【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

救援要請

昨日の喧騒が嘘のようにニグラの街は普段通りの朝を迎えた。
「マヤ。マヤ。おはよう。」「うん。リン。おはよう。」
二人で宿屋の食堂ではなく、マガラ神殿のフードコートに移動した。そこで朝食を取る事にした。
ここも普段と変わらない。違うのは、僕の立場が徐々に変わってきた事くらいだ。マヤは最初から何も変わっていない。
「ねぇマヤ。」「何?」「どうなんだろうね?」「そうだね。でも、ここもだけど、島もいい感じじゃないかな?」「そう?」「うん。ヒトは正直わからないんだけど、少なくても、眷属たちは伸び伸びと過ごしているよ。種族間の喧嘩はあるけど、そのくらいだよ」「へぇそれはいいね。みんなしっかり生活出来ているんだね。」「そりゃぁ元々が魔物や魔獣だからね。基本は狩りをして過ごすからね。でも、今は、農業を覚えて狩りに行かない時でも食べ物に困らないようにしようとしているよ」「うんうん。30万の胃袋だからな。大変だろうな。」「う~ん。そうでもないと思うよ。」「そうなの?」「うん。ねぇリン。今日はどうするの?」「どうだろう?昨日の後始末は必要だろうから、ニグラ支部に詰めているかな。」「そうなんだね。」「マヤはどうするの?」「僕は、マノーラ神殿に戻るよ。サラナとウーレンの手伝いをするからね」「二人はうまくやっているの?」「心配なら見に行けばいいんじゃない?」「そうだけど、僕が行くと邪魔になりそうだからね。」「・・・まぁいいよ。うん。二人は大丈夫だよ。眷属たちをうまく捌いているよ。」「そう・・・。それならいいや。」
フードコートでマヤと別れて、地下三階に移動した。カルーネに少し武具の事で相談したい事があった。それに、アルマールにも用事があった。
商店に入っていく、一階はまだ準備をしている店も多いが殆どが埋まっている。見知った顔が無いのは残念だから、それもいい傾向なんだろう。ここで、初めての店を持って、レインを貯めて、他の区画で店を持つ。そんな状態になっていたら嬉しい。二階にあがって、アルマールの店に行く。どんどんファンシーショップになっていっている。もう僕1人で来るのが恥ずかしい感じに思えてくる
「あれ?カルーネ?どうしたの?」「しっリン君。黙って!!」「あっはい。」「今日は、リン君1人なの?」「うん。そうだよ。」「そうか....良かった。」「どうしたの?何か困っているの?」「う~ん。困っては居るけど、困っていないって言うか....」「はっきりしないね。」「カルーネは、ファンさんに言い寄られて持て余しているんだよ。」「なっアルマール。それは、違う。別にファンさんの事はなんとも思っていないんだから・・・本当だよ。リン君。」「ん?別に、僕はいいと思うけどね。」「ねっねっね。リン君もそう思うでしょ?カルーネとファンさん。いい感じなんだよ。」「それじゃなんで、カルーネは逃げているの?」「照れているだけだよ。」「違うよ。逃げてなんて無いよ。」「そう?それならいい・・・けど・・・・。」「あぁそうだ、リン君。今日はどうしたの?何か用事?」「うん。まずは、アルマールにお願いがあるんだけどね。」「何?」「学校の制服を作って欲しいんだよ。正確には、制服の基本となる物を作って欲しい。」「制服?」「そ、制服!」「私が?」「うん。アルマールが?」
何故か、アルマールが身を乗り出して来ている。前向きと言う事ば以上の圧力を感じる。
「誰の?」「う~ん。幼年部と初等部と中等部かな。」「何歳くらい?」「えぇ~と。幼年部が2~4歳/初等部が5~12歳/中等部が13~15歳位かな。勿論男女でね。獣人も居るから、帽子や尻尾穴もよろしくね。」「本当に私でいいの?」「うん。」「どんな感じ?」「う~ん。解らないから、アルマールの好きな感じでいいよ!」
一息ついて・・・。
「やったぁぁぁ。もうだめだからねリン君。制服を着せるんだよね?」「あぁぁそうだな」「マルティン嬢とかにも着せるんだよね。後々アクアとかライカやランカにもだよね。」「そうなるね。」
少し引いてしまった。アルマールが制服フェチだったのか?何か、1人でブツブツ言っている暫くそっとしておいたほうがいいかな
『夏服に冬服にそうだぁ中間も有った方がいいよね。あぁ迷うな。女の子はスカートがいいかな。この世界可愛いスカートが無いんだよな。どうしよう。ミニスカートがいいかな?背が高い子が居ると、スカートよりもハーフパンツの方がいいんだよな。男の子は幼年部は短パン一択。初等部からが難しいな。中等部は男女ともにブレザーで決まりだな。男女で同じにしてネクタイの着用義務を付ける。あぁ初等部はサスペンダーを付けさせよう。成長するからとか理由をつければいいだろう。』
「ねぇねぇ素材とかは?」「あっぁぁなんでもいいよ?」「本当?でも、高くなちゃうよ。制服っていうからには全員に着せるんだよね?」「そのつもりだよ。」「いいの?解放奴隷とかには買えないよ?」「ん?大丈夫だよ。アルマールが自重せずに素材を使ったら、男爵家でも買えないからね。」「あっそれもそうか・・・それじゃどうするの?」「あぁ制服は、入学の時に何着か支給して、その後はGRで修繕やクリーニングを請け負うって感じでどうかな?」「それなら自重しなくて住みそうだね。」「タシアナとも相談して欲しいんだけど、魔珠も使えるようにしておいてくれると嬉しいな。」「了解。後何かある?」「そうだね。出身地が解るようにしたほうがいいのかな?」「どうだろうね。言葉の違いは無いみたいだし、別にわからなくてもいいんじゃないの?」「そうだよね。学年位は色で解るようになるといいだろうけどね」「了解だよ。他には何かある?」「一応念のために聞くけど、冠婚葬祭にも使えるようにしておいてね。ピンクのフリフリとかは辞めてね。」「・・・・・はぁい。大丈夫。そのくらいの常識は持っているから」「本当かな?」「うん。大丈夫。」
カルーネは、まだ何か考えているようだ
「ねぇカルーネ。お願いがあるんだけどいいかな?」「・・・あっ何?」「大した事じゃないんだけど、刀を何本か打って欲しいんだよ。」「いいけど、工房なら島にも作ったんじゃないの?それに、眷属も居るんだよね?」「う~ん。そういうのじゃなくてね。どう説明したらいいんだろう....」「何に使うの?」「あぁぁそうそう、これから、僕が国王にならなきゃならないでしょ。」「そうだね。」「その時に、ほら、日本でも天皇家に伝わる”三種の神器”が有ったでしょ。あぁいうのを作りたいんだよ。」「”三種の神器”?」「そ、たしか、”八咫の鏡””八尺瓊勾玉””草那芸之大刀”だったと思うんだけどね、”鏡””勾玉””大刀”だよ」「あぁ思い出した、思い出した、日本書紀だか古事記だかに出てくるやつだよね。」「そそ、議会が3つあるから、各議会の代表が選出された時に、それぞれの議会用の神器を執政官から受け渡すって感じで考えているんだよ。」「へぇ厳かな感じにするんだよ。」「うん。そのくらいはしておかないと格好がつかないでしょ。」「そうだね」「それを全部刀にしようかと思ってね。そして、直接選挙で選ばれた大統領にも刀を一本渡して、執政官にも同様の刀を一振り渡す。ってどう?厨二臭いかも知れないけど、いいと思わない?」「そうだね。刀がいいの?」「う~ん。なんとなくだね。何かいいアイディアあるの?」「宝飾をするって意味では、刀よりも、長剣や短杖の方がいいと思うんだけどね。」「そうか、刀は剥き出しの刃が素晴らしくて装飾って意味ではわかりにくいね。」「そうだね。長剣や短杖なら、宝飾を凝れるからね。」「うん。それでお願い。設定的には、この5本の剣と杖に施された魔珠装置が今出回っている魔珠の基礎になっているって事にしようかと思っているよ」「りょうかい!!」「それで、魔珠は今までのクズ魔核じゃなくて、ある程度の大きさを持つ魔核で作るからね。真ん中に大きめの魔珠を入れて、周りに6つの魔珠が入るようにして欲しい。」「ん。それはいいけど・・・。」「各魔法属性の最大魔法が組み込んだ魔珠を中心にして、周りを別の属性が補助するって感じだよ。白と紫以外の魔法の最大魔法が使えるようになるって事だね。」「ん。その辺りは、タシアナに相談してみるよ。」「お願い。勿論、素材は必要な物は際限なく使っていいからね。」「うん。了解。」
二人にお願いをした所で、フレットが上がってきた。買い物に出ていたようだ
「あぁリン君。ちょうど良かった。」「どうしたの?」「うん。あのね。家からのお願いでもあるんだけどね。いい?」「うん。勿論だよ。」「今日、たまたま家に寄って話を聞いてきたら、リヒター家・リチーカ家・グラーフ家と私の所のコンラート家の教会が何者かに荒らされているみたいなんだよね。」「ん?どういう事?襲撃されたって事?」「ううん。人的な被害も何かが壊されたって事では無いらしんだけど、司祭が何者かにつけられている感じがしたり、誰も居ないはずなのに、入られた形跡が有ったりしているみたいんだよね」「う~ん。そうなんだね。ニグラの教会だけ?」「ううん。ニグラは平気見たい。ギルド支部と一緒になっている所が多いみたい。」
「そうか.....うん。解った、ギルドにいっておくよ。何か有ってからじゃ遅いからね。」「うん。ありがとう。」「そうか、何か探しているのかもしれないな。あぁぁぁぁぁ!!!!しまった!」
「どうしたの?リン君。」「いや、何か忘れていると思ったら....まずった。ゴメン。フレット。アルマール。カルーネ。思い出した事があるからニグラ支部に戻るね。何かあったら、、、、暫くは、ニグラ支部に居るから連絡頂戴。」
挨拶もそこそこに商店街をでた『マヤ。マヤ。』『ん?どうしたの?リン。念話なんて珍しい』『ゴメン。もう戻っている?』『ううん。久しぶりだったから、ナナに会いに来ている。』『ちょうど良かった。ナナにニグラ支部にすぐに来てくれって伝えて、後、アッシュとナッセにも連絡をしてくれると嬉しい。』『了解。ナナがナッセにこの後ニグラ支部で合うらしいよ。アッシュも一緒だって』『それは良かった。僕もすぐ行くから、待っててもらって』『了解』
『サリーカ。サリーカ。』『ん?びっくりした。リン。どうしたの?』『サリーカは今どこに居る?』『今、出島だよ。』『そうか、ニグラに来られる?ちょっと至急来て欲しいんだよ。』『解った。すぐに行く。イリメリは?』『居るなら連れてきて、ちょっと大事な事を思い出した。』『了解』
ニグラの執務室に転移して、そのまま会議室に向かった。5分後に、ナナとナッセとアッシュが来た。それから1分位後に、サリーカとイリメリが入ってきた。
「リン。どうしたの?緊急な用事みたいだけど」「うん。ゴメン。本当は、昨日の間にしなきゃいけなかったんだけど、ナナ、今宰相派の村や領内に居る商隊や商人を至急引き上げさせて!」「どういうこと?」「あぁ昨日の夜の話は知っていると思うけど、アドゥナを盟主とした貴族連合が産まれたんだけど、あいつら多分秩序を保てるのは数日だと思っているんだよ。」「・・・・。」「そんな場所に、商隊や商人が行ったら格好の的になると思わない。殺されなくても、商品を全部徴収されないとも限らない。」「あっ!」「でも、リン。貴族連合は昨夜の結成だから、地方で商隊や商人を襲うのは出来ないと思うよ。」「うん。でも、あいつら今逃げ帰っているんだよ。途中で”正義の名の下”に蛮行が行われないとも限らないでしょ?」「あぁそうか、逆賊呼ばわりされて、リン=フリークスの関係している商隊なら襲ってもいいとか思われているのかも知れないって事?」「そうならないといいんだけどね。民間人に手をだすような事をしたら許せなくなってしまうからね」
「それでリン。私達に何をさせたいの?」「うん。まずは、ナナだけど、サラナとウーレンを後で向かわせるから、依頼票が欲しい。」「依頼票?」「聞いているでしょ?眷属たちのギルドの事?」「あぁ裏ギルドだね。聞いているよ。」「よかった・・・。裏ギルドに、各支部への眷属派遣をお願いして欲しい。」「了解。対価は?あぁギルドから出すよ。」「うん。お願い。ギルドが襲われたって形にしたいからね。」「了解。あくまで、ギルドは善良な民間団体だといいたいわけね。」「そ!」「それで、リン。数はかなり必要だけど大丈夫なのか?」「う~ん。どうイリメリ?」「ナナさん。大丈夫です。全商隊に護衛をつけても余裕があります。具体的な数字を答えたほうがいいですか?」「いやいい。リン。そんな事になっているのか?」「らしいね。まぁいい。解った。」
「ナッセには、もし被害が出た時の補填をお願いしたい。人的な被害が出ないといいんだけど・・・・。こればっかりはわからないからね。」「はい。かしこまりました。」「あと、何か有った時に、抗議を盛大に出してね。何も無いのが一番だけどね」「そうですね。」
「アッシュは、今外に出ている者達を確認して、ギルドの商隊だって解る様にしている人たちを先に確認して、ね」「かしこまりました。」「うん。後アッシュには、もう一つお願いがある。フレットからなんかギルド関係の教会が荒らされているみたいなんだよ。犯人が居るのなら犯人を突き止めて欲しい。」「あっかしこまりました。」「どうした、何か心当たりがあるのか?」「いえ、教会では無いのですが、村のギルド支部などは夜は閉めている所が多いんですが、一部ですが侵入を試みた形跡が見つかっています。」「そうか」「はい。大事には至っていませんので放置しておりました、申し訳ありません。」「ううん。いいよ。結界は大丈夫なんだよね?」「あっはい。それは大丈夫と報告を受けています。」「う~ん。なんだろうね。気持ちが悪いな。」「ねぇリン。それって教会とギルドを同じ人間又は団体がやっているとしたら・・・。」「うん。教会関係者だろうね。」「だよね。」「サリーカは何か心当たりがあるの?」「お父さんの商隊からの話なんだけどね。」「うん。」「最近、ギルド支部がある所に教会を作っているでしょ?」「そうだね。イリメリ。今は殆ど作ったんだよね?」「そうね。隣接して作るようにしているよ。」「だって」「うん。それでね。獣魔の眷属を貸し出しているでしょ?」「うん。白魔法が使える者を貸して欲しいって言われてね。」「宰相派ってよりも、元宰相派?」「貴族連合の教会って事ね。」「そうそう、それそれ、貴族連合の教会の連中が、難癖をつけている所を何度か目撃したって言っていたよ。」「え?なんで?」「白魔法が使えるなんてデタラメだってね。」「あぁそういうことね。自分たちの特権だと思っていた事が奪われて、それもありえないと思いたいんだろうな」「そうみたいだよ」
「アッシュ。って事だから、もしかしたら、貴族連合関連の教会が秘密を調べるために、やっているかもしれないから少し様子を見ておいて、もしそうなら拿捕して話を聞きたいからね。」「かしこまりました。」
「サリーカにお願いがあるんだけどいいかな?」「なに?囮になれって事?」「・・・・そうなんだけど、無理かな?」「いいけど、家の商隊じゃなくていいんだよね?」「もちろん、セトラス商隊だと襲ってこない可能性があるからね。」「まぁそうだね。案外有名だし、護衛もしっかりしているからね」「うん。」「それじゃどうするの?」「そうだね。サリーカ。サラナとウーレンは知っているよね?」「もちろんだよ?」「二人とあとそうだね・・・・。」「あぁサラナとウーレンは別にして、女の子だけの商隊って事だね。」「うん。商隊の長をレーゼル辺りにやってもらって、イスラ街道にある小屋からヴァズレ方面に向かって欲しい。2日程度行けば、ヴァズレの村に着くと思うけど、そこまでで帰って来て来てね。」「了解。何を積んでいく?」「そうだね。腐りにくい食品や干し肉でいいかな。どうせ、村からの徴収も始まるだろうからね。もし、村長が信頼できそうなら、素性を明かして、持っていった食料とは別の食料を備蓄用に売ってあげて、持っていった食料は、倉庫で保管するように言っておいてね。」「いいけどなんで?」「うん。持っていった食料は、貴族連合の徴収が来た時に渡す様に伝えて、村で食べてもいいけど、どんな事になっても知らないよって付け足しておいてね」「怖いな。中は何なの?」「あぁサリーカにわかりやすく言うと、大麻かな。」「え”大麻ってあの大麻?」「そう、なんの大麻かはわからないけど、麻を作る過程でできる大麻だよ」「・・・・そんな物作っていたの?」「う~ん。正確には、偶然だね。処分に困っていたから、貴族連合にプレゼントしようと思ってね。」「中毒性はどうなの?」「試してないからわからないけど、中毒性はそんなに無いみたいだよ。」「本当?」「うん。毒検知でも引っかからないし、大丈夫なんじゃないかな。そもそも、大麻がどういった感じなのかわからないから。これが本当に大麻なのかも自信ないんだよ。」「まぁいいよ。食料を無理やり持っていくような連中にはちょうどいいって事には違いないからね」「そそ」「それじゃ人選して出発するね。」
「ん。お願い。アッシュ。頼むな」「はい。サリーカ様の商隊を護衛させます」「ん。」
皆がそれぞれの役割に戻っていって、静かになった執務室で報告書を読んでいる。ギルドの報告書が多いが、魔物討伐や護衛が減ってきている変わりに、素材の採取依頼が増えてきている。あとはパーティメンバーの募集や売り込みなんかも混じっているようだ。あまりにも雑多になりすぎている。クランを作らせてもいいのかもしれない。幸いな事に、マノーラ神殿の玄武街道にはまだまだ空きがある。
誰かが入ってきたのが解る。
「リン。」「なに?」「ムリしないでね。」「大丈夫だよ。」「そう。それならいいんだけどね。」「イリメリこそムリしないでね。変わりはいないんだからね。」「ありがとう。でも、大丈夫だよ。」
イリメリが珈琲を持ってきてくれたようだ。味は、かろうじてインスタントコーヒーよりもマシって程度だがら、それでも大分美味しくなってきた。
「そうだ、イリメリ。今、ギルドで力があるパーティってどのくらいあるの?僕達の関係者を除いてでね」「どうだろう。まだ、マガラ神殿の25階に到達したパーティは20にも満たない位だから、それがトップパーティじゃないかな?」「へぇ。32階踏破は、まだなんだね。」「うん。やっとこの前、ファンさんが眷属を引き連れて出来たようだよ」「そうか、それじゃまだ、32階の営業は始めなくて良さそうだね」「そうだね。あぁそれで、カルーネ経由で聞いた話なんだけどね。32階には宿屋とかを配置するよりも、到達したパーティが自分たちで使える場所の方が嬉しいって感じみたいだよ」「え”そうなの?」「うん。ファンさんもだけど、パーティホームみたいな形で使えるようになたら、カルーネの武器防具を置いておけるみたいな事を言っていたみたいだからね。」「あぁぁ・・・そうか、実はね、そのパーティホームを、ゴッドケープ島マノーラ神殿、玄武街道沿いに作ろうかと思っていたんだよね。そうだよね。神殿の中のほうが安心できるよね。どうしようかな?」「いいんじゃない。自然発生的で考えれば、それに、玄武街道にパーティホームを持つ事の意味つければいいと思うよ。」「意味?」「うん。だって、ファンさんみたいにカルーネ以外とはパーティ組まない人ならマガラ神殿の奥地にひっそりとでいいと思うけど、パーティメンバーを募集したりするには、人が多く集まる場所の方がいいでしょうからね。」「そうだね。それじゃそれでルール作りをお願いしていい?」「はいはい。任されましたよ。」「うん。ありがとう。イリメリ。」
『リン。今どこ?』「イリメリ。ちょっとまって、ミルから念話が来た」「うん」『ミル?今、ニグラのギルド支部だよ』『だれか居る?』『イリメリだけだよ』『そう・・・。エミールたちは?』『今は別件で出ている』『困ったな。いいや。リン。すぐに、エスト街の宿屋に来て、イリメリと一緒に』『なんだか解らないけど了解。』
「リン。ミルはなんだって、なんか、オイゲンの所で合ったみたい。エスト街の宿屋に来て欲しいって言っていた。イリメリも一緒にってね」「そう・・・リン、武装は整えられる?」「うん。大丈夫だよ。軽武装でよければだけどね。」「それじゃ軽武装で行こう。なんか嫌な予感がする。」
革の鎧を付けて、帯同してから、転移で宿屋に移動した。騒がしい状態になっていた。
「リン。イリメリも良かった」「ミル。どうしたの?」
「そこは私から説明します。」
スザンナさんが一歩前に出て説明をしてくれた。
最初はメルナに行った従業員が戻ってこない程度に思っていたらしい。今までもなかったわけじゃない。そのうち、商隊が街から出ていってすぐに戻ってきてしまった。最初の商隊は、そのままマガラ神殿に行くと言っていた。その後に出ていった商隊がボロボロになって戻ってきて事態が良からぬ方向に向かっていると認識して、すぐに街の門を閉じた。そんなに強固な門ではなかったが、なんとか間に合った。
貴族の守備隊が襲ってきたのだという丁度、鉱石を求めに来ていた、ミルを見つけて、救援要請をだして、さっきまで門の所に居た連中を撃退した所で、ミルから僕に連絡が入ったって事らしい。
「ゴメン。リン。僕どうしたらいいのか解らなかったから、とりあえず、脅したらみんな逃げちゃった。」「いいよ。でもありがとう。ミル。そう言えば、スザンナ夫人。オイゲン達は?」「島に行ったっきり戻ってきていませんよ。一応、使いを出していますが、それよりも、まずは、領地を守る事が先決だと思って、ミル殿に救援を出したのです」「被害の状況は?」「商隊の方は荷物を奪われて、馬車を壊されたようですが、人的な被害は無いようです。少し斬られて、腕や足に怪我を負った者も居たようですが、教会で治療をしてもらっています」「そうですか、メルナからの従業員の事も気になります。」「そうですね。」「イリメリ。メルナに移動して、従業員の状態を確認してきてもらっていいかな?逃げる必要がありそうなら、マノーラの屋敷に逃げ込んでいいからね。」「了解。」
イリメリが、グリフォンのリスプを召喚して上から探すようだ。途中で、襲った奴等を見つけたら連絡をくれる事になった。
「ミル。」「ん。分かっている。一緒に、街道を進めばいいんだよね。」「僕達二人だと逆に襲ってこないかもしれないから、少し人数を増やして・・・・。スザンナ夫人。余っている場所はありませんか?」「えぇありますが・・・・」「それをお借り・・・いや壊されるだろうから、買い取らせて欲しい。」「いえ、構いません。どうぞお使い下さい。弁済は、オイゲンにさせます。」「そうですか、10倍でも20倍でもふっかけてやってください。」「えぇもちろんそのつもりです。・・・・・・。侯爵様。お気をつけて。」「えぇ大丈夫です。」
『リン。』『どう?』『うん。3~4km位の所でたむろしている集団が居るよ。多分、そうだと思う。』『そう。従業員の姿は?』『ここにはないよ。』『了解。ありがとう。』
「ミル!」
もう分かっているのか、ミルは眷属を呼び出している。アースグリム/ガルガ/クロッセン/ケーニヒスとパスカルだ
僕も、シャラトとカウラとリアンを呼び出して、トリスタンにも来てもらった。ヒト型に慣れる眷属に何体か来てもらった。後は、カエサルに商隊の隊長を演じてもらう事にした。
エストの街を出て、10分位馬車を走らすと、武装した集団がそこに居た。カエサルは構わず、馬車を走らせていく。
馬車が集団を抜けた所で、前方に男どもが立ちはだかった。カエサルが一応警告を発する。
男どもの代表の様な者が「ギルド関係の荷馬車だな?」「違いますと言ったらどいてくれるのですか?」「巫山戯るな。」「巫山戯て何ていませんよ。私はこれから、メルナのお屋敷に食料と従業員を連れていかなければならないのです、そこをどいて下さい。」「どこのお屋敷だ?」「そんな事、貴方に答える義務はありませんよね?いいからどいて下さい、時間のムダです。」
「隊長。この馬車の印章は、マノーラ侯爵の物です。」「なに?そうか、成り上がりの小僧の屋敷の者なんだな」「・・・そこをどけ!一度だけなら許すが、我が主への暴言。もう一度口にした時には、覚悟あると見る。」
「ハッハハハ。おまえこそ、この状況が見えているのか?お前たちは囲まれているんだぞ、俺たち正統貴族の守備隊にな。今なら荷物と女だけで許してやる。置いて逃げるのなら、腕一本位で勘弁してやる」「そうだな。それじゃ俺は、左の女でいい。」「成り上がりの小僧の商隊を引き当てるとは運がいいな。盟主様への手土産ができるな。隊長流石ですね。」「あぁあいつらの考えそうな事なぞ俺なら解るからな。まぁ程度が低い事だから、俺だと難しかったけどな。ハッハハハ」「隊長。本当にいいんですよね?」「あぁ構わない。男爵達も言っていたからな。小僧の家の物なら奪っても罪にならないとな。」「それじゃ俺は、あの小僧の婚約者達を奪いに行くかな。」「ばぁーか。ここに居ないぞ。」「それじゃあの街の女どもをおもちゃにしてもいいですね。」「あぁ好きにしろ。でも殺すなよ。」
「カエサル。耳が汚れる。もういいぞ。全員捕らえよ。腕の一本や二本切り落としてもいいからな。」「はっ」
荷馬車の後ろから、ミルと5名の眷属が飛び出した。目で追えるものが居たのかが心配になるくらいの速度だ。さっき婚約者を奪うとか言った奴は、ミルに足を一本きり飛ばされた、何が合ったのか解らないような状態で片足で立っている。他の者も眷属たちに次々に斬られていく。足だったり腕だったりしている。
前方に陣取っていた隊長達は、カエサルが行者台から舞い降りた時に、臨戦態勢を取ったのは流石だが、なんにせよ襲い。その時には、隊長の腕が切り落とされた。腕が地面に付く前に、カエサルは他の者の意識を奪っていた。
ステータスが違いすぎる事もあるが、実践の数が違いすぎる。練度という事だけ見ても、二桁は違うのだろう。
全員が痛みで動けなくなっている。このまま放置しておいてもいいが、死なれても目覚めが悪い。
範囲治癒魔法で止血だけはした。
カエサルに隊長を起こさせて、「おい。僕の顔を見ろ?」「・・・・」「そうか、わからないか。それならそれでいい。ここで死ぬか?」「助けてください。なんでもします。」「本当だな?」「はい。はい。本当です。」「そうか・・・。」
隊長に、エクストラヒールを施す。これで部位欠損した部分も治るはずだ。
「・・・あっありが」治った腕を再度切り飛ばした。「と、あぎゃぁあdふぁdf・・・何を・・・」「なんでもするんだろう?じゃぁお前たちがさっき言ったように、おまえをおもちゃにして遊ぼうと思ってな。それに、おまえは僕の考えている事が解るんだろ?当ててみろよ」
そう言ってもう一度部位欠損を治した。
「許してください。本当に、俺は命令されただけなんです」「はい。外れ。」
もう一度、腕を切り落とした。
「あがあふぁじゃぱぁ」「ほらもう一度チャンスをやる。僕の考えを当てろよ。」
エクストラヒールで腕を治した。
「許して下さい。本当に、本当に、許してください。なんでもします。」「おまえは馬鹿か?僕は、”僕の考えを当てろ”と言ったんだ。そんな事考えてもいないからな。もう一度斬るか?」「リン様。無駄でしょう。馬鹿は馬鹿の使いみちしかないと思われます。」「そうだな。他の者に聞いてみるか?」
そう言って周りを見回すが、全員振るえるばかりで何も言ってこない。
「リン様・・・リン=フリークス?」「そうだよ。やっと解った?」「申し訳ありません。申し訳ありません。」「ふぅ~ん。それで許してもらえると思ったの?」「・・・・・命だけは、命だけは・・・・」「へぇだったら今のように、毎日、腕を切り落としてもいいんだね。命だけは助かるんだから問題ないよね。カエサル。眷属たちの餌になるか?」「えぇそうですね。一匹では少ないので、ここに居る全員の手足を与えれば、多少はいいでしょうが、まずくて食べないかもしれませんね。」「そうか、その時には細かく砕いて、こいつらの家族の餌にすればいいだろう?もう素性は割れて居るんだろう。」「はい。今調べさせていますが、ヴァズレ男爵の守備隊だって事は判っています。」「そうか、ヴァズレだとしたら、以前にエルフの里の襲撃事件にも関係しているかもしれないな。」「えぇそうですね。慰み者になった者も居ると聞いています。」
もう隊長は、丘に上がった金魚のように口をパクパクさせているだけだ。
「おい。どうなんだ?命だけは助けてやる。お前たちの命だけな」「・・・あぅああぅああ」「おまえの家族は全員捕えて、切り落としたおまえの四肢でブクブク太らせてから、魔物の餌にしてやるから安心しろ。まぁもう何も考える必要がない食料になるんだから、問題ないだろう。命だけは助けてある。そのまま魔物を寄生させて寿命も伸ばしてやるからいいだろう?あぁお前一人じゃ寂しいだろうから、部下も全員同じにしてやる。」
「・・・許してください。俺達は俺は命令されてやっただけなんです。本当です。許してください。助けてください。なんで俺達が俺が殺されなきゃならないんです。お願いです。許してください。」「あぁぁぁ!!犯されたり、殺されたエルフ達も同じように思っていただろうな。何で俺たちの守る者を無慈悲に奪っていくんだとな。」「・・・・あぁぁ」「奪う立場の時には、無慈悲に奪って、奪われる側になったら、命乞いか、つまらないな。」
「・・・・ゆるして・・・・ゆるして・・・・たすけて・・・・。」
「カエサル。全員の四肢を切り落とせ。」「はっ」
周りから絶叫が聞こえる。怨嗟の声は聞こえない。無慈悲に絶叫だけが響き渡っている。
「【ハイ・ヒール】これで止血だけはしてやった。カエサル。切り落とした四肢を一箇所に集めろ」「はっ」
集まった四肢をまとめて炎で燃やす。匂いが出てくるのはわかっていたので、結界で周りを覆った。結界の中には、だるまになった守備隊だけが転がされている。全部が燃えて無くなった事が確認出来てから、結界を解いた。
だるまを荷馬車に放り込んだ。そこから、数本のポーションを取り出す。
「このポーションは、エクストラヒールと同じ効き目がある10本もあれば、全員が元の状態に戻れるだろう。さて、隊長。さっき、お前たちは面白い事を沢山話してくれたな?」「・・・・ゆるして・・・もう、ころして・・・・かぞくだけは・・・・。」「わかった、僕の質問に正直に答えたら、考えてやろう。」「・・・・本当ですか?」「あぁ本当だ。僕の質問に答えたら、ポーションをやろう。」「なんでもいいます。」「そうか、お前たちは、ヴァズレの守備隊で間違いないか?」「はい。第三番隊です。」
ポーションを一本置く。
「お前たちは、エルフの里を襲ったのか?」「・・・・・」
ポーションを取り上げる。「あっ・・・はい。命令されて、襲いました。でも、俺たちの隊は、魔物に対してだけで、エルフを殺したりしていません。本当です。」
「馬鹿か、お前は、襲ったのには違いないだろう?それで、ヴァズレは何でエルフを襲ったんだ?」「はっはい。それは、アゾレム男爵が、エルフを捕えて奴隷商に売ればいいといい出したそうです。ヴァズレ男爵もレインには困っていて、それに乗ったんです」
ポーションを一個戻す。「一時、ヴァズレ領から子供の奴隷が大量に出たが、あれはどうしたんだ?」「はっはい。村の税を重くして、払えない場合に、子供を奴隷として売らせるようにしていたようです。」
二個目のポーションを置く「それは、誰がいい出したんだ?」「わかりません。本当に、わからないのです」「噂でもいいぞ」「あっ噂なら、ルキウス子爵が税を納められなかったら領民を奴隷にして納めろといい出したと聞きました」
三個目のポーションを置く「誰が、僕の家の物なら盗んでも罪にならないと言っているんだ?」「ルキウス子爵です。」
四個目のポーションを置く「お前たちは、ここに居るように言ったのは誰だ?」「・・・・」「誰だ?」「はっはい。ゴーチエ家の息子がここで待っていれば、ここを通る無防備な商隊を襲える。ここを通るのは、マノーラ家かエストタール家の馬車だけだから襲っても問題にはならないと.....」「ゴーチエの息子?ロラ・ゴーチエか?」「はい。そんな名前でした」「そうか・・・。」
五個目のポーションを置く「ここで襲ってからどうする予定だったのだ?」「はっはい。ヴァズレ家にも戻らないで、そのままアドゥナ伯爵領に行く事になっております。」
六個目のポーションを置く「お前たちが帰ってこないとどうなると思う。」「・・・・」「どうした?言ってみろ。」「・・・・誰も気が付かないと思います。」「そうなのか?」「はい。俺たち自信も、ヴァズレ領の同じ守備隊でもない限り、誰が誰なのか知りません。」
七個目のポーションを置く「お前たちがここに居るのを知っているのは、ロラ・ゴーチエ以外には居るのか?」「・・・・。その場に居たのは、ボルダボ家の者だけです。」「ボルダボ家は、教会関係者のか?息子なのか?」「はい。そうです。ロラ・ゴーチエと親しげに話をしていました。」
八個目のポーションを置く「ロラ・ゴーチエとボルダボ家の者はお互いをなんて呼んでいかた覚えているか?」「いえ・・・・。」「あっ私は覚えています。」「ほぉいい部下を持ったな隊長。言ってみろ」「はっはい。”モリナカ”と”ニシザワ”と呼んでいました。何かの呼び名だろうと耳に残っていました。」
九個目のポーションを置く「お前たちを、送り届けるのなら、どこに届ければいい?ここに置いておくでもいいぞ。魔物の餌にしかならないだろうけどな。」「・・・・出来ましたら、ヴァズレでお願いできないでしょうか?」
十個目のポーションを置く。「いいだろう。そうだな。このまま送り届けてもいいが、それじゃあまりにもかわいそうだからな。」「・・・・」
淡い黄色い光が周りを包んだ。「これでいいだろう。」「何を?」「あぁちょっとおもしろい仕掛けだな。」「・・・・」「そうだな。もうちょっと必要になるだろうな。」ポーションを三本追加した。「なっ・・・。」
「いいか、今から言うことをしっかり伝えろ。いいな。」「はっはい。」「『こうなりたくなかったら、頭を地面に付けて謝罪しろ。そうしたら、命だけは助けてやる』とな。」「はい、必ず。」「それから、このポーションは、お前たち専用だから、他の者が使うと劇薬と同じで、かけた所が溶け出すし、飲んだら身体の中から溶けるからな。」「え”私達は大丈夫なのですか?」「あぁ大丈夫だ。」
先程、森中と西沢の呼び名を覚えていた奴の足にかけると、足が復元された。片足の状態のままにしておく
「ほら、お前たちには無害だ。カエサル。手間だが、こいつらを馬車事。ヴァズレ街の近くに放置しておてくれ」「かしこまりました。」
カエサルが馬車を移動させ始めた
「さて帰ろうか」「うん!」
ミルが腕に捕まってきた
「ミル。大丈夫だよ。」「うん。私がこうしたかっただけ。」「ありがとう。ミル。」
ミルは、僕の心を心配してくれているのがわかる。早足位の速度で、歩いてエスト街まで戻った。

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