【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

ギルド国家テルメン王国

「リン。兄上からは了解を取り付けたぞ」「ありがとう。それで神託は有ったの?」「コンラート家に、神託が降りたらしくてな。フレットの件と合わせて、大騒ぎだったようだぞ」「そうだったんだね。」
「ミヤナック家とウォード家は?」「大丈夫。一応、国境の街シャルムの守備隊を増やす方向ですすめるって言っていた。」「ウォード家も同じです。リン兄様。」「二人ともありがとう。」
トリーア王国は、この件は広く告知する事にした。方法は、かわら版を使う方法でだけど、今まで国民を抑圧してきた一部貴族が内乱で負けて、北方連合国ノーザン・コンドミニアムのパーティアック国に逃げ込んだ事。王家としては、パーティアック国と北方連合国ノーザン・コンドミニアムに対して、王国に騒乱を起こした罪と税金の搾取の罪で、アゾレム始め10名の捕縛後に王国に引き渡す要求を出した。
引き渡す事は無いだろうけど、これで国交を遮断する理由にはなる。ローザスには、北方連合国ノーザン・コンドミニアムとの個々の国との取引は禁止しないが、推奨しないと通達を出してもらった、商人たちもわざわざ危ない橋を渡らなくても、ゴッドケープ島経由で各国に商売に行ける上に、各国からも商人が来る。まだ手探り状態が続いているが、そのうち特色が出来ている事になるだろう。ゴッドケープ島のビッグスロープ神殿には商人が拠点を作り始めている。マガラ神殿と同じように出る時に、税金を摂取しているので、中で取引したり、加工して加工品にして自国に持ち帰って売ったり出来るようにしている。
執務室で報告書を呼んで指示を出していると、アデレードが戻ってきた。「なに?何か有ったの?」「いや、兄様からの伝言を忘れていた」「ん?」「兄様の戴冠の日取りを2ヶ月後に決定したって事だぞ」「了解。流石に出席しないとまずいよね?」「当たり前だ。フレットの披露宴も開かれるからな。」「そりゃぁ行かないとだね。」「あぁ正式な通達は追って送ると言っていたぞ。」「うん。解った。」
そうか、もうそんな時期になってきたんだなシュトライトが入室を求めてきた。
「リン様」「何かあった?」「いえ、アデレード様からローザス殿下がご即位なさると聞きまして、そのタイミングで、テルメン王国も建国してはどうかと思いまして・・・。」「そうだな。もう準備は終わっているんだよな?」「はい。いつでも大丈夫です。」「そうか、それじゃイリメリや皆と相談していい日取りを考えてくれ。」「かしこまりました。それで・・・・」「どうした?」「いえ、王国の名前なのですが、”テルメン王家”で”テルメン王国”でよろしいですか?」「あぁ何か問題でも?」「いえ、最終案として、マノーラ王国やギルド国家とかも候補として有りましたので・・・。」「そうか、ギルドと王家は切り離しているんだろう?」「はい。それは別物でギルドは独立した組織になります」「それならいい。」「しかし、周辺国はもとよりマノーラ神殿に居る領民たちも、ギルド=テルメン王国という様な捉え方をしています。」「・・・そうなのか?」「はい。もう手遅れな位です。」「・・・そうか、重要ポストは別にしておいて、時間の経過を見るしかないか。」「それがよろしいかと・・・。」「あぁそれで、建国はどうしたらいいんだ?」「それは・・・何分、皆初めての事でして・・・。」
そりゃぁそうか・・・。建国を経験した奴が居たらそれはそれで怖い。まぁ適当な日取りを決めて、皆を集めて、”テルメン王家”建国宣言をすればいいのか?それとも、アメリカ大統領みたいにするか?困ったときの・・・
「エミール。イリメリを呼んできて欲しい。」「わかりました。」
しばらくして、ドアをノックする音がした。イリメリとサリーカをエミールが戻ってきた。
「なに?」「建国を発表しようと思うんだけどどうしたらいいかわからなくてね。」「それを私に?」「うん。イリメリならなんとかしてくれるって思ったからね。」「リン。私だって解らない事は有るんだからね」「それはそうだろうけど、みんなわからないのなら、イリメリが一番適任だと思ったんだけどダメ?」「・・・・イリメリ。諦めよう。こういうやつなんだよ。リン。それでもう建国を発表しちゃっていいの?」「うん。2ヶ月後にローザスが戴冠して即位するから、その前にと思ったんだよ。」「そう・・・。ねぇイリメリ。」「なに?」「ギルドの幹部と各街の幹部連中を集めるのに、どのくらいかかる?」「そうだね。通達から急げば3日程度で、余裕を見て1週間って所かな。」「りょうかい。」
何か、サリーカが思いついたようだ。
「リン。宣言だけして終わりなんて事にはしないよね?」「どういう事?」「建国祭みたいな形にはしないのかって事?」「あぁそういう事なら、建国祭は、皆が神殿の攻略をした時にした方がいいと思っているんだよ。だから、半年位先かな?」「え?それでいいの?」「うん。王家と王国の形をつくって、ローザスに”他国の王”として招待させたいからね。」「あぁそういう事なら、話は簡単だと思うよ。」
「サリーカ?」「うん。イリメリは、リンが読み上げる建国の主文を作って欲しい。アデレードとエミールで書き上げればいいんじゃないの?」「う。うん。サリーカは?」「私は、関係者を集める。それで、謁見の間で、開国宣言みたいな形にしちゃえばいいんじゃないの?」「あっそれならそんなに文章もこらなくていいね。」「うん。それから、現在の代表が仮の代表で約半年後の開国記念日の前に選挙を行い。国の代表とギルドの代表やらを決めていくって流れでどう?」「うん。うん。」
完全に置いてけぼりだが、優秀な二人の嫁にまかせておけばいいだろう。僕は出来上がってきた原稿とスケジュールをしっかり把握して実行するだけだ。
「って事で、リン。1週間後に、関係者全員集めて、開国宣言をリンに謳って貰うからね」「うん。了解。」「それと、各代表にリンの名前で通達を出すからよろしくね。」
それから慌ただしかった。準備はしてきていたが、急な事には間違いはない。それも、国としての宣言をするだけで、記念祭などの行事は今から6ヶ月かけて準備する事になった。
1週間後に、玉座の間の中央の椅子に僕が座っている。右側に、ミルを先頭に眷属たちが並んで居る。左側に、アデレードを先頭に妻達とギルド関係者が並んでいる。すこし離れた位置に、ゴッドケープ島の各神殿を任せる代官候補達も神妙な面持ちで並んでいる。サラナとウーレンは、ミルの後ろに付き従うようにしている。僕の後ろ側には、マヤと各神殿のニンフが並んでいる。妻達の続きには、職人や商人の各代表や学校関係者のトップが参列している。
結構な数になっているが、大きめに作っている謁見の間はまだ余裕がある。
最後の一人が入場して、指定された場所に移動して、案内をしていたエミール達がミルの横に移動して、僕に一礼した。婚約はしているが、まだ妻になっていない為に、僕に臣下の礼を取るのだと言っていた。
おもむろに僕は立ち上がった宣言する「リン=フリークス・テルメン・フォン・マノーラは、トリーア王家から与えられた名前だ。これは、トリーア王家においてきた。僕は、今日から リン=フリークス・アルセイド・ド・テルメン となる。そして、ここに”テルメン王国”を開国した事を宣言する。今までも色々有ったが、これからも苦難の連続だろう。だが、僕は確信している。ここに居る皆とならその苦難も楽にこなせるであろう事を・・・。僕に、テルメン王家に力を貸して欲しい。」
ここで一拍置く。周りを見回す。
「僕は、このテルメン王国を、貴族の政治体系の国と同じにしようとは思っていない。テルメン王国は、領民こそが主役になる政治だ。皆の代表と王家から選出される代表によって政治を決めていく。ギルドは、政治にはかかわらない代わりに、国家にも属さない組織として動いてくれ。法も制度も作られたばかりだ。皆と議論してよりよいものにしていきたいと思う。些細な事でも言って欲しい。その為の仕組みは作ったつもりだ。」
「テルメン王家は僕が作った国だが、君達が自分の為の国にしていって欲しい。その為の手助けをするのが国家の役目だと考えている。小さな小さな意見でもそこから新しい大きな波が産まれる事を僕は知っている。」
「皆。誰のためでもない。自分の為に、力を知恵をそして気持ちを使って欲しい。」
「テルメン王家。初代国王 リン=フリークス・アルセイド・ド・テルメン 」
僕が皆に一礼して、振り返って、玉座に頭を下げるまばらに発生した拍手は万感の思いを載せた拍手に変わっていった。
やっと個々まで来た。ニノサ。サビニ。お前たち二人がこんな事を望んでいたとは思わないけど、おまえの息子は、ここまで来たんだ。褒めに来るのなら、一度だけなら、自然の摂理を覆す事を許してやるぞ。そして、そうしたら、もう簡単に死なせないからな。ニノサ。サビニ。早く、僕とマヤを褒めに戻ってこいよ。いつまで待たせるんだよ。待ちくたびれちゃうだろう。
「リン。」「何?マヤ?」「パパとママは喜んでくれるかな?」「どうかな?死ななかった事は褒めてくれるかもしれないけど、王になった事は褒めてくれないような気がするんだよな。」「そうだね。リンには早すぎるとかいいそうだね。」「そうだな。ニノサなら間違いなくそういうだろうな。」「・・・そうだね。」「なぁマヤ。僕は、ニノサやサビニの息子だって胸張っていいよな?」「うん。僕の大好きなお兄いちゃんだよ。」「・・・マヤ。ありがとう。マヤがいたからここまでこれたんだよ。」「ううん。僕がいなくても、リンには、ミルやイリメリ達が居るでしょ。」「・・・うん。でも、マヤが必要なんだよ。」「知ってる?」「何を?」「リンは、僕から離れられないんだよ。」「そうなの?」「うん。どこに居ても、リンは僕の所に戻ってくるんだよ。」「そうか・・・マヤ。これからもよろしくな。」「うん。お兄ちゃん!そして、僕の旦那様!」
振り返ると、ミルやイリメリ達がやれやれと顔で見ている。手をあげる。歓声が大きさをます。
手を下ろすと歓声も拍手も徐々に静かになっていった。
「これから、各部署のトップの人事を発表する。手元の資料を見て確認して欲しい。最初に言っておくが、これは最初6ヶ月間の暫定的な処置だ。次からは領民や配下の者から一番支持を集めた者がトップになる。それらの方法も、説明には書かれているが、解らない場合は、王城を訪ねて欲しい。誰かしら説明出来る人間を配置しておく。」
皆が資料を見ながらザワザワしている。最初の人事は、今までの作業と効率を考えて大きくは変えていない。すこしだけざわつきが収まってきた。
「それでは、各自解散。今日は、神殿内の食堂を解放しているので、好きに飲み食いしてから明日以降職務に入って欲しい。」
「「「「おぉぉぉぉぉ」」」」
だいぶ急ごしらえな感じだったが、テルメン王家とテルメン王国の宣言が出来た。後は、これをローザス達に言って認めてもらえばいいだけだ。

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