【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

序章)もう一つの物語

僕の手の中には、一つの球体が握られている。アドラの領域に言った時に、帰り際に持たされた物だ。
『もう一つの可能性』だった物だといわれた。その後すぐに強制排除されるように戻されたので、詳細までは聞けていない。
(仮称)『魔王城』の玉座でその球体を眺めていると、マヤが近づいてきた。「アドラステーアから渡された物?」「ん?マヤはこれが何かわかるの?」「うん。リンもよく知っている物だよ?」「そこ疑問形でいわれても困ってしまうんだけど・・・・な。」「でも、それを見るのなら、ミルとだけで見たほうがいいよ。」「これって”見る”物なの?」「え”そこから?」「うん」
マヤが説明してくれたのは、これは僕達が使っている”映像珠”の様な物で、情報が入っている物になる。大きさから数年から数十年位の単位で入っているだろうという事だ。そして、内容は”もう一人のリン=フリークスとミトナル=セラミレラ・アカマース”の物語だという事だ。
「もう一人の僕とミル?」「うん。今のリンとミルじゃない。僕も存在しなかった世界の二人だよ」「あぁ前にマヤが言っていた事?」「そうだよ。見るの?僕的には捨ててしまうのがいいように思うけどね。」「気にならないって言えばウソになるし、見たからって何かが変わるわけじゃないからね」「そうだね。もう、あのリンと今のリンは違いすぎるし、マノーラの出した条件で巻き戻しが発生しないようだからね」「うん。パラレルワールドって感じで考えればいいだろうからな」
ロルフが、猫の姿で玉座に座る。膝の上に乗ってきた。「僕は出ているんだよ!」「そうなのか?」「うん。前は、僕が大活躍!」「へぇそうだったんだね。ありがとう。ロルフ。」「前のあるじも好きだけど、今のあるじのほうが好き!」「そうか、ありがとう。」
「リン。ここに居る眷属たちやニンフ達も同じ考えだよ。前のリンと関わりを持った物も少なくないけど、今のリンの方がいいと思っている。だから、この魔王城を入手出来た時に、掃除やら改修やら協力してくれたんだからね。」「・・・・そうか、それなら、僕はこれを知っておかないとならないね。そうならないためにも・・・。」「・・・僕は大丈夫だとは思っているけど、リンがそうしたいのなら止めないよ。」「ありがとう。マヤ。マノーラ神殿で見てもいいけど、こっちのほうがいいだろうから、マヤ。ミルを呼んできて欲しいけどいいかな?」「リン。本当にいいんだよね?」「うん。マヤ。ありがとう。大丈夫だよ。」
マヤが玉座から離れていった。眷属たちも順次戻っていくようだ。
側には、ワクとトリスタンとカエサルだけが残っている。「リン様。マヤ様から、執務室兼住居を用意しておいて欲しいと言われましたので、準備しております。」「魔王城に?」「はい。後でワクに案内させます。」「あぁ頼む」「はい。ワク。リン様の案内をお願いしますね。」「いいよ」
カエサルも裏ギルドに戻るようだ。確かに、裏ギルドにはカエサルが居ないと回らない状況にはなってしまうだろうな。「ワク。住居に案内して」「は~い。」
ワクを先頭に魔王城の中を歩いている。広い施設だ。使われていなかったと言っていたが、眷属たちが時間を見つけて修繕してくれたのだろう。ここも、テルメン王家と同じような位置づけになるようだ。すでに、数百名が魔王城で働いているようだ。周りの意識有る魔物からの謁見の申込みも来ているようだ。こちらには、転移門トランスポートがないので、順次来る事になっていると言っていた。食料問題なんかも出てきたら考えなきゃならないだろうな。
執務室に着いたようだ。僕の部屋として用意された所には、机は置いてあるが、テルメン王家の執務室と違って書類の山がある事はなかった。部屋から隣の部屋への扉を開けると、寝室になっているようだ。大きさはキングサイズ程度だろうか?風呂やトイレもある。こちらの初代も人間いや転生者だったのだろうか?
入ってきた部屋のドアとは違うドアを開けると、そこには、いくつかの部屋につながる場所になっているようだ。うん。見なかったことにしよう。
執務室に戻ると、マヤがミルを連れて戻ってきていた。「何?なにか僕に用事?」「あっマヤからは何も聞いていないの?」「うん。リンが呼んでいるってだけ言われて連れてこられた。ってここどこ?」「あぁここは、マヤが言うには、マノーラ神殿の裏側らしい、”魔物を統べる者”の居城らしい。」「へぇじゃリンの城で合っているんだね。」「なぜ?そう思うのかを問い詰めても、”リンだから”とか言われるだけだろう」「解っているのなら聞かないでね。」「あぁそれで、これを見るなら、ミルとだけで見たほうがいいってマヤに言われてね。」「なにそれ?」「もう一つの僕達らしい。」「・・・」「らしい。らしいでゴメン。僕もわからないんだよ。」
執務室の椅子に座りながらミルに説明をしている。マヤは、自分は見ないほうがいいだろうと言って残りたがっていたロルフとワクとトリスタンを連れて出ていった。執務室で見始めても良かったが、寝室の方が暗かったし見るにはいいだろうということで、ミルと寝室で映像を再生する事にした。
寝室に入ると、キレイになっているベッドを見て、「ねぇ今日も潜ってきたから、お風呂貰っていい?」「いいよ。別に急いでいないからゆっくり入ってきていいよ。」「リン。一緒に入ろう。二人だけなんて貴重だから、僕。リンと入りたい。ダメ?」「いいよ。でも、そんなに広くないよ?」「・・・それがいいんだよ。」「まぁいいかぁ」
二人で脱衣所の様になっている所で服を脱いで風呂場に入った。日本に居るときの一般家庭のよりもすこし大きくて、洗い場が大きくなっている。湯船は二人が足を伸ばす事は出来ないが、深い作りになっているので、十分の広さがありそうだ。お湯を貯められる魔道具やシャワーも備え付けられている。この辺りは、マヤが作ったのかのかしれない。僕が作る時の匂いがする。まぁ眷属もこのぐらいなら普通に作れるようになっているから、眷属が作ったのかもしれない。
「しっかりしているね。」「そうだね」「リン。そこに座って・・・。」「なに?」「いいから!」
言われるように座った。ミルが後ろから抱きついてきた。すこし大きい二つの双丘が背中に押し付けられる。
「ミル?」「いいの。すこしこうしていて、こっち向かないでよ。すごく恥ずかしいんだからね。」「・・・・。」「リン。無理に見なくてもいいよ。僕が見て、リンに報告するでもいいんだよ。」「ううん。大丈夫。僕が見ないとダメだからね。その為に、悪いとは思ったけど、ミルに来てもらったんだからね。」「解った。それなら、お風呂入ってから再生しよう。リン。手を握ってもらっていていい?」「もちろんだよ。なんなら僕が後ろから抱きしめていようか?」「う~ん。それは今やってほしいかな」「こう?」
ミルの後ろに廻って背中から抱きしめるようにした。身長差もそんなにないからだけど、丁度廻した手がミルの柔らかい場所を触れてしまった。
「リンのエッチ!」「偶然だよ。」「本当?」「わざとやってくれたほうが嬉しいな。リンなら触っていいんだよ。なんなら、次に白い部屋に行った時にも触ってみる?和葉の身体の方が大きいよ。」「へぇそうなんだ!」「そうだよ。成長しているし、神崎凛への思いが詰め込まれているからね。」「・・・・あぁ恥ずかしいな。そんなことをいうとこうだからな!!」
後ろから、ミルのお腹を揉むようにした。贅肉がなく引き締まったお腹だ。恥ずかしがる事もなく、うっとりしている。まずい。これは、ミルのペースだ!そのままミルが僕に体重をかけてくる。支える事は出来るが、男性の部分がミルの柔らかいおしりに当たってしまう。気にしない気にしないと思えば思うほど意識してしまう。
ミルが振り返って、「リンならいつでもいいんだよ?」「・・・ミル。ダメだよ。まずはお風呂にしっかり入って温まろう。」「うん。抱っこ!」
ミルがこちらに向き直って、手を広げて首にまわしてきた。そのまま僕は、ミルの背中と足を抱きかかえるようにして、持ち上げてお風呂に二人で入った。
「リン。女の子も我慢するの大変なんだよ。解っている?」
それだけいうと身体を話してくれた。解っているよ。でも、僕は・・・。どうしたらいいんだろう・・・。
もうミルはお風呂の中で温まっている。一度洗い場に戻って、ミルに背中も前も洗ってもらった。お返しに、ミルの背中を洗ってあげた。前は自分でやってもらった。そのままもう一度湯船に入って、温まってからお風呂から出た。
着替えが無い事は解っていたので、水気だけ取って、同じ服を切ればいいと思っていたら、来ていた服は洗濯しています。どうぞこれを着てくださいとガウンだけが置かれていた。まぁそれでもいいかと思って、ガウンを羽織って寝室に戻ってベッドの上に二人並んで座った。初夜って物があったらこんな感じなんだろうと思える状態に笑いが出てしまった。
「酷いなリン」「ゴメン。」
それから、ミルを抱きしめておでこにキスをした。
「ダメ!」
ミルが自分の唇を指で示している。唇に触れるようなキスをする。
「しょうがない。許す。」
どうやら許してくれたようだ。アドラから渡された物をミルと眺めてみるが使い方が解らない。マヤは知っているとは思うけど、教えてくれるとは思えない。
「ねぇリン。ここに魔力流せばいいんじゃないの?」
ミルが示す所に軽い凹みがあり、その部分だけ色が違っている。
示された場所に指をあわせて、魔力を流す。
『あぁぁぁ僕はアドラ。あ!自己紹介は必要ないね。凛君見るんだね。渡しておきながらいうのもおかしいけど、おすすめはしないよ。』「・・・・」「・・・・」『何か反論しただろけど、これは録画した僕だから何を行っても無意味だからね。』「・・・・」「・・・・」『そうそう、黙って話を聞いてくれればいい。このままあと5秒魔力を流せば自動的に再生を始める。再生は、実際の時間の1万倍位に進むからあっという間に終わると思うけど、君と一緒に見ているのは、マヤと鵜木さんかな?』「・・・・」「残念。僕だけだよ」『まぁマヤは席を外すかな?』「・・・・」「っち」『一気に頭の中に入っていくけど、自分が出演している映画を見ているような感覚になると思うよ』「・・・・」「・・・・」『あれ?まだ辞めないんだね。一曲歌おうか!』「やめろ。」「なに此奴?見せたくないの?」『これが最後だよ。今やめれば再生しないで記憶は全部消えるからね』「・・・・」「・・・・」『辞めないんだね。解った、再生を開始する。多分鵜木さんだけだと思うけど、凛君が持つ記憶媒体に手を置いて魔力を流し込んで、そして、二人で、”アドラ最高”って声に出して言ってみて』「・・・・」「・・・・」「アドラ最高」「アドラ最高」『ありがとう。それで再生方法なんだけど』「僕、次アドラに有ったら殴りそう。リン止めてね。」「ミル。それは無理。僕も同じ気持ちだから!」『鵜木さんが手を添えて、二人で”再生”と心の中で唱えて、触っている人間全員が”再生”と唱えたら、記憶が一気に流れるからね。』
ミルと二人で手を添えて”再生”と声に出して念じた。
その瞬間。雷を受けたかのような感覚が襲ってきた。ミルが僕方に倒れてくるのが解る。僕は必死に受け止めようとするが、身体が動かない。少なくても、ミルを下で受け止めない。
でも・・・身体が・・・・。ダメだ、意識も・・・・。なんだこれは・・・・

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