世界を呪った鬼は願う

白波ハクア

プロローグ

 これは私達と、とある女性の物語。
 決して語られることのない、忌々しくて、とても儚い彼女の物語。
 彼女は全てを憎んでいた。 時には世界すらも憎んでいた。
 それでも彼女は世界を救おうと戦った。


 もう一度言う。
 ――これは決して語られることのない、私達……神を信じていた者にとっては、忘れられることのない残酷な記憶。
 いつかは皆の記憶にも残らない、忌々しい過去。
 だから私は、私の記憶を書き写そうと思っている。


 …………。
 もし、この記憶を読んだ人がいるなら。
 もし、私達に共感してくれたなら。
 アナタに私の願いを託したい。
 どうかこの記憶を受け継いで、誰かに渡してほしい。
 私はこの記憶が多くの人に広まることを願っている。
 身勝手な願いだと自覚はしている。
 だから、先に謝っておくわ。
 ――ごめんなさい。


 …………さて、ダラダラとした文も終わり。
 書き出しはこうするとしよう。


 彼女はいつも気高く、美しく、そして……哀れだった。
 ――これは、真の英雄の物語。
 ――とある鬼族の、悲しき復讐者の物語。

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