【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

婚約パーティ

僕ではないが、婚約発表のパーティの準備が忙しくなってきた。モルトやドラウやゴルドが忙しそうに出入り業者に指示を出している。パーティ会場は、ダンスホールがあり、そこがメイン会場になる。ダンスホールに抜けるドアがなかったので、急遽作ったりする位しか僕にはやることがなかった。
サリーカのお父さんが挨拶に来て、パーティの物品の買い付けを一手に引き受けてくれたのは助かった。護衛に関しては、少しだけ自信がある屋敷になっている。屋敷の手直しだけが僕のやる事になっていた。裏庭にあるプールを樹木で覆って、眷属たちの住処が見えないようにしたり、遊技場に最近作っるようになったゴムを使った、ビリヤード台を作っておいてみたり、オセロだけじゃなくて、なんとなくクリスタル製のチェスを作っておいてみた。
オイゲンも約束通り、スネーク山・ニグラ山脈・メルナ山脈の調査をしてくれた。エルフリーデさんがそうとう優秀で、僕の秘書にほしいくらいだが・・・。そのエルフリーデさんがすべての山脈の詳細な地図を作成して、鉱物の埋蔵量を書出してくれた。まずは、鉄・ミスリル・石炭を採掘する事にした。ニグラ山脈は、石炭の埋蔵量が極端に多い。メルナ山脈は、鉄や鉛が多いことが解った。中心になるのがエストの街なので、街から、それぞれの採掘場所までレールを敷設する事にした。採掘場所には、小屋を作成して防御結界を作成する。近くに、小さな集落を作成した。炭鉱夫などが住み着くようになると嬉しい。集落には、同じように塔を建てて、一階には銭湯を作って、二階部分には食堂を作成してある。ギルドの設置は、今後考えるとしてあるが、この二つの街はそのままエスト配下の集落にした。まだ入植者が居ないので、眷属たちに働いてもらっている。本格的な採掘ではなく、取っ掛かりをつかむ為の採掘をする事にした。鉱石は意外と早く見つける事が出来た。鉱石のままエストの街に運んで、近くに出来る村で金属に加工する事にした。タシアナ作の魔道具が出来た事もあり、鉱石から金属を取り出すのは比較的楽に出来るようになっている。村は、鉱石を買って加工して出来たインゴットを売ると言う形で成り立つ仕組みになっている。石炭もコクーンに加工されて、地下三階に降ろされていく事になる。
以前流した噂が広まったと、アデレードから報告を受けたのは、満月の前々日だった。ポルタの村やアゾレム近隣の村3つに、眷属を派遣した。商店と言うが、”安全”と書いた紙を紙を家の玄関に張っておくと、お迎えが来て安全に移住出来ると言う怪しい商品しか扱っていない。しかし、3つの村はやはり切羽詰まっていたようだ。次の税収の時に言われた額を収めなければ、里の人間を奴隷にすると言ってきたらしい。後、かわら版の最新号で、サラナとウーレンがギルドで働いている事が載せられている。また、入植も行われていると言う情報も合わせて書かれている。そんなかわら版をすべての村で配布してきた。入植後には、税を3年間免税とする事も合わせて書かれている。満月の夜に出る商店は、3つの村同時に出現させた。ポルタの村では、村長が現れて、村全体を助けて欲しいと訴えてきた。自分たちがリンやサラナ達にした事を悔いている様子を見せていると言う話だった。村長は、自分一人の命で村人全員を助けて欲しいと懇願してきた。それほど、この村は追い込まれていたのだと言う。僕のはなった毒が村にまで影響を及ぼしたようだ。アゾレム領主は、僕の家に有ったとされている宝石や金貨を、ウォルシャタ達だけではなく村民が隠し持っているのではないかと疑っていたようだ。アデレードにお願いして、領主の守備隊が地下室を検めるときに、壁から紙片を発見してもらうように仕向けた。紙片には、宝石の目録や金貨・大金貨などの量を記載してある。そして、希少鉱物を少しと宝石を発見させた。領主は、それを見てやはり、誰かが持ち去ったと考えたらしく、ウォルシャタ達や村民達を厳しく監視するように言っているとの事だ。勿論、生家をもう一度徹底的に調べるように指示を出している。そこでは、金貨数枚と武器が発見された。村長は、領主に呼び出されて、問い詰められたが、本当に知らない事もあって、それほど強くは尋問されなかったようだ。その代わり、増税を言い渡されたと言う。深夜の商店が開く時には、領主の監視はゆっくり眠ってもらっている。強制的に眠らせているので、明日朝起きたときに村が消えていて驚くことになるだろう。そのまま報告しに行ってもいいが、多分、領主に殺されるだろう。後味が悪いので、もし逃げるのなら、アロイ近くの小屋に逃げて来いとだけ書いた紙をおいておいて、眷属に監視をさせた。もし、領主に先に報告に行くようなら、その場で捕えて監獄に送るように指示をだしてある。
すべての村のすべての領民が、移住する事を望んでいると言う報告を受けた。眷属に言って、森林街に繋がる村に移住させる事にした。家もそのままワクが移動する事になった。ワクも、マヤとの活動でレベルがものすごい事になっているらしくて、各地でスライムを吸収した事で、分体を2,000近く作れるようになっていると言う。移動は、転移と転送が仕える眷属が担当している。一晩でなんとか終わりそうな感じだと報告が入ったので安心した。畑などは難しいが、家がそのまま使える事や、村の整備が終わっている。畑の準備も終わっている。村の広さは約3倍位になっている上に、石で出来た城壁もあり中央には塔が置かれていて、銭湯と商店が開かれている。商店は、シュターデン家の人間が開いて、商品の補充をシュターデン家だけではなく、パズリッド商隊が行っている。
次の日に、昼過ぎに、僕とマヤとミルとアデレードでポルタの村を移設した村に向かった。
「おじさん居る?」軽い感じで見慣れた村長宅を訪問した。立場は違ったが、僕に取っては、おじさんが一番しっくり来る。「侯爵様。この度は...」「いいよ。かたっ苦しい挨拶はなしにしよう。これからの事を話したい」「これからとは?」「おじさんの事をどうするかって事だよ?」「・・・」「リンよ。あまり虐めるでないぞ。」「村長。僕の事は覚えている?」「・・・。確か、サラナとウーレンの事を調べに来たとか言っていましたよね?」「うん。どのくらい前か覚えている?」「確か、侯爵がパシリカに行って、帰ってこないと言われて、ニノサ達が村を裏切ったとか言われていた頃だったと思います。」「リン。僕は、いいと思うよ。」「妾もそう思う。」「おじさん。アゾレムに対する忠誠心は無いの?」「マヤ....元々忠誠心なんてない。儂はこの村が大事なだけだ。」「うん。リン。私もいいと思う。おじさん。一度は許すけど、もう一度リンを裏切ったら、おじさんの大事な物を壊すからね。私達は、リンさえ平穏なら他は何もいらないんだからね。それを覚えておいてね。」「・・・・。マヤ。」「おじさん。僕の事は、侯爵と呼ばないでください。それから、僕の事はリンと呼ぶようにしてください。」「・・・・。」「それから、おじさんには、この村の村長を辞めてもらいます。村の村長は、おじさんが決めてください。」「・・・・。」「おじさんには、ギルド本部に移ってもらいます。そこで、ギルドマスターのリン=フリークスの秘書をやってもらいます。」「儂がか?」「はい。そうです。秘書と言っても作業はそれほどないと思います。ギルドの税の納付や僕の予定を、侯爵家の家令スチュワードと調整してもらうだけの作業になります。」「いいのか?儂で?」「えぇそうですね。かなり辛い役目になるかもしれません。おじさんが、僕達にした事は皆が知っています。それでも良かったらですけどね」「罪滅ぼしになるとは思っていないが、やらせてもらう。リン様の秘書を勤めさせていただく。」「あぁ良かった。これで問題の一つが解決した。給与や待遇の話は、後で合わせますが、ナッセとナナとしてください。それから、家令スチュワードのモルトにも後ほど合わせます。」
こうして、シュトライト=アントン・ポルタが僕のギルド本部での秘書になった。ナッセとナナと引き合わせた後で、レマーとヨフムにも引き合わせた。モルトとの連絡が彼らが行う事になる。そのまま、マノーラ家に移動して、モルトに引き合わせて、一通りの事が終わった。特に、村長時代からやっていた、税の計算をやってくれるのが大きい。本部では事業を何かしているわけでは無いので、取り立てて税の計算は必要ないが、試しに、ギルド職員や各支部から上がってきた書類の再計算をしてもらったら、意外な事にきっちり計算を行って、ミスも見つけてくれた。これから、各支部から上がってきた書類は、シュトライトが一度目を通してから、僕が再度確認する事になった。また、シュトライトから『ギルドの定例会議を義務付けて欲しい』と言われた。各支部は毎週決まったときに1回行い。全体は、支部長と一名以上のギルド職員が一箇所に集まって報告会を行う。支部の定例会議は抜き打ちで僕やイリメリ・フェム・アデレードが抜き打ちで参加する事がある事を合わせて通知した。
忙しいながらも充実した日々を過ごしている。マヤ達のドレスも徐々に形になってきた。僕も、イリメリとフェムに言われて、こっちの世界の正装ではなく、タキシードを新調する事にした。ドレスは、どの時代でもいいものなんだろう、アデレードもすごく喜んでいた。僕のタキシード姿を見て、タシアナとルナとサリーカが笑いをこらえたのを忘れないようにしておく。
そんな時に、アゾレムから書状が届いた。内容は、予想通り「ふざけんなよ!こら!」だった。僕が格上の侯爵である事であまり強くは出られないが、武力行使やむなしと取れる内容だ。モルトが言うには、後二、三回書状のやり取りが必要だろうと言う事だ。アゾレムの言い分は、マガラ神殿はアロイとメルナを通過する形になっている為に、通行料が発生する。全部とは言わないが半分位は、アゾレムにも権利があると言う主張だ。これに関しては、完全に否定した。『アロイとメルナを通過する形にはなっていない。そもそも、マガラ渓谷の管理はマノーラ家が行っている眷属達の護衛料の返還もされていない事から、アゾレムの要望は見当違いも甚だしい。もし、アロイとメルナを通過していると言うのなら地理的な証拠を持って証明されたし』小屋に関しても『契約書類には、小屋の設置及び防衛手段の構築を行う旨記載してある。小屋の中に何を設置するかは、当家に任される物と考えている。』最後に『当家。リン=フリークスの生家を、アゾレムの守備隊が改めた事に関して、明確な理由と謝罪を要求する。偶然居合わせた、我が眷属が強盗を捕縛し改めた所、守備隊である事や上司に命令されたと証言せし、この件に関して明確なご返答を期待する。』これだけの返事を書いて、眷属にお使いに行ってもらった。今回は毒は無いが、わざと尾行させて、尾行してきた奴を全員捕えるように言ってある。
アゾレムというよりも、ウォルシャタ達だと思うが、奴隷を何回か購入しているようだが、アデレードが構築している索敵網に引っかかって、この2ヶ月あまりで4度捕縛されている。守備隊も徐々に増えているが、全員、捕縛して監獄送りにしている。犯罪奴隷も居たために、犯罪奴隷はそのままアッシュに引き渡して、それ意外の奴隷を隷属魔法で奴隷から開放して、エストの街や森林街や海岸街に入植させている。エベンスとオルトから、監獄が手狭になってきたと言われた。話を聞くと、家族を連れてきたり、親類まで呼び寄せている奴も居ると言う話だ。そこで監獄を二つに分ける事にした。本当の投獄を必要としる人間と、紛争や衝突で捕まった奴等に分けた。これでひとまずは大丈夫だろう。監獄と言っているが、もう一つの街が出来上がっている。通過は一切ないが、ギルドカードの銀行機能ですべてが廻っている。娼館さえもそれで支払いが行えてしまっている。娼館が出来た事で、独身男性の貯蓄がガリガリと削られて居る。娼館の元締めに言って、イケメン奴隷を大量に用意して店舗を出させた。それは、女性陣の為に作った、イケメンが行うエステも大流行だ。銭湯とは別に女性専用の温泉を作って試しにはじめたら大当たり。甘いお菓子も食べられると有って、女性陣の貯蓄も削っていく。
なんか、建物建てたり修繕したりして過ごしていたような気がする。アゾレム領でアロイ山脈の動きありと言う事で、眷属たちを動かして、守備隊を捕えさせた。と言っても3名だけでそれも新兵だと言う。人手が足りなくなってきているようではある。この新兵に話を聞くことにした。勿論、投獄後にウイグルとして話を聞いた。
ウォルシャタ達は、領内の女を攫っては犯すような事を平気でするようになっている。文句を言った家は、捕えて奴隷にして近隣の貴族に売り飛ばすような事を繰り返しているらしい。若い女性や子供は昼間は外に出歩かなくなって、街が寂れていくようだと話している。領主も一度は息子を諌めたが、その後領主の腹心が夜中に真っ二つになって死んでからは何も言わなくなったらしい。最近では、奴隷狩りと称して近隣の村々に出かけては無理難題をふっかけて奴隷送りにしていると言う話しだ。そして、やはりと言うべきか、買ってきた奴隷をウォルシャタ達は魔法の実験体や試し切りなどで殺していると言う事だ。その新兵が言うには、魔物を一体殺すよりも、人族を殺すほうがレベルが上がるのだと言う。新兵たちも奴隷を殺すように命令されたが、できなかったために、お粗末な武器のまま採掘場の護衛を任される事になったんだという。正直救われた思いが強いんだと言う。採掘場の奴隷にも話を聞いて奴隷紋を見て、犯罪奴隷以外は開放を約束した。犯罪奴隷は、解放後に監獄送りにする。それ以外の奴隷は、エストの街に居住してもらって、そのまま鉱夫として働いてもらう事になったアゾレムに嫌がらせが出来て、僕達は人員が増える。こんなにいいことはない。もっと採掘してくれないかと考える。
ただ、見逃せない情報があった。多分、アデレードなら何か知っていると思う。
『アデレード。今ちょっといい?』『いいぞ』『今、そこに誰か居る?』『オイゲンとエルフリーデとミルとルナとアルマールだぞ』『解った、今からそこに行く。』『あぁ解った。』
「アデレード。早速だけど聞きたい事があるんだけどいいかな?かなりきわどい事だけどね」「なんじゃ」「今、アゾレムの新兵を捕まえたから尋問していたんだけどね。」「あぁそんな報告が来ていたな。」「うん。その新兵が『魔物を一体殺すよりも、人族を殺すほうがレベルが上がる』って言われたらしいんだけど...何か知っている?」「・・・・知っているぞ、守備隊とかで、昔行われていた事だからな。簡単に強くなれると一部の貴族とかで行われていたけど、今は禁止されて行う事はできん。」「そうなのか....ウォルシャタ達がそれで強くなっているみたいなんだよね。」「・・・そうか、じゃが、リンよ。安心しろ、禁止されたのは非人道的だって事もあるが、もっと現実的な事もあるんじゃよ。」「現実的な事?」「あぁ確かにステータスの数値は上がるが、技術が伴わないので、ステータスを活かすような戦い方は出来ない。その為に、貴族や将軍職の様な名誉職の人間が犯罪奴隷を使ったりしていたんじゃよ。」「そうか、たしかに僕もステータスが上がっても、実際に戦うとたしかに勝てるけど、常に戦っている眷属には苦戦するからね。それと同じなんだね。」「そうじゃ」「う~ん。あいつらが楽してステータスを上げているのはわかったけど、どのくらい上げているのか調べる事が出来ないかな?ギルドカードを作ってくれたら一発何だけどな。」「僕が確かめに行こうか?」「ダメ。ミルはあいつらに触れる位なら、僕が近くまで....あっ御前会議にこさせればいいんだ!」「・・・・」「アデレード。もう御前会議の案内って出ちゃっている?」「遠方の貴族には出していると思うぞ。」「そうか、『マノーラ侯爵が、眷属を使って王家の守備隊と模擬戦で腕試しをする』って噂流せないかな?」「出来るが、それで誘いに乗ってくるか?」「うん。今、アゾレムはジリ貧な状況になっているから、息子の武力を使って権威を示すしかないと考えると思うよ。特に、僕が模擬戦をやると言っているのなら、伝説のジョブの息子の方が相応しいとか言ってね。」「あぁそうだな。」「出てくるようなら、模擬戦は本当にやってもいいと思う。その時には、僕もある程度本気を出して相手をする。守備隊には、最初から”負けてね”って言っておいて、わざとらしく負けてもらう。そうすれば、ウォルシャタが本当の戦いとかいい出して、出てくるだろうから、そこでステータスを確認する。負けそうなら眷属を召喚して戦うし、負けそうになかったら適当に戦って負けを認めるって感じにしようかと思う。彼らには、是非”オレ最強”と思っていてほしいですからね。」「・・・・。それが全部、おぬしの言うとおりに言ったら、妾はおぬしの事を怖いと思うぞ。」「えぇそんな事思わないで、惚れ直してよ。」「もちろんじゃよ。妾の旦那様は最高だと言ってやるぞ。」「うん。」
「おいリン。ウォルシャタって立花だよな?」「うん。そうだよ。」「なんで、負けるんだ?楽勝なら殺さないまでも叩き潰せばいいんじゃないのか?」「オイゲン様。リン様は、もっと先の事を考えていらっしゃるのかもしれませんよ。」「ん?どういう事エル?」「リン様。違っていたらご指摘くださいね。」
そう言って、エルフリーデが説明した事はほぼ僕の思惑通りだった。ウォルシャタ達が、楽勝だと思っていた僕に負けると、彼らはなぜ負けたのかを考えてしまうかも知れない。敗北から何かを学ぶような奴等では無いが、些少でも考えるチャンスを与えるのは馬鹿らしい。それなら、苦戦したんだとしても、それは武器の質が悪いからだとか思わせて置く位が丁度いい。それで、できれば戦えば勝てると思わせておけば、情報を持っている僕達が有利に進められるのは間違いない。
「リン。そうなのか?」「それに、多分、1~2年もすれば干やがってしまうだろう。そうなってから締め上げてもいいし、暴発したら、それから手を打っても遅くはないだろ。」「おまえがいいならそれでいいけどな。」
婚約披露パーティまで後数日に迫ってきている。もう殆どの準備が終わっている。僕の宿題になっていた、闘技場も完成させた。当日は、眷属たちの模擬戦をする事になった。飛び入り参加もありだが、多分誰も参加してくれないだろう。ヒト型になれる眷属だけの模擬戦としているが、それでイスラ大森林の深層部に居るような魔物がどっさりと揃っている。モルトが参加者をまとめた物を持ってきてくれて見ている。残念な事に、宰相派と言われる人たちは大物は来ていない。下っ端貴族は数名来る事はなっているが、挨拶程度になりそうだと言う話だ。
陛下やアデレードの母親は、2日前から屋敷に泊まっていく事になる。ローザスは、ハーレイと一緒に一日前に来る事になった。それらの事を告げられて、モルトやセルケルに対応をお願いする。それぞれに、ドラウとゴルドが付くことになる。ナッセやナナや孤児院の子供たちは、当日の早い時間に来る事になっている。
お堀に住まわせているシャリートとロタンには数日は正規のルート以外から侵入するやつが居たら無条件で捕らえよと命令を出している。屋敷の周りは、ワーウルフ達に巡回させていて、屋敷の周りを覆う木々から、ファンゴルンとファンプレシルの2体のエントが監視するようしている。陛下は、アデレードが、ハーレイとローザスはルナが対応する事になった。遊技場でダーツやビリヤードをして過ごしているようだ。僕も、何度か言われて、オセロやチェスの相手をした。陛下には接戦になるようにして、ハーレイは叩きのめすようにしたのが悪かった。ハーレイから何度も何度も挑まれる羽目になってしまった。昼間は温水プールにも入っているようだ。遠方だったり用事が有ったりで来られない貴族からの書簡を読みながら、楽しげな声を聞いている。お祝いの言葉と何らかの見返りを求めるお祝いの品が届く。モルトに言って返信を頼んだ。珈琲やオセロで十分だと言う事だったので、そのように計らうようにした。
婚約の祭祀を、コンラート家に依頼してある。フレットの実家と言う事もあるが、先方も快く引き受けてくれた。今回は、婚約だと言う事で、略式で済ませるが、婚姻の時には、マガラ神殿などの神殿施設を使った方が良いと言う事だ。パーティ会場に客が入る前に、近親者だけを集めて、婚約式を執り行う事になった。近親者と言っても錚々たるメンツであることには違いはない。ここで、リンザー卿から、妻に序列をつけるのかと言われて、つけるつもりはないと返答をすると、報告する順番を決める必要があると言う事だ。今回、これが一番悩んだ。皆に相談しても、こればかりは僕が決めなければならないという事で誰も相談に乗ってくれなかった。オイゲンは頼りにならない。当日の朝まで悩んで決めた順番は
ミトナル=セラミレラ・アカマースイリメリ=ジングフーベル・バーチスタシアナ・ブラウンフェナサリム・ヴァーヴァンルアリーナ・フォン・ミヤナックサリーカ・セトラスアデレード=ベルティーニ・フォン・トリーアマヤ=フリークス・アルセイド
だ。順番に関してのコメントはしないと明言した。リンザー卿に順番を告げて、僕の準備は終わった。
当日の朝は、マヤに起こされる所から始まった。前日は、ゆっくり風呂に入って緊張をほぐしながら過ごした。食堂に行くと普段とは違う雰囲気だが、少なくても僕よりは緊張していない嫁達の顔があった。
定位置に座ると、モルトが今日の予定を説明しだした。それを聞きながら食事をはじめた。リンザー卿は午前中に来る事になっているので、リンザー卿が来てから、婚約式を執り行う事になる列席者は、陛下と奥方。ローザス。ミヤナック家当主とハーレイと妻。イリメリの両親も参加してくれる事になった。ナナとナッセとフェムのお父さん。サリーカのお父さん。が、それぞれ参列してくれる事になった。ミルと僕が最初にリンザー卿の所に行く。その後、イリメリの父親とイリメリが入ってきて、僕がイリメリを迎い入れる。これを順次行っていく。タシアナはナッセが、マヤは最初は村長にお願いしようとしたら、自分にはその資格がないと言う事で断られてしまって、ナナにお願いする事になった。壁際には、くじ引きで当たりを引いた眷属が立ち並ぶことになっている。その後、全員揃って誓いの言葉を言上すれば儀式は終わりになる。こちらの世界では、指輪ではなく腕輪やピアスを送る事になると言うので、どちらがいいのかを聞いたら、全員がピアスがいいと言う事だったので、ピアスを送る事にした。耳への穴は魔法で開けられるので痛みもなく清潔に出来るのがいいことで、当日に開ける事になる。全員同じデザインで、小さな宝石がついているだけのシンプルな物だ。宝石は、それぞれ違う物にした。
ミルは、ルビーイリメリは、トパーズタシアナは、エメラルドフェムは、サファイアルナは、オパールサリーカは、ダイヤモンドアデレードは、ガーネットマヤは、アメシスト
をあしらった物だ。宝石に関しては、全く同じか解らなかったが、同じ色の物を用意して加工してもらった。左右の耳にはめるのではなく、婚約の時には、片方にだけすると言う事なので、皆左耳にした。そして、僕は腕輪をする事にした。皆の耳に付けた宝石と同じ宝石を埋め込んだ、ミスリル製の腕輪を作った。
式が終わってから、アデレードに宝石が皆違うのはなぜと聞かれた。感のいいミルは気がついているようだった。イリメリが説明してくれている。恥ずかしくて自分では説明できなかったから丁度良かった。
婚約式が終わる事になると、来賓も続々と当家に集まってきている。庭も広いので、食事をしながら庭で待っていてもらう事にした。闘技場では、眷属たちが結構本気で戦っている。ファンさんや、ガルドバさんが飛び入り参加して盛り上げてくれている。連れてきた守備隊と眷属たちの変則マッチなどを勝手に組んで楽しんでいるようだ。ウォード家の当主やルシンダ夫人。マルティン嬢なども来て、挨拶をしてくれた。ウォード家の警護をさせている眷属も問題なく仕事をしてくれていると言う事だ。マルティン嬢がカーバンクルの従魔がお気に入りで常に一緒に居るんだと言う。
ラーロさんも今日は宿屋を従業員に任せて来てくれた。挨拶もほどほどにパーティ会場に言ってしまったが、アデレードが言うにはしょうがない事だと言う。パーティが始まるまで、僕とミルは談話室の一つで来客からの挨拶を受けている。
サラナやウーレンが、孤児院の子供たちを連れてやってきた。話を聞くと、最近地下二階で農業を子供たちに教えているんだと言う。ウノテさんも祝いの品だと言って幾つかの噂話を書いた紙を渡してきた。ちら見した感じでは、僕の婚約パーティは宰相派からは、ローザス派の人間たちが集まって団結をする為に開いたと見られている。らしい。
パーティ会場にも料理や飲み物が運び込まれ始めた。生演奏を行うバンドも呼んである。僕達が入場してから挨拶が終われば、ダンスパーティになるんだという。この日の為にダンスも練習してきた。踊る順番は、婚約式の逆にするんだと言う。マヤから踊り始めて、ミルで終わるのだと言う。
モルトが最後の面会者だと言って、オイゲンを連れてきた。オイゲンもタキシードを着ている。4人の嫁を連れてきている。二人で、お互いの姿を見て爆笑した後で、握手をかわした。オイゲンとの距離も近づいた気がする。それぞれのオイゲンの嫁達の服装もドレスになっている。アルマールが作ったのだろう。後で、しっかりとアルマールにはお礼を言わないとダメなんだろうな。オイゲンが部屋から出て会場に向かってから暫くミルと二人だけになった。
「ミル。疲れていない?もう来賓は無いようだなら、横に座る?」「うん。」
ミルは僕の横に素直に座った。「ねぇリン。僕で良かったの?」「何が?」「だって、マヤやイリメリだって居るし、アデレードでもいいんだよね?」「あぁミルが嫌ならそうするよ」「ううん。違うんだよ。嫌な訳ないよ。でも、僕で良かったのかな...ってね」「なんて言っていいのかわからないけど、ミルが一番とか言うつもりはないけど、僕には、ミルが必要なんだ。それじゃダメかな?」「ダメじゃない。すごく嬉しい。僕は、リンさえいればいい。他の娘も同じだと思う。だから、皆が、自分が一番じゃなくても、リンの側に居たいと思っている。」「そうか....。でも、僕は僕だよ。何かしたわけじゃないと思うんだけどな。」「ううん。違うんだよ。リンがリンだから、僕達は一緒に居たいと思っているんだよ。だから、リンはリンのやりたい事をやって...。」「うん。これからも、一緒に居てね。約束だよ。ミル。」「もちろん。」


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