【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

幕間 アゾレムの動き

最近、アゾレムの動きがない。正確には、ないわけではない。リン様の予想の範疇から出てこないと言うのが正しい。だからと言うわけではないが、報告に上がる事がなくなってきて、定時報告で終わってしまう。
すでに4ヶ月位、ウォルシャタ達は領内や宰相派の領内で魔物を狩ったりしている。街々で英雄扱いで歓待を受けて居る。リン様からは、その時の様子も出来る限り知らせて欲しいと言われているので、調べて報告は上げている。
この前報告に上がった時には、歓待の時に何が出されているのかを調べられたら調べて欲しいと言われた。歓待の内容なんてどこもそれほど違っていないと思っていたが、大きく違っていた。
領主の街では、盛大に歓待を受けているが、村では英雄扱いされてはいるが、酒や食べ物が出されるがそれだけの状況が多い。それを聞いたリン様は、直ちに村々にギルドから商隊を向かわせた。護衛もしっかり付けての大商隊だ。食べ物を中心にして、栄養価が高いと言っていたものが多くなっていた。同時に植物の種も大量にもたせていた。商隊には、領主の街ではなく村々を回るように言われていた。そのときに、色を付けてもいいが、マガラ神殿の価格で売るようにしろと言われた。村人に安いと聞かれたら、『マガラ神殿ではこの価格で売っている』と言うように言われている。実際、村ではかなり歓迎されて、村長に値段を聞かれる事がほとんどだったらしい。護衛料を考えると赤字になるかギリギリだったらしいが、リン=フリークスからの依頼と言う形で依頼料も出たので、商隊としては十分な黒字になったと言う話だ。
なんでそんな事をしたのか最初は解らなかったが、徐々に効果が出始めたのは、それから2ヶ月が経った位からだった。宰相派の村々からギルドに登録を求めに来たり、村ごと入植と言う形で逃げて来るケースも有った。最初からこれが狙いだったとしたら、本当に怖いお人だ。
アゾレムに関しては、他にも領内に入る奴隷商を拿捕しろと言う命令が出ている。完全に非合法な命令だが、リン様の眷属をうまく使う事でこの辺りはごまかしきれると考えている。すでに、十数回に渡って奴隷を拿捕している。犯罪奴隷を除いて奴隷を開放してマガラ神殿に送っている。捕えた奴隷商に話を聞くと誰でもいいから連れてこいと言われているようだ。しかし、ここ暫くは奴隷商の出入りは認められない。商隊が出入りしている事を報告したら、一度その商隊に潜り込ませて探りを入れたら、北方連合国ノーザン・コンドミニアムから来ている奴隷商だった事もある。
他に、動きらしい動きといえば、アゾレム領内にある山脈での採掘を始めるときに、邪魔をすると言う事もやっている。大体の調査が終わったと言う事で、妨害に関してはしなくて良くなっている。ただ、採掘量は調べるように言われている。大体でいいから把握したいと言う事だ。アゾレム領内の採掘では、石炭と鉄しか採掘できないようで、ミスリルや銀鉱石。金鉱石は採掘できていない。これに関しては、エストタール男爵があそこには、金鉱石も銀鉱石もミスリル鉱石もないと断言している。それが証明される形で、まだそれらの鉱石は見つかって居ないようだ。
次に調査を依頼されたのが、アゾレム領主の調査だった。個人的な趣味や行動パターンがわかるよに調べて欲しいと言われていた。調査報告を持っていくと嬉しそうにされていたのが印象的だった。本当に情報を大事にしてくれる。これらの事を合わせて、ローザス様にも報告書を上げている。
すでに、何度目かの報告書を書き上げようとした時に、アゾレムに動きが合ったと報告が上がってきた。
宰相からの使いがアゾレムに入ったようだ。それから、しばらくしたらアゾレムの領主とウォルシャタを乗せた馬車がニグラに向かって走り出したようだ。尾行も付けている上に、アゾレム領内に残っている食客の連中の監視も引き続き行われている。そして、リン様から渡されているのが最近開発された、映像珠と言う物だ。これは、見たままを記憶する事が出来る画期的な物で、情報収集を行う者に取ったら是が非でも欲しがるだろう。ただまだ数が作れない上に操作に使う魔法が汎用化できていないとかで一部の眷属にしか使う事ができないんだと言う。これが量産できて、誰でも使えるようになったら世界が一変する位の衝撃があるだろう。あの方ならやるかもしれない。眷属には、アゾレム領主と食客の2つを残すように指示をだしてある。予備で、アゾレム領内の小屋に残してあって壊れたときなどに対応出来るようになっている。
あの連絡が来てから、3日が経って今日にもアゾレムの馬車がニグラに到着するだろう。
★☆★☆★☆★☆
「ウォルシャタ。それでどうなんだ?」「何がですか?」「何がじゃない。イアンとかいう奴の言う通りに鉱石は出るんだろうな?」「大丈夫ですよ。今は、魔物に邪魔されていますが、やっと落ちつたのか、最近では問題なく採掘できていますからね」「そうか、ならいい。」「(小心者が)」「なんだ、何か言ったか?」「いえ、それよりも、宰相閣下はなんと?」「そうだな。まずは、採掘の状況を知りたいと仰せだ。」「解りました。」「あぁそれと、リン=フリークスが出してきた、金貨の受け渡しだ。」「解りました。それで、比率はどうなりましたか?」「投資の比率か?詳しい事は宰相に聞かないとならないが、リン=フリークスとローザスとハーレイ3人で4割ほどになっている。」「額面上は?」「宰相に渡している書類では、儂が3割。宰相が1割。宰相派の貴族や商人が2割。その他が4割と言ったところだな」「ほぉリン=フリークスはかなりのレインを入れてきているんですね。」「あぁミスリルが必要なんだろう?」「(本当にそうなのか?)えぇそうだと思いますね。」「御前会議でお前たちが勝ってくれて、あいつらではスネーク山の採掘ができないとわかって、ローザスやハーレイも投資する額を増やしてきたらしいからな。」「(そんなに単純なのか?)そうなんですね。あの程度、ウォーリアのジョブ持ちですから容易いですよ」「そうだな。もうすぐ宰相閣下のお屋敷だ。説明を頼むな。」「はい。解りました。」
「おぉアゾレム。急な呼び出しで悪かったな。マノーラの小僧やローザスが、ミスリルがいつくらいになるのか予定を教えてくれと煩くてな。待っておれと言っているのだが、これは契約に基づく正当な権利だとかいい出してな」「解りました。おい。ウォルシャタどうなんだ?」「はい。宰相閣下。アゾレム山脈に巣食っていた魔物達の掃討に時間を取られましたが、採掘が開始できる状況になっております。銀鉱石やミスリル鉱石も見つかっております。精錬前ですが、お持ちいたしました。」
従っていた従者が大きめの箱を2つ宰相の前に置いた。
「これを運んでいたために遅くなってしまいました。申し訳ございません」「いや、いい大義であった。この鉱石はどうするのだ?持って帰って精錬するのか?」「それでもいいのですが、それでは、リン=フリークスやローザスが納得しないと思いますので、宰相閣下にお預け致します。」「そうか、解った。」「それから、これもお預けいたします。」「ん?なんだこれは?」
袋は2つ。一つの袋には銀貨や銅貨が大量に入っているようだ。もう一つには、魔核が入っていた。
「はい。ウォルシャタ達が魔物討伐時に取得した素材を換金したレインになります。魔核は売らずに持ってきています」「そうか、たしかに警備隊の役割に記述されていたな。」「はい。私達アゾレムが誠実に働いている証拠でございます。」「あぁ解った。預からせてもらおう。」
宰相が手を鳴らして「おい。もってこい。」
奥の部屋から、宰相の配下のものなのか、袋を持ってきた。「これを持っていけ。こちらの手数料はすでに抜いてある。」「はっ。閣下。これは?」「マノーラの小僧とローザスが持ってきたものだ。」「わかりました、採掘に利用いたします。」「あぁしっかり頼むな。」「はっ」
「そう言えば、その方は、婚約者は居るのか?」「閣下、当初は、アデレード殿下でしたが、陛下から降嫁の許可が降りずにおりまして....。」「あぁそうか、マノーラ家に輿入れが決まったんだったな。」「はい。そうでございます。」「まぁ良かったではないか。ローザスの紐付き女が来るよりは・・・。そうだ、ルキウスの所に、今年パシリカを受ける娘が居たと思うのじゃがどうだ?」「そうだと言われましても、ウォルシャタは我が男爵家の跡取りでして・・・。」「そうだったな。ルキウスは子爵になったんだったな。そうだな少し考えてみる。その方らもいいな」「はい。」「もうよい。さがれ」
アゾレム親子が部屋から出ていった。「パルティードはダメだな。さっさとウォルシャタを領主にして、周り男爵家を作らせて、子爵にしないと、こっちの陣容が強くならん。」「閣下。よろしいのですか?」「あぁそうだな。息子だけを今度呼び出して、国境の街シャルム辺りを領地にした男爵家を作ってもいいだろうな。」「それがよろしいかと、今のアゾレムでは評判がよろしくない上に、ギルドやリン=フリークスの台頭で、マガラ渓谷の税収もかなり無理をさせているように思えます。」「そうか、パルティードに詰め腹を斬らせて、息子に恩を売るには、男爵家を作るようにしたほうが良さそうだな」「はい。幸いな事に、ローザスやリン=フリークスには、先日のエストタール家の件で貸しがございます。文句を言ってこないと思います。」「そうだな。よし、そのように動け。」「はっ」「ウォルシャタは使えそうだからな。国境の街シャルムは今どうなっておる?」「マカ王国に接する街は、ギルドが入り込んでしまっているので、難しいかと思います。」「そうか、他の2つもミヤナックとウォード家だったな」「はっ」「そうか、ヴェスタ王国か北方連合国ノーザン・コンドミニアム国境の街シャルムになりそうだな。お前は、どっちがいいと思う?」「はい。北方連合国ノーザン・コンドミニアムがよろしいかと思います」「そうか、なぜだ?」「僭越ながら、ウォルシャタ様のジョブであるウォーリアの存在を明らかにすれば抑止力になろうかと思います。また、総代が変わったばかりで安定していないので、国境の街シャルムにちょっかいを出してくる時の対応ができようかと思います。」「そうか、解った。ウォルシャタに書簡で知らせよ。そして、今度食客を連れて来いと伝えろ。次の御前会議で男爵にあげて、食客の中で見込みがありそうな奴を領主にした街を作らせよう。」「はっかしこまりました」
★☆★☆★☆★☆
ここで、映像が終わった。リン様にはこのまま報告すればいいだろう。十分過ぎる情報で裏とりを今後していく必要はあるが、動きが見えてくるのだろう。
それにしても、アゾレム領内が荒れる事になりそうだな。領内に残っていた食客の方は動きが無かったようだ。
★☆★☆★☆★☆
立花ウォルシャタは親父さんと出かけたのか?」「あぁみたいだな。」「みたいって、山崎エスタールはついていかなくてよかったのか?」「それなら、冴木ブレディが行けばよかっただろ?」「おれか?嫌だよ面倒だからな。おれなんかよりも、細田イアンが行くべきだろう?投資の話を作ったのはお前なんだからな」「おれこそ、やだよ。だって、これ詐欺だぜ?」「ハハハ確かにそうだな。そろそろ逃げ出す準備をする必要があるんじゃないのか?」「そうだな。でも、なんでも新しく侯爵になったやつ、神崎かと思ったけど違ったんだろ?」「あぁ男爵になったオイゲンって言うのも、茂手木だと思ったけど違ったらしいぞ」「山崎エスタールそうだったのか?」「あぁ鑑定で調べたから間違いない。立花ウォルシャタも触って確認したらしいからな。」「そうなのか?」「あぁなんでも、走り書きの様にメモを残して死んだらしいぞ」「走り書き?」「あぁ茂手木の奴、俺らから逃げてから、ギルドの事や日本での暮らしの事を書いていたらしくてな。」「へぇそうなのか?」「あぁそれを貰った、やつの弟のオイゲンが、リンとか言う奴に話をして、ギルドを作ったらしいぞ。」「あぁそうなのか?」「あぁこの国の皇太子も絡んでいるらしいからな。」「そうなんだな」「あぁ冴木ブレディそういやぁどうだったんだ奴等は?」「・・・弱かったぞ。簡単にふっとばされて居たからな」「そりゃぁそうだ。俺たちが本気になったら、この世界の奴等なんて簡単に殺せるからな。」「そうだな。それにしても奴隷が来なくなったな。」「西沢ゴーチエどうなっているんだ?」「あ”ぁ言っただろう?値段があがって居るから少し待てよ」「そうか、まぁいいや。今までの奴隷で遊ぶからな。」「程々にしておけよ。暫くは変えが来ないんだからな壊すなよ。」「あぁ大丈夫だ」「お前そう言いながら、このまえ獣人を犯しながら殺しただろ?奴等は高いんだからな。殺すなら、ひと族にしておけよ」「だってよ。死ぬ瞬間に締まるから最高なんだよ」「だから、やるなら変えが来てからにしろよな」「解ったよ。それに、レベルもなんかこれ以上にはならないようなんだよな。」「なんだ、お前やっとカンストしたのか?」「え”お前はもうカンストなのか?」「あぁ立花ウォルシャタみたいに、限界突破リミットブレイクがないと100が上限だぞ、へぇそうなのか?」「それに聞いた話だと、この世界ではレベル50前後で史上最強を名乗れるらしいぞ。」「そうなのか?」「それじゃ俺たちは無敵だな。ほぼ全員カンストなんだろう?」
★☆★☆★☆★☆
それから暫く、自分たちのスキルのレベルの話になっていった。リン様が言う通りに数字にだけしか興味が無いようだ。スキルも使いこなせていなければ意味が無いのに、それがわからないようだ
今回の報告は、この二点と近況をまとめて送る事にした。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品