【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

王城からの呼び出し

婚約パーティが無事始まった。モルトに呼び出される格好で、ミルと腕を組みながら会場に入っていった。壇上に用意された8個ある椅子の一つにミルを座らせて、中央の椅子に腰を降ろした。
右側にはミルが座っている。座ってから、イリメリがお父さんに連れられて来た。壇上でお父さんからイリメリの手を渡される「侯爵様。いえ、リン=フリークス。娘をよろしくお願いいたします。」「はい。必ず。幸せになります。」
お父さんは、一礼して壇上からおりた。次は、ナッセがタシアナを連れてくる。イリメリと同じように、壇上でナッセからタシアナの手を渡される。「リン様。タシアナをよろしくお願いいたします。」「うん。ナッセもこれからもよろしく頼む。」「はっ」
ナッセが壇上から降りて少し経ってから、フェムがガチガチに緊張している親父さんに連れられてやってきた。「侯爵様。初めてお会いした時には考えもしませんでした。ガサツな娘ですがよろしくお願いします」「親父さん。僕の事は、リンと呼んでください。フェムには本当に助けられています。これからもよろしくお願いします」
少しだけ緊張の度合いが和らいだ親父さんは、壇上で僕に一礼して降りていった。次が面倒なやつだな....。そちらに目を向けると、敵意むき出しで睨んでくる。ルナが何か言って、一人で歩き出そうとするのを必死に食い止めているようだ。てっきり、そのままミヤナック伯が来るのかと思ったら、ハーコムレイ重度のシスコンが来るようだ。ルナに先導されるように僕の所まで来て「やっぱり、おまえの事は好きになれない。」「お兄さん。僕の事は嫌いでもいいのですが、愛おしい妹の婚約を祝ってあげられないのですか?」「ぐっ。リン=フリークス米搗き飛蝗。一度しか言わん。ルアリーナの事を幸せにしてくれ。」「はい。間違いなく。」「ルナが泣いたら、おまえを八つ裂きにするからな」「ハー兄様。早く帰って、後が使えているんだからね。」
ハーレイは、手を差し出してきた。握手をしてから、壇上から降りていった。
サリーカが親父さんに連れられてやってきた。「侯爵様。サリーカの事をお願いいたします。後、セトラス商隊もご贔屓にお願いいたします。」「あぁこれからもいろいろ無茶を言うかと思うがよろしく頼む」「はいっ」
サリーカの親父さんも一礼して壇上から降りていく。次は、アデレードだが、流石に陛下が来るのはまずいだろうし、ローザスとの関係を内外に示すのには、ローザスが来るのがいいと言う事なんだろう。ローザスがアデレードを連れてやってきた。「リン君。君との出会いは本当に僕に取っては有意義な物になっているよ。」「そう言ってもらえるとうれしいです」「あぁアデレードも好きな男の所に嫁ぐんだ文句はないだろう。」「はい。兄様。」「・・・」「リン=フリークス。妹を頼むな。」「はい。」
ローザスとも握手をした。「(子供を早く作れよ。それも沢山だぞ、貴族たちがてぐすねひいいて待っているからな。)」「(子供も何もまだですよ)」「(そうなのか?)」「(えぇ)」「(よく我慢しているな)」「リン!。兄様。」
アデレードに怒られてしまった。最後に、ドレスを着たナナに連れられて、マヤが壇上に上がってきた「リン。サビニやニノサの変わりを勤めさせてもらうわ。」「ありがとう。ナナ。」「いいのよ。それに、これでニノサの馬鹿に土産話が出来たからね。」「あぁ勝手に先に行った奴等には、これからもっともっと悔しがってもらわないとな。」「えぇいいわね。リン。マヤと幸せになるんだよ。サビニもニノサもそれを願っているだろうから...。」「あぁ解っている。マヤ。おいで!」「うん。お兄ちゃん。そして、私の旦那様。」
ナナが僕達二人を抱きしめてから壇上から降りていった。僕の座る場所の左側は空席になっていて、そこにマヤが座った。
リンザー卿が袖から出てきて、今朝ほど、神への報告を済ませた事を報告している。来賓としては一人だけ、ローザスが壇上にあがって挨拶をする事になっている。
ギルドの事やマノーラ家の事を話している。こうしてみると皇太子だなと思うんだけど、普段があまりにもひどすぎる。
挨拶が終わるとダンスになる。演奏が始まってダンスを踊る。まずは、マヤと一緒にフロアに降りて、ダンスを行う。嫁達は僕とダンスを踊ってから来賓とダンスを踊ることになるんだと言う。僕は、最低でも8曲は踊らなくてはならなくなる。モルトが言うには、その後も数名とはダンスを踊る事を頼まれている。嫌と言えない状態で頼まれたので、何人かと踊る事になった。
嫁とは密着するようなダンスを踊るが、来賓とはそうならないようなダンスになるんだと言う。曲もその時に変わるんだと言う。それから、ダンスをする時には、僕から誘いに行かなければならないんだと言う。そして、肩を出しているドレスを着ている女性しか誘ってはならないんだと言う。この辺りのマナーはモルトからさんざん聞かされた。
ミルとのダンスを終えて、無事第一段階の役目を終わらせた。ここからが個人的には本番の様な気がする。まずは、ウォード家のマルティンを誘うんだと言う。4歳の女の子だけど、もう女の子なんだろう。さっきから期待する目線を受けている。「ウォード伯。お嬢様をお借りします。」「侯爵。どうぞ、娘も楽しみにしておりました」「マルティン様。わたくしめと一曲踊って頂けますか?」「喜んで!」
13歳の男と4歳の女の子のダンスは傍目にはどう映っているのだろう?気にしてはダメだと思って、一曲ダンスを踊った。
その後は、アルマール・フレット・カルーネとも一曲づつ踊った。カルーネには、「まさか、リン君と踊るときが来るとは思っていなかったよ。イリメリを泣かせたりしたら許さないからね。」「カルーネ。約束するよ。皆と楽しく幸せになるよ。」「うん。私やフレットやアルマールも行き遅れ遅れそうになったら、リン君の所に転がり込むからよろしくね。」「善処します。」「正妻にしてなんて言わないから安心して、マヤやイリメリ達と争えない事くらい分かっているからね。妾でいいよ。」「おい。」「ハハハ。」
そして、サラナとウーレンもダンスに誘った。緊張している二人に言葉をかけながらなんとか無難にこなした。ナッセの所に居た孤児達も来ていて、アクアやシェコダ・フェルナとも一曲づつ踊る事になった。
遅くなってきた事もあり、最後の一曲になった。迷わず、マヤを誘いに行ったが、マヤは、自分ではなく、ミルを誘ってあげて欲しいと言った。確かに、この会場でミルだけが独りを感じているのかも知れない。かわいそうだとは思わないが、最後の一曲を踊るのには、ミルが一番相応しいのかも知れない。僕の為に怒って、僕の為に戦って、僕の為に傷ついて、僕の事だけを考えてくれている女の子。
「ミル。ミトナル=セラミレラ・アカマース。僕と踊ってくれませんか?」「喜んで...。」泣きそうな顔を無理矢理笑顔にしたミルの手を取って、ダンスホールの中央で最後の曲を踊った。静かな曲が流れてくる。曲に合わせながらステップを踏む。最後の一音がなったときに、ミルを抱きしめた。それが意味する事を理解していたが、ミルが愛おしくてしょうがなかった。
何分そうしていたんだろう、気がついたら、客人はホストに連れられて、庭園を散歩したり、遊技場にでも行っているのだろう、ダンスホールには、僕のミルだけしか残っていなかった。「ねぇリン。僕でいいの?」「うん。ミルがいいんだ」「でも、僕の両親はリンの両親を...」ミルの唇に重ねるように唇を合わせて、その後の言葉を遮った。腕に力を込める。
「リン。痛いよ。」「ミル。これで、もう何もないからな。僕は、ミルを愛している。日本に居る時なら...。」「リン。それこそ言わないでよ。日本に居る時の僕だと、イリメリやフェムやタシアナやルナには勝てなかったと思う。」「そんな事ないよ。ミルは日本でも魅力的だよ。」「嘘でも嬉しいよ。ここはいいところだね。リンを取り合わなくて済むんだもん。それだけは、アドラに感謝しているよ。」「うん。僕も、日本に居た時よりも楽しいよ。」「ねぇリン。もう一回キスして....。」「一回だけでいいの?」「今日は、だよ。これからも沢山キスしてね。」「あぁミル。大好きだよ」「私もだよ。リン。私の大切な人。大好き。」
もう一度唇を合わせる様なキスをした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
婚約披露パーティから一夜明けて、今は寝室に居る。何故かというと、嫁達の真命を変えているのだ、変える必要がないと聞いていたが、アデレードの真命が変わった事から、変えたほうがいいのではないかと言う事になった。アデレード=ベルティーニ・フォン・トリーア から アデレード=ベルティーニ・トリーア・フォン・マノーラ に変わっている。婚約の儀を行っただけで、真命が書き換わった。アデレードが言うには、たまに発生する事らしい。ミルの真命を見たが、改竄した物には影響がなかった。ただ、改竄前の真命が書き換わっている鵜木和葉から神埼和葉になっている。皆、喜んでいる。流石に和名をそのままにしておくわけには行かないので、改竄を行っておいた。全員、マノーラ家を付けた。
着替えて、食堂に行くと。昨日も泊まっていった陛下が食事をしていた。「リンよ。」「はい。陛下。」「陛下はよせ。お父様と呼びなさい。」「父様!」「アデレード。いいではないか?リンは余の息子になるんだからな」「はぁお父様。それでいいのですか?いつまでも、息子の屋敷に滞在していて」「いいのじゃお前たちのおかげで普通なら2日ほど掛かる場所にも瞬時に来られるようになっているのでな」「・・・はぁ」「そうだ、後で、おぬしの所にも、参加依頼が行くと思うが、次回行われる会議にはおぬしも出席するように。」「はい。かしこまりました」
陛下は食事を終えて、食堂から出ていった。どこまでもフランクな人なんだろう?確かに、この屋敷の防御はほぼ完璧なんだろうけど、それでももう少し気を使って欲しいと思ってしまう。「すまんな。リン。父様が・・・。」「いやいいよ。ローザスで慣れているからね・・・。あれ、そのローザスはどうしたの?」「昨晩は、マガラ神殿で一泊するとか言っておったぞ。」「そうなんだ。」「それで、イリメリ。昨日は、宰相派の連中は潜り込んでいたの?」「下っ端だけどね。」「そうか、下っ端でもいいか。眷属は潜り込ませた?」「抜かりなく。」「ありがとう。」
ここ二ヶ月で、まずミルが単独で25階まで踏破している。従魔も使わないでの踏破だ。イリメリ。フェム。サリーカ。は、1体の従魔を伴えば、25階まで踏破出来るようになっている。ルナ。タシアナ。も、マヤと一緒に25階までは踏破出来るようになっている。アデレードも、複数の従魔を使う事で、25階まで踏破出来る。アデレードに至っては、後方で指示を出す事に優れていると言う事だ。ミル。イリメリ。フェム。サリーカ。ルナ。タシアナ。アデレード。マヤ。8人でパーティを組んで、神殿の攻略を行う事になった。本来なら、パーティが終わったら準備を初めて出発する予定だったが、御前会議に、アデレードとマヤとミルを連れてでなければならない事になったので、御前会議が終わってから、神殿攻略に向う事になった。神殿攻略中は、僕は屋敷でお留守番をする事になった。
今日は、そのためにギルドでの全体会議を行う事になった。全体統括は、僕リン=フリークス諜報部門のトップを、アッシュ商人部門のトップを、シュターデン職人部門のトップを、カルーネ生産部門のトップを、アルマールギルド本部のトップ代行を、フレットニグラ支部を、ナッセマガラ支部を、ナナそれぞれの支部のトップ人事を行った。決められていた事なので、皆謹んでお受けいたしますと言う挨拶をしていく。僕の秘書として、シュトライト=アントン・ポルタも紹介した。
人事が終わると、次に僕の婚約が報告された。それに伴って、イリメリ・フェム。タシアナ。アデレード。サリーカ。ルナ。が、一時ギルドの仕事から遠ざかる事が報告された。サリーカとアデレードが構築していた、眷属で行う諜報活動はそのまま僕が引き受ける事になる。アッシュは、人員を使って諜報活動を行う事になる。各支部に関しては、来月位から人手が揃った所から、依頼の受付業務や銀行業務を行えるようにする。タシアナがすでに支部分以上の魔道具を作成してくれている。支部の建物はすでに作ってある。街の中にギルド支部を作って、街の外に転移門トランスポートを囲うように小屋を作ってある。支部の人員は、支部長と補佐を一名づつ、受付に4名以上。買取は支部で行ってもいいが、マガラ神殿での買取を推奨する様に言ってある。勿論、地元の商店に買取をお願いしてもいい。
次は、すでに立ち上がっている支部や部門からの報告を受ける。生産部門は、MOTEGI商会と協力して、ドレスを売りに出す事にしたと言う。思った以上に女性向けのドレスが人気だったようで、貴族の婦女子達から注文が入っているようだ。オーダーメイドになるために数を作る事は出来ないが、MOTEGI商会の商品の宣伝には役立つと言う事だ。職人部門は、暫くタシアナが抜けるがその代わり眷属たちが大分使えるようになってきた事や人が増えた事で、武器や防具の生産は問題ないと言う。簡単な魔道具に関してもエルフの協力の下作れると言う事だ。初めて作る魔道具はタシアナが作るほうが早いが、今ではそれほど困る事はないと言う。商人部門は、シュターデンからの報告だが少し問題が出ていると言う。西部地区と僕達が呼んでいる部分がある。アゾレム領を通って行かないと行けない商人から苦情が来ているんだと言う。それは宰相派に属している貴族領に拠点を置く商隊だ。それに関しては、『転移門トランスポートは領主の許可が必要になってくる上に、数にも限りがある』と通達を出す事にした。
諜報部門は、特に報告すべき事はないと言う事だ。
開設しているギルド支部で、ギルドへの登録と同時に、マノーラ家への入植希望を言い出す人が増えてきていると言う。人が増えるのはいいが、増えた分どこかが減っていると言う現実がある。今はまだ数百人と言うレベルだから、問題にはならないかも知れないが、王国法で禁じて居ないが、そのうち問題になるかも知れないと言う。アゾレムなんかは、村3つが一晩で消えたのだから、問題にしないほうがおかしいが次の税の徴収までは気が付かないだろうと読んでいる。貴族間の話しになるのか、その辺りは微妙な雰囲気がある。推移を確認しながら、対応して欲しいとだけ伝えておく。入植地に関しては、まだまだ余裕があるので、受け入れは問題にはならない。
ギルドは概ね問題は無いようだ。後は、撒いた種が育ってくれれば、美味しく食べればいい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
王城から御前会議に出席せよと命令が着た。通常は、命令ではなく要請になると言う事だが、僕は次回は強制参加だと言う事だ。事前に聞かされていた通り、アデレードとマヤとミルを連れて行く事になる。そして、オイゲンとエルフリーデも出席せよとの事だ。オイゲンから、宰相に送った書簡が良かったようだ。僕の寄子になる事を、宰相に承諾する書簡をしたためた。そのときに、金貨を何枚か包むようにした。その上で、準男爵に叙せられるように口添えをお願いすると言う旨をお願いした。王城からの書状では、ローザスと宰相の両方からの口添えで男爵にする旨が書かれていた。通常准男爵になるのだろうけど、僕の寄子が居ない事を含めて、準男爵では今後増やすときに困ると言う事で、いきなり男爵になる事が決まったらしい。領地は、僕の領地の中から、メルナと森林街の間のエストの街を正式に領地にするように通達される事になる。合わせて、近隣の村を支配下に治める事になる。これの叙任式が行われると言う事だ。
あと、噂に流していた。僕と眷属で、王城の守備隊との模擬戦を執り行う事になった。そのときに、僕と眷属ではなく、僕とミルと眷属で守備隊と戦う事になる。それを後方からアデレードが指揮する形で執り行われる事に決まった。アゾレムも出席する事になり、ウォルシャタが食客を連れて来る事が決まったと言う事だ。これを聞いた、アデレードが肩をすくめながら、「妾の旦那さんは怖いな。惚れ直した。」と呟いていた。
御前会議まで後2週間。1週間後には、ニグラでアゾレムの投資詐欺の説明会が行われると言う情報も入ってきている。宰相派の貴族たちも移動を開始していると言う。ローザス派閥の貴族たちは、まだ移動を開始していない。1週間位前に一度マガラ神殿内で宿泊してからニグラに向うと言う事だ。これだけでも、大分情報の流れが違う事が理解出来る。
「やっと、ウォルシャタ達との対立を表面化出来る状況にまで来た。後は、勝ちすぎないように調整しながら、あいつらの力を削っていくからね。みんなより一層の協力を頼みます。」「まかせて!」

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