【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

ホレイズ領侵攻

「リン。すぐに、ホレイズ領に取り掛かるの?」「そうだね。カエサル。」
カエサルを呼び寄せて、話を聞いてからにしようと思っている。「はっリン様。御前に」「眷属たちの疲労はどんな感じ?」「まだまだ大丈夫です。」「本当に?無理してない?」「はい。」「そうか、それなら、5万を残して、残りはマノーラ神殿に帰らせろ。5万の眷属でホレイズ領の攻略に取り掛かる。」「5万でいいのですか?」「そうだな。3万でも大丈夫だとは思うけど、安全を見て5万だと思っている。」「かしこまりました。どのような構成にしましょうか?」「ヒト型に慣れる者で装備品が揃っている者。後は、そうだな。今回は戦闘になる場所が多くなるから、そのつもりで居てくれればいい。」「かしこまりました。私とヒューマ殿で選別してよろしいでしょうか?」「あぁ何か問題がありそうな場合にだけ連絡してきてくれ、今日一日かけてやってくれればいいからな。」「はっ」
カエサルが眷属の選別に出ていった。「それで、リン。どうするの?」「どうするって?」「ホレイズ領をどう攻めるの?」「あぁこの前話した通りでいいかなって思っているんだけどね」「私たちはどうする?」
正直、今回は戦闘を避ける事はできそうにない。それを理由に、ミルやイリメリを帰らせる事は出来ないだろう。ステータスは兎も角経験的には、問題はないのは間違いない。実際に、神殿攻略戦では僕よりも魔物と戦っている。そして、重要なのは、ステータスも僕以外なら十分圧倒出来るだけの数値になっているという事だ。もう一つの問題もある。ミルとイリメリを連れていく決定をここでしたら、他の特にアデレードとフェム辺りから文句をいわれそうだ。「そうだね。今回は、皆で行こうと思うんだけど、いいかな?」「皆?」「うん。ミル。イリメリ。僕はここで、眷属が揃うのを待っているから、フェムやエミール達を呼びに行ってくれると嬉しいんだけど・・・ダメかな?」「「了解。」」「ねぇリン。ここでいいの?マノーラ神殿とはいわないけど、マガラ神殿でもいいと思うんだけど?」「いいよ。ここで、それに眷属の準備が出来たら、進軍を開始するからね。今回は、転移門トランスポートを使わないで攻めていくつもりだからね。」「そうなんだ。それなら、食料とかも必要だよね?」「うん。そうだね。」「それじゃ、マシュホム領内への支援物資とは別に、ホレイズ進軍の兵站も用意しないだね。」「イリメリ。任せても大丈夫?」「うん。いいけど、どのくらい必要?」「最悪は、転移で取りに行けばいいんだけど、そうだね。それらしく見せるためにも、5万の兵が2ヶ月位遠征出来る程度は揃えておいて、時空の袋タイムシフトポーチが足りなければ、ワクに頼んでくれてもいいからね。」「了解。馬車はどうする?」「そうか、待っている間に、適当に荷馬車を作るよ。」「了解。ミルもいいよね?」「うん。僕は、皆を呼び集めてくるよ。」「おねがい。」
ミルとイリメリが部屋から出ていった。残ったのは、トリスタンと僕だけになった。トリスタンはまだ寝ているようなので、起こさないように、簡易的に作られた地図を取り出した。ホレイズ領の情報が書き込まれている。街の数は18。村は40程度ある。さすが大貴族という所か。街も、子爵領や男爵領になっているようだし、骨が折れそうだな。アッシュの情報からは、全部の貴族がアドゥナに向かったわけでは無いようだ。病気療養や高齢を理由に領地に引きこもっている者もいるという。本当にその理由なら包囲するだけでいいが、先を見る目があった者なら味方になって欲しい。ワロン街道沿いには4つの街と12の村が存在しているようだな。一番近い街が、ヴェスタ男爵の街だという事が地図に示されている。街までの距離が、早馬なら2時間程度だから、ゆっくり攻略する事ができそうにないな。ヴァスた街を攻めている情報が、ホレイズ街に伝わったら、守備隊と挟撃なんて事にもなりかねない。負けるとは思わないけど、犠牲者が出るかもしれない事は避けたい。
一つ一つ街と村を攻略していくか。隊を二つに割るのは戦力的にも問題ないだろう。まずは、ホレイズ街から一番遠い街の攻略を行う事にしよう。
気にしていなかったけど、宰相との約束の6ヶ月まで後4ヶ月ちょっと。。。ちょっとだけ急ぐことにしよう。でも、ホレイズはすこし時間をかけて攻略する事にする。貴族連合にすこしばかりプレッシャーをかけないとダメだろう。
ミルが戻ってきた。「リン。みんな揃ったよ?」「うん。ありがとう。イリメリは?」「まだ、ナナと交渉しているみたい。」「了解。」
荷台を作るのを忘れていたけど、まぁ作ろうと思えば、魔法で作れるからいいかいざとなったらタシアナも居るし手伝ってもらえばいいかな。
「今回は、ホレイズ領の攻略を始めるに当たって、みんなどうするかと思ってね」「ん?なんじゃ。妾は参戦するつもりで来たのだぞ。」「私も。」
いきなり人口密度が増えた部屋では、皆が参戦するつもりで居るようだ。
「そうなの?今回は、必ず戦闘になるよ?それでもいいの?」「リンは行くんだろう?」「もちろん。」「それなら、僕は行くよ。僕は、リンの剣だからね。」「妾もじゃもう置いていかれるのはイヤじゃ。」「私もリン様とお姉さま方と一緒に行きます。」
「わかった、それじゃ作戦だけどね・・・。」
作戦は至ってシンプル。ワロン街道の入り口の街を占拠して、そこを橋頭堡とする。そこで、隊を二つに分けて、一つの2万を使って街の守備を目的とする。転移門トランスポートを繋いで補給が行えるようにする。3万の部隊は、僕達と近隣の街や村を併呑していく。降伏勧告を出して、それに従った村長や領主代行はそのままにする。ただ人質として家族を、橋頭堡の街に滞在させる事を約束させる。マガラ神殿から転移門トランスポートを設置してギルドの構築を行う。降伏勧告に従わない街や村は、攻める事になる。領民には犠牲が出ないように配慮するが、戦闘に巻き込まれたくないものは、街や村から退去せよと通達を出す事にする。通達に従わない者は、敵対者とみなして攻撃する旨を合わせて告知する。その為に、作っていたものがある。
「タシアナ。拡声器は出来ている?」「うん。大丈夫だよ。前方のみに声が広がるようにしてあえるよ。」「ありがとう。距離は?」「実験していないからだけど、数キロは大丈夫だよ」「そうか、街全部を覆うのは難しそうだね。」「リンがそう言うだろうと思って、作ってみたよ。はい。これ!」
そう言って、足し穴から渡されたのは、同じような拡声器の魔道具のようだ。念話が組み込まれている?あぁそうか
「タシアナ。これって、通信で声を届けるの?」「正解。正確にいうと、拡声器で喋った内容を念話で伝達して、スピーカーから流すって感じだね。」
イリメリとサリーカが呆れている。「タシアナ。貴女もたいがいチートだね。」「そうじゃな。ミルやイリメリと同じじゃな。」「アデレード。それは違うよ。僕は、ちょっとだけ強くて、すごく可愛いリンのお嫁さんなんだよ」「ミル。貴女ね。さらっとリンのお嫁さんって協調しない。」「だって事実だよ。」「おぬしら余裕だな。今から戦いに行くのに・・・。」「だって、リンも居るし、今回は皆一緒だからね。怖さはないよ」
なんとなく、場の雰囲気が変わった。ドアがノックされて、カエサルが入ってきた。「リン様。眷属5万。揃いました。」「ありがとう。それじゃ、ホレイズ領の攻略に取り掛かりましょうかね」「「おぉぉぉ!!」」
マシュホム街をニコルとグレッドにまかせて、僕達は、一路、ホレイズ領に向けて進軍を開始した。荷馬車は、皆で手分けして作ったので、一応間に合った。
「カエサル。僕は、5万って言ったよね?」「はい。ですから、ヒト型になれる者を5万揃えまして、それらが騎乗する”馬”を用意致しました。」
そう、カエサルは確かに5万の眷属を揃えた。その後で、騎乗出来る眷属を5万別に集めたのだ。10万の眷属で進軍する事になった。アッシュから、先遣部隊や諜報活動は必要だろという事で、ワーウルフも1,000名従軍している。
騎乗状態での進軍で荷馬車もタシアナが魔改造してくれた。話を聞くと、聞いた事を後悔したとアデレードが言っていた。荷馬車で荷物が重いこともあるが、振動で兵隊部隊が遅くなってしまうのを避けるために、最初は全体に時空魔法をかけてしまおうかと思ったらしいが、位置固定が必要な為に断念。そこで、発想を変えて、荷馬車自体を魔道具化してしまえないかと考えたようだ。タシアナがやった事は単純明快。ホバークラフト状態にしたのだ。周りから空気を取り込んで、下方向に空気を吐き出すようにしたのだという。調整出来るようになっているが、全力でやれば浮かせられるだろうけど、周りの被害を考えると、浮かせるよりも弱い力で荷物の重さを軽減する事で速度を出そうという物だ。車軸にはダンパーを配置して、車輪にはゴムでタイヤを装着させた。これだけでも、多分今までの数倍の速度は出せる。行軍に追いつける程度までは速度が出せそうだという感じにはなった。
行軍を開始して、数時間で最初の目的の街の目前まで迫った。拡声器の配置を終えて『私は、リン=フリーク。トリーア王家から、逆賊討伐の任を与えられた。この街に住む者達よ。お前たちは、逆賊に与する者達なのか?』
反応はなしか『今から1時間だけここで待つ。1時間までは戦闘行為は行わない。我達はここで待つ。正しい選択をする事を期待する。』
さて、どう出てくるかな?「エミール。お茶の支度をして」「かしこまりました。でも、よろしいのですか?」「ん?大丈夫でしょ。弓矢や魔法で狙われても、防御結界が防いでくれるだろうからね。」「そうですね。かしこまりました。」
エミールが下がった。代わりに、ミルとサリーカがやってきて、椅子に座った「ねぇリン。1時間なんて待たないで攻めちゃわないの?」「うん。民間人も居るだろうし、巻き込みたくないからね。」
アデレードもやってきて「リンよ。勧告なんて必要ないんだぞ?」「え?そうなの?」「宣戦布告とかどうしているの?」「なんじゃ、その宣戦布告というのは?」「え”今から攻めるけどいいよね?っていわないの?」「いわないな。それに、通常は移動にも時間がかかるし、いきなり攻めてくる事自体ありえないからな」「あぁそうか、移動中に相手にも伝わるってわけでだね。」「そうじゃな。」「それじゃ宣戦布告は必要ないのかも知れないけど、僕達はいきなり取り囲んでいるからね。奇襲作戦としは成功しているけど、やっぱり、領民が気になるからね。逃げるのなら逃げて欲しいからね」「あぁそうじゃな。まぁおぬしがやりたいようにやればいい。何かあれば、妾達がフォローすればいいのだろうからな。」「うん。アデレードありがとう。」
それから、タシアナやフェムやルナも加わって、フェムとサリーカが持ってきていたお菓子でお茶を楽しんだ。40分位経った所で、門から数騎近づいてくるのが見えた。
「リン=フリークス・テルメン・フォン・マノーラ侯爵閣下。」
赤旗と黒旗を交互に振っている。「ねぇアデレード。あの旗、何か意味あるの?」「あぁ黒旗だけなら、交戦の意思なしで、赤旗が加わると、交渉の意思ありで、白旗が加わると、降参の意味じゃな」「へぇって事は、交戦の意思は無くて、交渉したいって事だね。」「そのようじゃな。」
「エミール。ミーシャ。ウィンザー。使者殿をここにお招きして」「「「はい」」」
使者が連れてこられた。3名のようだ。剣も持っていたが、僕の前に来た時に、腰から下げていた剣を柄ごと紐で縛って、僕の前に置いてから、数歩下がった。
「初めて御意を得ます。アイランズ街の代官をしております。オーデッツともうします。」「それで、オーデッツ殿は、私に何を交渉したいのですか?」「領民の安全を・・・そして、出来ましたら、部下たちには寛大なご処置を賜りたく・・・。」「そうか、交戦の意思なしなら、攻める必要性も感じられない。僕達が駐屯する事もご許可いただけますか?」「それは、私の一存では決められません。」「そう言えば、領主は?少なくても領主代理か代行が居るだろう?」「それが、侯爵閣下からの勧告が出た時に、手勢だけで街を抜け出してしまったようです。」「そうか?街道は全て抑えたと思ったんだがな?」「はい。領主しか知らない抜け道が有ったようです。」「まぁいい。どの道領主は逃して、ホレイズの街まで逃げてもらうつもりだったからな。手間が省けた。わかった、オーデッツ。おまえの身柄一つで、領民だけではなく、僕に敵対しない者を保護しよう。」「ありがとうございます。異存はございません。」
僕達は、予定とは違う形になったが、アイランズ街を占拠する事が出来た。領主の館を臨時の僕達の館にした。いつものように、館の中から書類等を全部集めさせて、解析させるために、マノーラ神殿に送る事にした。食料やレインに関しては、そのまま領民に解放する事にした。その後、ギルドの支部を街の中央に作成して、転移門トランスポートを設置した。マガラ神殿で待機していた商隊をアイランズの街にも来られるようにした。これで物資の面や保護が出来るだろう。
「オーデッツ。おまえには、やってほしい事がある。」「何でしょうか?」「この街の代官を引き続きお願いしたい。」「え?私でよろしいのですか?」「あぁおまえが一番適任だろう。」「謹んでお受けいたします。」「ん。任せる。」「はっ」
オーデッツが部屋から出ていってから、カエサルを呼んで、この街の守備と監視を頼むことにした。3万を残して、2万で近隣から占領を開始する事にした。
僕とミル達は、アイランズの街を出て、次の街に向かった。街までは通常1日程度かかるが、眷属に騎乗した状態では、1時間で到着出来る。途中にあった村々でも同じように降伏勧告を行ってから攻める事を繰り返す。何度かは、守備隊と思われる者達との戦闘になったが、こちらに犠牲者が出る事もなく、順調に進む事が出来た。最初の街の攻略までにかかった日数は1日だった。これからなんとかなりそうだ。最初の街も、領主が守備隊を連れて逃げ出した。一つの報告だけ取り囲まないで置いたので、そちらから逃げ出したようだ。
13の街と28の村を尽く占領ないしは降伏させて、アイランズの街に戻った時には、1ヶ月が経過していた。

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