【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

宴の準備

「ミル。タシアナ。5年後の宴の準備が始まったよ。」「本当にやるの?」「あぁ奴らも殺されておしまいじゃ納得しないだろう・・・からね」
リンは、5年間でできるだけの事をしようと思っていた。冴木と加藤の捕縛は、必要な事だ。奴らの心を折っておかないと、地球に戻った後で何も変わらないでは面白くない。できれば、こちらでも地獄を見て、地球でももっと地獄を見て欲しいと考えている。まず手始めに、奴らを分けて考える事から始めた。確かに、リンの弟である悠の死の責任は、全員にある。それ以外で考えると、立花は別格としても、山崎・細田・西沢は、殺すだけでは足りない奴らだ。
すでに3ヶ月。加藤と冴木には、”薬”入りの酒や食べ物を与えている。潜入している眷属からの報告では、普通の食事では満足できなくなっているようだ。特に、煙草は手放せない状態になっているようで、怪しむこと無く愛用してくれている。立花もだ。酒や食料はなくなってもいいようで、煙草だけでも満足は出来ないが、我慢できるようには調整出来た。
今、行っている施策を、ミルとタシアナに説明した。小国を1個作り上げる事だ。正確に言えば、そう見える場所を作るのだ。
パーティアックに隣接している国の中で、ナウエルン公国にはすでに使者を出して、了解の言葉を貰っている上に、転移門トランスポートの設置も終了している。オルプネ神殿との交易も始まっている。さらに言えば、すでにミスリルを含む鉱石の採掘に関しての話も終わっている。テルメン王国とナウエルン公国はすでに国交を開いて、同盟関係になっている。そいて、裏神殿からバイエルンを守備隊として向かわせている。それ以外にも、選抜した・・・勿論、選抜は、マヤ達ニンフが行ったのだが・・・眷属が1万現地に入っている。駐屯費用は、全部テルメン王国が持っている。見返りとして、ナウエルン公国に求めたのは、岩塩の販売とナウエルン公国の特産野菜の販売だ。岩塩は、ナウエルン公国の財政基盤を握る物だ。その採掘ではなく、採掘された岩塩の購入を求めて、それをテルメン王国内での販売許可を求めてきた。公国としては、拒否するような類でないことから歓迎された。また、守備隊が獣人に近い物であった事も影響しているのだろう。そして、守備隊のほとんどが街に入らずに、山岳地帯に駐屯している。
それ以外の国は日和見った事になった。リンは、ナウエルン公国を助けて、他の国は見捨てる考えを示した。ただ見捨てるだけでは夢見が悪いので、神殿からすこし離れた空白地帯に、一つの集落を形だけ作って、そこから”煙草”が出荷されている様に偽装する。守備隊として、ファントム/レオパルトの2竜を向かわせた。住民を偽装する為に、8,000の眷属を向かわせている。集落もそろそろできる頃だろう。建築魔法が使える者を中心に選抜している。停戦協定は、こちらから手を出さなければ問題ない。奴らが勝手に攻めてきて自滅するのなら、それはこちらに非がない。
奴らは、ナウエルン公国に攻め込むか、集落に攻め込むか、してくれれば、すごく後々楽になる。
これらの事を、ミルとタシアナにだけは説明している。最初は、ミルだけに話していたが、丁度その時に、タシアナも居て、タシアナにも説明する事になった。
「ねぇリン。アデレードやイリメリには話をしないの?」「うん。そのつもりだよ。もしかしたら、アルマールにだけはするかもしれないけどね。あぁあと、カルーネとフレットには事情を説明しておくよ。」「わかった。僕とタシアナで、話をすればいいよね?」「アルマールとカルーネとフレットにはそうだね。サリーカとルナとフェムとイリメリには、僕から話をするよ。」「わかった。でも、いいの?停戦を受諾したのだよね?」「そうだね。僕からは攻めないよ。経済的に追いつけたり、奴らが食らいつけるような場所に餌を晒すだけだよ。」「・・・それに食らいついたら仕返しするのだよね?」「もちろん、ヤラレっぱなしにはしないよ。」「だよね。」「ねぇリン。」「なに、タシアナ?」「西沢ゴーチエを捕まえたら教えて。パパとママの事を聞きたい。」「勿論だよ。でもいいの?」「うん。もう逃げない。」「わかった。」
リンとミルとタシアナは、そのままアッシュを待っていた。現状の報告を受けるためだ。
必然と、今の状況確認になってしまっていたが、実際にタシアナとミルはそれだけをやっているわけではない。自ずと、今抱えている案件の話しになっていく。
ミルは、最近のギルドへの依頼が偏り始めている事を懸念している。
「ミル。どういう事?」「う~ん。僕の勘違いならいいのだけど、高級素材の注文が多くなっているのだよね」「でも、ミル。それは昔からじゃないの?」「タシアナは、素材を使う方だからだろうけど、要求の割にレインが見合っていなくて、その手の依頼が残って、裏ギルドに回ってくるって感じかな。」「そうか、私も確かに依頼は出すけど、はじめから裏ギルド依頼だからな。」
「ミル。サラナとウーレンに言って、暫く裏ギルドで受けるのは、直接来た依頼だけにして、一般商人や職人からの依頼は、表のギルドで留まらせよう。」「了解。でもいいの?」「うん。必要なら、依頼料を上げるだろうからね。依頼料をあげない依頼票はそのままにしておけばいいよ。ミル。手間増やすけど、サラナとウーレンに適正価格を教えてあげて、それから、イリメリには、僕から言っておくよ。」「了解。僕の手間は考えなくていいよ。リンにキスしてもらえれば十分な報酬だからね。」「ミル。あなたね。」「何かな?タシアナ奥様。」「えぇ解っていますよ。ミル奥様。」「いえいえ、僕の事は遠慮しないで、”第一夫人”と呼んでいいのですよ。”タシアナ第三夫人様”」「ミル!それ、まだ私は認めていないのだからね。」
「二人とも、いい加減にして、僕は第一にも第三も作るつもりはない。立場や場面で違ってくるだけだからね」「はぁ~い」「うん。解っている。」
タシアナの方に向いて、「それでタシアナは何かあるの?」
「あっうん。ミルの話にも関わってくると思うけど、魔道具の注文も大掛かりな者が増えてきているよ」「どんな物が多いの?」「そうだね。多いって言っても、ここでしか作られていないものだから必然と商人が多くなれば注文が増えるのは当たり前だと思っているのだけれどもね」「そうか、素材が特殊な物も多くなっていくのだね。」「そう、それで、多分一般の職人がギルドに依頼を出す頻度があがっているのだと思う。」「そうか、それじゃ裏ギルドへの依頼が多くなるのも納得だな。」「うん。困ってはいないけど、注文が多すぎるように思える。」「タシアナ。注文数だけど、抑え気味にしていいよ。同じ物ばかり作っていてもダメだろうから、半分くらいの職人は新しい魔道具の方に廻して、話が解る職人なら裏ギルドの方でもいいからね。」「了解だよ。」
出荷数を押さえる事で、負荷を減らす事にする。それに、値段が落ちるのを防ぐ意味もあるし、これから、商人も多く入ってくるだろうから、その意味でもある程度の抑えは必要になってくるのだろう。これから、裏居城でも魔道具は必要になってくるだろう。向こうの方は遠慮する必要がないから、実験ができる環境になるので、丁度いいだろう。話が解る人間した移動できないが、それでもいいと思った職人から裏居城に移動させていけばいい。
タシアナとミルの話をしていた。何度目のお茶のおかわりをお願いした時に、アッシュが執務室に入ってきた。
「リン様。おまたせして申し訳ございません。」「いいよ。僕達も別の話が有ったからね。それで、奴ら以外の所はどうなの?」「はい。これを御覧ください。」
アッシュが出してきたのは、国々の内情を調べた資料だ。北方連合国ノーザン・コンドミニアムも、パーティアック国と隣接する数か国を除いて概ねこちらの提案を飲むことになりそうだ。それ以外の国も内情はそんなによくなさそうだ。
「アッシュ。王貴族でスキャンダルが有ったり、パーティアックとつながりがありそうな奴らも探っておいてくれ」「かしこまりました」「眷属たちは問題ないか?人手が足りないようなら、サラナとウーレンに言ってね。」「解りました。リン様に、すこしお願いがあります。」「なに?」「はい。今、北方連合国ノーザン・コンドミニアムに集落をお作りだと思いますが、そこに私の執務室を作っていただけないでしょうか?」「いいけど、前線だよ?オルプネ神殿もいいよ。」「いえ、出来ましたら潰す前提で、集落の村長を装って頂きたいのですが、ダメですか?」「別にいいけど、ファントムとレオパルトが現地に居るから相談して、オルプネ神殿から行ける様にしてあるからね」「ありがとうございます。」「それで、理由を教えてくれる?」「はい。あの集落は、使い捨てになさると聞いています。」「うん。そうだね。」「攻められる事になると思います。そこで、”アッシュ”をそこで死んだ事にしたいのです」「いいの?表舞台から引っ込むのだね?」「はい。今後、情報をまとめていく事になる時に、奴隷商のアッシュでは都合が悪くなってしまいます。一度死んだ事にした、アンダーカバーを作りたいとおもいます。」「解った。それなら、アッシュの都合がいいようにして・・・。」「ありがとうございます。」
それから、アッシュと集落に付いての話し合いをした。ミルとタシアナも、薬に関しての知識はなかったが、アッシュにはそれが該当する植物が分かっているようだったので、アッシュに植物の栽培を眷属に指示するようにお願いした。
「アッシュ。それで奴らは?」「はい。今日も煙草の納品に行ってきました。」「そうか、頻度が早いな。」「はい。すっかりハマっています。」「それは、それは・・・。」
「ねぇリン。煙草ってドラッグだよね。」「うん。そうだね。トリーアにも昔から有って、貴族のバカ息子が色街で使ったりしていた物をもっと強くした感じだね。」「あぁそういう事だったのだね。」「うん。そうだよ。」「僕。てっきり、リンが作り出したのかと思ったよ。」「流石に・・・作らないよ。前に、ハーレイから聞いていて、拷問に使おうかと思っていたのだけど、普通に嗜好品として、ウォルシャタ達に配る事にしたのだよ」「そうだったのだね」
「リン。これで、宴の準備は出来たの?」「そうなる。後は、奴らがステージにあがってくれるのを待つだけだよ」「早くあがってくれるといいね」「あぁ遠からずあがってくれると思うよ。不安な事があれば、煙草にもっともっと依存すると思うからね。」「あぁ・・・そうかぁテルメン王国の建国祭と僕とリンの結婚式だね。」「ミル。私達とリンの結婚式でしょ。」「ごめん。ちょっと間違えちゃった。」

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