【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

幕間 茂手木の考察

コリンズ/シャトルフ/ヴィネッティと、出身の里に向う。ウォード街から、里までは3日程度の距離にある。パズリッド商隊と別れる時に、護衛からも餞別だと言われて、食料と水を分けてもらった。商隊は、暫くはウォード街で商売をするので、食料も水も必要ないから持っていけと言う事だったので、遠慮なく貰っていく事にした。
一日目の夜に大きな問題がある事に気がついた。テントが一つしかない。寝袋が無くて毛布の様な物が一枚あるだけだった。流石に、女の子を外で寝かすわけには行かない。「いいよ。俺が外で火の番をしているから、順番に寝て。テントと毛布は使っていいからな」「いえ。そういうわけには行きません。」コリンズが、最初はコリンズとヴィネッティで番をするから、俺とシャトルフは先に寝てくれと言う事だ。それで途中で、シャトルフとヴィネッティが交代して、最後に、コリンズがヴィネッティと交代するといい出した。
「女の子に火の番をさせるわけには行かないよ。俺がするから君達はゆっくり休んで、それに、毛布は一枚だけなんだから、俺は朝方に寝かさせてもらうよ」
そう主張したが、コリンズとシャトルフに反対された。話し合ったが、二人共自分たちは、俺の奴隷だから、奴隷が仕事するのは当然だと言って譲らない。今日は、コリンズの提案どおりにするけど、明日からは俺も加わるからねと付け足しておいた。
テントに入って寝る準備を始めると、シャトルフが入ってきた。近くの川で身体を拭いてきたのだと言う。俺も行きたいと言ったら、そういうと思いまして、水を汲んできています。と言われて、露出している部分だけじゃなくて、身体をシャトルフが拭いてくれた。正直すごく気持ちよかった。下半身が反応しなかった事を褒めてあげたい。
「ありがとう。シャトルフ。気持ちよかったよ。」「そう言ってもらえるとうれしいです。僕は水を捨ててきますので、ノリ様は先にお休みになって下さい。僕達は交代でテントの入り口で寝かさせてもらいます」「えぇ駄目だよ。体調悪くしちゃうよ。俺は交代していで寝るから、君達が毛布を使って寝るんだよ。いいね。」「・・・。ノリ様。毛布をお使い下さい。僕が、コリンズに怒られてしまいます。」「大丈夫だよ。俺がそうしろって言っているんだからね。」「はぁ....。解りました。コリンズと話をして決めます。」「うん。それじゃ先に寝ているから、毛布を使うんだよ。」「・・・。はい。かしこまりました」
うん。今度、街に行ったら毛布を買おう。それとも、僕が使っていた毛布を持っていけばいいかな?今日も歩いて疲れた。横になったらゆっくり寝られそうだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
目が醒めた。思った以上に暖かい。毛布が無くても十分寝られるんだと思った。そうではなかった。俺にしっかり毛布がかかっていた。それだけではない。コリンズが一緒に横に寝ている。状況が整理できるまでに、10秒ほど必要だった。「なっ!」シャトルフが入ってきた「シャトルフ。これはだな...。」「あぁやっぱりまだ寝ているんですね。コリンズは朝が弱いんですよ。」一緒に寝ているのが当たり前と言う感じで接してくるから余計に混乱する。
「あっおはようございます。ノリ様。」「あぁおはよう。シャトルフ。ヴィネッティはどうしている?」「近くでベアが居たので、二人で倒して、今、ヴィネッティがさばいています。」「ん?ベア?」「はい。」「ふ。ふぁぁぁ。あっおはようございます。ノリ様。」「あぁそれで、なんで、コリンズはここで寝ているんだ?」「申し訳ございません。私達と一緒でご不快だったでしょうが....」「いや、そうじゃなくて、毛布を使って寝ろって言ったよね?」「はい。ですから、毛布を使って、ノリ様と一緒に寝かさせて頂きました。」
あっこのこ天然なのか?
「私達とでは、不快でしたでしょうか?それでしたら、今晩からは、ノリ様が毛布をお使い下さい。お願いします。」「いやいや。なんでそうなるの?不快なんて事はないよ。むしろ...」「むしろ何でございましょう。」「いや、なんでもない。私達?って事は、昨日は順番で寝たのか?」「はい。そうさせていただきました。」「うん。それは勿論いいけど、毛布はしっかり使ったんだよね?」「はい。ノリ様にかけさせていただいて、横で寝かさせていただきました。ヴィネッティなんか、すごく喜んで、抱きつきそうだったので、注意しました。」「いや、そこは注意しなくて....。いや、なんでもない。」「本当ですか?抱きついて寝るのをお許しいただけるのですか?」「ん?お前たちがそうしたいのならいいけど、いいのか?」「はい。駄目なのでしょうか?」「よし、今日から寝る時には、できるだけみんな一緒に寝よう。宿に泊まったりした時には、順番だな。」「はい。かしこまりました。」「それよりも、朝ごはんにしよう。」
テントから出ると、少し離れた所で、ヴィネッティが自分の倍くらいありそうな、熊をさばいていた。
「ノリ様。おはようございます。」「それを二人で楽したのか?怪我したりしていないよね?」「はい。魔物ではないし、大丈夫です。僕だけじゃなくて、ヴィネッティも居たので、簡単でした。」「・・・そうか。怪我していないのならいい。」
アスメデさん。もしかして、使い物にならないとか言っていたけど...実はそんな事ないなんて事はないよね。ステータスを確認していなかったけど....ご飯食べてからステータスを確認してみよう。
熊の肉はうまかった。直火で焼いただけだったが、これだけうまい肉は久しぶりだ。包丁はなかったから短剣で切ったから、断面が汚くなってしまったが、それでもしっかり火を通して食べたら、高級な豚肉と言う感じの味だ。冷蔵庫がないのが残念だ。
「さて、3人とも、決めたい事があるんだけどいいかな?」「はい。何でしょうか?」「今日から寝る時には、出来る限りみんな一緒に寝よう。いいね」「「「はい!」」」「うん。それから、狩りに出かける時にも、一緒だからな。俺だけで行く必要がありそうな場所は別にして、全員で一緒に行くからな。」「「「はい!」」」「約束事はそれだけで、俺は命令するのは好きじゃないから、自分達がやりたい事やしたい事があったら遠慮なく言うんだよ。いいね。」「「「はい!」」」「うん。本当に、三人は姉妹みたいだな。コリンズが長女でシャトルフが次女で、三女がヴィネッティだな。そうだ、三人ともステータス確認していい?」「勿論です。ノリ様」
まずはコリンズから確認する名前:コリンズ・ホウフェン(8)真命:コリンズ・ホウフェンジョブ:長剣使い体力:690魔力:110腕力:510敏捷性:570魅力:70スキル:長剣武技、盾武技、短剣武技スキル:肉体強化(2)、嗅覚強化(2)、形態変更従属:茂手木義徳
はぁ?なにこれ、十分強いよな?押し付けたってよりも餞別以上の物がある。
次はシャトルフを確認する。名前:シャトルフ・パトリシオ(6)真命:シャトルフ・パトリシオジョブ:長槍使い体力:490魔力:90腕力:390敏捷性:910魅力:70スキル:長槍武技、投擲武技スキル:肉体強化(2)、聴覚強化(2)、形態変更従属:茂手木義徳
もう何も言わない。
最後は、ヴィネッティだな。パシリカ前だって言っていたけど....名前:ヴィネッティ・クレボラン(5)真命:ヴィネッティ・クレボランジョブ:白魔法師体力:290魔力:480腕力:110敏捷性:320魅力:80魔法:青(1)・赤(1)・黄(1)・灰(1)・黒(1)・白(2)・紫(1)スキル:弓武技スキル:肉体強化(2)、知覚強化(2)、形態変更従属:茂手木義徳
あ一番駄目な奴。アスメデさんにいくら返せばいいんだろう?なんでここまでしてくれたんだろう?
「ありがとう。お前たち、本当は、何かアスメデさんに言われたりしていないか?」三人は顔を見合わせる。何か言われているようだな。「いいたくなかったら無理に言わなくていい。でも、話してくれると嬉しい。」「オイゲン=フンメル・エストタール様。私達は、望んでここに居ます。それは間違いではありません。その事だけは信じて下さい。」「あぁ信じるよ。」「ありがとうございます。」「ん。」「はい。何か話したらいいのでしょうか?」「そうだね。アスメデさんに何か言われているんでしょ?それを教えてくれたら嬉しいな」「・・・はい。その前に、私達の事を聞いて頂けますか?」「勿論だよ。コリンズが話しやすい順番でいいよ」「はい。私達は、商隊の奴隷となっていましたが、それは違います。本当は、ウォード領の奴隷商の奴隷です。アスメデ様は、ニグラのアッシュ様から私達をウォード領まで運ぶ仕事をされていたのです。」「・・・・。」「私たちは、ここから西の方角にある。ホレイズ領で暮らしていました。住んでいた村を、ホレイズ家に攻められて、奴隷になった者です。」「・・・。」「そんな顔しないで下さい。私達は、ノリ様と一緒に入られてよかったと思っています。母親も父親ももういませんから、ノリ様だけが頼りなのです。」「うん。わかった。それで」「はい。その時に、アッシュ奴隷商と言う人が子供の奴隷を買い集めていると言う話しになって、私達は売られました。」「そのアッシュとか言う奴が黒幕なのか?」「いえ、違います。黒幕というか、ホレイズの領主は宰相派の人で、ヒト族以外は人ではないと言って、私達の様な獣人や亜人を差別して殺したり奴隷として扱うのです」「はぁそれじゃ俺は、知らないけど、第一皇子派だ!!」「・・・。それで、アッシュ様は、私達を保護してくれたのです。奴隷紋も本来ならもっと厳しくなる所を最低の物だけにしていただいています。」「そうなんだ....。」「はい。アッシュ様の所では人数が多すぎるので、奴隷をしっかり扱ってくれる貴族様の領地に私達は送られたのです。」「あぁなるほどね。」「はい。黙っていて申し訳ありません。」「ううん。いいよ。これからも一緒に居てくれるんだよね?」「はい。勿論です。ノリ様が出て行けと言われるまで、私達はご一緒させていただきます。」「うん。・・・・それがわからないんだよね。」「それとは?」「なんで、俺にそこまでしてくれるの?」「覚えていらしゃらないのですか?」「う~ん。覚えているのは、三人が可愛かった事と、よく一緒になっていたなって感じかな。年が近いから、アスメデさんがそうしているのかと思ったんだけどね。」「はい。それも有ったのかもしれませんが、私達は最初から、アスメデ様には、ノリ様と一緒に居ろと言われていました。」「どうして?」「必ず。私達を守ってくれるからと....それから、”お前たちを奴隷や獣人として扱わないだろうから、お前たちもいいだろう”と....」「へぇ確かにそうだけど....」「はい。その言葉は少なからず確認出来ました。私達を何度も守ってくれましたし、自分が危ないのに、私達の方を気にしてくださいました。そして、普通の女の子の様に扱ってくれました。」「・・・・。」「それが、私達がここにいる理由です。私達は、もうノリ様しかしません。ノリ様に優しくされて、離れたくなかったのです。そこで、アスメデ様にお話をしたら、私達を奴隷商からそれぞれ金貨15枚で買い取っていただいたのです。」「金貨15枚?三人で45枚?」「はい。それで、何年かかってもいいから、金貨をアスメデ様に返せと言われました。ノリ様にバレても、私達自身で貯めた金貨しか受け取らないからとまで言われています。」「・・・。お前たちが、俺に良くしてくれているのはわかった。でも、アスメデさんだけは解らない。なんでか言ってなかったのか?」「・・・・。」「大丈夫だ。聞かせて欲しい。」「はい。ノリ様は、ご自分の真命が読めるのですよね?」「ん。当たり前だよ。『もてぎよしのり』だよ。お前たちにも読めるんだろう?」「いえ、読めませんでした。『もてぎよしのり』様で、ノリ様なのですね。」「読めない?」「はい。読めません。アスメデ様に言われるまで気にもしていなかったので気が付きませんでしたが、たしかに読めません。」「そうかぁ....読めないのか....」「ノリ様は、この国の王家の伝説をご存知ないのですか?」「ん?この国って、トリーア王家の話?400年位前に一人の男が勃興した国だって話だよね?」「はい。初代の伝説はいろいろ残っていますが、その中の一つに、真命が”読めない記号で、初代以外には読むことが出来なかった”とあるのです。伝説ですから、すでに忘れられていますが、獣人やエルフと言った種族には語り継がれています。アスメデ様もその事をご存知で、もしかしたら.....と....。」「あぁ俺が、王家の血と引いていたり、初代の様な英雄かもしれないと思ったわけなんだな」「はい。そうおっしゃっていました。護衛の人にも剣技を教えたりしていたのもその為だとおっしゃっていました。」「あぁそうだよな。俺だけおかしいと思ったんだよな。」「ノリ様は武技を吸収してしまったり、ステータスの上がり方が獣人並なのに、熟練度はヒト族並に上がっていくので、ほぼ間違いないと思われたそうです。」「・・・。そうか、俺は、アスメデさんにでっかい借りが出来たってわけだな。」「いえ、違います。私達が望んだ事ですので、ノリ様がご負担に感じる事はありません。」「・・・う~ん。お前たちは、俺と一緒にいたいんだよな?」「もちろんです。ずーと付いていきます。」「そうか、それじゃ一生俺と一緒に居てくれ。」「「「はい」」」「俺は英雄でも無ければ、王家の人間でもないんだぞ。それでもいいんだな」「「「はい」」」「うん。それじゃ4人でアスメデさんに受けたお礼を返さないとな。100倍にして返してやる。金貨50枚の100倍で大金貨5枚をアスメデさんに返そうな」「・・・。はい。本当に私達でいいのですか?」「ん?俺は、お前たち3人がいい。一生離さないからな」「はい。」「僕も一生一緒です」「うん。ヴィネッティも、ノリ様と一緒です」「うん。まるで結婚だな。ハハハ」「・・・・」「・・・・」「・・・え”」「ん?どうした?」「奴隷と結婚なんて言わないで下さい。本気にしてしまいますよ。」「僕も」「ヴィネッティもだよ。ノリ様となら結婚してもいい!」「・・・。そうだ、こうしよう。アスメデさんに大金貨5枚叩き返したら、3人を開放して、俺と結婚しよう。勿論、それまでに、お前たちが嫌ならいやって言ってくれてもいいんだからな」「・・・・本当に?」「僕も信じちゃいますよ」「やった、ノリ様と結婚する。」「あぁ本気だ。お前たちと結婚したい。でも、今はまだ先にやらないとならない事がある。それを片付けてからだけどな。それでもいいのなら、俺と結婚してくれ」「はい」「はい」「やった!ずぅとヴィネッティと一緒だよ」
三人の事情はわかった。そうか、漢字は読めないんだな。奴隷紋を刻んだことで、3人にも僕の名前がバッチリ出てしまっているから、気をつけないとな。奴隷だと解れば、ステータスを無下に確認しないとは言っていたけど....どうする事も出来ないから考えても仕方がない。
まずは、三人の故郷を襲った、ホレイズ家にはお礼参りをしないとな。辺境伯だと言う事だから、今の力では何も出来ない。もっともっと力を付けて仲間を探さないと。それこそ、神崎達と合流して力を借りる位の事をしないと駄目かもしれない。後は、レインを稼ぐ。100倍にして返してやる。それが出来て、初めて三人に釣り合う男になれると思う。その為にも力をつけよう。迷宮ダンジョンがあるはずだから、そこに潜ってもいい。まずは、母親になんて説明しようか.....嫁候補が三人出来ましたかな?

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