【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

再びの御前会議

今日は、御前会議が行われる。アデレードとミルとエミールとウィンザーとマルティンと一緒に正装して、ニグラに来ている。他のメンツも何か合った時の為に待機している。マヤは島で眷属たちを統率してくれる事になった。
ギルドのニグラ支部に向かうと、モルトとナッセが準備を終えて待っていた、今日の御前会議は人数が多くなるとの事で、観覧はできなくなっていると言う。モルトとナッセに関しては問題なかったが、ナナとアッシュが入られるかわからない状況なんだと言う。各国から取り付けた書状を携えている。
「リン様。」「ん?」「先程、ウォルシャタと食客9名が王城に入って行った事を確認しました。」「そうか、役者が揃ったってことだな。それで、確認はできたのか?」「はい、抜かりなく。」「やっぱりそうだったのか?」「リン様の予想通りでした。」
「リンとアッシュだけで納得していないで教えてよ」「ん?あぁそうだね。アッシュに命じて、ウォルシャタ達を見張らせていたんだよ。」「うん。それは解る。」「それで、眷属にウォルシャタ達のステータスを確認させていたんだけどね。予想通り、ウォルシャタ以外がレベル100で、ウォルシャタはレベル150になっていると言う事なんだよ」「え”それって、僕の5倍以上だよ?」「そうだね。」「なんで落ち着いていられるの?」「あぁそれでね。アッシュにはステータスの値なんかよりも、スキルの習熟度を調べてもらっていたんだよ。」「・・・プレイヤースキル?」「そそ。」「それで?」「うん。アッシュどうだったの?」「はい。リン様の予想通り、レベルは上限に達しているようでした。ステータスの値も軒並み2,000オーバで最強を名乗れると思いますが、スキルの習熟度に関しては、ひどいと”0”のままになっていたり、高くても”2”程度です。魔法属性が有るのに、魔法を使っていないのか、”詠唱破棄”を取得している者もおりませんでした。それに、折角の隠蔽があるのに、隠蔽を実行しているのは一部の人間だけだと言う事です」「予想以下だったって事だね。」「えぇそうですね。通常レベルが30を越えた辺りで何かしらのスキルが顕現すると思うのですが、それも無くレベルだけが高いと言う感じです」「だって、ミル。少し安心した?」「うん」「リン様。ミル様。そもそも、リン様は別にしても、ミル様はステータス値でも彼らを上回っています。」「それは、眷属の数値がたされた物だからね。」「それも、ミル様のお力です。」「そうなのかな?」「はい。間違いありません。」「それならいいんだけどね。」「それに、ミル様は魔法に関しても武技に関しても、修練を積んでいらっしゃいます。それは確実に違う事です」「そうだね。ありがとう。アッシュ」「いえ。」
アッシュから全員の今のステータスが書いてある物を受け取った。内容は後で確認する事にする。
僕が侯爵になった事もあり、迎えの馬車が来る事になっている。自分で行くとは言ったが王族のメンツがあるので、辞めてくれとローザスから泣きつかれた。
馬車の到着を待っていると、オイゲンとエルフリーデもやってきた。後は、フレーゲル家のウィルヘルムとレオプルドが来れば、関係者は揃う事になる。エスト街に連なる准男爵達は先に行っていると連絡がオイゲンの所に入っている。監獄街関係者も先に行っていると言う。ウォルシャタやアゾレムの関係があるので、エスト街の准男爵達と同じで目立たない場所に陣取る事にしたようだ。
フレーゲル家の面々がニグラ支部に来て、関係者が揃ったときに、タイミングを見ていかたように、迎えの馬車が到着した。数にして5台。分乗していくが、足りなくなってしまったので、ギルドから馬車を貸し出してもらった。行者も依頼の形で付いてもらった。
宗教都市ドムフライホーフに入って、王城に向けて移動する。検閲は何度か受けたが、中を改められる事はなかった。王城に入る時に、ギルドカードを見せて欲しいと言われただけだ。ローザスに言われて、タシアナが開発した物だが、認証器の様な物で、ギルドカードにはすでに犯罪歴やギルドでの評価などの個人情報に近い物が組み込まれている。それを確認出来る物が門番が持っていた物で、ギルドカードをかざすことで確認が出来る用になっている。また、一度登録は必要だが、登録済みの場合には、訪問予定を入れておくことで、スムーズに入場出来る仕組みになっている。ギルドカードを持たない場合には、門番に止められて、控えの間で迎えの者が来るのを待っている必要がある。控えの間を見ると、ギルドカードを持たない貴族たちが大量に迎えが来るのを待っている。基本的には、宰相やローザスの配下が迎えに行くのだが、今日のように来訪者が多いと待たされる時間も長くなってしまう。
「(ねぇリン。あれって、ウォルシャタ?)」「(ん?そうだと思うよ。アイツ、こっちでも馬鹿声で話すんだな)」「(馬鹿声ってまぁ的確だけどね。)」「(ね。リン。殺してきていい?)」「(ミル。ダメだよ。簡単に殺しちゃ反省なんてしないだろうけど、地獄位は見せないとね)」「(ゴメン。忘れてた。)」「(ミル。貴方ね・・・。)」「(てへっ)」「(”てへっ”じゃないわよ。可愛いからって・・・。)」「(リン。アデレードがいじめる....。僕の事”リンとお似合いな位可愛い”だって)」「(誰もそんな事行ってないわよ。)」「(リン様。ミル姉。アデレード姉。余裕があるのはわかりますけど、もう少し緊張感を持って下さい)」「(あれ?エミール。ミルやアデレードの呼び名変えたの?)」「(・・・・はい。そうしないと、リン様と一緒に居させないと脅されました・・・。)」「(あぁぁエミール。内緒だって言ったのに!!)」「(ミル。アデレード。僕が居ない所で何しているの?)」「(妻達によるコミュニケーション?)」「(あぁ解ったよ。でも、程々にしておいてね。)」「「(はぁーい)」」
廊下を歩いて、用意された控室に入っていく。僕とアデレードとエミールとマルティンは、ローザスと一緒に会場に入る事になっていて、ミルとウィンザーはモルトとナッセと一緒に先に会場に入っている事になる。
「リン様。私達は先に入っております。」「うん。今日は、ギルドの事に関しては無いけど、もしかしたら神殿絡みで各国の対応を聞かれるかも知れないからね。その時には、よろしくね。」
しばらくすると、僕達の番になった。「それじゃアデレード、エミール、マルティン行きますか!今日は気楽に構えていよう。最悪なパターンにもならないと思うからね。」
僕の前にローザスが歩いている。僕の後ろに、今度海岸街の領主となったローザスの弟が従う形になる。入場の順番で、大筋は理解できるようだ。僕が継承権を放棄していなければ、第二位に上がった事を意味する順番だ。
「さて、これで全部か?」「陛下。今来られている方は全員でございます。」「そうか、まだ着いていない者も居るのか?」「はい....。」「まぁいい。さて始めるか?」「まず、新たに男爵になる者の是非を問う。」
「推挙人も出ている事から問題なかろう。」陛下の一言で終わってしまった。これで、ウォルシャタ・フォン・アゾレムが男爵になった事になる。「ウォルシャタ・フォン・アゾレムよ。錫杖を与える。男爵として、領地運営を任せる。」「はっ謹んでお受けいたします」「宰相。ウォルシャタ・フォン・アゾレムの領地はどこになるのだ?」「北方連合国ノーザン・コンドミニアム近くの国境の街シャルム周辺になります。アゾレム男爵...お二人になってしまいますが、ウォルシャタ男爵は、ご自分でご領地を切り開きまして、食客の方々と幾つかの入植地をご用意されています。」「そうか、さすがは伝説のジョブと言う所か。それで、入植地の準備はできているのか?」「はっ陛下。私どもで用意致しました入植地は4箇所でございます。森林を切り開きました場所。湖の近くの場所。街道沿いに休憩地となる場所。そして、国境の街シャルムに緊急時に駆けつけられるようにした場所でございます。」「そうか、大義である。そこの、領主は決まっておるのか?」「はい。私と行動を共にしてくれる部下に任せようかと思っています。皆、武勇に優れ、知恵豊かな者ばかりです。」「そうか、男爵よ。おぬしから、その者達を領主として一定以上の成果が出た時には、准男爵にせよ。」「はっかしこまりました」
これで、ウォルシャタが男爵になって、連れが准男爵になる事が決定した。その後、エベンスの男爵になる事が決定して、イスラ街と命名される事になった。寄親は、オイゲンが指名された。オイゲンの街の周りの領主達も全員准男爵になる事が決定して、今度の街の規模により、男爵になる事もあり得るとなった。
そして、陛下の息子にして、宰相の孫になり、ローザスの弟で、僕の義兄になる。アビーム=ロア・フォン・トリーアの継承権剥奪と海岸街への転封が報告された。それに合わせて、侯爵ではなく男爵となる事も発令された。その上で、オイゲンを寄親にする事も発表された。これは、僕も知らされていなかった。隣で、ローザスがしてやったりの顔をしている事から、ローザス仕込みでオイゲンと話を...って違うな、エルフリーデだな。オイゲンも驚いている。陛下が言葉を続ける。「アビームを寄子にする。エストタール家が男爵ではまずかろう。どうだ、宰相。余としては、この暫くの内政に関する手腕から、エストタール家を子爵にしようかと思うが、そちの考えはどうだ?」「陛下。私もそれがよろしいかと思います。マノーラ侯を除けば、王国で一番の貢献度からも、子爵家になる資格は十分だと思われますし、配下の領民もしっかり統治しています。」「うむ。皆の者。事前通告はなかったが、宰相もこう申しておる。エストタール家を子爵にしようかと思う。反対の者は意見せよ」
陛下が辺りを見回して居る。オイゲンを見るとオロオロしてエルフリーデに嗜まれている。あいつ、今日は自分には一切関係ないと思って気楽に来たな。ざまぁみろ!!
「反対意見も無いようだ。エストタール家は子爵として。錫杖は用意されていないと思うが、後日届けさせよう。それで良いな。エストタール。」「・・・」エルフリーデがオイゲンの脇をつつく「はっ陛下。子爵家としてこれからも・・・えぇ~と。頑張ります。」
あぁぁグダグダになった。
「まぁよい。マノーラ侯。エストタール家を頼むな。」「はい。陛下。これからも、王国の為に、邁進してまいります」「うむ。」
「次は、宰相のことだな。考えは変わらないのか?」「申し訳ございません。陛下。引退ではなく、休養とした事でお許しを願えればと思います」「そうか・・・解った。」
「皆も知っていると思うが、宰相のウルコスが、この会議が終わった翌日から、6ヶ月ほどの休養に入る事になる。ウルコス。お主から説明せよ」「皆さんには申し訳ありませんが、ここ暫くの激務から、体調が芳しくなく、魔導医から休養を勧められました。アゾレムの後継者が新たな領地で領主となり、エストタール家が子爵家になり、何と言ってもマノーラ侯がめまぐるしい活躍をしている情勢で、当初は若い者に席を譲る為に引退を考えておったのだが・・・。」「あぁ余が許さなかった。若い芽が出ている事は認めるが、まだその芽がどう育つかわからない。ここで投げ出す事は余が許さない。宰相には死ぬまで働いてもらう。ただ、今死なれてしまうと余が困るので、半年間の休養を取らせる事にした。その間、国政から離れ、養生に務めさせる。」「陛下。ありがとございます。そこで、マノーラ侯。一つお願いを聞いていただけないでしょうか?」
そんな話聞いてないよ。とは思ったが「はい。何でしょうか?」「なに、簡単な事です。海岸街のアビーム様の領地で療養させていただけないでしょうか?」「えぇ構いません。」「それは良かった。ニグラに居る者達と一緒に移りたいのですが、ご許可をいただけるでしょうか?」「えぇ大丈夫です。海岸街のどこにするのかを現地で決めていただければと思いますが、アビーム男爵と相談して決めていただいて構いません。」「ありがとうございます。」
ん?あぁぁそうかぁ。宰相は、安全な場所に身を隠す事を選んだ。確かに、あそこかなら、眷属も居るし、滅多な事では責められることも、周りの住民を考えると暴動が発生する事もない。館で働いている者事となると、もうニグラに戻ってくる気が無いのかもしれない。まぁ今度、宰相に真意を聞きに行けばいい。面会もしやすくなったのだし....。
その後の御前会議は、王国内で起こっている様々な事に関しての報告がされていく。魔物の数が減っている事や魔核の値段が乱高下しているので、王家で安定させてほしいと言う話まで豪商からされた。ギルドに属している商人達は関係ないと言う顔をしている。まぁ実際関係無いのも事実なんだけど、もう少し聞く姿勢は持ってほしいな。ミル達にも同じ事が言えるんだけどね。具体的な対策が出ないまま時間だけが過ぎていく。
「マノーラ侯。何か意見は無いのか?」「意見と申されましても、豪商の方々の意見を拝聴して理解するのが精一杯で意見を考える余裕はございません。ご容赦下さい。」「そうか、宰相・・・は、休養に入るのか、ミヤナック家でこの件に当たれ。当主は、統治で忙しいだろうから、ハーコムレイ。そなたが責任を持って対応せよ」「はっ陛下。しかし・・・。」「なんだ申してみよ」「はっ魔核の値段もそうですが、それ以前に、王国の財政には大きな穴が空いているようでして、その穴を放置したままではいくら私が市場の正常化を行うとも、意味がありません。」「穴とはなんだ?」「はっ...」
ハーレイの告発が始まった。未だ行方不明のニノサが、ハーレイに託した文章の存在を明らかにした。会場が一気にざわついた。その文章がどういう物なのかは、宰相派だった者にはよく分かっている。それで話が繋がったと言う顔になって、最初は赤くなり、暫くしたら、青くなって、震え出す者も居る。宰相の部分や、こちらに転んだ男爵や准男爵や商人達はリストから除外している。その為に、事情を知らない宰相派の連中は余計に書類の真実味が出てきてしまっている。賄賂を教会に送っていたものや教会からパシリカのリストを横流ししていた者。守備隊の装備の為に支給されたレインを着服していた者。それらを、ハーレイは罪状と共に読み上げていく。最初は、準男爵や男爵だけだったのが、子爵や教会関係者。豪商となってくると、場が静まり、読み上げるハーレイの声だけが聞こえる状態になっている。
実は....ミルに、古代魔法の精神魔法を使って、興奮を押さえる様にしてもらっている。
「この様な事は断じて許すことができない。証拠集めの為に、一年近くかかってしまったが、明確な証拠もございます。領民を導くべき貴族にあるまじき愚行。裁きの上、極刑が相応しいかと思います。苦しめられた民に、それを持って許しを得るしかございません。」
ハーレイの独壇場は終わった。終わった事を受けて、今度は、ミルに興奮を促す精神魔法を発動してもらう。建物の外では、会議の様子を聞いていた民衆が、煽り立てている。勿論、仕込みだ!!
会場の中も、徐々に理解が追いついてきたのか、ザワザワが大きくなってきた。そろそろだろうな。『ふざけるな。領内でどう税をかして、それをどう使おうと領主が決めていいことになっている』その声を皮切りに、罵詈雑言の嵐だ。
陛下が手を上げて発言を遮る。暫くしたら、収まり始めた「ローザス。ハーコムレイはこう言っているが、そちの考えはどうだ?」「陛下。そうですね。わたくしもハーコムレイ殿と同じ意見です。」「そうか、ハーコムレイ。」「はっ。」「そちの調べ上げた事に間違いはないのか?」「はい。間違いはございません。ご意見もあろうかと思います。わたしくが先程あげた御仁を捕えまして、裁判を行うのがよろしいかと思います。裁判もわたくしが仕切らさせていただきます。罪を認められれば、よし、認められなければ、領地没収の上。極刑が相応しい罪かと思います。また、女子供は流刑地で民のために尽くさせ、パシリカ後の男児に関しては、領主を諌めなかった事で、連座制を適用してもよろしいかと、愚考します。」
「ふむ。そうなると、王国は半数の貴族を失うことになるな。」「はい。ですが、このまま腐敗して腐臭を放つ位ならきっぱりと切り離したほうがよろしいかと、腐った連中ですので、それこそ若い芽に担当させても良いかとおもいます」
ここいらが限界だったらし、黙っていた子爵家や伯爵家からも『腐ったとは、儂らの事か?おまえは、ローザス殿下が居なければ何もできない臆病者ではないか?』と野次だけではなく、殺気が篭った目線が飛んでいる。
そんな事を気にしないで、ハーレイは言葉を続ける「陛下。ご裁断を」「ふむ。そうだな。ウォルシャタ・フォン・アゾレム男爵。そちはどう思う?」
「へっ俺ですか?あぁ。陛下。私の意見としては、民からの税の徴収は貴族に認められた権利です。それを行使して罪だと言われるのでしたが、貴族はどうしたらいいのかわからなくなってしまいます。問題なしとはいいませんが、これまでの忠義とこれからの奉仕で問題ないのではないでしょうか?」「よく言った。儂も同じ意見じゃ。なかなか見どころがある若者だ。アゾレムの所になんぞもったいない。儂が後見になろう。」
アドゥナ伯爵が釣れた。「陛下。男爵の意見が正しいと思われます。ミヤナック殿の言いたい事も解るが、これまでの忠義が意味がなくなってしまいって、これからの王国が立ち行かなくなります。」
くどくどと語るのが好きなようだ。結局何もするなと言う事なんだろうけど、立場的に自分たちがまずい事は分かっているのか、言い訳に忙しいようだ。
「ふむ。マノーラ侯。そちはどう思う?」「そうですね。陛下のおっしゃる通り、大功ある大貴族やそれに連なる人たちをいきなり、罪ありだとしても断罪するのが正しいとは思えません。」「ふむ。それで」「はい。ここで、賛否を投票で決めればよろしいかと思います。」「そうだな。初代様が国政の舵取りで困った事が合ったときに、”多数決”で決めろと残されている。今回もそれに従う事にしよう。ハーコムレイとアドゥナ。それでいいな?」「はっ陛下のみこころのまま」「かしこまりました」
ハーレイ。もう勝った気になっているけど、まだ情勢は半々なんだよ。それくらいは意識しようね。
「準備に時間がかかる。一旦休憩としよう。宰相。準備にどのくらい必要か?」「陛下。記名式でよろしければ、すぐに準備できます。匿名投票だと部屋の準備や教会から魔道具を持ってくる必要がございまして、1時間ほど必要になってしまいます。」「そうか、宰相はどっちのほうが良いと思う?」「はい。今回の場合には、当事者である方も投票いたしますので、記名式でよろしいかと思います」「そうか、それなら準備は必要ないのだな。」「はっ必要な用紙をお配りするだけです。」「わかった。皆の手元に用紙が渡るまで休憩とする。」「「「はっ」」」
時間にして5分位だと思われるが、用紙が配られて、捺印か署名をして、議題に関しての賛成/反対に投票していく。箱があるわけではなく、並んでいる二人に用紙を渡していく方式になる。陛下を挟んで右側が賛成。左側が反対になる。オイゲン達には賛成に入れるようにいってある。ここで、ミルとエミールが活躍する。そう、拮抗するように入札を操作するのだ。寝返った奴等には、入札時にテーブルの上に手が置いてあったら賛成で置いてなかったら反対に入れるように言ってある。細かい調整をする事にしたのだ。念話で逐次、ミルとエミールから読み上げている票数が伝わってくる。その都度調子を行っている。拮抗する数字にしている。ローザスとハーレイも賛成に入れている。ウォルシャタは反対に入れる。
「マノーラ侯。そちで最後のようだぞ」「はっ」考えたふりをして、反対に票を入れる。これで同数になった。
票の読み上げが始まった。結果は解っているがドキドキする。同数だと発表された。同数だった場合には、陛下が最終決断を下す事になる。
「陛下」「陛下」「余の考えをのべる。ハーコムレイが丹念に調べた事は是とするも、極刑では国力が落ちてしまう。よって、ハーコムレイから告発が有ったものは、3年間の職務停止を言い渡す。領地にて謹慎せよ。」「・・・」「その間のニグラでの職務は、この問題を遡上したハーコムレイが応るものとする。また、教会関係者や関係商人は3年間ニグラ及び王家直轄領への出入りを禁止する。」「・・・」「ハーコムレイもアドゥナもいいな」「はっ」「はっ」
執政官が決まった事を読み上げる。「罪ありとなった者は、御前会議終了後より1ヶ月後に領地に入り謹慎する物とする。」
「今日は、ここまでか?他になにかある者はいるか?」陛下が辺りを見回した。もう僕以外には何もなさそうだ。陛下から目配せが来た
「はい。陛下。少しお時間を頂いてよろしいでしょうか?」「なんだ、マノーラ侯。楽しい話題であろうな?」「はい。以前から陛下に代診しておりました件でのご報告があります。」「ほぉ~そうか、それは楽しそうな話だな。」「はい」「それでどうなんだ。」「その前に、1人・・・いや、一匹と言った方がいいのかもしれませんが、紹介したい者がおりますが、呼んでよろしいでしょうか?」「あぁ構わない。」「ありがとうございます。陛下、私のジョブが、テイマーなのはご存知だと思うのですが、今からこの度の結果のご報告に必要な者を呼び出します。」「そうか」「はい。【蒼き翼を持ち、碧き空の瞳と漆黒と金の瞳を持つ、トリスタン。我の声に答えよ。召喚】」
おぉぉっと声が聴こえる。そうじゃなきゃこんなこっ恥ずかしい呪文なんて唱えないよ。
「あるじさま。御前に」「ありがとう。トリスタン」
『え?竜?言葉を話すのか?』そんな声が聞こえてくる。
「リン=フリークスよ。そのものは?」「はい。侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラの魔物を統べていた。女王のトリスタンになります。私が、侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラの神殿攻略を行った後で、私の友となり、召喚に応じてくれる事になりました。」「そうか、屈服したわけでは無いのだな?」「はい。友です。」「あるじさま。友ではなく、主従です。」
トリスタンが竜体のままサイズを小さくしている。今は、僕の肩の上に留まれる位のサイズに、いつものサイズになっている。初めて見る者が殆どでまだ不思議な顔をしている。現実を受け入れられない感じの様だ。
「トリスタン殿?。はじめまして、リン=フリークスが、侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラを攻略したと言うのは本当なのでしょうか?」「うん。本当だよ。あるじさまは、神殿を攻略して、オルプネ様にもお会いしているよ?」「オルプネ様とは、もしや、伝説の....神の使いのニンフでは無いのでしょうか?」「そうだよ。来ているから、呼んでいい?」「・・・はい。よろしければ」「うん。わかった。オルプネ様。大丈夫だって!」
ニンフのオルプネがピクシー体で姿を表した。最初、アデレードの陰の中に居たのだが、この方が演出的にいいだろうと言う事になった。同時、ミルの精神魔法で心を落ち着かせる様にして、ウィンザーが自然魔法でオルプネの周りを光らせている。演出も必要だろう。そして、エミールがオルプネを中心に自然魔法で冷気が出るようにしている。「トリスタン殿。私の事は、オルプネでいいと何度も言っているでしょ」「はじめまして、トリーア王家の今世の国王よ」「はっ・・・オルプネ様。」「オルプネでよい。私とそなたでは関係があるのでな。」「関係とおしゃいますと?」「おぬし達が言う初代様は、わたしが加護を与えたヒト族だからな。」「・・・・そうなのですか?」「あぁ昔話を続けても良いが、何か話があるのだろう?」「あっはい。そこのリン=フリークスが、オルプネ様の神殿を攻略したと言っておりますが本当ですか?」「あぁ本当だ。リン=フリークスには加護は与えていないが、攻略したのは本当だ。その上、各地に点在する7つの神殿を与えられる事になっておる。」「・・・それは、どういう事なのでしょうか?」「わからんか?それなら、知る必要はない。このリン=フリークスがマガラ神殿を始めとする、全ての神殿の所有者になったのだ。そして、おぬし達が侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラと呼ぶ島全域を手中に治めたのだ」「それは真なのでしょうか?」「疑っておるのか?この私の言葉を」「いえ、確認でございます。」「そうか、あぁ本当だ。」「トリーアの今世の国王よ。」「はい」「リン=フリークスが全ての神殿を確実に治める事が出来るように配慮してはくれぬか?」「・・・。解りました、わたくしに出来る事でしたら、協力は惜しみません。」「大丈夫じゃ。トリーアの今世の国王よ。リン=フリークスには、おぬしが爵位を与えておるのじゃな?」「はい。そうでございます」「そうか、爵位を上げろとは言わない。その代わり、リン=フリークスが、おぬし達が言う侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラや各地の神殿に置いて何もにも属さない独立した存在とはならぬか?」「それは、別の国になると言うことですか?」「それがいいのなら、そうしてくれ。」「・・・・即答できかねます。」「何故じゃ?」「トリーア王家だけの問題では無いからです。」「そうか、それなら、周辺国家からの承諾があれば、独立を認めると言う事だな?」「勿論です。」「たしかか?」「はい。」「初代に誓ってもか?」「はい。初代様に誓いましても」「解った。リン=フリークス。トリーアの今世の国王にあれを見せてやれ」「解った。陛下。これを見て下さい。モルト。陛下にお渡しして」「かしこまりました」
陛下に各国から領地として求める事と国家としての宣言も認める事が書かれた文章を手渡した。
「これは?」「各地の神殿を攻略した事により、簡易的な建物がいくつか出来上がりまして、そこに、各国からの使者が来られて、交渉した結果認めてもらえる事になりました」「・・・。そうか、ここまで準備されているのなら、認めるしかなさそうだな。」「ありがとうございます。しかし、私は、陛下の臣民である事には違いまりません。これからもご指導よろしくお願いいたします。」「・・・そうか、これからの事を決めなければならないな。宰相は休養に入るから、ローザスと話て決めてくれ。」「かしこまりました」
まだ周りがザワザワしてる。「マノーラ侯。少し、トリスタン殿とオルプネ殿と話がしたいんだがいいか?」「もちろんです。」「陛下。私も同席してよろしいですか?」「アデレードか?もちろんだ」
皆で陛下の後についていく。別室に通されて、暫く待っていると、モルトとナッセが入ってきた。呼ばれてやってきたのだという。
5分位待っていると、陛下と宰相が部屋に入ってきた。宰相も話がしたいという。
「リンよ。宰相も一緒でいいか?」「はい。問題ありません。」
それから、モルトとナッセとエミールとアデレードが、現状を説明している。適時宰相から質問が入る。税の事や今後の方針をまとめた。これを持って、トリーア王家が島の所有を含めて僕を認めた事になる。合わせて、ギルドの取扱に関しても、各支部を含めて、政治とは切り離して僕達のは以下になる事が決定された。税に関しては、支部がある国々に支払う事になるが、完全に独立した形態で運営される事となった。宰相に至ってはそのほうがいいだろうと後押しをしてくれている。
「マノーラ侯。一つお願いがあるのですがよろしいですか?」「なんでしょうか?」「侯爵のステータスを確認したいのですが、よろしいでしょうか?」「なぜでしょう?それに、宰相は以前に確認なされていますよね?」「そうですね。一つ目の質問に関しては、興味と言った感情と本当の意味の確認です。そしてもう一つの質問に関しては、侯爵の隠蔽していないステータスを見てみたいのです」「・・・・。そうですか....解りました。二つ約束していただきたい。」「はい。なんでしょう?」「一つは、誰であっても漏らさないで頂きたい。」「解っております。この部屋から出たら、ステータスに関しては忘れる事にします。」「お願いします。そして、もう一つは、驚かないで頂きたい。」「・・・それはお約束いたしかねます。私も人の子です。感情が抑えられなくなる可能性はあります。」「えぇそれでいいです。私に害意がない事だけ認識いただければ問題ありません」「わかりました。それは認識しております。」
魔珠を外して、隠蔽を解除して、宰相に手を差し出した。手の甲に触れる形で宰相がステータスを確認している。
「やはり.....」
宰相が手を離して一言だけつぶやいた
「どうかされましたか?」「いえ、答えていただくてもいいのですが、貴方はいやもしかしたら、何人かは、転生者なのですか?」「・・・・どうでしょうか?そうですね。いろいろな因果を含んだ関係である事は間違いありません。」「そうなのですね。これで全てが繋がりました。」「・・・・。」「侯爵はこれからどうするのでしょうか?」「どうするとは...正直わかりません。ただ、言えるのは、僕はこのトリーア世界が好きです。ここで生きていくと決めています。」「ありがとうございます。それ以上の答えはありません。」
「モルト殿。」「なんでしょう。ウルコス殿。」「まだそう呼んで頂けるのでしょうか?」「はい。リン様が、ウルコス殿が必要だとおっしゃっています。私は、リン様にお仕えする事を誇りに思っております」「あぁありがとうございます。私がした事を許してくれとはいいません。必要なことだったと言えます。」「そうですね。立場があれば見えてくる物も違うでしょう」「そう言って頂けるだけで十分です。」
「侯爵。侯爵は、私に6ヶ月間は職務を停止せよとおっしゃいました。」「えぇそうです。」「侯爵。陛下。私は、今日を6ヶ月後に復職した後に宰相の地位を退きたいと思います。」「なっ」「宰相。それは許さぬ。」「・・・陛下、それでは一つ賭けをしませんか?」「賭けとは?」「簡単な事です。侯爵は、私が職務停止中の6ヶ月で王国を揺るがすような事案が発生するが、収めるとおっしゃっています。」「リン。本当か?」「可能性の話です。」「そうか・・・。6ヶ月?」「えぇそれで、侯爵が言う通りになって、侯爵が6ヶ月で混乱が収まったら、私の引退をお認め下さい。もう老人の出る時代ではありません。混乱が継続いたしましたら、まだまだ私の様な物でもお力になれるかもしれません。どうでしょうか?」「リン。自信のほどはどうなのだ?」「そうですね。半々と言った所でしょうか?相手の規模もわかりませんが、相手にはこちらの規模の予測ができてしまいますからね」「そうか....ウルコス。解った。」「陛下。ありがとうございます。」「おまえは勘違いしているぞ。余が解ったと言ったのは、リンが言うような事態が発生した場合には、余の不徳が有ったと言う事だ。従って、事態の収束ができた暁に、余も引退し、ローザスに王国を任せようと思う。そしてウルコス。おまえにも責任を取って、余と一緒に引退してもらう。」「陛下!」「陛下。それは....」「いい。もう決めた事だ。ただし、リンがいうように6ヶ月という期限は切るからな。それができなければ、まだ老人共の時代で、できたら、ローザス筆頭にした若者の時代だという事だ。」「・・・・。陛下。解りました、それで私には不服はありません。時代の推移を見極めましょう」
「お二人とも、少し待って下さい。」「なんじゃリン。」「考えが飛びすぎです。それに、何も起こらない事も考えられるのですよ」「それでもじゃ。余と宰相が決めた事に、その方が口をはさむ余地はない。のうウルコス。」「はい。陛下。侯爵も諦めて下さい。」
「あぁぁぁぁ!!!」「なんじゃ。リン。」「そうですよ。どうしたのですか、侯爵。」
二人の顔を見て確信した。最初からこれが狙いだったんだな。どこから決めていたのかわからないが、ニヤニヤ具合から考えると、宰相の野郎の考えだな。
「・・・解りました。全力で、陛下と宰相閣下を引退に追い込みます。」「そうして下さい。私は、侯爵にそんな表情をさせただけで満足です。」
やっぱりな。まだまだだな。一枚も二枚もこの人達の方が上手なんだろう。

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