【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

宴・裏

「なぁマヤ。あのウェイター絶対にわざとだよな?」「ん?何のこと?」「まぁいい。それよりも、明日はどうしたらのいい?」「もう準備は終わって、宴は始まっているからね。」「そうなの?」「うん。あぁそうそう、アッシュも強制参加させているからね。」「え?大丈夫なの?」「うん。入植地には、アッシュに擬態した眷属を派遣しているから大丈夫だよ。」「そんな事できるのだね。あっそれで、どうしたらいい?今から行く?」「う~ん。今日は、前夜祭みたいな物だからね。明日でいいよ」「了解。誰か迎えに来ていれるのだよね?」「うん。カエサルかヒューマにむかわせるよ」「了解。」「それじゃ今日はつかれたから、もう寝るね。」
リンは、ダンスでマヤと踊っている最中に”濃い色”の飲み物がズボンにかかったのは偶然ではないと思っている。どちらでも構わないとも思っているが確認だけしておきたかった。マヤの反応から完全に”黒”認定は出来ないが、黒に近い灰色で十分だろう。おかげで、嫁達に序列を作りたがる奴らからの追求を振り切ることが出来た。
風呂に入って寝る事にしよう。身体を洗ってサウナに入って寝湯に入っていると、ミルとタシアナが両隣に入ってきた。
「ねぇリン。明日はどうするの?」「あぁさっき、マヤに聞いたら、カエサルとヒューマが迎えに来るみたいだよ」「そうか、解った、それじゃ早めに寝るよ。」「うん。」
「あっミル。そう言えば、学校の生徒や冒険者からの挑戦はどうしたの?」「ん?全員返り討ちにした。タシアナもダーツでは返り討ちにしていた。イリメリがビリヤードで連勝記録を伸ばしている。」「そう・・・。そりゃぁ死屍累々だったのだろうね。」「うん。ローザスがすごく悔しがっていた。サリーカが、おかげで儲かったって言っていたから良かったと思うよ」
入賞者には、ミルやタシアナ達とのエキシビジョンマッチが行われる事になったのだが、連勝している為に、まだまだテルメン王家の優位は動かないだろう。来年はリベンジマッチを行うとローザスが息巻いていた。おかげで、ボールだけではなく、室内競技で必要な物が飛ぶように売れた。テルメン王家に勝てなくても、入賞商品だけでも魅力的だし、優勝商品は100万レインにしている。イリメリが言うには、来年はもっとあげてもいいのかもしれないと言っていた。参加費は取っていないが、来年からは参加費を取る事もすでに告知している。
最近になって、嫁達の過度やスキンシップがなくなってしまって、すこし寂しく思っているリンだったが、すこしずつ理由が解ってきた。年齢的な身体の変調を気にしているらしい。この世界では、ムダ毛の処理はしないらしいのだが、それは日本で生活していた女子高校生だ。気になっているらしく、”あれやこれや”しているようだ。それを、真似てアデレードやエミール達もやり始めている。ミルが、”リンはその方が好き”と言っている事が決めてとなっているし、ミルだけなら、あまり真剣に考えなかったのかもしれないが、イリメリやフェムだけではなく、フレットやアルマールまでも同じ事をしているという話をしたらしい。そんな横道な事でも余裕が生まれてきた証拠だろう。立花ウォルシャタの4人を捕縛しているうえに、追い込んでいるという安心感は大きいのだろう。自分たちが優位に立っているという事も関係していると思うが、長期戦を行う事にしたようだ。これは、リンがマヤから聞いた話だ。明日にでも死ぬかもしれないという不安は少なくなってきている。その為に、ゆっくりと時間をかける気持ちになってきたのだと思う。
今日、横に置いてある手を握る位で終わっている。
このまま寝ていると、本格的に寝てしまうと思ったリンはミルとタシアナよりも先に寝室に戻って寝る事にした。
寝室に入ると、すでにアデレードとイリメリが寝ていた。いつものように全裸の様だ。サリーカとルナとフェムはまだ帰ってきていないようだ。リンもいつもと同じ位置に潜り込んで寝ることにした。
翌朝。リンは、ミルに起こされた。それは、キスをされてという感じで、である。
「リン。おはよう。カエサルとトリスタンが迎えに来ているよ。」「あっおはよう。ミル。皆は?」「もう起きて、着替えているよ。」「そう、ごめん。遅くなっちゃったね。」「いい。僕が、リンの寝顔を見る権利を勝ち取ったからいい。」「ねぇミル。それには、僕にキスをして、舌を中に入れるって権利も含まれているの?」「それは、オプションです。起きなかったリンが悪い。」「そうか、解った。ミル。お礼だよ。」
そういって、リンはミルを抱きしめて、深く深いキスを返した。唇を放す時に二人の唾液が混じっていたのがはっきりと解った。不意打ちに弱いミルは顔を赤くしてしまった。よく見たら、二人とも全裸のままだった。
「ミル。急いで着替えないと、何言われるかわからないよ」「うん。余韻に浸りたいけど、ダメだろうね。」
二人は急いで着替えを済ませて、食堂に向かった。簡単に朝食を取るつもりで居たが、そこに居たアデレードが、「なんか、マヤが朝食も用意しているから、そのまま来て欲しいという事じゃよ。」「わかった。それじゃ移動しようか?カエサル。玉座でいいのか?」「いえ、玉座ではなく、今日は控室にお願いします。」
「それじゃみんな行こう。」
転移魔法が使える者がそれぞれリンを基点にして魔法を唱えた。これで、移動が完了した。
控室には、朝食の用意がしてあった。マヤは、他のニンフとともに謁見の間に居るという事だったが、リン達の出番前まだ時間があるので、軽く朝食を取ってから着替えて欲しいという事だ。その為に、エルフやドワーフの女性陣が控えている。言われた通り、軽く食事を取ってから、用意されている服装に着替えた。
1時間位控室で待っていると、カエサルが迎えに来た「リン様。奥様方。申し訳ないのですが、本日は、リン様の隣はミトナル奥様でお願いいたします。」「ん?なんで?」「はい。明確な理由はないのですが、眷属の中で、ミトナル奥様が一番認知されています。その為に、ミトナル奥様が隣で進んでもらうのがよろしいという事です。」「進む?何か式典?」「謁見の間で、新たに加わった眷属や種族達がお待ちです。」「え?この前やったよね?」「いえ、今度は、部隊事の挨拶もありますし、今日からの建国祭の始まりの挨拶をお願いします。」「え?何も考えてきていないよ。」「それは大丈夫です。偉そうに玉座に座っていただければ、後の進行はヒューマと私とで行います。」「それならいいか・・・。ミルもいいよね。って聞くまでもないよね。ほら、イリメリとタシアナ。そんな顔しない。可愛い顔が台無しだよ。」
リンは、なんとかみんなの機嫌を治して、カエサルに先導されて、玉座の間に入った。そこには、前回を超える魔物が整然と並んでいる。リン達が入ってくると、歓声を上げ始める。玉座にまっすぐにレッドカーペットが引かれて、その上を歩いて行く。玉座にはマヤが待っている。リンが席に座って、左右に妻達が分かれて並ぶ一応武官と文官というニュアンスで別れるようにした。位置に着くと、マヤが手をあげて、皆を黙らせた。その後で、ヒューマがリンの前に現れて、王冠を持ってきた。それを、マヤが受け取った。リンの前まで来た。リンは玉座から一歩降りて、マヤの前ですこしだけ膝を折って、王冠を乗せさせた。
その瞬間、眷属たちから拍手と歓声があがる。鳴り止まない拍手の中、マヤが壇上から「今、我らの王が即位なされた。リン=フリークスは、我ら魔物の王にして、統べる者なり。」
トリスタンとバイエルンとファントムとレオパルトがリンの前に跪く。「リン=フリークス様。我ら竜種は、絶対の忠誠を誓います。」
これから、各種族を代表して目の前に出てきて跪いて挨拶をしていく。そんな事を3時間に渡って行っている。ミルを除いた妻達は、カエサルに連れられて、玉座から離れて、挨拶を終えた眷属たちと話を始めている。
最後の一組というか、一人は、ワクだった。ワクが目の前に来て、リンに挨拶をして謁見は終わった。
ヒューマが開国祭の開幕を高らかに宣言した。謁見は、毎年行われる事になる。ただ、希望者だけとなる。今年は始まりの年でもあるので、全員が揃って挨拶をする事になった。
ヒューマから、建国祭のスケジュールが発表される。表と違うのは、球技大会がない代わりに、模擬戦が行われる事になる。これは、眷属の事を知っている人間たちも招待されている。問題ないようなら、来年から表でエキシビションとしてやっても面白いかもしれない。テルメン王国の武威を示すのに都合が良さそうだ。
すでに、表が開催されている最中に、予選が行われていて、決勝進出の16名が紹介された。16名と言ってもカテゴリが幾つかあるので、全部で256名ほどだ。あまりにも力が違いすぎるためだ。優勝者には、リンから武具が与えられる事になっている。武具に関しては、マヤがタシアナにお願いして用意して居るようだ。最終的な調整は必要になっては来るがそれでも、リンから下賜される物として、テンションがあがるのは間違いなさそうだ。
今日から、4日間にかけて大会が行われて、16名の優勝者が決定する。その後、くじ引きで、本当の優勝者をトーナメントで決定する。対戦相手を決める事は勿論、対戦場所でも大きなアドバンテージを得る事になるので、公平にくじ引きする事になった。
アッシュは、リン達以外の人間の対応を行っている。サラナとウーレンの二人を従えて、3名でさばいている
大会は、異様な盛り上がりを見せている。リンとミルは貴賓席に居て、挨拶を受けたりしていたが、妻達が眷属たちに請われて、アドバイスを送ったり臨時のコーチになったりしている。それは、それで見ていると面白い。そして、リンとミルとしては、眷属たちの力が思った以上にあがっている事が嬉しかった。
4日目が終わって、各カテゴリの優勝者が決まった。リンからの表彰が行われている。
そんな士気の最中に「リン様。御前失礼いたします。」
そんな事を言って、アッシュが席を外した。暫く、表彰の儀を続けていると、アッシュが戻ってきた。
「リン様。」「どうした?」「はい。ナウエルン公国が襲撃され、集落が壊滅しました。」「そうか・・・詳しく話せ。」「今でよろしいのですか?」「いい。良いことは後でまた行えばいい。悪い事ならすぐに対処する必要があるだろう。それに、戦力ならここに最強の16名が揃っている。今聞いて判断するほうがいいだろう。アッシュもそう思ったから、話したのだろう?」「はい。ありがとうございます。」
アッシュから報告は予想通り過ぎて面白くない。ナウエルン公国には、パーティアックの一部戦力と言ってもいいだろうが、寄せ集め部隊で5,000が進軍してきたが、自然の要害に阻まれていた。流れ的には、ナウエルン公国の方の進軍の方が早かったので、こちらにテルメン王国の援軍を集める戦略だったのだろう。後方の備えの方が厚い陣容になっていた。いつでも反転攻勢にかかれる状態で進軍していた。しかし、援軍は正面から叩いた。戦闘と呼べる物ではなかったが、5,000のうち2,700を失う大惨敗だ。
ナウエルン公国の戦端が開かれてすぐに、集落に立花・冴木・加藤の3名がそれぞれ5,000を率いて進軍してきた。こちらは予定通り、アッシュの身代わりになってもらう物と従者の格好をさせていた、”パーティアック”の人間だけを残して、全員退去した。3名は、集落の畑という畑を破壊し奪い尽くした。たった、1週間煙草の入荷がなかっただけでこれだけの事をしたのだ。そして、目論見通り、アッシュは死んだことになった。パーティアックに殺された。これで、停戦協定を先に破ったのは奴らという事になるが、”薬”入りの煙草を販売していた事があるので、それに関しては、何も言わないと決めている。ただ、何か言われたときの方便としてそういう理由付けができるように、状況を整えた。
大量の煙草を略奪した3人は引き上げていく時に、”冴木”と”加藤”を眷属が捕えて、マガラ神殿の監獄に送ったとアッシュは話を締めくくった。
「アッシュ。眷属側の被害は?」「ナウエルン公国の護衛を行っていた者。数名が怪我をしただけです。」「そうか、それなら良かった。」
リンは、その場に居る者達に向き直って「聞いた通りだ。すぐに戦争になるわけではないが、奴らが仕掛けてきたら、座して待つことはしない。我らに喧嘩を売った事を後悔させてやる。」
一呼吸おいて「皆。僕に力を貸してくれ。皆で笑って生活できる場所を作ろう。」
「「「おぉぉぉ」」」

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