚といえば耳。嗅覚といえば鼻。味覚といえば口。
だが、皮膚感覚というのは面白い。皮膚だけで、人間は、そしてエルフは、触覚、痛覚、温度覚の3つを感じるのだ。よく誤解されるが、肌が感じているのは触覚だけではない。それは所詮、皮膚感覚の1つだ。
そしてこの世界の住人は、皮膚感覚の1つに魔力覚というモノも進化の過程で備え加えていた。
ゆえに、ロイが魔力を感知するのに皮膚を鋭敏化させるのは当然なのだが、ロイは魔力を感じ取った瞬間、さらに焦燥を露わにする。
(やっぱり、さっきの爆発で魔力は乱れたままだ! 別に術式を組み上げられる状態にまで改善したわけじゃないし、事実、ボクは今、魔術を使えない! なのに――!?)
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コメント
ノベルバユーザー359879
がんばって、がんばってやん