【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

ウォード街炎上

「リン様。」
ニグラ支部に居るはずの、レマーが最前線に来た。
「どうした?何か、ニグラで有ったのか?」「いえ、ニグラではありません。マルティン様は?」「マルティンならニグラに戻ったぞ。」「・・・そうでしたか、入れ違いになってしまいましたか?」「それよりもどうした?ウォード伯爵に何かあったのか?」
「はい・・・。」
レマーからの報告を受けた。『ミル。タシアナ。サリーカ。すぐに来てくれ。すこし相談したい。』『了解。』『わかった』『うん』
3人が揃った所で、もう一度繰り返しになるが、レマーに報告をさせた。「・・・今、ギルドに入ってきた情報は以上になります。アッシュ殿からの依頼で私がリン様に報告に来ました。ニグラ支部には、ヨフムがつめています。」
ミルもタシアナもサリーカも言葉を発しない。「レマー。それで、ウォード伯爵やご家族は無事なんだろうな?」「はい。それは、護衛をしていた眷属が無事だと連絡が入っております。」「そうか、それならいい。」
時系列で話をまとめると約一日前、ウォード街に、商隊が付いたのだという。その商隊は珍しく、ギルド経由ではなかったが、トリーア王家発酵の許可証を持っていたので、疑われもせずに街中に入れた。そんな商隊があったことなど誰も覚えても居ない状態だったが、守備隊は異様に護衛が多い事が気になっていた。午後になって、皆が一時的な休息をしようとした時に、その商隊の荷台から火が付いた。3つの荷台が同時に火が付いた状態で、近くの民家や商店に突っ込んで行った。その後、そこを中心に火事が発生した。ウォード伯爵は守備隊に消化に応らせる指示を出したが、守備隊の半数以上は所属不明の人間たちと対峙していた。そいつらは、水場の周りを取り囲むようにしていた。その賊を倒さない限り火事を消すための水の確保が出来ない状況になっていた。
そうこうしていう間に、街の西側半分近くまで火事が広がっていた。その辺りは、スラムまでは行かないが貧しい人たちが住む場所になっていたので、道も狭く入り組んでいるために余計に消火活動が遅れてしまっていた。
伯爵は、これ以上の延焼を防ぐために、近隣の民家や商店を取り壊すように指示を出した。この指示は、実行にうつされることはなかった。
伯爵の護衛をしていた、眷属二名が、黒魔法と灰魔法を交互に使って、水と風で火事を消していった。残った眷属で、守備隊と対峙していた、賊の取り押さえに協力して、そちらも無事に終わってから、火事を消すために奮闘した。
この時点で、眷属がニグラ支部に連絡に来たのだ。その後、伯爵から救援物資の要請が上がってきて、アッシュの判断で僕の所にレマーが来たのだという。
今、ホレイズ街も手が離せない。最後のつめが残されている。それに、ニグラには、アデレードとルナが一緒に向かっている。そつなくこなしてくれるだろう。
「レマー。アッシュには、今ニグラにはアデレードとルナがマルティンと一緒に向かっているから、話をして協力を求めろと言っておいて欲しい。それから、物資に関しては、必要な物を送ってほしい。」「かしこまりました。」
うん。これで大丈夫だろう。
「あ、ウォード伯爵から、『商隊から、アドゥナ街の商人でした』と伝えて欲しいといわれていました」「解った、収束と復興に関しては、ギルドを通して全面的に協力しよう。」「わかりました。私は戻りまして、そう報告致します。」「あぁ頼んだ。それから、ミヤナック家にも注意するように言っておいて欲しい。オイゲンの所もだな。」「はい。かしこまりました」
アドゥナ伯爵からの指示なのか、それとも、一部の強行派の暴走なのか?なんにせよ。追い込まれ始めたのが解ってきているのだろう。それで、火事を防げなかったのなら、僕達の負けだろう。テロに出られないようにしたつもりだったが、まだまだ甘かった。
「ねぇリン。ウォード街はどうするの?」「アデレードとルナがニグラに戻っているから、彼女たちに任せるよ。」「そう、それでいいのなら・・・。僕が行こうか?」「ミル。いいよ。ミルは、僕の側に居て欲しい・・・。」「リン。」
タシアナとサリーカがなんとも言えない表情をしていた。「そうだ、リン。こっちにくる時に、ホレイズの兵站部隊に居た人間を数名捕虜にしたけど、話を聞く?」「本当?連れてきて、話を聞きたい。」
サリーカが、眷属に指示をだして、しばらくして、男女一名づつが連れてこられた。サイモンとハズキというらしい。「僕が、リン=フリークスです。それで何があったの?」「はい。マノーラ侯爵。私達、二人は・・・・その、」「あぁいいよ。君達が何者でも気にしない。僕が知りたいのは、何があったのかだけだからね」「あっはい。」
すこし、安心して、二人が語ったのは、おぞましいまでの自分勝手な振る舞いだ。兵站部隊のすこし前を、ホレイズ伯爵の息子が陣をかまえていた。それほど前には出ていなかったのだ。
最初の頃はよかった。僕を見つけて追いかけているのは勝ちを意識しだした時に、ミルの部隊に足止めをされたと報告が上がってきて、激怒した、息子氏は、全力で蹴散らせと意味のない命令を繰り返すばかりだった。暫く膠着して、ミルと僕が一旦距離を取るために下がった時には、勝ったと言わんばかりの声で僕達を罵倒したのだという。その瞬間に、左右からサリーカとタシアナに挟撃された、息子氏の部隊は、数百名の手勢だけで味方を助ける事もなく、反転して逃げ出したのだという。
来た道をまっすぐ帰るだけの反転だが、道には、食料やポーションを積んだ馬車をひいた荷馬車が大量に居て、反転するのにも時間がかかる。そんな事をしていると、後ろからマノーラ侯爵家の部隊がせめてくるかも知れないと考えた息子氏は、自分の護衛をしている手勢に兵站部隊を攻撃させたのだ。自分が逃げる為に、安全にホレイズの街に帰るために、自分の部下でもある、兵站部隊の人間を切って捨てたのだ。
流石のミルやタシアやサリーカもそれには開いた口が塞がらないといった雰囲気をだしていた。二人は、咄嗟に乗っていた馬車から降りて、茂みに隠れた事で、殺されなかったんだという。そのまま息子氏は、ホレイズの街まで逃げ帰った。
「二人が無事で良かった。サリーカ。タシアナ。そのまま手勢を使って、兵站部隊の生き残りが居ないかを探して欲しい。」「わかった」「了解。生き残りが居た場合にどうしたらいい?」「ホレイズ街に帰りたいといった者は、そのまま街まで返してあげて、僕達に仕えたいという事なら、後方に送ってあげて」「了解。リンはどうする?」
「ねぇサイモンとハズキは、伯爵家への忠誠心はもうないの?」
二人とも顔を見合わせたサイモンが答えるようだ「忠誠心ですか?」「あぁそうだ。もし、まだ伯爵家に義理立てする気持ちがあるのなら、このままホレイズの街に戻ってもいいよ」「・・・・侯爵様。出来ましたら、侯爵様の部隊にとどまる事をお許し下さい。」「それはいいけど、いいの?」「はい。忠誠心があるのかといわれるとすこし考えてしまいます。伯爵様というよりも、ホレイズの街には愛着もあります。でも、それ以上に、味方に刃を向けるような者の下で働きたくありません。」「そうか・・・それじゃ一つ頼み事があるけどいいかな?」「はい。なんなりと」
「簡単な事だよ。サイモンさんとハズキさん。二人には証人になって欲しい。」「証人ですか?」「そう、伯爵の守備隊が、逃げようとした時に邪魔だという理由で、部下を切って捨てた愚行を平気で行うという証人にだよ」「・・・それは、事実ですので、かまわないのですが・・・。」「ん?何かあるのなら聞いてよ。」「はい。それが、ホレイズの街を落とすための事なら、必要ないかもしれませんよ?」「ん?どうして?」
「兵站部隊をひきいていた隊長が、ネグロ様の手勢にまぎれて一緒に戻っていきました。」「それがどうした?」「・・・隊長の娘さんと婚約者を同時に今回の兵站部隊に配属されていまして、ネグロ様が逃げる時に、一番最初に斬られたのがお二人なんです・・・・。」「そうか、隊長は復讐をするのではないかと考えているんだな?」「はい・・・。そうならなければいいとも思っていますが・・・・。」
眷属が一人天幕に入ってきた。「リン様。」「なんだ、今会議中だぞ」「失礼致しました。しかし、至急ご連絡をいたしまして、判断を仰ごうかと思いまして・・・。」「そうか、サイモンさんとハズキさん。すこし申し訳ない。」「いえ」「大丈夫です。」
「それで何があった?」「はい。ホレイズの街に斥候に出ていた者からの報告で、領主の館だと思われる場所から火が出ています。」「何?それは本当か?」「はい。私も火は書くんしませんでしたが、煙は視認しております。」
「そうか、ミル。1,000の眷属とホレイズの街に向かって、混乱しているようなら、突入して、行政府を抑えて、占領を行って欲しい。」「了解。」「サリーカは、5,000をひきいて、残党が街から出ていこないかの警戒と守備隊の捕縛。」「了解」「タシアナは、民間人は居ないだろうけど、奴隷や手伝いはいるだろうから、その者たちの保護を頼む。」「了解」
3人は、立ち上がって、自分の眷属に指示を飛ばしながら、出陣の準備を行っていく。
僕も、残党を掃討したり、保護しながら、ホレイズの街を目指す。ホレイズの門に差し掛かった時に、ミルが駆け寄ってきた。
「リン。領主の息子は殺されていた。多分、さっき話があがった隊長だろうけど、息子を殺した後で、屋敷に火を放ったんだろう。屋敷の前で背中から斬られて絶命していた。」「そうか、他の奴らは?」「館が燃え始めた時に逃げ出した奴らは、尽く捕えている。」「了解。その中でヴェスタ街に関係している事をしっている奴がいないか尋問しておいて欲しい。」「わかった」「うん。それから、ヴェスタ街に関係していない人間は、裁判を受けるか、奴隷になるかを選ばせてあげてね。」「了解。」
タシアナが戻ってきた「保護した人間はどうする?」「奴隷は、奴隷紋を解除してからになるから、とりあえず、アロイの街にでも送っておいて欲しい。民間人は、なんで居たのを聞いてから、解放してあげて、タシアナがすこしでも怪しいと思ったら、捕えておいて」「了解。」
サリーカも戻ってきた「リン。誰も来なかったよ。」「了解。そのままホレイズの街の中に入って、ミルに協力して、伯爵の関係者は資料の類を全部集めておいて」「りょうかい。」
それから、僕は、ヴェスタ街に向けて部隊をすすめる事にした。

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