【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

御前会議への呼出

結局、アゾレムは使者をよこさなかった。よこせなかったが正しいのかも知れない。守備隊の残っていた連中も、翌日に領主に面談して事の次第を伝えた後にアゾレム領内から家族ごと消えてしまったようだ。不思議な事が有るものだな。
明日には、モルト達も帰ってくるようだ。今日は、最寄りの神殿まで移動して、一泊してから戻ってくると連絡が入った。
今日は、久しぶりに皆で揃ってお風呂に入る事になった。いつものような流れで風呂に入ってから、今日は少し長話になりそうなので、髪の毛もしっかり乾かした後で、足湯に集合する事になった。
もう少し湯船に浸かっていたい気持ちになったが、皆が足湯に集まっていると言うので、ガウンを着て足湯に向かった。各々定位置に座って、何か飲んでいる。僕も、冷魔庫から冷やしておいた果実水を取り出して座った。
まずは、イリメリから名付けの報告が有るようだ「名付けだけど、明日には一通り終わると思う。後は、リンが一気に眷属化すればいいだけって感じだけど、リンに少しお願いがある。」「何?」「マノーラ神殿の地下一階だけど、魔物や魔獣の待機場所にしたいんだけど、地形を変えて欲しい。」「いいけど、どうするの?」「うん。フェムやタシアナ達とも話したんだけど、今後は、大丈夫だと思うけど、それでも長いと1週間位は待機階で待ってもらう事になると思うんだよね」「そうだね」「それで、中心部分は街並みでいいけど、それ以外の場所を、草原や森林や湖や塩湖や沼を作って欲しい。」「わかった。広さとかはどうする?」「う~ん。フェムどう?」「そうだね。街並みはそんなにいらないと思うよ。せいぜい、名付けするときの建物と、番人が住む屋敷があればいいと思うからね」「名付けは教会のような物でいいの?」「そうだね。雰囲気があっていいと思う。地下礼拝堂みたいな感じでお願い。」「了解。あぁそれと、番人って何?」「リンに言ってなかったの?」「??」「うん。忘れてた。ゴメン。」「マヤ。貴女がいい出した事なんだよ。しっかりしてよね。」「だからゴメン。」「もういいわよ。あのね。リン。マヤからの提案でね。全部の階の行き来を一箇所にまとめて、そこから各階に行くようにしたいと言う事でね。」「うん。それは別に問題ないよ。それが地下一階の中央に作ってもいいし、一度14階に飛んでからでもいいよ」「・・・そこは、地下一階に作って欲しい。そして、まとめた場所を、サラナとウーレンが番人として生活する事にしたいんだよ」「う~ん。いいけど、彼女たちは承諾しているの?」「それは大丈夫。私も確認したら、彼女たちがマヤに相談したらしい。」「相談?」「うん。自分たちに何が出来るのかって事を考えたらしいんだよ。」「うん。」「そこで、彼女たちは、眷属たちの相談所を作る事にしたらしい。」「相談所?」「そそ、二人から話を聞いたら、たしかに必要だなって思ったから、私も賛成何だけどね。」「へぇイリメリが賛成ならいいんじゃないの?」「・・・リン。あのね?」「うん。説明はしてくれるんでしょ?」「勿論だよ。」
二人がやろうとしているのは、便利屋の様な物だった。人相手ではなく、眷属や魔物や獣魔相手だと言う事だ。マガラ神殿の地下二階で過ごしていた時や、マノーラ神殿の地下14階で過ごしてきた経験から、眷属たちは何かが欲しくなっても、僕やイリメリやましてやマヤ達には頼むことができない。そこで、街中に出られる眷属がそれを行っていたが、間違ってしまったりする事が多いようだ。そして、どんな物が売っているのか解らないパターンが多くて、意図した物が手に入らない場合が多いと言う事だ。地下14階のおかげで徐々には解決するが、それでも神殿内では売っていない物や新しい情報なんかはなかなか入ってこない。そこで、二人は地下1階で買い物代行やヒト型になれない眷属を連れて歩くテイマー役になって、買い物をしたりする事にしたらしい。その許可を、マヤにもとめてきたらしい。そして、マヤはイリメリに相談して、僕に話が上がってきたと言う事だ。
「ねぇ二人だけで人手足りるの?」「ううん。実際には、何人か手伝いを入れたいって言っているよ。」「そうか、ミーシャ。ウィンザー。今年パシリカを受ける何名かでやってくれそうな子居るかな?」「え・・・。あっはい。リン様の下で働けるのなら、何名と言わず全員参加すると思います。」「だって?どうイリメリ。足りそう?」「うん。大丈夫なんじゃない。ねぇマヤ?」「ん。十分だと思うよ」「了解。それで館を作るよ。ミーシャ。全部で何人くらいになりそう?」「はい。女子が多分7名で男子が11名だと思います。」「そうか、個室の方がいい?」「そうですね。個室でお願いします。」「解った。明日にでも、サラナとウーレンに会って詳細を決めるよ。」「あっそのときに、二人のジョブをテイマーにしておいてくれる?。ステータス不可視の魔珠は使っているけど、万が一があるからね。」「あぁそうだね。了解。」
「次は私ね。」「はい。タシアナさん。なんでしょうか?」「うん。名付けのめどが着いてから、イリメリに断りを入れて、以前から開発していた物が完成しました。パチパチパチって反応薄いね?」「いや、どれの事を言っているのか.....。」「あぁこういうやつだったよ。忘れていたよ。ミーシャ。みんなに見せてあげて!」「はい。」
ミーシャが持ってきたのは、少し厚みがある手のひらサイズの箱の様な物だ。
「タシアナ。これなに?」「見てわからない?」「うん。だから、聞いているんだけど.....」「あぁそうかぁそうかぁゴメン。そうだよね。これは、簡単に言えば、音声メールの送受信機+映像珠装置だよ。」「ん?携帯電話じゃなくて?」「うん。ゴメン。双方向通信は難しい。できなくはないけど、私で魔力がギリギリ位だから諦めた。」「それじゃこれは、録画した物を送信出来る物なの?」「そうそれもほぼ汎用でね。」「おぉそれはすごいね。」「でしょ?」「量産は可能なの?」「可能だよ。ただ、売るとしたら、金貨2~3枚位にはなってしまうと思うよ。」「そうか、使い方は?」「それは簡単にしてある。まずは、二つの魔道具をお互いに接触させて、お互いの識別を登録する。電話帳に登録するような感じだね。」「・・・」「後は、持って”アドレス”というと、ステータスの様に登録してある。識別名が表示される。それを選択して、”録音”で音だけになって、”録画”で映像になる。終了すれば、相手に送信される。勿論、逆に、録音/録画してから相手を選んでも大丈夫だよ。」「へぇそれは便利だね。時間はどのくらい?」「音声で30分位かな。映像では10分が限界かな」「距離は?」「無制限だと思う。実験では島からマガラ神殿でも大丈夫だったよ」「月額料金は」「なんと、送受信無料です」「おぉどんなに使っても無料なのですね。7G制限とかないんですね。」「えぇありません。」「って違うよ。定期的なメンテナンスとかは必要?」「まだ耐久テストをしているわけじゃないけど、連続使用したら、中に入っている魔核が壊れちゃうかも知れないけど、その時でも魔核の補充だけで直るよ。」「そうなんだね。アデレード。どうかな?どのくらいで売ったらいいと思う?」「おぬし達....。まぁいい。それよりも、タシアナ。量産は出来ると言っていたが、おぬし以外に作れる者は居るのか?」「うん。眷属の一部とミーシャにも作れるよ。そんなに難しい物じゃないからね」「そうなんだな。量産はどの程度可能なのじゃ?」「私とミーシャで一日作って50台って所かな。慣れてきたらもう少しは作れると思うよ」「そうか、リンとタシアナよ。悪いがこれは売らない方がいいと思うぞ」「なんでぇ?」「機能がすごすぎるんじゃ。映像珠の汎用版だけなら、金貨2~3枚で飛ぶように売れるだろうけど、それが違う場所に居て見られるとなったら、いろいろ問題が起こるだろう。」「あぁそうか....タシアナ。映像珠の部分だけ取り出して作れる?」「うん。出来るよ。ってよりも、このままにしてアドレス帳と送受信部分の魔法陣を入れなければいいだけでしょ?」「それが出来るのなら、それでMOTEGI商会に卸そう。金貨2枚で卸して、売値は金貨3.5枚にしよう。」「それでどう?アデレード。」「うん。それならいいだろうな。兄様が大量に買っていくのが目に浮かぶな」「そうだね。それで、僕達様に通信出来る状態の物を人数分用意して、後、アッシュ達にも持たせてね。情報部門として、100台位のストックがあればいいかな。」「了解。あぁぁぁそうだ。そうだ。ねぇリン。さっきのサラナとウーレンのやる眷属の番人なんだけどさぁ。素材の依頼とか出していい?」「どういう事?」「うん。ほら、今私とかアルマールとかカルーネの何か作ろうとしたときに、直接眷属に言って、素材を持ってきてもらっているんだけどね。さっきみたいに大量に作る事も有るんだよ。」「うんうん」「そのときに、流石に、ギルドに依頼を出すわけには行かない素材も有るんだよ?」「へぇそうなの?」「うん。コカトリスの息袋とかね。」「あっそういう事ね。」「うん。裏ギルド見たいにしてくれると嬉しい。報酬が必要なら支払うしさ....ダメかな?」「イリメリどう思う?」「いいと思うよ。時々、ギルドにも高級素材の依頼が来て、対応に困って、私の眷属とかにこっそりクリアして貰っていたりしたからね。」「そうか、たしかに、今後増えるだろうね。いいよ。サラナとウーレンには眷属の番人というよりも、裏ギルドのギルド長をやってもらう事にしよう。報酬は、サラナとウーレンを含めた裏ギルドのメンバーの生活費にしてもらおう。後は、眷属の買い物に使ってもらう為に、裏ギルド預かりって事にしてしまおう。」
一気に問題が解決するのは気分がいい。
「リン。それで本題のひとつなんじゃが....父上から御前会議の日程の連絡が来た」「ほぉいつになったの?」「あぁ宰相の一言が決め手になって、来月の頭になったそうじゃ」「了解。それじゃ、10日位余裕がありそうなんだね。」「あぁそうだな。それで父上から議題の事前通告が来ている。神殿攻略は、事前通告はしないでよかったんじゃよな?」「うん。問題ないよ。ギリギリまでは伏せて置いたほうがいいからね。」「・・・あぁそれで、事前通告された議題なんだが・・・な。」「どうしたの?」「あぁ宰相がこの御前会議で半年の休養に入ると宣言したそうだ。表向きの理由は、疲れが溜まって、体調不良が続いていて、魔導医から休養を勧められたんだと言う事だ。」「そういう事にしたんだね。他には?」「あぁ。ウォルシャタを男爵にすると言う事だ。それから、ウォルシャタからの嘆願を受け入れて、部下たちもそれぞれ准男爵相当にしてほしいと言う事だ。」「へぇそうなんだ。すごいね。領民は集まったのかな?」「なんとか数だけは揃ったようだぞ。」「へぇ寄り合い所帯で大変だろうにね。」「これは、完全なる噂で明日、モルト達の報告と合わせて、確認しなければならない事ナんだけどな。」「うんうん。なになに?」「北方連合国ノーザン・コンドミニアムの国の一つに神託が出たそうじゃ。」「へぇそれって、パーティアック神だったりする?」「・・・・当りじゃ。」「あぁそうなんだ。差詰め『トリーア王家のウォルシャタは勇者である。協力せよ。』とか『北方を統治すべきはウォルシャタである』とかじゃないの?」「なぜ解るのじゃ?」「なんとなくそう思っただけだよ」「まぁ正確には、パーティアック神ではなく、パーティアック教の教会がそう神託を受けたと発表したというのが正しいな。」「え”まだパーティアック教って有ったの?」「あぁ北方連合国ノーザン・コンドミニアムの中の国の一つなんだがな。完全な人族優位主義で獣人やエルフさえも魔物と同列だといって何をしても許されるといっておる狂信者共の集まりじゃ国名もそのままパーティアックと言うからな。」「え?なんでそんな国が北方連合国ノーザン・コンドミニアムに入れるの?」「あぁそれは、逆だな。入っていた国をパーティアック教が則ったと言ったほうが正しいな。」「あっそうか....。」「まぁそれも有って、ウォルシャタ男爵領には人が流れているぞ。」
「想定外だけど、むしろ好都合かもしれないな。まぁそのことは後で決めるとして、アデレード他には?」「あぁ。エベンスの男爵も問題なく通りそうじゃ。あと、宰相の娘とその息子が、妾の義理の兄になるのだが、海岸街の貴族街に封じられる事になった。侯爵のまま街を治める事になる。それで父上からリンに許可を出して欲しいと言う事だ。」「うん。了解。予定調和だね。他には?」「あぁ御前会議での議題ではないんだがな、ローザス兄様から、継承権第一位の皇太子からの命令として、『伯爵。子爵。男爵。准男爵。騎士。屋号を持つ商人。全て、ニグラに来るよう』とお達しが出た。後、補足として公的に定めた後継者が居る場合には、後継者と保護者も一緒に来るようにとされている。できない場合には、事前に連絡を入れるようにとなっている。」「へぇそうなんだね。」「あぁそれのお達しが、ローザス兄様が書いた物では無いのではと言う噂も流れておるんじゃよ。」「なんで?」「そのお達しが書かれていた物が、王家が普段使っている物ではなく、ミヤナック家がよく使う様式の物だからなんじゃよ」
「アデレード。僕にはお達しが来てないけど?」「必要なのか?首謀者に?」「首謀者ってひどいな。知らない人が居たら誤解するよ。」「大丈夫じゃよ。ここに誤解するような者はおらん。」「そうだけどさぁ」「リン。これでいいのか?」「うん。大丈夫そうだよ。」「解った、兄様に連絡しておく。」「ルナもお願いね」「解った、ハー兄様に伝えておく。私は、明日からハー兄様に付き合えばいいんだよね?」「お願い。」「了解。」「ん?ルナは何をするのじゃ?」「やったぁリン。これで、アデレードに手伝って貰っていいんだよね?」「うん。そういう約束だからね。」「よかった。正直、私とイブンだけじゃ無理そうだったんだよ。良かったね。イブン。」「はい。助かります。アデレード様。よろしくお願いいたします。」
「ルナよ。話が見えないんじゃが?リンも笑っていないで説明をしてくれ」「うんうん。あのね。明日から、ルナとイブンとハーレイで、ニノサ文章の精査をする事になっているんだよ」「なんだ。前にやったのではなかったのか?」「うん。でも、それじゃ告発には足りないし、全員告発してしまうとトリーア王国が傾いてしまうから、今回のパシリカでギルドを頼ってきた連中は罷免にする事にしたんだよ」「あぁそうか....あぁぁぁそうか、ニノサ文章の中から、罷免にする貴族や商人達の情報を消すのだな。」「当り!もう少ししっかり言うと、それらの貴族や商人を廻って欲しいんだよ」「ん?いいが、何でじゃ?」「簡単だよ。御前会議で、ハーレイが提案する事をひっくり返すためだよ?」「リン。言っている事は逆じゃないのか?ハーレイやお主の出す提案に賛成させる為じゃないのか?」「ううん。違うよ。ハーレイには、もっとも過激な提案をして貰って、さっきの貴族や商人を除く全部の家の取り壊しと摂取及び領主と後継者の断罪を訴えてもらうんだよ。」「それは過激だな。でも、それが通れば、王国の風通しがよくならないか?」「一時的にはね。でも、それではダメなんだよ。宰相が復帰したときに、また宰相の周りに人が集まって、抵抗組織を作ろうとしてしまうからね。」「・・・・。それで?」「さっきのウォルシャタの件に繋がるんだけどね。ハーレイがローザスを使って、自分の政敵にあたる宰相を追い落として、その後で、邪魔な貴族連中の首を切る為に、この御前会議を利用したと思わせる。」「あぁ裏の事情を知らなければそう思えるな。」「でも、ハーレイは知らないけど、この提案が通るものだと思って居る。汚名は全て自分とミヤナック家が被って、ローザスが王道を行くとね。」「・・・・」「僕は、そんなハーレイも好きだけど、やっぱり、ハーレイにも表街道をローザスと一緒に歩いて欲しいんだよ。」「そうだな。それで、妾の旦那様はどんな悪巧みをしているのじゃ?」「悪巧みなんてしていないよ。ただ、状況ももう少しわかりやすくして、ウォルシャタに悪者になってもらおうとしているだけだよ」「ん?わからんぞ」
一旦、話を切って新しい飲み物をエミールに頼んだ。僕もだけど、よく見たら、エミールもガウンだけで下着を着けていない。もしかしてみんなそうなの?などと関係無いことをかんがえていたら、イリメリに睨まれてしまった。なぜ解るのか、後でこっそり聞いてみる事にする。
皆の前に新しい飲み物と、暖かいままの食事も出された。エミール達が用意してくれていたようだ。
「さて、アデレード。ハーレイの提案が出されて、ハーレイとしては、罷免にする代わりに賛成しろと僕達が言って回っていると考えているよね」「あぁ間違いなくな。妾もそう考えるのが普通だからな。」「うんうん。でも、それだと、最終的に、ローザスの権力基盤が強固になったとしても、貴族社会だけだし、恐怖で縛るしかなくなってしまう」「・・・・。」「そこで、ハーレイの考えを利用して、別に悪者を作って、そいつに全部を押し付けようと思っているのです。」「それが、ウォルシャタだと言う事だな」「うん。さて、順番に説明するね。全部うまくいかなかったら恥ずかしいから終わってから説明したいんだけど.....」「ダメじゃ今説明しろ」「僕もそう思う。リンは、説明下手だけど、言わないと解らない。それに、イリメリやサリーカやタシアナも居るし、エミールも居るからツッコミ要員が多数居るから大丈夫。」
「はいはい。それじゃ順番に説明するよ。」「あぁ」「まず、御前会議でハーレイの議題は却下される。僕は賛成/反対どちらにも投票しない。ローザスにもそうしてくれるように言ってある。却下された事で、名指しされた貴族や商人はハーレイを憎むだろうが、伯爵家の跡取りで、宰相がリタイアしてしまっている現状では一番力がある家だと言ってもいい。そうでしょ?」「あぁそうだな。ミヤナック家が一番発言力を持つな。でも、他の辺境伯が力を合わせたら、ミヤナック家に対抗出来るだろう。」「そう、その考えまで、処分を免れた伯爵や子爵家が至って欲しい。そうして、どこかの家にでも集まってくれれば、話は進むだろう。進まないのなら、進めればいいだけだからね」「・・・・。眷属を使うのか?」「うん。紛れ込ませる」「そうか・・・。それで?」「集まった貴族たちは、ハーコムレイが居なくなれば、宰相が居ない現状では、自分がって思いが芽生えるだろう。ハーレイが居なくなれば、自分たちが安泰になるんじゃないかと思い当たる」「・・・あぁそれで、旗印が欲しくなるのじゃな」「そう、ハーレイには固有の武力もあるし、妹婿も王家の守備隊に勝てる様な人物だとなると、その妹婿に勝利した人物を頼るのが一番いいと考える。それに、その人物は辺境といえるような辺鄙な場所を領地と定められて開拓をしなければならない。自分たちが領民を伴って行けば、歓迎されるだけではなく、守ってくれる可能性も高い。いや、そうなるべきだ。」「・・・」「っと考えてくれたら、嬉しい。」「・・・・」「あとは、ハーレイの断罪を決めた連中が蜂起してくれれば、その捕縛命令を受けて僕が動き出す。そして、宰相には、そうなった場合には、僕が属する側が正規軍だとなるようにお達しを用意してもらっている。」「・・・・」「多分、位置やら考えると、アドゥナ伯爵の所に集まるのではないかと予測する。そうして、アドゥナ伯爵とホレイズ伯爵とマシュホム伯爵の3名でハーレイに対抗する組織を作るんじゃないかな?」「・・・・」「そこに、ウォルシャタが招き入れられて、そうだね。総大将や大元帥とか適当な階級を与えて、全ての守備隊を渡すんじゃないかな。それで、一気にミヤナック家に攻め入るって感じだと思うよ。」「ミヤナック家は大丈夫なのか?」「うん。こうならないまでも断罪をするのはミヤナック家だから、守備隊の増強はしていると思うよ。」「そうじゃなく、リン。解っているのだろう?」「うん。眷属を各陣営に潜り込ませているし、行動がわかってから、進撃ルートを想定して、防御陣を展開するよ。ミヤナック家には指一本触れさせないよ。」「それを聞いて安心した。」「戦闘後に勝利して、アドゥナ伯爵領の流通を遮断する。」「勝てるのか?」「うん。ミルはどうおもう?」「僕とリンとトリスタン達とエミール達が居れば余裕で勝てる。でも、リンが望んでいるのはそういう勝利じゃないんだよね?」「そうだね。多分、暫く情報と物流を遮断していれば、内部で権力闘争が行われて、伯爵の誰かが、抜け駆けして戦いを挑んでくると思う。そうなったら、その戦いをズルズル引き伸ばして、ウォルシャタ達が出てきたら、一戦もしないで撤退する。」「いいのか?」「うん。無闇に戦って犠牲なんか出したくないからね。それでいい気になった奴等は、こまめに出てきたり、近くを通る商隊を襲って食料を得ようとするだろうし、もしかしたら、配下の村々から搾取するかもしれない。その小隊を各個撃破していく、でも、奴等には一度大勝利をおさめた気持ちがあるので、現実を見ようとしないのかもしれない。」「・・・」「ここからは希望なんだけどね。物資と情報両面で追い詰められた奴等は、本来はミヤナック家ではなく、ハーレイを討てばいいのに、勘違いして、僕達に勝利する事がその後の戦いに勝利出来ると考えて、連携もなく戦端を開くかもしれない。その時にも、大物が出てくるまで、僕達は撤退を続けて、向こうの隊列が伸び切ったときに、一斉に攻勢に転ずる。多分、これで勝てる。」
「・・・・」「何か抜けがあるかな?」「流れはわかったけど、それだと、一時的になるかも知れないけど、ウォルシャタに力が集まる事にならない?」「なるよ。でも、ある程度調子に乗ってもらわないとね」「・・・・あぁこういう人だった・・・。」「リン様。私達は戦えるのでしょうか?」「エミール達やミーシャやウィンザーやマルティンは今回はお留守番かな。」「なぜですか?私達も連れて行って下さい。」「う~ん」「エミール。今回はダメだよ。イリメリやフェムやタシアナやルナやサリーカやアデレードもお留守番なんだから、ね。」「なっミル。貴女。」「うん。僕がリンについていく。これは譲れない。」「・・・。ミルもイリメリ・・・。でも、今回は、ミルの意見を採用だね。僕とミルとトリスタンと眷属で今回は出る。マヤも一緒に行ってもらうよ。」「ん?もちろん。」「私達はダメなの?」「イリメリ。そんな顔しないでね。イリメリ達にしか頼めない事を頼むんだからね。」「そんな事よりも、リンが戦うときに隣に居たい。」「うん。それは嬉しけど、今回は僕達も直接は戦わないよ」「へ?」「そりゃぁそうだよ。あくまでミヤナック家と伯爵連合との紛争だよ。僕達が全面的に出ていく事はできないでしょ?」「・・・・・。」「その為の表の守備隊でしょ。獣人やエルフ達を組み込んだ守備隊で応援に駆けつけるって感じだよ。」「あっそうか、その間のミヤナック家やマノーラ家の防衛をやればいいんだね。」「うん。あと、多分大量に発生する難民の救済をお願いしたい」「・・・・難民はどうしたらいいの?」「一時的に、島で受け入れて、紛争が落ち着いてから、個々で決めてもらえばいいと思うよ。」「わかった。納得はしていないけど、了解した。」「うん。本当にお願い。」「わかった。」「でも、まだ3~4ヶ月後だとは思うけどね。それまでに情勢が動けば、またそのときに考えようね。」
それから各々の直近の予定を話し合ってから解散となった。解散といってもそのまま寝室で寝るだけだが、定義上、会議が終了した事を告げた。

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