【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

リン=フリークス立つ

僕に何をやらせたいんだ?結局、ここでも一人も救えなかったんじゃないのか?
「あるじさま」「あぁトリスタン。どうした?」「ううん。あるじさまが何か考え始めたら、呼んであげてってミルから言われている。」
ミルが何を心配しているのか解る。そうだよな。全員救おうと思うのが間違っている。少なくても、救えた命がある事を考えないと、救った命を今後しっかりと保護していかないとダメなんだろう。
「あるじさま。ミルが来ますよ。」
ホレイズ街から、ミルが戻ってきた。「ミル。どうしたの?」「書類の整理は、サリーカに任せた。僕が居ても邪魔になるっていわれた。」「そうか・・・。それじゃミル。捕虜の尋問に一緒に行こう。ミルが一緒なら安心出来る。」
ミルに案内されて、捕虜が居る建物に入っていく。手傷を負っている者も居るようだが、初歩の治療しか行っていない。
「話が出来そうな人は居るの?」「う~ん。全員、だんまりだよ。」
全員を見回す。10代後半から20代前半の人間しかいないようだ。男性だけで、ざっと見た感じ22名ほどだ。
「ミル。誰も話さないんだね。」「うん。話したくないみたいだよ。」「そうか、全員がヴェスタ街の虐殺に関連していると思っていいみたいだな。ローザスに伝令を出そう。あぁ伝令も要らないよね。即決裁判で死罪で問題ないだろう。」「そうだね。別に真実なんて知らなくても、僕達が史実を作ればいいんだからね。館を抑えたし、守備隊の名前は解るから、そこから適当に犯人を出せばいいでしょ。」「あぁ家族も居るだろうけど、まぁこんな馬鹿な領主に仕えさせていた愚かな両親だから、どうなってもいいだろう。」
全員の顔色が変わる。死罪にまではならないと思っていたのか?
「リンにというよりも、無抵抗の領民を大虐殺したのだから、生き残りに同じ事をやらせてあげてもいいんじゃない?」「あぁそうだな。奴隷紋で魔法を封じた状態で、柱にくくりつけて、目隠しと口枷をして、抵抗出来ないようにして、生き残りに敵討ちをさせてもいい。子供が数名生き残っているんだよね?」「うん。今こっちに向かっているよ。」「そうか・・・子供しかいないのか、死ぬまで時間がかかるだろうな。力が弱いから、筋肉で弾かれちゃうかもしれないし、あぁ男性の大事な所を切り落とすようにいわないとな。それで、領民を犯したのなら、それ相応の罰は受けないとな。」「いいね。そう言えば、前に残虐な処刑方法で、切り落とされた自分の物を口に咥えさせられて、首を徐々に閉めていくという方法があったらしいよ。それでもいいと思うけどね。それだけの事をしたんだろうから・・。」「でも、誰がやるのそんな事?僕は嫌だよ。」「僕も嫌だよ。でも、これだけ人数が居るんだから、一人位許して、その役をやらせればいいんじゃない?」「そうだな。ついでにそいつは、全員が死ぬまで見張りをさせてやればいいな。誰か生きている間は生きていられるなんて素晴らしい連帯感が産まれるだろうな。」
「・・・侯爵?」「ミル。誰か呼んだ?」「解らない。空耳じゃないの?ここには、豚が外道しかいないから、人様と同じ言葉を喋るとは思わないからね。」
「リン=フリークス・テルメン・フォン・マノーラ侯爵。わ、私達は、命令されただけです。それで仕方がなく・・・。」「あ”?仕方がなく?何をしたんだ?全部言ってみろ!!!」
「あっ・・・。」
「仕方なく、命令だから、ヴェスタ街に攻め込んで無抵抗の領民を犯して殺して奪ったのか?それだけじゃないよな?お前たちは、何をしたんだ?仕方がなく?それじゃ、俺も仕方がなく、お前たちを領民の生き残りに捧げることにする。それでいいんだろう!違うか?答えろ!」
「・・・あっ・・・。」
「答えろ!答える気がないのなら、俺に話しかけるな。非常に不愉快だ。」
「・・・待って下さい。お願いします。私には、子供が・・・。」
「だからなんだ?」「はっ?」
「子供が居るから見逃せって言うのか?それじゃ心置きなく死ねるように、おまえの家族から殺してやる。名前を言え!おまえが殺したか犯したかしらないが、その人間にも家族や愛する者が居たんだぞ。子供が居たかもしれない。それを殺しておいて、自分が弱い立場になったら、それか、クズ。死すらおまえにはもったいない。」
「・・・。あうぅ・・・ぁ」「なぜ泣く?嬉しいのか?そうか、家族と一緒に死ねるのは嬉しいのか?あぁぁぁ答えてみろ!」
「・・・あぁ許してください。許してください。なんでもいいます。家族だけは、家族だけは・・・。」「そうだな。殺された人たちも同じ事を思ったんだろうな。ここで、俺が、お前たちだけを許すのは不公平だとは思わないか?」「・・・・。あぁぁぁぁ神様・・・・お慈悲を・・・・。」
あぁダメだな。自分がした事を反省の一つでもしてくれたら、助けても良かったんだけどな。それもなくて、神に縋ろうなんて最低の行為しかやらない奴は生かしておいても意味がない。殺してしまうのも後味悪いから、どうしよう・・・。『ミル。何かいい方法ない?』『アッシュに言って、全員最下層の奴隷に落としちゃうってのは?』『あっそれいいな。それにしよう。ミル。ありがとう。』『いいえ。お礼は、別のかたちあるものでお願いね。』『わかったよ。』
ん?『リン。』『どうしたイリメリ?』『あぁよかった。探していた二人は保護したよ。それから、後二人生き残りが居たよ。話を聞いて、2~3日休んでから、合流するよ。』『・・・・よかった・・・。生き残りが・・・。本当に良かった。怪我とかしてない?大丈夫?』『うん。4人とも元気だよ。今日は、フェムのカプセルハウスで休ませるよ』『あっわかった。お願い。それから、復讐をしたいという子は居る?』『・・・。仇を取りたいとは思っているみたいだけど、自分で力を付けてって思っているみたいだよ。』『了解。こっちに捕えた下っ端じゃなくて、伯爵にツケを払わせる方がいいみたいだね。』『うん。』『解った。ありがとう。』
『ミル。聞いていた?』『うん。』『って事だから、奴隷落ちで良さそうだね。』『そうだね。』
「喜べ。お前たちのしたことへの罰を決めた。」「・・・・家族だけは、家族だけは・・・。」
「安心しろ。家族には、知らせてやるよ。お前たちが”ヴェスタ街で罪なき領民を犯し奪って、殺した”罪で奴隷落ちしたと伝えてやる。後で、書面を作ってくるから、それにサインしろ。それができたら、家族には一切手を出さないでやる。勿論、サインした奴の命だけは助けてやる。」「あぁぁぁ・・・・」
全員が泣き崩れる。最初からそうしていれば感情も違った方向に行ったかも知れないけど、もう無理だな。
全員に、奴隷紋を刻んで、眷属に連れられてニグラまで行かせる事にした。22名全員がサインした書類も一緒に送る事にした。
連れられて行く奴らの顔を全員見て忘れないようにしておく。もし、また僕に逆らうような事があったら、躊躇なく首を刎ねる。
ウォード街も心配だ。ミヤナック家も何が発生するか解らない。商隊に関しては、ギルド関連の商隊しか、街に入れないようにお願いしている。後、眷属に連絡をして、転移門トランスポートで油や燃料になるような物が申告した量よりも多かったり、隠し持っているような場合に、検知できないかを試してもらっている。入ってきて、マガラ神殿内で何かするのも困るが、それは対処が出来る。転移門トランスポートを閉じてしまえば逃げる事が出来ないのだ。犯人探しは容易になる。それに、犯人も転移門トランスポートが閉じられてしまえば、自分が死なないように消火活動に参加せざるを得ない。それに、転移して、火災があった階層に大雨を降らせる事も出来る。そういう意味では災害対策はしっかり出来ている。だから、問題は、マガラ神殿を経由して、ミヤナックやウォード。ニグラに移動されてから暴動を起こされる事だ。今後の課題としておこう。今のところは、問題がないと思うので、そのままにしておく。
ミルとヴェスタ街に向かう事にした。道中、イリメリやタシアナから定期的に連絡が入っているが、やはり4人以外の生存者は居ないようだエミールからも、ヴェスタ街で生存者を探すのは絶望的と連絡が入ってくる。
街の散策を明日にして、今日は街の近くで一泊する事にする。これまでの事を、宰相に連絡をして、ローザスやハーレイにも連絡を入れておくことにした。カプセルハウスでミルと風呂に入って、出てきた所で、エミール達が戻ってきた。
眷属経由で、アデレードからも連絡が入った。今から、ニグラでローザスとハーレイを含めた話し合いをしたいといわれた。今日は、もう行軍をしない事から、この場所をアカム達にまかせて、僕とミルとエミールでニグラに転移した。
ニグラ支部では、すでに、ローザスとハーレイが揃っていた。僕とミルとアデレードとルナとエミールとローザスとハーレイと、ナッセとナナが同席する事になった。
エミールから現状報告をさせた。ホレイズ街の完全支配とヴェスタ街の虐殺事案を含めて、包み隠さずに報告した。時折、ローザスとハーレイが質問の形を取っていたが、ほぼ確認に近い内容だ、初めて聞かせる話としては、ヴェスタ街の領民で、現在生存が確認されているのが、4名であること。そして、4名のうち3名が女性で一人が男の子だという事も報告された。男の子は、落ち着いてから学校に預ける。男の子の姉も、学園都市で住まわせる事になる。残りの二人は、一人は以前の領主の娘だという事だ。イリメリからの連絡ではその二人は、ギルドで冒険者になる事を望んでいる。らしい。
それから、今回のヴェスタ街の虐殺に直接関わった、伯爵の息子は、すでに両名とも死亡しており、一人は死体の検分が出来ている。もう一人の、ヴェスタ街の領主の方は、死体がどうなったのか解らない。ただ、死んでしまった使者の手紙を信じれば、すでに死んでいるだろう。死んで居なかったとしたら、エミール達に捕まっているだろうから、そうなっていない所をみるとすでに燃えてしまったかだろう。
ここまでの報告をした所で、ウォード家からの報告になったが、こちらは、ウォード家がまだ後始末に追われているので、簡単に問題がないという事だけしか解っていない。領民に犠牲者が出てしまったらしいが、それでも最小限に押さえる事ができたと報告されていた。ただ、首謀者が解らないままなので、ウォード家では現在入場記憶を調べている。2~3日は必要になりそうだという。大筋では、アドゥナの商隊の荷馬車だという事は分かっているので、状況証拠としては十分だろう。
「リン君。ここに至ってだけど、父上より勅命がくだされる事になった」「陛下から勅命?」「あぁ今までは、法的には地方の反乱を押さえよという事と、リンの部隊が正規の部隊である事を認める事しかできなかった」「・・・そうだったね。」「でも、流石に、やりすぎた、ウォードの件は商隊の暴走で片付けそうだけど、ヴェスタ街の虐殺はダメだ。見過ごす事が出来ない。」「あぁでも、それでも、首謀者は死んでいるんだぞ」「分かっている。これは僕とハーレイの役目だけど、ローザスとハーレイの名前で、ホレイズ伯爵をかばう、アドゥナとマシュホムの両伯爵への出頭命令を出す。」
周りの雰囲気がガラッと変わったのが解る。これが意味するのは、伯爵家の取壊しを意味する。全面紛争に突入する可能性が高くなった事を意味する。ローザスが出されたお茶を一口飲んで
「それで、リンには、討伐隊の司令官が命ぜられる事になる」「ローザスでなくて?」「あぁそうだ、リン=フリークス にだ。」
そうか、トリーア王家としては、やはりローザスの手を汚すわけには行かない。ハーレイも将来に渡って、ローザスを支える立場になる。そうなると、ここで手を汚すよりは、汚れた剣を持っていると思われたほうがいい。僕は、トリーア王家の”人斬り以蔵”になればいいという事なんだな。
「ローザス。それは、陛下からの勅命が降りると思っていいのか?」「あぁそうだ。」「わかった、それは謹んでお受けしましょう。」「そうか、助かる。」「ローザス。まだ話は終わってない。」「なんだ?」
ハーレイが僕を睨んでいるが、気にしないで話を続ける。「ローザス。ハーレイ。二人に約束して欲しい。」「何をだ!」「なんだ?」「3伯爵が多分死ぬことになる。他にも多数の子爵家や男爵家が取壊しになるだろう。」「あぁそうだな。でも、それは決まっている事だ」「そう、決まっている事だからこそ、彼らの13歳以下の子供は全員僕の所で預からせて欲しい。」「何?それはどういう事だ?」「彼らを僕の下で保護したいと言っているんだ!」
ミルとアデレードとルナはやれやれという顔をしている。驚いているのは、ローザスとハーレイとエミールだ。ナッセとナナはやっぱりと思っているようだ。
「リン様。でも、彼らから見たら、リン様は仇に見えるのですよ。そんな者たちを、お側に置くわけには行きません。」「エミール!」ミルの一声で、エミールは黙ってしまった。
アデレードが、エミールをすこし抱き寄せながら、「リンよ。妾も反対じゃ。でも、それは、エミールの理由とすこし違う。トリーア王家はそこまで軟弱じゃないぞ。」
アデレードはわかったようだ。僕がやりたいのは、別に伯爵家や子爵家や男爵家がどうなろうと関係ない。むしろ潰れてくれる方が嬉しい。でも、多分その後で、立花達との決戦になる。その時に、すこしでも邪魔になりそうな物は排除しておきたい思いがあるが、それ以上に、ローザスとハーレイの治世に、古い伯爵家や子爵家や男爵家は必要ないだろう。彼らを根絶やしに出来ないのはもう解っている。燻って不満を募らせるだけならいいが、そうなった時に、諸外国に付け込まれる隙が産まれてしまうかも知れない。それなら、付け込まれそうな人物をまとめて、僕の所で引き受ければいい。伯爵家再興を夢見るのは自由だ。その為に、暗躍するのも勝手にすればいい。そういう者達には必要なのか、資金と神輿だ。資金に関しては、諸外国が貸してくれるだろうが、神輿は自前で用意しなければならない。その神輿になりそうな人物が、トリーア王国ないに居るのと、僕の所に居るのとでは意味合いも違ってくる。そう、トリーア王国の後顧の憂いをなくして、立花達と雌雄を決する事が望みなんだ。
アデレードへの補足を話しつつ。説明をした。「リン。それではおまえのメリットがないぞ」「ハーレイ。何か勘違いしていないかい?僕は、大きなメリットがある。まず、彼らは、トリーア王国の貴族だ、勿論お家取り壊しされる奴らも居るだろう。降格もあるだろう。でも、貴族に対する報奨は放棄しない。それは勿論後見人である僕が一手に預かる事になるだろう。それ以外にも、領地を縮小するだろうが、トリーア王家に領地を持つ。そうなると、そこからの税の収入もある。僕は、何もしないでも、毎月決まったレインを得る事が出来る。これはメリットだろう?」「おまえ・・・。」
ローザスが笑い出しそうな顔をしているし、ナナも呆れ始めている。「リン。解った、おまえの提案に乗る。だが、勝てるのか?アドゥナ街は堅牢な街だぞ」
「ありがとう。ハーレイ。ローザスもいいよな?陛下にはうまく言っておいてくれよ」「わかった。リン君。それで、大丈夫なのか?」「あぁエミール。予想される敵兵力は?」
「あっはい。30万ほどで変わっていません。」「場所も同じように布陣している?」「最新情報はまだですが、変わっていないと思われます。」「んじゃ余裕だよ。」
「なっ」「そうだね。7万も居れば十分だよ。」「なっ7万?4分の1にもなっていないぞ。」「うん。作戦は秘密だけど、安全マージンを取って、10万で攻めるよ。宰相との約束まで、2ヶ月位だからね。」
ニヤリと笑ったが、しまらなかったようだ。ミルは苦笑しているし、ルナはなんだか目をそむけている。あれは多分笑いを堪えている。アデレードも、さっきから何か言っている。後でしっかり聞かないとダメだな。
「それじゃ、アデレードとルナは、ニグラに残って、こっちの調整をお願い。僕とミルとエミールは、最終決戦に向けての準備をするよ」

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