【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

幕間 ジェシカとロベール

イリメリさん達に連れられて、マノーラ神殿といわれた場所に着てから生活が一変した。何かが変わったという事ではない。”全て”が変わったのだ。まずは、同居人は、大好きなジェシカだけとなる。これは、ここに来る前に確定した事だ。二人で生きていくと決めたのだ。
マノーラ神殿と言っていたが、正確には、アップルグッド神殿が正しいそうだ。
まずは、ニグラのギルドに連れて行かれて、ギルドカードを作成した。他の街でも作れるという事だったが、ニグラで作るのが良いそうだ。そこで、私とジェシカでパーティを組むという設定になった。ルイとホアロもそれぞれギルドカードを作成した。イリメリさんが言っていたように、ホアロはロックハンド神殿に移動して学校に行く事になった。ルイもそれについていく事になった。ジェシカが心配だからと、ついていくことになった。マノーラ神殿には、マガラ神殿から転移門トランスポートを使ってゴッドケープ島の出島と言われる場所に行く必要がある。そこで入国審査を受けると説明された。イリメリさんとフェムさんから渡された書簡を見せたら、すぐにマノーラ神殿に移動できた。その足で、まずはロックハンド神殿に行く方法を探した。ギルド本部が有ったので、そこで聞いてみたら丁寧に教えてくれた。そして、ジェシカ宛にマノーラ侯爵から書簡が届いているといわれて、受け取った。ジェシカが中身を確認して、声をあげて書簡を落としてしまった。ギルド職員の女性は、内容を把握しているのか、私達4人をギルド本部の中にある会議室に一旦通してくれた。私やホアロやルイは何が有ったのか解らないままに通された。ジェシカはまだ青い顔をしている。よほどびっくりしたのだろう。
「ジェシカ?何があったの?」「・・・あっゴメン。そうだ。ロベール。これ読んでみて。」「いいの?」「うん。ロベールやルイとホアロにも関係する事だと思うからね。」
渡された。書簡を一読した。確かに、ジェシカがびっくりするのが解る。ジェシカの父親の名誉が全部復活したのだ。そして、過去に遡って報酬を支払う事になって、全額をジェシカが相続する事になった。また、ヴェスタ街の生き残りが私達4人だけになってしまった事で、現在のヴェスタ街の家や物品をマノーラ侯爵が買い取る。建物は保管出来ないが、思い出の品になりそうな物は保存しておくから、気持ちの整理が着いたら買い物してもよいという事だ。そして、買取したレインを私達4人に均等に渡すと書かれていた。そして、これは施しではなく私達が受け取る事が出来る正統な権利を有する物で拒否する事は許さないと書かれていた。ここまでなら、私も声を上げる事はないとは思うが、レインがすごかった。ジェシカの父親の報酬が、大金貨で1枚と金貨47枚。私の兄さんの報酬として、金貨13枚。ヴェスタ街の物品の買値が、全部で大金貨4枚と金貨80枚。
馬鹿じゃないの?っと思ってしまった。それも、拒否できないというおまけ付きだ。
ドアがノックされて、ギルド職員が入ってきた。「書簡は確認されましたか?」「・・・・」
「すみません。うちの親分。馬鹿でしょ?」「いえ・・・でも、・・・・。」「そうです。最悪、侯爵権限で押し付けてきます。」「・・・あぁぁでもこんな沢山のレイン持ち歩いたり、家においておくのが怖いです。」「あっニグラで説明受けませんでしたか?」「・・・・?」「その様子だと何も聞かされていないで連れてこられたってパターンですね。」「あっはい。イリメリさんに・・・。」
「あぁイリメリ奥も普段はしっかりしている人なんですけど、リン様が絡むと途端にダメな人になってしまうんですよね。まぁいいです。それじゃギルドカードの事から説明しますね」「あっはい。お願いします。」
職員さんが説明してくれたのは、パーティ機能と同時に付け加えられた、銀行機能という物だ。私の理解では、レインをギルドにあずけておく事が出来て、ギルド関連の施設や商店で、ギルドにあずけているレインから自動的に引かれていく仕組みになっている。そして、ギルドカードは本人以外には使えない仕組みになっているので、たとえ盗難されてもレインがなくなる事はないのだという事だ。それだけでもすごいのに、パーティ間ではレインの受け渡しもできるのだという。それで、例えば、ルイがホアロのレインを預かって、ホアロにお小遣いとして渡す事もできるのだという。
全員で話し合って、ジェシカをチームリーダにしたチーム『ヴェスタ』を申請する事にした。ホアロは学校に行く事になるが、別に問題ないといわれた。そして、ジェシカは猛反対したが、ヴェスタ街の売買のレインは全部ジェシカが持つ事になった。私は、兄さんの金貨13枚だけを貰う事にした。ルイとホアロは、全部を自体した。ホアロは、明日から学校に行く事になるので、衣食住は保証されて、1ヶ月学校に行って勉強して月に銀貨1枚の報酬を得る事になる。ルイも学校に通いながら、ロックハンドでギルドの仕事を手伝う事になった。その為に、二人とも衣食住は保証される事になった。それだけで十分だということで、全部をジェシカに押し付けた形になる。ギルド職員がそれではジェシカさんが重荷に感じるのではないかという事で、一つの提案をしてくれた。
アップルグッドに、ギルドホームを作ってはどうかという事だ。そして、チームホームの説明をしてくれた。要するに、僕達が住む家であるチームメンバ募集を行うときの基準となる物だといわれた。
ジェシカもそれがいいというので、私達には反対する理由もないので、アップルグッドにチームホームを持つ事にした。ルイとホアロは学生の間は、ロックハンドで寮暮らしをして、時々チームホームに戻ってくる生活をする事になる。
ルイとホアロは、ロックハンドで寮に入る為の手続きと日用品の買い出しを行うという事だったので、ジェシカから金貨1枚が渡された。そんなに要らないと二人は言っていたが、半ば強引に押し付けた形になる。二人とは、ここで別れる事にした。ロックハンドまではギルド職員が連れて行ってくれるという。
そして、私とジェシカはアップルグッド神殿のギルド支部に向かった。そこで、ホームの事を聞くと、何件か物件があるからそれを購入するか、借りるか。それとも、すこし離れた所に、自分たちで建てるのかを聞かれた。まずは、予算を聞かれたので、ジェシカは大金貨4~5枚で内装を整える事を考えると、大金貨4枚で抑えたいと言ったら、それなら、どこでも好きな所を選べるといわれたので、中央広場からすこしだけ離れた場所に建っている物件を見せてもらう事にした。そこが、大金貨3.5枚で買えるホームなんだといわれた。
職員に連れられて、物件に向かう事になった。街並みは、すごく整っていて綺麗だ。もう幾つかのチームがホームを申請しているとの話だ。中には、元々貴族の守備隊をしていたが、冒険者になってここにホームを持ったチームもいるといわれた。商店街らしき所もあった。これなら、食事や買い物には困らないだろう。女性専用の服屋や下着ショップも有ったので、後でジェシカを連れて来ようと考えている。お風呂も、中央のギルド支部の裏に大きめな銭湯と言われる施設があり、ギルドカードの提示でただで利用できるのだといわれた。これで、お風呂にも入れる事が確定した。一度経験してしまうと、お風呂が恋しくなってしまう。あと、イリメリさん達から渡されたこの服ももう何着か欲しいし、洗濯をする魔道具やキッチンセットの魔道具も欲しい。どの位レインがあれば足りるのか解らないけど・・・。
「そう言えば、この辺りの屋敷だとホームを作るのにどのくらい必要なのですか?」
職員さんに聞いてみた。
「そうですね。あの4階建ての建物だと大金貨1枚程度でしょうかね。その隣は、ちょっと高くて大金貨1.5枚だと思いました。」「え?何が違うのですか?ってそんな価格なんですか?」「えぇそうですよ。値段の違いは、設備や地下とかでしょうかね。あと、設置されている魔道具とかも違いますから、一概にはいえませんね。」
ん?待てよ。あの立派なお屋敷で、大金貨1枚ってことは・・・。
「あぁ付きましたよ。あれが、そうです。ちょっと待って下さいね。魔道具を切りますからね。」
へ?ジェシカの顔を見る。多分、私と同じ顔をしていると思う。目の前に有るのは、大豪邸といわれるような物だ。家には門はないが、さっきの建物がゆうに3棟入るくらいの広さを持ち。4階建ての建物で、一階部分は、広く空けられていて、大きな商店が開く事が出来る。馬車もそのまま入れられそうだ。そうだ、ニグラで行ったギルド支部に似ているのだ。
職員さんは、ギルドカードとは違うなにやらカードをかざしている。
「はい。これで結界が解除されました。」
結界の解除?
「結界とは?」「あぁ先に行っておきます。この屋敷は、侯爵とタシアナ奥とサリーカ奥が好き勝手に作った為に、売れ残ってしまった物です。」「え?売れ残りなのですか?」「えぇそうです。イリメリ奥とフェム奥とアデレード奥から、売る人間を選んでくれといわれています。そして、失礼ですが、お二人は、イリメリ奥とフェム奥からの紹介状が出ています。この屋敷以外は・・・正直やめていただきたい。」「・・・。ここを購入して欲しいという事ですか?」「言葉を飾らずに言えば・・・そうです。」「もう一つ言えば、売値も、侯爵からは、1レインでもいいといわれています。お二人が、黙っていて頂けるのなら、ギルドとしては、”1レイン”でお譲り致します。どうでしょうか?」「え?1レインって賤貨一枚ってことですか?」「そうです。」
ジェシカがすごく困った顔をしている。私としては、それでもいいとはおもう。レインがあって困る事はない。これだけの広さがあるのなら、人を雇わないと維持できないのは間違いない。その為にもレインは必要になってくる。でも、多分ジェシカは違う事はいうんだろうと確信している。
「いえ、大金貨3.5枚お支払致します。」「そうですか、それで、ここにチーム『ヴェスタ』と登録してよろしいでしょうか?」「・・・。」
ジェシカが答える「はい。お願いいたします。」「ありがとうございます。それでは、支払いは一括でも分割でも大丈夫ですので言って下さい。」「あっ・・・一括でお願いします。」「解りました。ジェシカさんのギルドカードから引かせてもらっていいですか?」「はい。お願いします。」「ありがとうございます。それでは、屋敷の中の者が詳しく説明致します。私はここで・・・。」
そう言って、職員はさっさと帰ってしまった。「ねぇジェシカ?」「ロベール。僕に聞かないで、僕も混乱しているんだから・・・。」「でも、これから、ここが私達の家になるんだよね?」「そういう流れだったよね?」
恐る恐る奥のドアを開て中に入った。そこは、大きなホールになっていた。そこに、女性が4名立っていた。全員がすごく美人だ。よく見ると、獣人の様だ。誰だろう?さっき言っていた説明してくれる人なんだろうか?
「あの・・・。」「ジェシカ様。ロベール様。」「え?」
「私は、カルラといいます。リン様の眷属です。リン様から、ジェシカ様とロベール様の護衛兼従者をするように言付かっております。」「同じく、ナータといいます。」「同じく、ブルクといいます。」「同じく、ビーネといいます。」
「護衛?従者?」「はい。まずは、どうぞこちらへ」「あっはい。」
カルラと名乗った女性に付いて屋敷の中を歩く、奥の部屋に入った。テーブルが置かれていて、奥に腰掛けるようにいわれて、腰掛けて待っていると・・・。先程の4人とは別の二人が飲み物を持って現れた。私とジェシカの前に飲み物を置いて、入り口を閉めて、「私は、モニカといいます。」「私は、カーヤといいます。」
先程、案内をしてくれたカルラさんが目の前に座って、「何から話ましょうか?」「・・・・全部お願いします。何がなにやら・・・。」「やはりそうですか?リン様からは何も?」「・・・はい。」「は・・・ぁ。やはりですか・・・。解りました。それでは、全部説明致します。」
眷属と名乗った6名は、ジェシカと私の従者をする様に言われているという事だ。衣食住の保証だけをすればよいという事だ。それも、衣は屋敷にすでに用意されているので、改めて用意する必要がない。住も屋敷に使用人用の屋敷があるので、必要ない。食に関しては、これからジェシカと私が冒険者として狩りに出かけた時に得たものや自分達で狩りに出かけて得た者を売買した者で得る。ということで改めて用意する必要はない。もう一つの護衛のほうも、ジェシカと私がギルドの基準でいう所のSクラスになるまで一緒に狩りをして鍛えてくれるのも込みになっているのだという事だ。それは私としてもすごく嬉しい。二人だけでは辛いと思っていた。他のパーティを探すにしてもなかなか難しいだろうと思っていた。ルイやホアロが来ても、まだ4人だしバランスが悪い。しかし、カルラさん達が入ればバランスを取ってくれるという事だ。
そしてギックリしたのが、この屋敷には、お風呂も付いているし、カプセルハウスでみた魔道具の上位版が全て設定されているのだという。またそれらを動かすための魔石も必要なく、神殿から自動供給されているので、使わないと問題になるので、是非使ってくれということだ。
あとはいろいろと歩きながら、部屋を確認して、設備の説明をしてくれた。イマイチ使い方や意味が解らない物もあったが、それは再度教えてくれるといわれた。
また、なぜか、遊戯室まであって、ニグラで人気だと言われている物が幾つか置かれていた。寝室は全部で21個あり。全部に簡易風呂がついている。それ以外にも、会議室があったり、大きいキッチンがあって食堂がある。正直に言えば、私とジェシカだけなら使用人の部屋でも豪華すぎる位だ。でも、それをいうと、やんわりと”慣れて下さい”と言われてしまった。
チームリーダであるジェシカには、執務室が与えられる事になる。そして、チームリーダの補佐を私がするので、私にも部屋が与えられた。
部屋の説明や設備の説明を受けてから、もう遅い時間になったので、モニカとカーヤが食事を作って”二人”で食べて一緒にお風呂に入って寝る事にした。別々の部屋が割り当てられたが、最初は別々の部屋に分かれて入ったが、落ち着かないのか、二人して廊下で鉢合わせしてしまった。その後ジェシカの部屋で大きなベッドで二人で寝る事にした。
「ねぇロベール。これって夢だよね?僕は夢を見ているんだよね?」「そうだね。夢のほうがもっと現実的だと思うよ」「・・・。」「・・・・。」
「ジェシカ。」「何?」「ジェシカは、イリメリさんのステータス見た?」「ううん。失礼だと思って見なかったけど何で?」「そう・・・。とんでもなかったよ。」「ロベールは見たの?」「・・・・うん。」「そう・・・。ねぇなんで僕達にここまでしてくれるんだろうね?」「・・・イリメリさんに聞いたら、贖罪だって言っていたよ。」「贖罪?」「うん」「でも、僕達は謝られるような事をされてはいないと思うけどね。少なくても、侯爵達にはね」「うん。でも、イリメリさんは言っていたよ。侯爵が望んだ事だから・・・ってね。」「・・・。侯爵にでっかい借りが出来たね。」「そうだね。でも、何が出来るんだろうね。」「何にも出来ないじゃすまないだろうから、何かできそうになろうよ。」「そうだね。」
これからの事を話し合いながら、今までの事を考えてみた。どちらが夢なんだろう。どちらも現実だけど、どちらも現実じゃない様に感じる。でも、私の横に、ジェシカが居る。それだけは、侯爵に感謝しよう。こんなに安心して寝られる場所を作ってくれた事を、そしてこれから努力してこの環境を維持していこう。まずは、強くなる。イリメリさんみたいにとは言わない。でも、ジェシカと歩ける位には強くなりたい。一緒に・・・・。

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