【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

もう一つの物語.19

「そうだ。ミル。刀の具合はどうだった?」
急に照れ隠しなのか、立ち上がってミルの方に向き直った。そこで、ミルは気がついた。リンが左手の薬指にしているのは、さっきリンがミルにはめてくれた指輪と同じデザインの物だと。そして、右手にも全属性の石が入った指輪をしている。
「リン、その指輪?」「なんだよ。いいだろう?デザインが気に入ったから付けたんだよ。ミルとおそろいになったのは偶然だからな。」「うん!わかった。あぁ刀は万全だったよ。魔法を宿しながらスケルトンやキラービーなら簡単に倒せた。」「そうか・・・レウス。レイア。」「「はっ」」
二人は、部屋に入ってきた。
「カエサルは帰ってこないが、4人とワルフとワクで、マガラ渓谷に向かうぞ!」「「はっ」」
リン達一行は、アロイ街の近くに転移した。「ミル。アスタ・・・ナナへの報告は僕がしていい?」「うん。僕も一緒に行くけど、リンから話してくれると嬉しい。」「ありがとう。わかった。」
アロイの街に入って、最初にラーロ宿屋に寄ったミルが、預けている荷物を持っていきたいということだ。「ラーロさん。お久しぶりです。」「おぉぉミルちゃん。帰ってきたんだね。心配していたのだよ。部屋と荷物はそのままにしてあるよ。どうする?」「ありがとうございます。もうちょっと借りていいですか?追加の費用です。」
そう言って、ミルは金貨1枚を提示した。「ミルちゃん。こんなに要らないよ。」「いえ、ご迷惑もおかけしましたし・・・。」「そうだ、ちょっと待ってろ。」
ラーロさんが店の奥に引っ込んでいって、出てきた時に、一つの鍵を持ってきた。「ミルちゃん。この鍵を預けておく。」「これは?」「荷物を預かっておく場所の鍵で中は、ミルちゃんの荷物だけが入っている。」「いいのですか?」「あぁ気にしないでいい。金貨一枚だから、そうだな10年間って事でどうだ?」「ありがとうございます。それでは、10年間、荷物をお願いします。あっまた今日から部屋を借りたいのですが、空きありますか?」「あるよ。何人部屋?この前の部屋ならそのままだよ?」「あっそれなら、もう一部屋二人部屋があれば・・・。」「わかった。一泊食事なしで、5,000レインだよ。」
リンが横から「荷物も置かせてもらうから、取り敢えず20日分とミルの部屋の延長分も合わせて・・・いくらになりますか?」「お!お前さんも無事だったか?」「ありがとうございます。ミルのおかげで無事でした。」「そうか、それなら・・・二部屋を20日分で、銀貨15枚でいいぞ。」「ありがとうございます。」
リンは、銀貨で15枚支払いをして、部屋に移動した。ミルの部屋にリンとミルが入って、もう一部屋にレウスとレイアが入った、ロルフとワクもレウス達と同じ部屋に入っていった。部屋に落ち着いてから、リンはレウス達に声をかけて、ミルとナナの店に行ってくる旨を伝えて、銀貨20枚をレウス達にあずけて、食料を買ってくるように言いつけた。
リンとミルは、部屋に荷物を置いてから、ナナの店に向かった。リンは、ナナにどうやって告げようか考えていた。自分自身も受け入れたわけではないが、復讐すべき相手が居る。それが終わるまでは悲しまないと決めた。それに、ミルを守る事をニノサとサビニとユウに誓った。
「リン君!ミルちゃん!」「ナナ。ただいま。」「ナナさん。無事リンと会えました。」
ナナは、二人を抱きしめている。「もう心配したんだから・・・行商人の何人かが着て、ポルタ村に入られなかったって聞いて・・・」「ナナ。そのことで、すこし話があるけど、ガルドバさんは?」「居るわよ。」「よかった、すこし立て込んだ話にもなるし、場所も変えたいから、時間が出来たら教えて欲しい。」「わかったわ。貴方たちはどうするの?」
リンとミルをお互いの顔を見合わせて「「マガラ渓谷の探索をする」」
ナナは、リンとミルがお互いにしている指輪とイヤリングを見て「へぇそういう事・・・。まぁいいわ。貴方たちなら大丈夫でしょう。二人だけじゃないわよね?」「あぁあと、レウスとレイアという獣人?獣魔?が一緒に行く事になる。」「わかったわ、それなら、そうね。3時間後にまた来なさい。場所は、ここでいいの?」「待ち合わせはここでいいが、話の場所は移動する。僕のスキルも知って欲しいからな。」「わかったわ。ガルドバと一緒に待っていればいいのね。」「あぁそうして欲しい。」
リンは、ミルと二人でナナの店を出て、マガラ渓谷に向かった。「ミル。マガラ渓谷に入るけど、準備は大丈夫?」「うん。今日は、感触を確認するだけだよね?」「そのつもりだよ。」「じゃ、大丈夫。」
守衛に目的として、『素材集め』とだけ告げて、入場料を払って、マガラ渓谷に入った。
「ミル。前はどのくらいまで潜ったの?」「う~ん。難しいよ。少なくても、未踏エリアには入ったよ。」「そうか、今の僕でも行けると思う?」「大丈夫。って、リンのステータスなら、未踏エリアまでなら簡単だと思うよ」「そう?取り敢えず、そこまで案内してもらえる?って3時間で行ける距離?」「うん。余裕!」
リンは、ミルに案内されるままに、マガラ渓谷を降りていく。何度か、戦闘になったが、ミルが言うように楽勝って位に、簡単だ。ミル一人でも大丈夫な所に、ステータスがチートレベルになっているリンが加わったのだ、万が一にも負ける事はない。最後の架け橋を抜けた先が”未踏エリア”と呼ばれている。
「ふぅ確かに、この辺りまでなら楽勝だな。」「でしょ。僕も、もう少し奥までなら行けるから、レウスとレイアが居るのなら、もっと降りられると思うよ。」「そうだな。時間は?」「まだ1時間位だよ」「そうか・・・。」「リン。どうしたの?」「いや、日本に居た頃なら、1時間歩き続けるだけで、嫌だなって考えただろうなって思ってな。」「たしかにそうだね。僕は、今はリンと一緒だから・・・」「ミル・・・。」
二人で顔を見合わせながら笑ってしまった。
「さて、もう少し降りるか」「うん。もう少し先に、入られない区域が有るよ。」「そうか、そこまで行ってみるか!」「うん。」
そこから、30分位降りた所で「リン。この先に入られないんだよ。」「そうか・・・。あぁたしかにな。何か、結界がはってあるみたいだな。」
リンはすこし考えてから、古代魔法を使ってみる事にした。マガラ渓谷にある神殿は、古代魔法に関連している事は、ドラウ達から聞いている。誰もが入られてしまう事を防いでいるのかもしれない。
「ミル。すこし離れて・・・・。結界を解除してみるからな。」「うん。わかった。岩陰に居る。」「了解。」
リンが、結界魔法を唱えて、結界に干渉した。その瞬間に、結界が弾け飛んだ。
(やっぱり)
「ミル。終わったよ。」「え?もう?」「うん。」
結界で入られなかった場所に一歩進めた。その瞬間、何か重い扉が開くかのような音がした。
「何?今の音?」「わからないけど、すこし下辺りで何かが開いたみたいだね。行ってみよう。」「うん。」「あっその前に・・・。」
リンは、ミルが結界から内側に入った事を確認してから、先程とおなじになるように、結界魔法を施した。進入禁止と認識阻害を付与した結界だ。これで、リンとミル以外には解らない上に、内側には、転移魔法で移動してくるしか方法が無くなった。リンが魔法を解除するか、結界魔法を使えるスキルを持つ奴が破壊する必要がある。実質的に、不可能だという事になる。
「よし!いこう!」「うん。」
30分位降った所に、扉が開いている場所が存在した。違和感がある作りだが、岩が動いたと思わせるようなギミックは備え付けられている。
二時間以上経過した上に、なんとなく嫌な予感がしたので、一旦戻る事にした。ラーロ宿屋のミルが借りている部屋に戻った。
「そうだ!ミル。」「なに?リン。」「ここの荷物の中に、ミルの下着や服有るだろう?すこしでも持っていかないのか?」「・・・(ちっ)うん。」「なぁミル。今、舌打ちしたよね。」「ううん。そうだね。後で取りに行くよ。今は、ナナさんの所に急ごう。」「あぁわかった。その前に、一度、拠点に戻っていい?まだ時間があるから、風呂に入ってさっぱりしたい。」「うん。わかった」
リンは、ミルを連れて拠点に転移した。裏にある風呂にお湯を貯めて、入る事になるが、魔核が必要になるために滅多に入られない。リンとミルは、マガラ渓谷で得た魔核を使って、風呂を入れた。「うん。こんな感じだね。ミル。先に入っていいよ。シャンプーは無いから、お湯で洗うだけになってしまうけどいいよね?」「・・・うん。リン。一緒に入ろう?時間ないよ?」「え?だって・・・」「いいよ。リン。一緒に入ろう!」「だって・・・。ミル・・・。」「リン。静川さんとはお風呂一緒に入ったこと有るんでしょ?だったら、僕もリンと一緒に入りたい!」「瞳とは子供の時だよ。」「うん。だから、今僕達は子供だよ!だから、大丈夫!」「・・・本当にいいの?僕も男だから・・・(好きな子と入りたいって思うよ)」「なに?リン。もう一度言って!」「ミル。聞こえているんでしょ?」「ううん。『僕も男だがら』しか、聞こえなかったよ。その後は?」「いい。何でもない。お風呂入ろう!」「うん。先に入っていて!」「わかった」
リンは着ていた物を脱ぎ捨てて、風呂に向かった。リンが指示して作ってもらった物だが良く出来ていると思う。昔風の風呂だが、沸かしたり出来ないので、湯を溜める事しか出来ない。ただ、ここは魔法が有る世界で、ぬるくなったら、赤魔法でお湯を温め直す事はできる。イメージ調整が難しいが出来ない事ではない。
リンは、身体を魔物の皮で作ったボディタオル(もどき)で擦っている。垢や汚れが落ちるか解らないが、なんとなく洗った気分にはなれる。「リン。入るね!」「おっおぉ」
「リン。そんなに見られると恥ずかしい・・・」「あっゴメン。」
リンは、ミルを見つめてしまっていた。青い髪の可愛い女の子。今までも、全裸を見たことがなかったわけではないが、明るい時に見たのは初めてだ。白い肌に青い髪の毛が印象に残る。黒目と青みかかった目がすごく印象深い。まじまじと見てしまった罪悪感もだが、本当に可愛い女の子だという感想しか出てこなかった。リンは、自分が”小さいほうが好き”って言っていたのを思い出したが、そんな事を超越する感覚になっている。
「リン。みたいなら見て!全部リンの物だからね。」
そう言って、ミルはリンの背中に抱きついた。「ミル。背中に・・・。」「なに?きになる?」「もちろんだよ。ミル。僕の何が・・・「全部!」」
食い気味に答えるミル。それから、リンをたたせて、正面から抱きついた。「でも、一番、リンが優しい事かな、後、強い事かな。」「・・・ミル。」「ねぇリンは、僕でいいの?」
「そうだな。僕がまだ何も失っていなかった時に、小4の時、隣の席に座った女の子。僕の馬鹿話を楽しそうに聞いてくれた女の子。いじめられても下を向かないでまっすぐに向かっていった女の子。体育が苦手で音楽が好きな女の子。遠足の時に、一緒の班になって僕がお弁当を全部食べてしまってまだ足りないって時に”私が作ったの食べて”って小さなおにぎりを渡してくれた女の子。でも、小5に上がる時には、もう転校してしまっていた女の子。僕は、小5になって、その子が居ない事を知って、生まれて始めて後悔した。『なんで、僕は、和葉に好きだって言わなかった。』とね。いろんな後悔をしてきた。今更だけど言うね」「・・・・」「鵜木和葉。いや、ミトナル。僕は君を愛している」「・・・うん。僕も、神崎凛を愛している。リン=フリークスを愛している」「今度は、しっかり聞こえた?」「うん。大丈夫。安心した。」「そうか、それじゃもう言わなくてもいいよな?」「えぇぇぇぇ毎日じゃなくてもいいから・・・・ね。リン。」「解った。解った。気が向いたときにな!」「ケチ!」
ミルを抱き寄せて、はっきりと解るようなキスをした。それから、時間が迫っている事を思い出して、慌てて、湯船に入って、お互いの身体をこすり合いながら。汚れを落とした。髪の毛もさっぱりさせてから、ミルの灰魔法で髪の毛を乾かした。
新しい服と下着を付けて、部屋に戻った。カエサルとオルトが戻ってきていた。
「オルト。無事入植者は集まったのか?」「はい。カエサル殿やドラウ殿に協力してもらって、入植者217名の移動が完了しました」「そうか、それは良かった。」「はい。それなら、以前お話いたしました。アゾレム守備隊の隊長だった、アルド=ウー・ランベクも協力してくれる事になりました。」「来ているのか?」「はい。」「入ってくれ!」
入り口から、一人の男性が入ってきた。守備隊の隊長と言われて見れば、それなりの力を感じる。「はじめまして、アルド=ウー・ランベクです。先週まで、アゾレム守備隊の隊長をしておりました」「先週?」「はい。ウォルシャタが連れてきた。ブレディ・アンジョロが今は守備隊の隊長をしております。」
ミルが耳元で「ブレディは、冴木だよ。」頷いて返す。
「そうか・・・。そえで、ランベク殿は、どうされますか?」「え?オルト。どういう事だ?」「え?オルト!」
話を総合すると、アルドは、拠点に入植するつもりでいた。リンは、オルトに貴族に詳しい人を紹介してもらうつもりでいた。お互いがお互いに遠慮していた経緯もあるが、話は簡単になった。
「そうなのですね。それなら、話は簡単です。ランベク殿よろしくお願いします。」「テルメン殿。こちらこそ。お願いします。ポルタ村の件では、ウォルシャタ達を止められなくて、本当に申し訳なく思っております」「いえ、それは、ウォルシャタ達がした事で、アゾレム全体を恨むつもりはありません。ただ、これから、アゾレムと戦う事になるかもしれませ。そのときには、味方を守る為に、ランベク殿前の部下に剣を突き立てる事になると思います。それは許してください。できるだけ、アゾレムの領民には被害が出ないようにはしたいと思っていますが・・・。」「解っております。私も、旧部下たちをこちらに寝返らせる努力を行います。」「お願いします。あっそれから、私の事は、リンとお呼び下さい。」「解りました。リン様。私の事は、アルドと呼び捨てにして下さい。今日から、私はリン様の部下です。なんでも言って下さい。」「・・・あ。」
リンの前で、オルトとアルドとカエサルは臣下の礼を取った。

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