【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

会議三昧

オイゲンとエルフリーデが帰った後で、そのままイリメリと食堂に向かった。食堂では皆が食事を終わって飲み物を飲んでいた。最近、アデレードが炭酸にハマってそればっかり飲んでいる。
何故か、ミーシャとウィンザーもここで食事をしている。「リン兄。これからは、リン様って呼んだほうがいいんだよね。」「お呼びしたほうがだね。」「ゴメンなさい。タシアナ姉様。」「いいよ。徐々になれていけばいいんだからね。って事で、リン。ミーシャとウィンザーも今日から一緒に住むからね。」「いや、いいけど、学校は?」「何いってんのリン。今日で学校終わりで、暫く休みになるんだよ?」「へ?そうだったの?」「うん。実家がある子とかは、もう帰っちゃったよ。」「そうなんだ。ミーシャとウィンザーもギルド本部でもいいんだよ?」「ううん。『こっちに来ないで、マノーラ家に行きなさい』って言われたの。」「私も。それで、イリメリ姉様に聞いたら、それなら一緒に住む事を許してくれたんだよ。」「そうか....もう一年経つんだね。」「そうだね。」「早かったのか、長かったのか....」「うん。でも、まだこれからだよ。」「そうだね。」
「ねぇエミールやミーシャ達には説明したの?」「何を?」「僕達の事を・・・ね。」「うん。イリメリとフェムとマヤで説明したよ」「そう、ありがとう。」
「あぁそうだ、リン。明日から、僕にウィンザーが付く事になったからね」「そうなんだ。エミールは僕付きでいいの?」「はい。」「妾には、マルティンが付いて貰う事になった。」「それじゃ丸く収まったって感じなの?」「あぁそうじゃな」
「暫くは、手狭だけど、我慢してね。神殿をぐるっと廻ってから、ゴッドケープ島の開発に取り掛かるからね。」「なんじゃそのゴットケープ島とは?」「あぁ侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラの正式名称。僕が命名していいって言われたからね。陛下が認知してくれて、それで書状を出す事になったんだよ。」「そうなのか?リンが作った神殿は不思議な名前の物が多かったな。エミールが」「アップルグッドです。アスラは、クラウドホースで、イブンがサイレントヒル、ウナルがストーンリバーで、オカムがパレスケープ」「ミーシャは、ロックハンド」「私がロングケープ」「そうそう、発音が難しいが、どういう意味なんじゃ」
イリメリは解っているようだ。フェムとミルもわかっているな。タシアナとサリーカとルナはダメなようだな。
「うん。僕達の世界の言葉だよ」「あぁぁぁぁぁ静岡がサイレントヒル。石川がストーンリバーで、岩手がロックハンド!それじゃ他のも....」「やっとわかったんだね。タシアナ。奈良がアップルグッドで、群馬がクラウドホース。ロングケープは、長崎だよ。」「・・・。やりやがったな。でもいいの?」「ん?何が?」「だって、ゴットケープって神崎の直訳でしょ?」「うん。そうだよ」「リンの素性につながらない?」「大丈夫だと思うよ。もう何度も奴等なりの確認をしているからね。神が直接話したとしてもすっとぼけるだけだし、いきなり斬りかかられても今なら対処出来るだろうからね」「そうだな。リンよ。この腕輪。父上がもっと作れないのかと言ってきておるぞ。」「へぇそうなの?タシアナどう?」「作れるけど、数を絞っているからね。それに、アルマールが拘り始めちゃってね。デザイン性がとか、イヤリングにするととか・・・ね。後、リンに、銀や金やミスリルを融通して欲しいって言ってきているよ。」「へぇそうなの?」「うん。魔球の台座にするのに、リンは魔物の骨とかを使ったでしょ?」「うん。そのほうが加工しやすかったからね。」「それがね。通常の職人だと魔物の骨の加工が難しいんだよ。鉄だと重いし錆びるでしょ。だから、金や銀やミスリルで作ったら、デザイン性も拘れるし、魔力の伝わりもいいんだよ。」「そうなんだ。いいよ。マノーラ家の地下二階の倉庫に押し込んであるから好きに使って」「ありがとう。ミーシャのスキルが、私とアルマールとカルーネを足した感じのスキルになっているから、今叩き込んでいるから、もう少ししたらすごい物が出来るかもよ。」「そりゃぁ楽しみだ。アルマールとカルーネの知識の吸収もよろしくね。」「はい。任せてください。バッチリ吸収して盗みます!」「うん。」
「いきなり斬られてもって話だけど、大丈夫ってリンどういう事?」「あれ?ルナもいたよね?」「魔球の事は知っているよ。でも、それってパッシブでアクティブじゃないんだよね?」「ううん。攻撃魔法や治癒魔法に関しては、アクティブだけど、防御系に関してはパッシブだよ?」「そうなん?」「うん。とりあえず作った物だけど、ステータス不可視にはなってるでしょ?」「そうだ、リン。」「なに?サリーカ?」「今日、さんざんそれ聞かれたよ」「私も」「僕も」
「・・・・それだけ街中や商店街とかでステータスを見られていたって事なんだね。怖いな....。」「あっ確かに。それに、リン何か魔球に細工してあるでしょ?」「あっわかる?」「うん。私達のステータス不可視魔球だけ、違うでしょ?」「うん。僕のを含めて、皆に渡してある魔球を装着していると、ステータス確認した場合に、軽い静電気位の衝撃が相手に伝わるようにしているだけだよ。」「・・・・」「そんな覗き行為にはそのくらいの罰則があってもいいでしょ?!」
「リン様。それって私でも作れるのですか?」「う~ん。出来ると思うよ。タシアナ。ミーシャに、ステータス不可視の魔球の作り方って教えた?」「あぁ」「そうか、それなら同じ要領で、小さい魔核に、雷の魔法を込めるんだよ。そうしたら、二つを融合させる。そうしたら、不可視魔球が発動したときに、雷属性の魔法が相手に伝わるって感じだよ」「へぇそれで、私達の魔球が少しだけ大きかったんだね。」「そそ、同じ要領で、氷魔法を込めれば冷気が伝わるって事だよ。同じように、防御結界でも出来るよ。小さい魔核への魔法詰だから、制御が少しむずかしいけど、何個か失敗するつもりでやってみると要領がつかめると思うよ」「リン様。やっていいのですか?」「勿論だよ。いいよねイリメリ?魔核はまだあるんだよね?」「えぇそうね。ミーシャが作れるようになってくれたら方がギルドにしても、マノーラ家にしてもうれしいですからね。先行投資でOKだよ」「だって、ただ、あんまり人が多い所では作らないでね。魔核もこの家ならほぼ無尽蔵に使えるけど、外では今値段が上がっているみたいだからね。」
それから、明日の予定を確認して解散となった。僕は、もう少しやることがあるので、執務室に戻った。ミルとエミールが付いてくるようだ。ウィンザーは、ベッドメイキングを習うようだ。
ゴムの生産量や野菜類の生産量が書かれている。
ゴムの生産量は、100リットル/月で落ち着いているようだ。監獄街も大分落ち着いてきているようだし、オイゲンにまかせても大丈夫だろう。オイゲン達も今はいいけど、次の世代になる時には、姿を隠したほうがいいだろうからな。島に居住させる事を考えないとな。
野菜の生産量も大分増えてきている。地下二階がうまく行っているのだろう。日本での野菜も品種改良の結果安定した品種になってきている。野菜は、神殿の中で作るほうが安定して作れそうだ。それを数値が証明している。
「エミール。この野菜の生産量をどう思う?」「はい。」
暫く資料を眺めていて
「リン様。野菜にかぎらず、家畜に関しても、神殿の中の方が良さそうですね。」「なぜそう思う?」「地下二階の方が畑の規模が小さいはずなのに、森林街やエスト街よりも生産量が安定しています。」「エントやドライアドのおかげかもしれないよ?」「いえ、あっはい。その可能性もありますが、それでも一定しているのは、いいです」「でも、ほら、この月は、森林街で豊作になって居るみたいだよ」「はい。でも、地下二階の方は確かに豊作はありませんが不作も少なく安定しています。ある程度の人口を養うのでしたら、安定していた方が計算がし易いと思います」「うん。そうだね。それじゃどうしたらいいと思う?」「ゴッドケープ島の事をおっしゃっているのだとしたら、どこか一つの神殿を野菜を作ると決めてしまうのも良いかと思います。」「うんうん。エミール。それじゃ50点かな」「え”?」「ミルならどうする?」「そうだね。野菜を作ったら次は牧草や草を育てる。その草を家畜に食べさせて、食べ終わったら、また野菜を植える。かな」「だって、エミール。利点はわかる?」「はい・・・。家畜も育ちますし、家畜の糞で畑の肥料にもなります。」「そうだね。」「リン。米はどうするの?」「ん?作るよ?勿論。」「水田?」「うん。僕がそれしか知らないからね。」「そうか...小麦や大豆なんかも作りたいよな」「うん。似た食物が見つかったから、品種改良して作っていこうよ。」「うん。」「そうしたら、醤油と味噌を作るからね。」「そうだな。魚醤でも良かったが、やっぱり醤油が欲しいよ」「うん。島に移動したら、遠慮しなくて済みそうだから、本当に全部再現していくからね。」「うん。私じゃ手伝えないけど、イリメリ辺りが張り切りそうだね」「イリメリはダメかな....」「なんで?」「う~ん。僕が言ったって言わないでね。」「いいよ」「イリメリね。料理が好きだし、いろいろ作るけど、最初はいいんだけどね...一回成功するとアレンジ加えて...ね」「あぁ成功すればいいけど...って事なの?」「うん。成功する可能性が僕が知っている限り5%未満だからね。」「あぁ・・・」「誰かが見張っていればいいんだろうけどね」「そうなんだ。オカムに期待かな。」「エミール。オカムはどうなの?イリメリを止められる?」「・・・・ダメだと思います。だけど、オカムは絶対味覚のスキルがあるので・・・・。」「それ、イリメリもあるんだよね」「え”」「ねぇリン。諦めよう。」「そうだね。後は、イリメリの絶対味覚に期待しよう。」「あと、料理人を雇おう。」「そうだね。それがいいかもしれないね。」
「リン様。ミル様。」「何?」「私達に、もっともっとリン様達の故郷の事を教えてください。」「いいけどなんで?」「信じられないような事を平気でやられていくリン様達がどんな所で生活していたのかを知りたいのです。そして、もっともっとお役に立ちたいのです。」
「ねぇミル。僕達の中で一番文章うまいのって誰かな?」「オイゲンかフェムじゃない?なんで?」「いや、日本に居たときに、異世界の事を書いたラノベって人気だったよね?」「あぁ」「それなら、異世界に居るときに、日本での生活とかって読み物としてどうかなって思ってね。」「そうだね。試しにやってみるのもいいかもしれないね。」「イリメリが書くと、教科書になっちゃいそうだから、フェムとオイゲンにお願いしてみるといいかもね。」「確かに、イリメリはダメだね。」「戦国物とか適当に書いても面白いと思うんだよね。」「あぁBA●A●Aとか?」「うんうん。後は、新撰組とかね。忠臣蔵でも受けそうだけどね」「リン様。そのお話は、リン様達の世界のお話なのですか?」「そうだよ。僕達のってよりも、昔話みたいな物だよ。」「そうなのですね。読んでみたいです。」
「あぁぁぁリン。かわら版に少しづつ掲載すれば?」「いいね。」「うん。」早速、エミールに、フェムを呼んできてもらった。
「何?リン。」「フェムに頼みがある。」「だから何?」「作家デビューしてくれ!」「はぁ?」
ミルが今の話をすると
「あぁ面白そうだね。恋愛ものとかは苦手だけど、適当な戦国物なら得意だよ。」「うん。内容は任せるけど、娯楽が少ない世界だからね。オセロだけで、あんだけ盛り上がるんだから、小説も行けると思うんだよね。」「うんうん。とりあえず数回様子見で出してみるよ。それで人気が出るようなら本格的にみんなで考えよう。」「そうだね。それがいいだろうね。まかせた!」「了解。異世界で作家デビューするとか思わなかったけどね!!」
それから、ミルとフェムとでどんな話にするのかをしていると、エミールが携帯電話やパソコンでのググる事や音の速さで走る馬車の話しに食いついてきた。そうだよな。科学的な裏付けなくてそんな話をしたら素晴らしい魔法の世界の話しに聞こえるんだろうな。
夜も遅くなってきて、風呂に入って寝る事になった。ミルとフェムとエミールとウィンザーの5人で風呂に入る事になった。何も感じないと言えば嘘になるが、平常心を忍耐力を試されているかのような時間を過ごして、布団に潜り込んで寝る事ができた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
朝、エミールに起こされた。エミールはすでに、着替えを済ませている。「リン様。ローザス様がお見えです。」「え”来てくれたの?僕から行こうと思っていたのに...」「はい。なんでも、こっちのほうが都合が良いとの事でした。」「今は、食堂?」「いえ、プールの方で寛いでいらっしゃいます。」「あいつは....」「どうなさいますか?」「わかった、僕も行くよ。用意して。」「はい。」
水着に着替えて、プールに向かった。プールでは、最近作ったゴム製の空気を入れた板で遊んでいるローザスが目に入る。
「ローザス。」「あぁリン君。これいいね。僕も一個欲しいよ。それに、この水着もセットでくれないかな。」「いいけど、皇太子が一人でふらっと来て問題にならないのか?」「大丈夫だよ。多分この大陸中で一番安全な場所がここだからね。それに、義弟の屋敷に行くのに文句を言われる筋合いは無いからな。」「そうだけど。さぁ。それで何か有ったんだろう?」「あぁ宰相から泣きが入ったよ。リン君の予想通りだったよ。」「それは意外と早かったな。どっち?」「どっちって、そういう意味か、悪い方だね。」「追加投資の話ができたんだね。」「そうだね。」「そうか、それなら、追加投資をするにも条件を付けてもいい頃合いだろうな。」「そうだね。」「他の貴族や商人は騒ぎ始めていないの?」「まだ宰相には言っては居ないみたいだけど、限界水域だろうな。」「そうかぁそうかぁそれなら、宰相派の貴族や商人に声をかけて、投資金額の8割位で買取を始めようか。」「そう言うと思って、僕の方でわかっているだけをアッシュに伝えてあるよ」「そうか、ありがとう。今度は、僕が全面に出て買い取る事にするよ。数名から買い取れば、向こうから売ってきてくれるだろうからね」「そうなるだろうね。」「半年位しか持たなかったんだね。もう少し持つと思ったんだけどな」「・・・あぁ僕もそう思ったんだけどね、どっかの誰かが、面白そうな物を次々と出して、それを買うためにレインが必要になったんだろうな」「おかげで儲けさせてもらったよ」「あぁ王城に居る魔道士長とかが悔しがっていたよ。」「へぇそうなんだ」「あぁ今の魔道士長は特にステータスの秘匿に躍起になっていたからね。それをやってのけただけじゃなくて、魔球を入れ替えることでいろいろな効果が付けられるなんて今までの魔道具の概念を壊した物が安価で手に入るんだからね」「安価ってほどではないと思うけどね。実際に、言われて素材と工賃と手間賃の10倍の値段にしたんだけどね。」「おいおい。エミール嬢とおぬしの旦那さんは馬鹿なのか?しっかり説明したんだろう?」
「え・・・あっはい。イリメリ様やアデレード様がとくとくと説明していましたが.....」「それで、10倍にしただけで売っちゃったんだね。」「・・・・あっはい。」「いいじゃない。僕も儲かっているし、買えた人も喜ぶってね。」「あぁそうだ、忘れていた。リン君。今度、王城で、オセロ大会をやるんだけど、君も参加する?」「いや....そうだ、エミール出てみる?僕の代わりに、ね」「え”私ですか?」「うん。オセロのコツを教えてあげるから、出てみない?」「お、それはいいね。リン君が出ちゃうと賭けにならないけど、エミール嬢なら大穴してしておけばいいからな」「・・・・。」「ローザス。それって賞金や副賞は出るの?」「勿論だよ。なんと、マガラ神殿、王族御用達高級宿屋の無料宿泊券ペアで!」「えぇいらないよ。そんなの!」「・・・私出ます。」「え、いいの?」「はい。リン様。もし、私が優勝したら、二人で宿泊してくれますか?」「ん。いいけど、あそこなら僕普通に泊まれるけど....」「いえ、私がリン様と泊まりたいのです。ダメですか?」「いいよ。」「約束ですよ。」「わかった。約束するよ。」
この話が、エミールからミルに流れて、ミルから漏れるのには時間がかからなかった。そして、嫁達全員がオセロ大会に参加して、トーナメント荒らしとなってしまって、僕がハーレイとローザスからさんざん嫌味を言われるのは別の話だ。ちなみに、優勝したのは、ミルだったが、ミルが思考加速を使っていたのがバレて、皆から僕との宿泊はナシとなって、デートだけになってしまったらしい。
ローザスからは、宰相が引き返せない所まで来てしまっている事が解った。アゾレムがまだ動きを見せていないが気になるが、それでも徐々に毒が回っているのは間違いないようだ。
ローザスはもう少しプールで遊んでいくと言う事だったので、そのままにして、ウォード家に行く準備をはじめた。ウォード家に赴くのに、アデレードが同行する事になる。アデレードとエミールを連れて、ニグラにあるウォード家に向かった。通された部屋で待っていると、すぐに伯爵がルシンダ夫人と現れた。
書状の返礼をのべると共に、アデレードが僕達の説明をする。転生者である事の説明ではなく、神殿を攻略した事。それに合わせて、ニンフの加護を持っている事などを説明して、マルティンにもニンフの加護を与える事が説明された。二人はいきなりの事だったが、何か感じる物が有ったのだろう、黙ってアデレードの話を聞いている。そして、最近加護持ちになった、エミールのステータスを確認して貰ってすべてを納得してもらった。
一通りの説明後に、陛下からの書状を見せて、島の攻略者である事。そして、その島を領土とした国を興す事を話した。これは、陛下から話が出ているのであろう。びっくりした様子はなかったが、それでも、事実として認めるのには時間が必要だったのだろう。
「伯爵。マルティン嬢を僕の妻に向かい入れたい。許可をいただけるだろうか?分け隔たり無くなどと綺麗事を言うつもりはない。だが、マルティン嬢を悲しませたりする様な事がない事だけは約束する。平穏な日々ではないが、少なくとも退屈しない日々である事は約束できる。」「マノーラ侯。この話は、私と妻と娘が望んだ事です。侯爵が、娘を大切にしていただけるとお言葉をいただけるだけで十分です。何卒よろしくお願いいたします。」「伯爵ありがとうございます。」「侯爵様。お約束頂きたい事があります。」「何でしょう、ルシンダ夫人。」「簡単な事です。我が娘マルティンを一生お側に居させてください。マルティンがお側に居る限り、我がウォード家を親類として遇して頂きたい。むやみに贔屓にしろとはいいません。仲良くお導きいただけるだけで十分です。」「解りました。お約束いたしましょう。マルティンを一生離さず幸せにします。その間、ウォード家が何代代替わりしようと変わらず友誼を結びましょう。」「ありがとうございます。貴方。これで、お腹の中の子も安泰ですよ」「え”おめでたなのですね。」「えぇまだわかったばかりなのですけどね。」「男の子でしたら、侯爵とアデレード様の間に女の子が生まれたらよろしくお願いしますね。」
「姉様。それは、倍率が高そうですよ。ローザス兄様もミヤナック家も狙っているようですからね。それにお父様も何か考えていらっしゃるみたいですからね。」「それはそれは、いい男に育てて、侯爵家に生まれる女の子に惚れさせないとダメですね。」
伯爵が一度席を外して戻ってきた時には、マルティンが一緒に来ていた。顔を真赤にして恥ずかしいのか嬉しいのかいろんな感情が入り乱れた様な表情をしている。
「マルティン。久しぶりだね。今日からよろしくね」「はい。リン様。お父様。お母様。本当に、今日から、マノーラ家に行っていいのですか?」「いいですよ。マノーラ侯からも言われていますからね。」「マルティンは嫌なの?まだウォード家に居るのならそれでもいいよ?」「嫌な事はありません。リン様。今日からお世話になります。」「うん。暫くは、アデレードにいろいろ教えてもらってね。」「はい。アデレード姉様。よろしくお願いします。」「いい子じゃなマルティン。今日からよろしくな。」「はい。」「それでは、伯爵。マルティンをお預かり致します。もう返すつもりはありませんが、パシリカまでは、ウォード姓を名乗らさせていただきます。」「勿論です。侯爵。返品を受け付けておりませんので、末永くよろしくお願いいたします。」
そうして、伯爵と握手をして、館を後にした。その足で、ゴットケープ島に飛んで、アデレードが5歳になったマルティンに説明をはじめた。まだ引き返せるが、これでニンフの加護を受けてしまうと、もう引き返す事ができない事。僕達と悠久の時を生きる事になってしまう事などを説明している。マルティンは、説明をしっかり聞いて、アデレードに解らない事を質問している。
そして、最後に「アデレード姉様。ということは、加護を受ければ、これからずーぅとリン様や姉様と一緒にいられるのですね。そして、私がリン様と一緒だと言う事は、リン様はウォード家をずーっと守ってくれると言う事なのですね。リン様を一人にしないで一緒にいられるのですね。」「そうだね。でも、マルティン。悠久の時間というのは、親しい人を失っていくと言う事でもあるんだよ?」「はい。わかります。でも、リン様やアデレード姉様やミル姉様やマヤ姉様も一緒なのですよね?」「そうだね。」「私だけが残される事も無いのですよね。」「そうだね。皆一緒だよ。」「私が100歳になったら、皆さんは」「109歳だね」「それじゃ私が、5,000歳になった」「5,009歳だね」「大した違いじゃなくなるのですね」「そうだね。」「私、ニンフの加護を受けます。一人じゃ嫌だけど、皆さんと一緒なら嬉しいです。愛しのリン様と一緒にいられるのが続くのなら、幸せが続くって事ですから...」
「わかった、ありがとう。マルティン。ロングフィールド。マルティンに加護を与えて。それから、マルティンの警護を任せられる従魔達とグリフォンを眷属にして」
それから、一通りの儀式をして、マルティンが最後の嫁となった。暫くは、アデレードと一緒に居ながら学校に通うことになる。5歳の嫁ができた事になる。
マルティンの事をアデレードに任せて、ギルド本部に向う事にする。今度は、ミルとエミールとウィンザーとイリメリとオカムが一緒に行く事になる。
一度、マノーラ家に移動して、皆を連れて地下からマガラ神殿に移動して、そのままニグラに移動して徒歩でギルド本部に移動した。転移してみても良かったが、エミールがマガラ神殿やニグラの街を歩いてみたいと言う事だったので、少し面倒な手段を取った。
ギルドに到着するまで、エミールが物珍しそうに、いろんな物をイリメリに聞いている。話を聞くと、生まれてから神殿の外に出たのが初めてで知識として知っては居たが見るのが初めての物も多いのだという。それも有って、今がすごく楽しいのだと言う。
ギルドに向う前に、『朝の夢モーニングドリーム』に向かった。宿屋の正面から、眺めていると、「リン。」「あぁここから始まったんだなって思ってね」正面の『夜の蝶』に入った。まだ一年しか経っていないのに懐かしいと思うのはおかしな感覚なんだろうか?
「いらっしゃ...侯爵!」「親父さん。上使える?」「大丈夫ですが....フェムから何も聞いてませんよ。」「うん。親父さんの顔を見たくなったのと、少しご報告が有りましてね」「何でしょうか?」「まだ忙しくなる前ですよね?10分位時間貰えますか?」「いいですよ。」「ありがとうございます」
親父さんと二階の一部屋に入った。そこは、僕達が初めて揃った場所でもある。
「親父さん。僕達は、今度、国を作る事になりました。」「国って侯爵。どういうことですか?」「ここにも、かわら版を置かせてもらっているので、ご存知かもしれませんが、僕達は、侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラに上陸する事ができました。」「あぁ読んでびっくりしたけど、半信半疑の者も多いからな」「そうでしょう。ここではそれは上陸したとして話を進めますが、陛下に上陸の証明書を発効して貰っています。それがこれになります。」
親父さんに、陛下からの書状を渡す。
「侯爵。こんな大事な物を....。」「いえ大丈夫です。それは20枚の内の一枚で、親父さんさえ良ければ、『夜の蝶』に置いておいてほしいのです。陛下の許可は取っていますから大丈夫です。ただ、盗まれても僕は困らないのですが、親父さんが気にすると行けないので、防御結界や時空魔法で汚れたり取り外しができないようにしておきます。どうでしょうか?ダメですか?」「ダメも何も....侯爵がそう居たいとおっしゃるのなら儂に断る理由なぞありませんぜ。この食堂も、ギルドカードのおかげで売上が右肩上がりで、誰が流したのか、侯爵とフェムやイリメリさんやミルさんやマヤさん達が出会ったのがこの店だって噂が流れて、縁談や顔合わせのときに、この部屋を貸してくれって言われるほどですからね。」「そうですか、それは嬉しいです。」
「リン。話が横道に盛大にずれ始めている。」「あぁゴメン。イリメリ。後お願い。」「はいはい」
それから、侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラに上陸した事により、領土として認められる事になった事や侯爵以上の功績を与えるのが難しい事から、陛下トリーア国から独立して国家樹立を宣言してみてはどうかと言われて、承諾していると言う事を説明してくれた。
「なんで、侯爵は、その話を儂に?」「え、親父さんは、僕の大切なフェムのお父さんで身内だからですよ?」「・・・。」「それに、フェムが関係する事で、身内からじゃなくて、他人から聞いたらショックでしょうからね。折角、ニグラに来たのだから、親父さんにっと思ったんです。」「・・・ありがとうございます。侯爵。」「いえ、親父さんには助かっていますからね。ギルドの食堂への手配とか今後もお願いします。」「勿論です。ギルドのおかげで、かなり楽させてもらっていますからね。」「それなら良かった。」「最近の客の8割位がギルドカードでの支払いですからね。こっちも従業員にまかせても安心出来るのがいい。」「そうなんですね」「あぁ前なら買い物も自分で行くしかなかったけど、今は従業員に行かせられますからね、その間に仕込みをしたりできるので楽ですよ」「へぇ」「あぁ侯爵。失礼しました。儂も仕事に戻ります。この部屋はどうぞお使いください。」「あっありがとう。親父さんこれからもよろしく。」「こちらこそ、フェム共々ご贔屓に!」
親父さんが、部屋から出ていった。「リン様。ここが、出会いの場所だったのですね」「そうだね。最初に知り合ったのが、フェムで次がミルとイリメリだったよね」「そうだね」「うんうん。夜中に呼び出されたんだよね。」「・・・それは、他に方法が思いつかなかったし、違ったら大変だし、もしかしたらって思いが有ったからね。」「うん。」「ミルだけは確信していたんだったよね」「うん。僕がリンを間違えるはずがない。」「悔しいけど、あの時はそうだったわよね。」「うん。」「もう一年か・・・。」「そうだね。まだ一年なんだね。」
「それで、リン様。なぜ『夜の蝶』へ?」「うん。ナッセから言われてね。ギルドの部屋では支部長をあわせて全員入れないんだよ。」「え?それはここでも同じなのでは?」「うん。エミールでも気が付かないか??」「え”どういう事でしょうか?」
周りを見回すが、円テーブルが一つ置かれているだけで、変哲もない部屋に見えるのだろう。
「ミル。イリメリ。お願い。」「了解」「はいはい」
二人は壁に手を当てて、奥に押すように動かし始めた。そう、フェムと相談して、ニグラには多人数で会議をすると言う習慣が無いために、殆どの場所で小さく区切られている部屋しかないから、何かのときのために、部屋を大きく出来るように、壁を可動式にしてある。4部屋分の壁が抜けて、大きな一つの部屋になる。そして次が僕が苦心した、『夜の蝶』最大のギミック!!
「・・・リン様。部屋はできましたが、これでは会議ができませんよ!」「エミール。あぁオカムもこっちに来て。」「はい・・・」「エミール。階段を上がったときに何か違和感はなかった?」「階段ですか?いえ」「オカムは?」「あっ違和感と言うほどの事では無いのですが、2階建てにしては、階段が長いなとは感じました」「正解!いい見ていて」
そう言って、壁の一箇所を軽く叩くと、隠し扉が開いて、そこにはボタンが10個並んでいる。
「ミル。丸テーブルを横にどかして」「OK」
テーブルが退いた事を確認して
「オカム。このボタンを全部押してみて。」「・・・」「大丈夫だよいきなり爆発したりしないからね」「はい。」
おかむがボタンを押していくと、天井からテーブルが床下から椅子が出てきて、大きくなった部屋が会議室に生まれ変わった。僕達が居る反対側の壁には、ホワイトボードが下がってくる。
「あぁぁぁ....。こういう事ですか?」「そ!いいでしょ!」「・・・・すごいですけど、いや、すごいですよ。でも、何ででしょうか?なんか残念な気がします。」「エミール。その感性は大事だよ。僕達も散々言ったんだよ。『無駄だ』ってね。テーブルも椅子も運び込めばいいだけなのに、わざわざそんなギミックを作る必要があるのかってね」「・・・それで、リン様はなんて」「『男の浪漫』だって馬鹿でしょ」「・・・」「いいのよエミール正直に言っても」「・・・はい。無駄だと・・・」「僕達と同じ意見だね。それに、このギミックを作るのに、金貨4枚近く使ったんだよ。馬鹿でしょ」「え!!!!!!!!400万レイン?」「そ、無駄でしょ!」「はい。私が居たら絶対に止めていました。」「うん。僕達も後で知ったんだよ。出来上がってから聞いたから止められなかった。」「・・・・。」「これからは、エミールが従者としてついて回って、リンのこういう事を止めてね。」「はい。必ず。」
なんか、ミルとイリメリとエミールで話がまとまったようだったが、きにしない事にする。ウィンザーとエミールとオカムに言って、ギルドまで準備ができた事を告げに言ってもらった。
「ねぇリン?」「何?」「わざわざ、3人を行かせたのはなぜ?」「特別な理由は無いけど....」「だったら、眷属に行かせたらすぐだったんじゃないの?」「う~ん。これから、多分3人は置物になってしまうだろうから、その前に仕事をやらせておきたかっただけなんだよ。」「あぁそういう事ね。それなら納得。」
しばらくして、ナッセとナナを先頭に、支部長を務めている人間たちが上がってきた。席次は決まっていないが、なんとなくの慣例でホワイトボードを背にして僕が座って、左右にミルとイリメリが座る。従者である。エミール達は僕達の後ろに控える。右側をナッセが左側をナナが座って、ナッセと右側にミヤナック領内のギルドの支部長が、ナナの方にウォード領内の支部長が並んで、後ろに付いてきた職員が座るようになる。そして、新たに、エスト街と森林街と海岸街の支部長も列席している。後、今日から加わる事になったのが、エベンスとオルトで彼らは領主と支部長を兼任する事になっている。総勢60名近い大所帯になっている。
「急な招集に応じてくれて、ありがとう。今日は、大事な報告とこれからの事を話したいと思って集まってもらった」「リン様。そのお話の前に、各支部長からの報告をお聞きいただきたいのですがよろしいですか?」「あぁいいよ。でも、定例会議はまだ先の予定だったよね。その時でもいいんだけどな」「いえ、数字の報告は書面でいたします。ここでは、何かある支部からの報告と言う形を取らさせていただきたいと想います。」「うん。いいよ。」「ありがとうございます」
ナッセ仕切りで会議が始まった。ニグラ支部やマガラ支部では大きな問題は発生していないようだ。ただ、ギルド職員への応募が多くて対応に苦慮しているとの事だ。あと、全部の支部で言える事だが、学校への質問や入学希望が多い為に、なにか指標を作って欲しいとの事だ。冒険者の数もここに来て大きく増えている。今までは、商人や職人と言った生産性の登録者が多かったが、ミヤナック領内やウォード領内では冒険者の登録数が逆転したという。そして、ミヤナック領内やウォード領内では、すでに今年のパシリカに関しての話しが出始めている。例年だと、すでに商隊などに混ざって、領主の街にまとまって、ニグラに向かい始める頃だが、今年からはギルドに登録さえしていれば、日帰りも可能だと言うことで、13歳未満の登録が相次いでいると言う事だ。その物達の殆どがどんなスキルに目覚めるのかわからないので、冒険者登録をしているのだと言う。予想通りではあるが、以外だったのは、宰相派の領主が頭を下げて頼んできている事だ。それに関しては現在保留にしているらしいがどうしたらいいのかと言う事だ
「人数的にはどの程度なの」「はい。私の所では30名ほどです。」「他に、宰相派の領主からの問い合わせが来た支部は?」
ミヤナック家やウォード家にある支部の半数以上が該当するようだ。それでも、全部で180名ほどになる。「イリメリ。今年のパシリカの予定の人数は?」「エミール。どうなの?」「っっはい。トリーア王国での予定は、ミーシャさんやウィンザーさんを含めて、780名だと言われています。」「そうか、エミールありがとう。そうなると、奴隷になった子とかを含めると、800~900名位にはなりそうだな。ウィンザー。学校で今年パシリカを受けるのは?」「はい。私達を含めて、17名です。全員、このままギルドかマノーラ家にお仕えしたく思っています。」「そうか...」
「ナナ。どう思う?」「ん?180名の事?」「うん。」「リンがいいと思う方向でいいと思うよ。スパイの一人や二人入って崩れるような軟な組織じゃないよ。」
何故か、一斉に皆が頷く。よほどしっかりしているのだろう。
「そうか、それなら、領主か後継者自らが引率してくる事を条件に、受け入れて欲しい。」「はっ」「よろしいのですか?」「あぁそうだな。領主か後継者には一時的に利用できるカードを渡して、子供たちには正規のカードを発行してやって欲しい。」「はい。かしこまりました。」「うん。それで、必ず、地下三階で一泊して貰え。」「??」「そうだな。領主。子供達の宿泊代はマノーラ家が持つと伝えろ。そして、今年パシリカを受ける子供達には、祝い金として、銀貨1枚をギルドカードに入れて渡してやれ。」「リン様。それは、ミヤナック領内やウォード領内の子供たちもですか?」「あぁマガラ神殿を使った今年パシリカに行く子供たち全員だ。学校の生徒の17名には卒業祝いとして銀貨1枚多く渡せ。大丈夫だよね。イリメリ?」「うん。余裕だよ。」「よろしいのですか?」「ん?何が?」「宰相派に、少しとは言えレインが流れてしまいます。」「あぁかまわないよ。それに、ギルドカードに入れているから、使うとしたら、ギルドの支配地域だろ?」「はい。そうなります。後は、商隊でしか使えません。」「だろ、商隊もギルドに登録している商隊だけって事だよな。」「はい。」「もし、それで10,000レインを貰った子供は家に持ち帰って自慢して、親や領主がそれを没収しても使えないだろう?」「あっそうですね。」「それに、そんな事してくれたら、僕は何もしないで、180名程度の新しい仲間が増える事になるからね。」「・・・。」「それに、頭を下げてきた領主は、準男爵や男爵だろうけど、僕達の緊縮政策でどうにも回らなくなって、寄親の子爵や伯爵に泣きついても何もしてくれなくて、最後の手段で来たんだと思う。そんな人間にこちらはしっかりとした対応と領民への気遣いを見せて、マガラ神殿の地下三階と言う多分別世界に近い賑わいを見せたらどうなるかな??考えてみると面白くない?」
「(あぁ残念なリンが出ているよ。イリメリ。止めなくていいの?)」「(もう遅いよ。ミルこそ止めれば?)」「(ムリだよ。エミールやってみる?)」「(嫌です。イリメリ様やミル様ができないのに私達が出来るわけありません)」「「「「(だよね。)」」」」
『イリメリ。ミル。うるさい。』
「かしこまりました。リン様。そのように手配します。祝い金は、別にして、宿泊料はギルドから出させて貰います。将来の人材の為に先行投資を致します。」「そうか、ナッセ。頼む。」「はい。」「貴族はどこに泊まらせましょうか?」「ローザスの下層を抑えて泊まらせるか?警護やら考えると、あそこがいいだろうし、あそこなら文句言われないだろうからな」「はい。そのように手配します。」「うん。頼む。」
それから、やはりというか想像していた通りに、魔球に関する問い合わせも増えていて、商人を中心に広がりはじめていると言う事だ。ステータス不可視の魔球に関しては、イヤリングでも使えるので大量生産を開始している。今、それに合わせて、タシアナとミーシャが新しいギルドカードの制作をはじめている。ギルドカードに、ステータス不可視を付ける事と、カードを重ねる事で相手のステータスが表示されると言う物だ。これができれば、魔球の需要も大分落ち着くだろう。ただ、ギルドカードの方には欠点があって、数週間に一度程度魔力の充填が必要になりそうだと言う事だ。魔核を組み込めない上に、直接身につけない事からそうなってしまうようだ。これらの資料はミーシャが作成して居たので、ウィンザーが皆に配っている。それまでは、魔球の生産を急がせるから対応をして欲しいとお願いした。
要望や報告が一通り終わった所で、休憩を取る事にした。皆の休憩であって僕の休憩でない事は今までの会議でわかっている。支部長達とは何度か顔合わせをしているが、支部長が連れてくる面々は毎回違っている。そうするように言っているので、一周するまでは違う人間が来る事になっている。支部長会議に出て、新しく作る支部と支部長候補になってくれたらと言う考えからだったが、これが失敗した。休憩や会議終了後に全員と面通しをする事になってしまった。今日は、新しく来た職員と言葉をかわしている。
会議のテーブルには、親父さんに頼んだ摘める食事と飲み物が出ている。イリメリとエミールが用意してくれた資料を各支部に配っている。極秘資料ではあるが漏れても問題がない資料にはなっている。
一通り配り終わった頃に、ナナが会議再開の合図を出す。支部長達は席に戻り、配られた資料を職員と見ている。
ナッセとナナとエベンスとオルトにはすでに話してあるが、ナナが口火を切ってくれる様だ「リン。この資料はなに?」「何って言われても....そのとおりだよ?」「その通りって、神殿を8個と付属神殿12個って巫山戯ているとしか思えないんだけど?」「ううん。事実だよ。侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラに上陸して、神殿を攻略したんだよ。」「はぁ?侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラってあんた解っているの?」「うん。ほら、陛下の証明書もあるよ?」
そう言って、ナナに証明書を渡した。一読したナナは隣の支部長に手渡した。準備見ては複雑なかおをしたり驚いたり様々な表情を見せてくれている。ナッセまで回ってきて、僕の元に戻ってきた。まだザワザワとしている。当然だろう。そこには、侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラを領地として独立と国家樹立を支援すると明記されている。
エベンスが「リン様。侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラで国王になるのですか?」「そのつもりはなかったんだけど、陛下がそうしろってね。支援するから...ってね。」「リン様。私は、賛成です。それに、新しく攻略した神殿は、各国の領内にあるのですよね?」「あぁそうだな」「それなら、トリーア王家のマノーラ侯爵では、文句を言われてしまって、最悪は神殿をよこせとか言われるかもしれませんし、そうなったら、トリーア王家が守ってくれるとは思えません。」「そうだな。儂もそう思う。」「そうだな。結局、トリーア王家がしてくれた事よりも、リン様やギルドがしてくれた方が多いからな。」
ナナが手を叩いて注目を集めて「リン。改めて聞くけど、資料に書いている神殿って、全部がマガラ神殿の様な物なの?」「そう思って間違いないよ。まだ何も作っていない場所も多いし、侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラに至っては小屋が数個とオイゲン達が今手を入れている所だけだからな。」「・・・そう。そうなると、少なくても6カ国には、瞬間で移動できるって事なの?」「あぁそうなる。でも、神殿と神殿を繋ぐ事ができないと言う制限があるから、一度、侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラに作った人工島を経由して行く事になる。」「それでも、今まで数ヶ月から1年近くかかっていた場所に一日あれば行けるって事になるんだよね?」「あぁ全部の国では無いけどね。」「資料に乗っている国だけでも、大陸の1/3の国で、さっきのリンの言い方だと、神殿と神殿でなければゲートが作れるんでしょ。」「うん。今までと同じで数に制限はあるけどね」「距離的な制限は?」「多分無いと思う。マガラ神殿から、監獄街に作ったり、国境の街シャルムに作ったりしているからね。今わかっている制限は、神殿の影響範囲内には他の神殿の転移門トランスポートが作られないって事だけだよ」「それはわかった。それで、リンのマノーラ家として、ギルドに何を望むの?」「うん。侵入不可能な島ヴァル・デ・ハラの12神殿以外のだけど...各神殿に、ギルドを作りたい。最初は、トリーア王家の人間を派遣して欲しいと思っている。それ以降の、その国々のギルドに関しては、国々の領民を雇っていきたいとは思うけど、神殿の中はマノーラ家所有にしたいと思っている」「・・・・それは、ギルドの所属を、新しく樹立する国にしたいって事?」「本部だけだけどね。それで、神殿の中。例えば、マガラ神殿の支部長。今は、ナナだけど、問題なければ、樹立する国の領民になって欲しい。」「・・・・すぐ返事が必要?」「いやいい。この話を持ち帰って、支部内で話し合って欲しい。この話が公になるのは、次の御前会議になると思う。あぁエベンスはその御前会議には出てもらうからな准男爵に叙せられるんだからな。」「・・・・」「あぁ話を戻して、だから、次の定例全体会議....は「(リン様。約一ヶ月後です)」、約一ヶ月後だと言う話だから、それまでに概ね決めておいてくれればいい。」「リン様。少しお聞きしたいのですが...」「何?」「樹立する国家とトリーア王家の関係はどうなのでしょうか?何か、取り決めがあるのでしょうか?」「うん。今のところは、仲良くしていこうと言う話と税金や人の行き来に関しても自由にしようと言う事になっている。これは、次に即位するのがローザスだった場合には、ローザスの死まで継続する約束になっているよ。そこで改めて改定するかも知れないけどね」「・・・・それなら、ローザス様がご即位されたら、数十年は何も変わらないと言う事ですか?」「うん。そうなる。僕も侯爵のままだし、アデレードも妻のままだからね。」「・・・解りました。ありがとございます。」
「うん。他にも何か聞きたい事があったら、シュトライトやモルトに質問しておいてね。」”はい。”
会議は終了して、三々五々帰っていく。最後に、ナナが残った。
「リン。あんた、どうするの?」「どうするって?」「いろいろだよ。」「なるようになると思うよ。」「そうか、そういう所だけ、ニノサに似たんだね。」「そうかな」「まぁいい。今度ゆっくり話をしよう。新しい国に私の席はあるんだろう?」「うん。でも、ナナにはマガラ神殿をきっちり守っても欲しいんだよね。なんだかんだ言っても、僕達の最初で一番の場所だからね。帰ってくる場所って感じなんだよね」「そういう言い方まで、ニノさそっくりで嫌になる。いいわよ。サビニやニノサの変わりはできないけど、出来る限りやってあげるわ。あっちでサビニに会ったときにおもいっきり自慢話しをするためにね。」
会議が終了して、僕達はマノーラ家に戻った。

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