【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

幕間 ウォルシャタ国王

リン達の結婚式は、建国祭で行われた。
建国祭で行われた理由は簡単だ。告知するのが面倒だった。この1点のみで、モルトやナナやガルドバを呆れさせた。約10ヶ月かけた準備は全て成功のうちに幕を下ろした。建国祭は、そのまま国王夫妻の結婚記念日にもなる。忘れなくて済む。そんな事をリンは考えていた。
また、ローザスを始め各国からの意見で、テルメン王家の建国祭で、国対抗の球技大会が行われる事にもなった。国ごとに予選を戦って来てもいいし、選抜チームを作ってもいいルール設定になった。国には、出場枠が2つ割り振られている。また、1枠は個人チームの進出枠として残されている。これは、個人チームが勝ち抜き戦を抜けて決勝に進む事になる。国や地域など関係なく、誰でも参加できる仕組みになっている。今年は、サッカーを行った。来年は野球を行う事になった。その次は、バレーを行う。そして、今年からそれにバスケが加わった。この4種目を順番にやっていく事になった。全部同時でも良かったのだけど、会場の準備や選手育成の観点から4年毎に行うのが妥当という判断がくだされた。
そして、今日。二回目の建国祭が終わって、皆でくつろいでいる所に凶報といえる情報が飛び込んできたここ暫くの動きから予測されていた事だが、現実問題になった。
ウォルシャタが、自分の手下を率いて、近隣諸国へ進軍を開始し、3つの国を併呑して、パーティアックに凱旋後に、パーティアック国の国王から禅譲させる事で、国王となり、新国家設立を宣言した。
この情報は、リンの所にも届いていたが、あえて何もしなかった。併呑された国もパーティアックと同じで人族至上主義を貫いている。リンの呼びかけにも剣で答えると言ってきた国家だ。もともと、パーティアックと友好関係にあった国だったが、ウォルシャタはそれを利用した。援軍だと言って中に入り込んで奇襲をおこなったのだ。
リンは、その報告をベッドの中で聞いた。ミルを抱いた次の日から、順番に又は複数でリンのベッドに入り込む事になっている。順番は、アデレードとイリメリが決めていると言っていた。ミルは、第一夫人の地位と引き換えに、そのあたりの権利から一切手を引いたのだと笑いながら話していた。イリメリに、「僕の意思は?」「ない」と即答された。全員に子供ができるまでは、順番だと言っていた。フェムは、初めての時に、イリメリと一緒にやってきた。アデレードもルナと一緒だと言っていた。そんな瑣末な事を行っている時に、自体が大きく動いたのだ。別にこの間リン達が何もしていなかったわけじゃない。各国の大使や国王に向けてお願いという取引をしていた。パーティアックの行った事を、非難してもらった。あと、情報がこれ以上出ないようにしてもらっている。情報統制はするつもりはない。ただ、北方連合国ノーザン・コンドミニアムのパーティアック国とだけにしてもらって、ウォルシャタやアゾレムの名前が出ないようにしている。

建国祭の前まで遡る。◆◇◆◇◆◇◆◇
立花を除く、山崎・細田・西沢が集まって話をしている。「どうなのだ。西沢?」「ダメだ。一切情報が掴めない。」「なんだそれ、でも大々的に宣伝しているのだろう?」「あぁそれは間違いない。だが、その出ている情報以上の事が解らない。」「あ?」
西沢は今までも調べて解った事のメモを山崎と細田に渡す。「なんだこれ?こんな事なら、奴らが出しているかわら版で解るレベルじゃないのか?」「あぁそうだ。それ以上の事が解らない。」「中にも潜入させたのだろ?」「あぁ去年の建国祭にも忍び込ませたし、冒険者登録させたり、商人登録させたり、したが、登録は出来ても、その後、連絡が途絶える。」「はぁ?なんだそれ?」「それにこんな物まで見つかった」
西沢は、リンが冴木に送った手紙を出してきた「これは?」「冴木の奴が使っていた部屋から出てきた。あと、奴の部屋からいろいろと出てきた。」
金貨や銀貨が入った袋や、大量の酒瓶が見つかった事を、西沢は話した。それから、西沢や山崎が拿捕した商人の馬車から荷物を抜き取っていたのも、冴木だった事も告げた。
「なんだ、冴木が裏切り者か?」「それは違うと思う。俺が、神崎でも同じ手を使う。更に言えば、加藤への手紙や情報も奴が流してきた物だと思っている。」「なんでだ?」「現状を見ろよ。」「あ?どういう事だ?」「はぁ今俺たちは、俺とおまえと細田と立花しか居なくなっている。正直に言ってしまえば、負けている状況なのだぞ」「だから、なんでそうなる?」「山崎。おまえ本当に気が付かないのか?それとも、気がつかないフリをしているのか?」「あぁ?西沢。何がいいたい。」「山崎も西沢もいい加減にしろよ。西沢がいいたいのは、最悪の場合”神崎”="リン=フリークス”だった場合。俺たちに勝ち目があるのかって事だよ」「勝ち目?」「あぁ白い部屋での事を覚えていないのか、3人死んでいく事になるのだぞ」「それこそ、細田。おまえ馬鹿か。白い部屋の中で、神崎が一位になっても、神崎を脅して、女を殺すように言えばいいだろう?」「はぁ・・・・山崎。おまえそれ本気で言っているのか?」「あぁ立花とも話をしたけど、それがいいだろうという事になったぞ」「・・・山崎。アドラがやった事を思い出せよ。奴は、立花を力づくで動けなくした上に、障壁を作って、身動きできない状態にしたのだぞ」「だからなんだ。」「馬鹿か・・・細田。」「あぁ山崎。考えてみろ、白い部屋で最後の時に、神崎を脅したらどうなるか・・・。今まで奴が言いなりになってきたのは、面倒だったからか?それとも・・・。」「あっ・・・静川か・・・。」「そうだな。それに、3人目の前から居なくなるのだぞ。神崎がそれをどう使うか解らないが・・・。脅した奴に使うのは目に見えていないか?」「それに、奴にしてきた事を考えてみろよ。」「・・・・立花は確実だな。」「あぁ次は誰だろうな。山崎?」「あ?俺か、俺は何もしてないぞ。それに、奴が俺や西沢や細田が噛んでいる事なんて知らないだろう?」「そうだな。だから、ここは、立花に矢面に立ってもらおうとおもうのだけどな。」
三人の会合は、朝まで続いた。結局決まったのは、立花に国王を名乗らせる事や、もし”神崎”=”リン=フリークス”だという事が決定した時には、立花を差し出して、自分たちは神埼の味方だったと明言する。これで大筋の事は決まった。
この会合の流れも全て、眷属に寄ってリンのもとに届けられている。その内容を録画した物も準備が出来た。
3人は、立花を王にする事が決まったとしても、パーティアックを乗っ取る方法して、他国を侵略し、その功績で禅譲させる方法を選んだ。武力を背景にした話し合いでの解決だ。それは、地球に居る時にも、やっていた権力や財力を背景にした脅しだ。これが成功しなかった事はなかった。その成功体験から、今回も同じような手法を行う事になった。
西沢の配下は、けして無能ではない。相手が悪いだけだ、実際に、テルメン王家や神殿の事以外の情報なら比較的容易に集めてきた。近隣諸国がそれぞれで小競り合いをしている情報を掴んだ西沢は、それぞれに自分と細田と山崎に兵を分散させ、援軍に来たと偽って場内に入り込んで、王家の者をスキル任せに殺すという事を行った。そして、待機していた立花に攻め込ませて、国を奪う。これを3回繰り返した。後で裏切るかもしれないが、自分たちの身は安全にしておきたいという保険の為の博打に3人は勝った事にある。立花は、それぞれの国を山崎と細田と西沢にまかせて、自分はパーティアック国に戻った。それぞれの国から美女と思われる者を引き連れての凱旋だ。新たな英雄王の誕生に国中は湧き上がったという。パーティアックの教えの通りに、人族以外は認めず、近隣諸国は王族や貴族にエルフの娼婦を持っていた事を”害悪”だとして断罪した。その裏で、自分たちに従う意思を示した貴族を残した。4つの国を束ねる事で、立花は我が世の春を謳歌していた。

テルメン王家が二回目の建国祭を行った後の話だが西沢・細田が放っていた者から、凶報が届いた。
リン=フリークス・アルセイド・ド・テルメン(真命:神崎凛)は、ミトナル=セラミレラ・アカマース(真命:鵜木和葉)/イリメリ=ジングフーベル・バーチス(真命:静川瞳)/ルアリーナ・フォン・ミヤナック(真命:熱川千明)/サリーカ・セトラス(真命:中里沙菜)/フェナサリム・ヴァーヴァン(真命:重久真由)他との婚姻を行う。立会人は、オイゲン=フンメル・エストタール(真命:茂手木義徳)が行う。
結婚に至るまでの経緯や情報が今まで欲しかった情報が大量に入り込んできた。表にだせる情報としてステータスも公表されている。
この第一報から数時間後に、さらなる情報が入ってきた。正確にいうと、今まで忍び込ませて帰ってこなかった者が、帰ってきた。その者達は、”テルメン王家”からの親書を持ってきた。立花以外の3名に充てた手紙だ。真命の情報が正しい事を裏付ける様に、その親書は日本語で書かれていた。
★☆★☆★☆★☆親愛なる。西沢裕太様。細田博行様。山崎徹様。
貴方たちが、立花肇様を背後から刺して、僕・神崎凛への従う意思を示しても、何も変わりません。君達が地球で、日本でしてきた事を思い出して下さい。三塚・冴木・加藤・川島・森中・橋本からの話を聞いております。僕の弟である、悠の死の責任が誰にあるのか?千葉美久の義理の姉にあたる人物を犯そうとして殺したのは誰なのか?韮山里穂の両親に万引きを咎められて、殴り殺したのは誰なのか?僕の両親や、和葉の両親の”事故死”の原因と責任は誰にあるのか?
一方的に、僕が知っているのもかわいそうだとおもうので、知らせておきます。6名や他の協力者から、ある程度の事は理解出来ています。そんな事をしておいて、立花を差し出せば何か変わると思っているのですか?君達が考えている通り、僕はこの大陸の7割位の国々のトップと知己を得ました。僕達が始めたギルドでも、僕の事や瞳の事を知らない人は居ない状況になっています。商人では、中里が有名です。魔道具の作成は、里穂が有名です。料理や文化では、真由や千明が有名です。あぁちなみに、千葉美久や松田昴や清水結衣もそれぞれその道では知らない人がいないという位に有名になっています。少なくても、君達3名よりは有名です。変装なしで歩けない場所もある位です。あぁ君達が、北方連合国ノーザン・コンドミニアム逃げ込ん・・・・だ事も知っていました。情報封鎖もしっかり機能していますし、パーティアック国や君達3人が居る国の事を知っている人はほとんど居ない状況になっています。ギルドに属している商人でも決められた僕と懇意にしている人しかそちらには行っていません。そちらの国から出る者には必ず監視が付きます。君達は常に僕の監視下にある状態です。そう言われても、簡単には信じられないでしょう。西沢様。幼女趣味があったのですね。そんな小さい娘ばかりを相手にしてそれも誰かのお古じゃないとダメなんてすごい性癖だね。あぁだから、立花や他の奴らが犯した女で満足していたのだね。細田様。スカフェチだったのですね。仲間にも隠しているようだけど、よく隠し通せているね。人肉嗜食カニバリズムは異世界で目覚めた性癖なのか?山崎様。そんなに母親に甘えたいのですか?見ていて吐き気がしますよ。母親よりも祖母に近い年齢の人を抱いて甘えるのが好きなのですね。
そんな事は置いておきましょう。貴方たちの名前は悪名も広がらないようにしています。そりゃぁ人の口ですから完全に塞ぐのは不可能でしょう。しかし、考えてみて下さい。ネットも電話もない世界です。1国家ないで行われた事がどれほど広がると思っているのですか?その広がる為の、商人も全て防いでいます。後で、調べてみて下さい。パーティアックで商売していた者達の半数以上がすでに居なくなっていると思います。残っている半分は、元々パーティアック内で商売をしていた人たちで外部とのつながりが希薄な人たちです。
あっでも、安心してください。僕は、君達を今すぐに殺そうなんて思っていません。反省なんてしないし、罪の意識も希薄でしょう。だから、僕も君達に何も感じません。恨みにも思っていません。その辺に居る虫に向ける程度の感情しかありません。
さて、ながなが書いてもしょうがないでしょう。君達に残された道は少ないでしょう。よく考えて、選んで下さい。
ちなみに、白い部屋でアドラに告げる名前の二人はすでに決めています。
そう言えば、異世界での両親を殺してくれたのも誰だったのか考えたりしていますよ。タシアナの両親も、地下牢で僕の両親と殺されていたようですし、そうそう、ミトナルの両親の村を襲ったのは、どこかの武器商人と流しの商隊だったようだね。僕の妹の死の原因を作ったのは、僕が生まれ育った村の領主様の所の行政官の息子が、知り合いの女の子を脅してやらせた事だったらしいですね。
最後に、アドラに約束した停戦協定は僕の方から破る事はしないけど、僕達の国に来た時には、僕達の国の法律で裁かせてもらうからね。『トリーア王家及びテルメン王家から犯罪人指定されている者は捕縛対象とする。』君達4名は勿論トリーア王家で起こった、貴族連合での重要参考人である重罪を犯した犯罪者になっている。
僕は、普段はテルメン王家の島にいる。いいところだから是非尋ねてきてくれ。尋ねてきてくれたら、衣食住の保証をしよう。食べる物の紹介は後でしよう。
同封した球体は、映像を保存する物だ。まぁ映像を再生するだけの物だが、魔力を流せば再生が始まるとおもうぞ。面白い物が映っているから、これを読み終わったら3人で見てみてくれ。きっと何度も見返したくなるとおもう。まだ立花には送っていないが、間違って送られない事を祈っていてくれ。それでは、相まみえる日まで壮健なれ。
リン=フリークス・アルセイド・ド・テルメン。★☆★☆★☆★☆
「西沢。」「慌てるな。それよりもこれを見てみよう。」「あぁそうだな。」
映像珠を握って魔力を流し込んだ。
そこには、この前3人で話しているときの状況が映像で流れ始めた。
「な。なんだこれ?何かのトリックか?」
編集されているのだろう、映像が途切れた。白い部屋に監獄らしく物が映し出されている。
冴木がまずは中央につれてこられた。何か喚いているが声は聞こえない。そして、いきなり、冴木の腕が飛んだ。両腕と両脚を飛ばされて、だるま状態になった冴木だ!穴という穴から液体が流れ出して、切り落とされた箇所から大量の血が流れ出ている。
そこに、なにやら液体をかけると、腕と脚が再生される。そんなことを3回繰り返されて、冴木は監獄に戻された。
場面が変わって、そこは調理場の様だ。先程切り落とされた腕と脚が映し出されて、何やらしているようだ。ぶつ切りにされた物を大鍋に入れられて、そのまま暫く煮込まれてから、器に盛られて、持っていった先には、橋本・川島・森中・三塚が居た。4人は出された物を黙々と食べている。冴木の腕や脚が入った物を食べている。西沢と細田は、必死に映像を止めようと思っているが、映像珠から手が離れないし、映像が止まらない。
音が入ってきた。『今日は、ブレディ・アンジョロの腕が材料だ。美味しかっただろう?』『・・・・』『マルビン・オットー。おいしくなかったようだな。明日は、おまえの腕か脚を使う事にするか?料理長が、内蔵でもいいと言っているが、どうする?』『許してください。お願いです。』『なんども言っているだろう?何を許せばいい?解らない事は許せないぞ』『許してください・・・許してください・・・』『まぁいい。明日は、おまえだな。マルビン・オットー』
場面が変わる。加藤が寝ている。急に大きな音がして、加藤が飛び起きる。『関心。関心。それではおやすみ。ヴィヅット・ジャスティン』
加藤が震えながら布団に包まって、早送りされるような状態になって1時間後また大音量がなる『ヴィヅット・ジャスティン。アウト!』
加藤の指が一本切り落とされる。それが24時間繰り返される。足の指を入れて20本が切り落とされると、再生される。

「西沢」「あぁ・・・」「どうする?」「にげるか?」「どこに?監視されているのだぞ」「あ”それじゃどうしろっていうのだ」「・・・」「西沢!」「あぁ戦うしか・・・」「そうだな。神崎を殺せばまだチャンスはある。停戦協定なんてくそくらえだ」「ダメだ。それじゃ勝てない。」「それじゃどうするんだよ」
西沢はすこし考え込んで・・・「細田。こっちに来い。」
そう言って耳打ちするように話をした。監視されている事を前提にしているのだろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ロラ=ゴーチエの秘策が、ウォルシャタ・フォン・アゾレムを国王にする事なのか?」「さぁどうでしょう?」「アッシュ。引き続き頼む。暫くはこっちからは何もしないが、入っていこうとする商人は全部捉えろ。出ていこうとする人物も全部捕えて尋問しろ。他の北方連合国ノーザン・コンドミニアムはどうだ?」「はい。北方連合国ノーザン・コンドミニアムは、パーティアックが3国をだまし討の様にした事で、北方連合国ノーザン・コンドミニアムからの除名を決定しました。」「そうか、こっちに加わりそうか?」「はい。来週にも使者を送ってくるそうです。」「わかった、それじゃモルトにそう伝えておいてくれ」「わかりました。」

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