ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~

佐倉唄

4章2話 医務室で、シーリーンとアリスが――(2)


「私は学院に登校すること、イジメに屈するのは心が弱いということ。そういうのを当たり前って考えていたし、今も考えている。その価値観を、正直なかなか直せない。けど、でも、価値観を勝手に押し付けて、強引に登校するように引っ張るような真似をしたのは……、その……、あなたのことを考えていても、あなたの都合は考えていない、なんていうか……エゴっていうか、1人で突っ走った暴走だったわ」
「風紀さん……」

「だからあなたが付いてこないのも、当たり前よね。ゴメンなさい」
「そ、そんなことないよ? 頭を上げて?」

 アリスは言われたとおり頭を上げる。
 一方でシーリーンも、膝の上に置いていた小説をテーブルの上に置いて、アリスの正面に立つ。

「えっと、風紀さん……じゃなくて、アリスちゃん」

「ちゃん付けで呼ばれるの、こそばゆいわね」
「シィ、まだまだクラスに顔を出せるぐらいの登校なんてできないけど、こうして、少しずつなら登校しようと思う」

「――うん」
「あと、アリスちゃんが強引で、なんていうか、期待に応えることができなかっただけで、登校を誘ってくるのは普通に嬉しかったよ?」

「――うん」
「だからこっちこそ、勝手に、シィを無理矢理に引っ張ろうとする敵、みたいな穿《うが》った見方で今まで避けていて、ゴメンね?」

 言うと、シィは照れくさそうにはにかんだ。
 そしてアリスも満足そうに微笑むし、成り行きを見守っていたロイも、温かい気持ちになる。
 いったん区切りのようなモノを付けると、3人はテーブルの近くにあった椅子に座った。

「そういえば、医務室の先生は?」

 シーリーンに対して、ロイが訊き、アリスが視線で返事を促す。

「学院の植物園で育てている薬草を取りに行ったよ? ロイくんたちよりも少し前にケガした生徒がきて、その子に使っちゃったら在庫がきれたんだって」
「まったく、もう、伝統あるこの学院の先生なんだから、在庫の管理ぐらいきちんとしてほしいわ」

 誰に対しても真面目なアリスが、腕を組んでプンプンする。

「で、シィ、これが今日の講義のノート」
「わぁ、ありがとうっ」

 すごく嬉しそうにシーリーンはロイからノートを受け取る。そして小柄な体型に似つかないほどたわわに豊満な胸の膨らみの前で、大切そうにノートをぎゅ、っとした。

「ロイくんも、アリスちゃんも、えっと……優しいね、本当に嬉しい」
「そんなことないよ」

「ええ、困っている人がいたら助けるのは当然でしょ?」
「それもそうだけど、2人はシィのことをイジメない、蔑ろにしないんだなぁ、って」

 顔に陰りを作って、シーリーンは寂しそうに、意図的に自虐染みた微笑みを作った。

 そんなシーリーンの手を、ロイは自分の手で安心させるように優しく握る。

「ほえ!? ロイくん!?」
「ボクはシィのことを絶対に蔑ろにしないよ。そもそも、イジメってカッコ悪いじゃないか。ダサいじゃないか」

「うぅ~~」
「ボク、そしてアリスも、キミの味方で、友達だから、またイジメられたら助けを求めてほしい。シィがどうとかじゃなくて、ボクが助けを求めてほしいんだ」

「ろ、ロイ、くん……手、痛い……」
「あっ、ご、ゴメン……」

 どうやらロイは、昔のことを思い出してしまって、熱が入ってしまったようだ。最初は優しく握っていたのに、いつの間にか強くシーリーンの手を握っていたらしい。

 しかしシーリーンも、間違いなくロイとは友達で、恋愛的な感情を抱いているわけではないが、男の子に触れられて、頬を乙女色に染める。
 顔が熱くなって、胸の奥が、トクン……トクン……と高鳴った。

「ううん? 痛かったけど、イヤじゃなかったから……」
「ラブコメはよそでやってくれないかしら?」

 ジト目でアリスが2人のことを睨む。
 と、このタイミングで医務室の先生が戻ってきた。
 3人は医務室を出て、特に学舎に居残ってすることもなかったので、帰宅しようとする。

 ちなみにロイとシーリーンが寄宿舎に住んでいるのに対して、アリスは自分の家族の屋敷に住んでいて、毎日そこから登校していた。
 そういうわけで、アリスだけ、帰り道の途中で別の方向に行くことになってしまう。

「それじゃあ、また明日」
「バイバイ、アリス」
「うん、また明日、アリスちゃん」

 最終的に、ロイとシーリーンは2人だけで帰宅することに。
 茜色に染まる西の空。紺青に染まる東の空。その中間は、まるで世界一美しいパステルパープルを基調にしたグラデーションとなっていた。まるで、アメジストのような空だ。

「そうだ、シィ」
「ん? なにかな?」

「2日後って、休日だよね?」
「うん、そうだよ?」

「よかったら、ボクと一緒に遊ばない?」
「えっ?」

「ん?」
「え? ええっ? ええええええええええええええええええええええええええ!?」


「ヘヴンリィ・ザン・ヘヴン ~異世界転生&成長チート&美少女ハーレムで世界最強の聖剣使いに成り上がる物語~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • 空挺隊員あきち

    ラブコメ展開ktkr

    0
  • アホの子は俺だ!

    ラブコメあるんやその世界にも

    6
  • 自称脳筋wwww

    オモロイな~~~~~~頑張って下さい応援してます❗

    5
コメントを書く