【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

七つの神殿と一つの島

茂手木オイゲンが参加してくれてからかなりの速度で物事が動いている。アゾレムに出した返答に対して、アゾレムは小屋に守備隊を差し向けたようだったが、小屋に辿り着く前に、霧散してしまった。サリーカとアデレードが構築した情報網に見事に引っかかって、まずは、食料を運んでいた荷馬車が襲われて、次に、弓矢隊が無力化された。それでも、守備隊は撤退しなかったので、自然魔法を持っている眷属を派遣して、守備隊全体を濃霧で覆った状態にした上で、操霊魔法でワイトやゴーレムを操って死なない程度に襲わせた。200人程度の部隊だったが、小屋に到着する前に全滅してしまった。文字通りの全滅で一人もアゾレムに帰る事が出来なかった。捕縛した200名はそのまま監獄に押し込まれる事になる。久しぶりに監獄に移動したら、ロドアドが「虜囚にしている物が、家族をここに呼び寄せたいと言っている」と言う事だ。監獄に家族を?と思ったが、話を聞くと、アゾレムに住んでいる時も、ここの生活は快適なんだと言う。だから、可能であれば家族もここで一緒に暮らしたいと言う事だ。
住む場所もまだまだ有る。家族の移住を求める物は、金貨5枚を支払う事で許可すると言うことにした。その時には、ロドアドとマロアドにお願いして、一人一人連れて転移をしてもらって、家族を連れてくる事にした。一人は虜囚が逃げないようにするためともう一人は家族の転移に必要になるので、二人で作業をしてもらう事にした。希望者の中に子供が居たら、子供は、マガラ神殿の地下二階の寮にいれる事にした。親元を離れる事になるが、学校での学習が大事な事を説いて寮に入る事を承諾させる事になる。。学校を卒業後に、子供が親元に戻りたいというのなら、監獄に戻しても良いとは思うが....まだ数年先だろうから、その時に方法を考えればいい。
MOTEGI商会も本格的に動き始めた、茂手木オイゲンの第一夫人のエルフリーデが有能だった。オイゲンやイリメリやフェムに話を聞いて、日本での運営を勉強し始めた。そこで、OEM販売やフランチャイズならできそうだと思ったようだ。まずは、改造された馬車を売り出す事にしたようだ。ダンパー部分と車軸部分を神殿内で作って、それを金貨3枚で売り出したのだ、貴族や豪商だと自分の所で職人が居る。彼らに上モノや内装を作らせる事が出来る上に足回りは完璧に近いものがある。その上、将来的には連結馬車にも対応可能な感じになっている。次に、喫茶MOTEGIを開業させた。お茶をメインにするが、珈琲も飲める場所になっている。食事処はあるが、飲み物がメインの店は珍しい。軽食も一緒に出すようになっている。エルフリーデが考えたのが、資本さえあれば明日からでも店のオーナになれると言う仕組みだ、衛生法とか面倒な事を言わない世界だから出来る仕組みなんだろう。器械一式と屋台を貸し出して前金でレンタルする。延長も可能だし、店で扱う商品も自由に選べるようにした。地下三階に、MOTEGI喫茶の卸し場所を作成して、そこで、お茶・酒精の入った飲み物をロット単位で売った。食事に関しても、食事係の手が空いているときに、まとめて作ってもらって、それを売るようにした。これが密かなヒットになっていて、ニグラではそうでも無いが、ミヤナック領やヴィード領では各街に一つか二つの店舗が出来始めている。料理が出来なくても、出来上がっている物を安く買ってきて売る事が出来るので、貴族の三男とかに見せを持たせる貴族が増えている。
新しい「かわら版」の作成に入っている。アゾレムのおかげで新しい虜囚が増えたので、彼らに刷らせる事にした。内容は、表面は、メルナ中継街をエスト街と呼ぶことにした事を発表した。それに合わせて、宿屋の商会や入植者の募集が開始された事が書かれている。裏面は、森林街と海岸街の紹介をしている。海岸街では貴族の別荘地としての誘致を開始した旨を載せている。森林街では、村ごとの入植を待っている事や、入植後の税に関する話や村の運営の話などをまとめた。合わせて、エスト街でも村ごとの入植が可能な事を書いてある。中に関しては、MOTEGI商会で行っているフランチャイズになる方法や新型馬車の説明をしている。また、各領地への転移門トランスポートの状況を説明している。アゾレムに攻められた事もあるので、隠してもしょうがないので、アゾレム領内になる小屋の中にも転移門トランスポートがある事を明記して、ここからもマガラ神殿に行く事が出来る事を書いてある。
新しいかわら版を発効した翌日に、オイゲンに”アスメデ=ポーデン・パズリッド”を名乗る人物から連絡が入った。オイゲンを助けたと言う商隊の隊長だった。
隊長は、ミヤナック街に着いて話を知ったんだと言う。オイゲンと嫁達と僕とイリメリで、ミヤナックに会いに行った。まずは、オイゲンがアスメデに、大金貨5枚を返して、3名の獣人が金貨15枚をアスメデに渡していた。近況報告をしてから、僕達が紹介された。
「アスメデさん。リン=フリークス・テルメン・フォン・マノーラです。オイゲンの事ありがとうございます。」「いや、大物になるなっと思っての投資だったんだけどな。思った以上の人物が釣れて嬉しいよ」「いえいえ。アスメデさんが居なかったら、オイゲンはアゾレムの所に捕まっていたかも知れないですからね。それだけでも十分な礼が必要な案件ですよ」「そうか?侯爵様?だよな。」「はい。侯爵を拝命しております」「侯爵様。もし、俺が、ギルドの商隊になりたいと言ったら許可してくれるのか?」「ギルドの商隊とは?」「噂で聞いたんだが、ギルドの商隊になれば、ミヤナックからニグラと回って、各国境の街シャルムを一日で回れるらしいよな」「はい。国境の街シャルムは全部ではなくて3箇所ですが可能です。」「おぉぉそれに、豪商とかが頼んでも出来ない。マガラ神殿の中に店舗を持つ事も出来るんだろう?」「えぇ可能です。興味があるのでしたら、僕の優秀な婚約者兼秘書に説明させますが?」「いいのか?すごく興味がある。」「イリメリお願いしていい?」「はい。侯爵。かしこまりました。」
イリメリが説明している。最近地下三階に店を持ちたいと言う豪商が増えている。税を免除する事を条件にしている事や、店舗がすでに作られているなどの理由でリスクが少ないのもその大きな理由だが、もっと現実的な理由がある。ニグラにしろミヤナックにしろ今までは、豪商が地方から大きな商隊で商品を街に運んで、卸業の様な事をしていたのだが、最近では地下三階エリアが卸業の様な事をしている。荷物の搬入では通行料を取らないで、出るときに通行料を取る事にしている為に、商隊が荷物を運びいれるのは基本ただなのだ。そして、地下三階の店舗に卸を行って、少量の仕入れだけをして街々に買い付けに行く。小売は地下三階で仕入れを行って、街々にちっていく。豪商が出したいと言ってきても、今までの小売店主の評判や貴族とのつながりで断る事が多くなっている。そのために、商隊として中規模程度が地下三階に店を持って卸業を行っている。今までのように大手に邪魔される事も少なくなっている上に輸送費が少なくて済むので、無理に買いたたなくても勝負が出来る値段で卸す事が出来る。売る方も、豪商の様に理不尽な値下げをしなくて済む売りやすくなっている上に今までは不可能だった足の早い商品でも買取が可能になっているのが大きい。一通り、イリメリが説明を終えた所で、
「アスメデさん。ギルドの商隊になっていただいて、地下三階に店舗を持つ事はいいのですが、二つ条件をつけさせてください。」「おぉなんだ」「そんなに難しい事ではありません。一つは、後でオイゲンのステータスを確認して真命を見てください。そして、以前の事を忘れてください。一つは、メルナ近くのエストの街に拠点をおいてください。」「なんだ、そんな事か?喜んで引き受ける。」「そう言っていただけるとうれしいです。拠点に関しては、僕の方で店舗を用意します。エスト街の宿屋の隣に....そうですね。20名位が寝泊まり出来て、商隊の荷馬車がおける場所を提供します。どうですか?」「・・・いいのか?」「はい。アスメデさんがオイゲンを守ってくれた事やこれから地下三階で商売をしてくれるという事への先行投資です。それに、エスト街もこれから大きくしていきます。今、代官としてオイゲンの母親が務めていますが、アスメデさんが補佐して頂ければ、オイゲンの母親も助かるでしょうからね。」「あぁ解った。オイゲン。いや、オイゲンさん。あんたと知り合いになれて得したのは俺の方かもしれないな。今話題のギルドと懇意に慣れただけじゃなくて、侯爵との縁も繋がったんだからな。」「いえ。アスメデさん。オイゲンでいいですよ。それに、俺が助けられたのも間違いなく真実ですからね。」
アスメデがギルドに参加する事になった。エスト街にも商店が必要だし、今後大きくなるようなら、エスト街への通行料を期間限定で値引きしてもいいと考えている。アスメデのパズリッド商隊に関しての事は、エルフリーデが対応する事になった。僕とオイゲンはイリメリを伴って、エスト街に向かった。宿屋の隣に商隊の荷馬車がおけるスペースと屋敷を作成した。
忙しく動き出した、ギルドは、徐々に依頼も増えてきている。街の小さな依頼ごとも多くなってきている。それらは、学校の子供たちが率先して受けている。
ギルドカードのパーティ機能をベータ版として公開した。同時に、銀行機能も限定的だが公開をした。ギルド関連ショップではギルドカードでの支払いが出来るようになった。思った以上に、銀行機能は受け入れられていった。最初の頃は、マガラ神殿内だけで使われていたが、徐々にMOTEGI紹介のフランチャイズ店が各領内に出来始めるとそこで使う事が多くなって、ギルドカードの発効にもつながっていった。一番喜んだのがやはり商人だ。マガラ神殿のでの仕入れのときに、銀貨や銅貨をジャラジャラ持ち運ぶ必要がない上に、枚数を数える必要もない。入力されているレインの数字を確認すればいいだけだからだ。細かいトラブルはあったが停止するほどの問題は発生していない。ラーロさんが言っていたように子供にカードを持たせて、お小遣いというか買い物のお金を渡す親も出始めている。スパや銭湯施設で使う客も多い。
そして、次の「かわら版」の発行時に、パーティ機能と銀行機能を本格始動させる事が決定した。
編成作業をしているときに、マヤが1ヶ月ぶりに帰ってきた。
「リン。ただいま!!浮気なんてしてないでしょね!」「マヤ。おかえり。やることは全部終わったの?」「ううん。これからが本番。昨日調査が終わったんだよ。今晩皆に話すね。」「うん。解った。」「でも、今は、リンを補充しないと、倒れちゃいそうだよ。」「いいよ。おいで、僕のマヤ!」「うん」
マヤを抱きしめた。マヤが何をしていたのかは聞いていない。ミル達は知っているようだったが、あえて聞かなかった。マヤが僕が困るような事をするはずがない。世界中が敵に回っても、マヤだけは僕の味方で居てくれる。
「ねぇリン。キスして。」「ここで?」「うん。」「いいよ。」
マヤを抱きしめたまま唇を合わせた。久しぶりの感覚だが、僕はマヤを覚えている。愛しいマヤ。僕の妹で、僕の最愛の人。そして、掛け替えのない家族。
「リン。聞かないの?今まで何をしていたのか?」「ん。マヤが何をしていたのかは気になるけど、マヤがここに居る事が重要だからね。」「うれしいよ。でも、ごめんな。前は確実ではなかったから話せなかったんだよ。」「そう、今はもうわかったんだね。」「うん。全部じゃないけど解ったよ。」「そう。それなら良かった。」「待っていてくれてありがとう」「話してくれるんでしょ。うれしいよ」「リン。今日の夜にでも皆に詳細は話すけど、”七つの神殿と一つの島”を開放するからね。協力して!」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品