【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

ギルドの拡張(ミヤナック家との交渉)

食堂に向かった。今日は、サラームとカフィールが担当だと言う事だったので軽く食べられるものをお願いした。
少し待っていると出されたのは、サンドウィッチだ。最近、イリメリに言われて作り始めたそうだ、片手で食べられる事もありギルド職員にも好評だと言う事だ。もう少し種類が増やせるようになったら、ギルドでも出すようにすると言う事だ。黒パンを薄めにスライスして、軽く炙ってから具材を挟んだだけの物だ。
でも、やはりパンをどうにかしたいな。薄くする事で、硬さをごまかしているが、やはりあの柔らかいパンが食べたくなってしまう。話を聞いたら、今研究中だと言う事だ。一晩置いたらパンがふっくら焼きあがる事は知られていたが、必ずそうなるわけじゃないので、パン職人の間では精霊の加護だと思われているようだ。今、イリメリやタシアナを中心に酵母の作成を行っているようだ。何種類もの果物や野菜を水につけている最中のようだ。この世界には魔法があるので、水を魔法で作り出すと、純水が出来上がるようで、それで試してみたり、湧き水を使ってみたりといろいろやっているようだ。
サンドウィッチを持ちながら、ギルドカウンタに向かった。何人かの相手をレーゼルとカールがしていた。職人が素材を求めに来たらしい。素材の種類や必要な数を聞いている。素材は、一旦ギルドが冒険者から買い取って、職人の数を集めた状態で売るような仕組みにしている様だ。大まかな希望価格を聞いている。それを基準に冒険者に提示するようだ。安すぎると、冒険者が素材を持ってこないが、高すぎると商人から買ったほうが安いと言う感じになってしまう。特殊な素材の場合には、自分で採取に行きたいから護衛をお願いしたいと言う依頼も出てきている。少ししたら客が居なくなっていた。「あっリン様」「いいよ。そのまま作業を続けて、いつも大体こんな感じなの?」「そうですね。朝早くに依頼や買い取りに来られて、昼くらいになると一旦落ち着いて、少ししたら、また素材や護衛を求めに来ると言う感じです」「そうか、うまく回り始めているって感じだね。」「そうですね。でも、サリーカ様は”もう少し客が増えないとなと”とおっしゃっていました」「まぁそうだろうね。」「護衛の仕事なんかはどうしているの?」「近場でしたら、マリノらが行くことにしています。」「そうか、サリーカは下?」「はい。いらっしゃると思います。お呼びしましょうか?」「いやいい。ちょっと試したい事もあるから地下に行くよ。ありがとう。」「いえ。」
そういえば、関係者の待機場所が最近マガラ神殿になっているような気がするんだよな。何をするにもあっちのほうが便利だからな。頻繁に行き来きしているみたいだし、転移門トランスポートがギルドマスタの部屋にあるのは不便だよな。まぁ勝手に移動しても怒られないだろうし、”関係者休憩所”に設置した。こっちは、ギルド関係者だけが使う場所にしておけばいいかな。大きくなってから、頻繁に人の出入りが発生する場所は城壁の外に作った方が良いだろうからな。転移門トランスポートの場所を移動して、その旨をギルドマスタの部屋で執務をしていたナッセに伝えた。
その足で地下に降りた。倉庫の前で、サリーカが何やらしていた。「サリーカ。ちょと今大丈夫?」「うん。大丈夫だけど何?今度は何をやったの?」「心外だな。僕はいつも真面目だよ。」「そうだったわね。それでどうしたの?」「あぁ僕のステータスを見てほしいんだ。ナッセと話をしてこれなら宮廷とかで怪しまれないようになるとおもうんだけどね」「どれどれ」「・・・・」「どう?」「これなら、少し魅力が高いけどジョブ属性の補正が入った程度に取られるだろうね。」「それは良かった。暫くこれで活動するよ。」「ねぇリン。もう素材とか隠していないよね?」「あっ」「え。何かあったの?」「ううん。そういうわけじゃなくて、ちょっと試したい事があるけどいいかな?」「いいよ。もう大抵の事では驚かないからね。」「・・・。たしか、素材は全部あるとおもうけどな。....あぁあるね。さて、サリーカ少し倉庫から出ていて...。」「うっうん。」「さてと、【時間停止タイムストップ】へぇトリガーが必要なんだ。ドアが閉まっている時にして、効果範囲は地下倉庫全部....まで広がるな。これでOKだな」「あの?リン何をしたの?」「倉庫の時間を止める古代魔法を発動したの。媒介ありだから、多分半永久的に使えるとおもうよ。」「!!どういう事?」「そこの扉を閉めると、古代魔法が発動して、この倉庫内の時間が停止することになる。ものが劣化したりしなくなるとおもうよ。進める事は出来ないけど、止めるだけで十分でしょ?」「!?って事は、この中で魔物の肉とかを保管しても、痛みが殆どないって事?」「そうだね。冷蔵庫と同じって考えてくれたらいいよ。ドアを開けている最中は時間の影響を受けるから、使い所が難しいけど、倉庫ならいいよね。」「あぁぁそうだねぇまぁ実際問題になり始めていたんだよ。魔物の肉は腐りにくいって言っても腐るからね。冷蔵庫もないから、今はミルにお願いして凍らせて貰っていたんだよ。」「そうだったんだね。素材の全部が気温を下げてもいいのなら、倉庫の温度を一定に保つような感じにしても良いんだけどね」「そうか、それは困るな常温で保管しないとダメな物もあるからな。」「そうだね。その辺りはもう少し後で考えるよ。」「うん。そうしてくれたら助かるよ」「ありがとう。サリーカ。何か足りなかったら言ってね。眷属たちも狩りに参加したいって事だったから、もう少し人員を増やせるとおもうよ。」「おぉありがとう。」
サリーカに一言告げて、上に戻ろうとした。「あっそういえば、タシアナとカルーネがリンに相談があるって探していたよ?」「解った、行ってみるよ」
屋根裏部屋に行ってみたが、タシアナとカルーネが居なかった。どこに居るんだろう?と思って、ギルド本部を歩いていたら、マヤがやってきた「リン。どこに居たの?」「ん?いろいろ。」「そう、タシアナとカルーネが神殿でリンが来るのを待っているよ」
あっそうだった。作業場所を、神殿に移動してもらう話をしていたんだった。急いで、神殿に向かった。
「ゴメン。タシアナもカルーネも待たせたね。」「ううん。いいよ。それよりもこれ見てよ!!」
「ん?」そこには、少し大きめの球体があり、球体の台座にはカードを差し込むような口が設置されていた。「これは?」「うん。通行証パスポートの発行方法をカルーネと相談していたら、アグラオさんが来ていて、話をしたら、ドラウさんが何か知っているかもって言ったので、相談に乗ってもらったんだ」「へぇ試作品?」「そ!リン。通行証パスポート発行機に手をかざしてみて!」
言われるままに、手をかざしたそのまましていると、タシアナがカードの口の部分に銅板の様な物を差し入れた。そうしたら、球体が光出して、かざした手を覆った。光は数秒だけの現象だ。
「もういいよ。」手を離す「ほらこれ!?あれ?リンステータス調整した?」「あぁ調整したよ。」手渡された銅板には、僕が偽装しているステータスがそのまま表示されていた。「タシアナ。これって、パシリカの時の球体と同じ事が出来るの?」「半分当りって所かな。ドラウさんに聞いたら、あの球体は古代魔法で動いていて、強制的にスキルを顕現させる物なんだって、そして顕現させたスキルを記憶する機能だけが備わっている。」「??」「だから、この発行機みたいに真命やステータスまでは見る事が出来ないし、個人特定も出来ないんだって。」「へぇそうなんだ」「ドラウさんにいろいろ聞いていたら、ここの書庫にも資料があるはずだって事を言われてね。やっぱり、どっかに書庫が欲しいよ。その横に、工房を作って!!」「私もそれをお願いしたい。」
タシアナとカルーネの研究施設は必要だろうと思っていたし、折角の機会だから迷宮ダンジョン作成を試してみる事にした。管理部屋に二人を連れて行った。そして、部屋を作成した。階段があるだけの部屋にするつもりだ。階段部屋から神殿の中央広場に繋がるように通路を配置する。下の階層への階段はその部屋の横に新たに部屋を作って下に伸ばした。上の階層は5階分位何もない階段だけの部屋にした。後から何か作るかもしれないけど、上の層には、魔物部屋などを配置出来るようにするだけにする。下層に実験室や研究施設を置くようにしよう。
階層の広さとかはいくらでもいじれるようだが、大きいとそれだけ魔素を使うようだった。大量にある魔素を使って、下層階層を4つほど中央広場と同じくらいに作成した。下層1)鍛錬部屋下層2)倉庫。ギルドメンバが使う為の倉庫下層3)空き空間。下層4)書庫及び研究施設
施設の内装に関しても、タシアナとカルーネが好きな感じでやろうとした。細かく指示されるのが面倒になってなんとか出来ないかと思ったら、魔素を割り当てて、階層を副管理人に委ねるオプションがあった。タシアナとカルーネに言ったら、それでいいと言う話で、管理層を割り当てることにした。
下層5を作成して、管理部屋を移動させた。僕だけが通れる転移門トランスポートをポルタの生家の地下に配置した。移動時に、外部から完全に接続できなくなるような配置ができなかったから、安全そうな場所で問題にならない場所に配置した。実際、僕は転移を使えば、管理部屋に移動できるから、配置しなくても良かったんだけどな。
さて、一旦管理部屋に戻った。上への階層を伸ばしておくことにした。順次伸ばしていくと、70階層で何処かに出た事を確認出来た。流石に、70階層も上がっていくのは面倒だなと思っていたら、階層管理の機能で転移が出来た。1階層に飛んでみた。階段があるだけの部屋になっていて、扉も何もない部屋だ。扉を設置した。出た先は、パシリカに行く時に、コボルト魔核を拾った場所の近くだ。幸いな事に、岩の陰になっているような場所だった。表面を、岩肌に偽装したら、わからなくなった。これで迷宮への入り口が出来た。10層位は階段だけの部屋にしておいて、その先にダンジョンを作ろうかな。フェムやルナ当りにやってもらえたらえげつない物ができそうだな。他の神殿はこうやって管理部屋を隠しているんだろうな。下にも伸びるみたいだけど、実際の所20層当りで作れなくなった。中央広場にある教会の居住区が8階建てだから、それで数えると、全部で100層位が上限だって事になるんだろうな。横には、中央広場の建物を含めた広さ位が限界のようだ。それだけ解れば十分だろう。さて、また、フェムやサリーカに言ったら怒られるんだろうな....仕事増やしてって...。黙っていようかな。でも、タシアナやカルーネから情報が行くだろうな。怒られる前に話しておいたほうがいいかな??
覚悟を決めて、ギルド本部に戻った。そこには、ルナが待っていた。「ちょうどよかった。リン。行くよ」「ん?もうそんな時間なの?」「ううん。まずは、私の実家に寄ってもらって、リンに恥ずかしくない格好をさせる。これは、マヤとイリメリとフェムと決めた事だから、リンに拒否権はないからね」「!!!なんで?」「なんで?って、自分の格好が王城に行くような格好に見える?見えるのなら、いい眼科医を紹介するよ。」「・・・ゴメン。お願いします。」「うん。よろしい。行くよ。マヤ。一緒に行くでしょ。」「うん。もちろん。ミルはどうする?」「私も行く。嫌だけど行く。」「何があったミル?」「聞かないで....イリメリ。」「イリメリ。ミルね。この前.....」「何でもない。何でもない。リン。マヤ。ルナ。行こう。イリメリ。フェム。後よりしくね。」「・・・・・。」「そうだ、フェム。神殿からタシアナとカルーネが帰ってきたら話聞いておいて、僕も帰ってきてから説明するからね。」「うん。何のことかわからないけど、解った。」
慌ただしく馬車に載せられて、ミヤナック家に移動する事になった。「(なんとなく、気楽に来ているけど、本来ならそんなに気楽に来ちゃいけない場所なんだろうな)」流れる景色を見ながらそんな事を考えていた。声に出てしまっていたようだ。従者が「リン様がルナリーナお嬢様と婚姻されれば、気楽に来ていただかなければならない事になりますよ」「!!」「え”私とリンが....そんな事....でも、リンが良いって言うなら....」「ルナ。ここは否定しないと、マヤの目が怖いよ。」「冗談だよ。ね。マヤ。ね。」「そうだよね。ルナがリンの事を好きなんて事はないよね。」「そっそうだよ。ミルも何言ってのよ」「ふぅ~ん。」「ね。リンもそうでしょ?」「ん?何?」「はぁこれだから.....」
馬車が止まった。目的地に着いたようだ。そこは、ミヤナック家ではなく、服の仕立て屋の様だ。ルナが店に入っていく。すぐに、見覚えのあるメイドが数名駆け寄ってきた。馬車から連れ出された。その後は、着せ替え人形状態。本当は、サイズを測って仕立てたいらしいが、時間もないから簡単な手直しだけで礼服を作っていく。マヤとミルも別々に連れて行かれた。どのくらいの時間が経過したんだろう。疲れきった顔で出ていったら、同じような顔をした可愛い二人を見る事が出来た。ルナは今日は来ないようだ。ハーレイ重度のシスコンから絶対に来るなと言われているらしい。ミルは先日のお礼と解った事の報告をする必要があり、マヤは僕に付いて行くと言う事だ。
そのまま馬車に乗せられて王城に行くことになった。守衛に、ミヤナック家のハーコムレイに呼ばれている旨とリン=フリークスと名乗った、暫く待っていると守備兵だろうか、数名の鎧を身にまとった人たちが来て、案内してくれた。この部屋で暫く待って欲しいとの事だ。「そういえば、ミル。ステータスはどんな感じ?」名前:ミトナル=セラミレラ(7)真命:ミトナル=マノーラジョブ:魔法剣士体力:640魔力:930腕力:310敏捷性:340魅力:100魔法:青(4)・赤(4)・黄(2)・灰(3)・黒(3)・白(2)・紫(1)スキル:(隠蔽)隠蔽、(隠蔽)魔法の吸収、(隠蔽)剣技の吸収スキル:短剣武技、長剣武技、弓武技、盾武技、大剣武技、戦斧武技、長槍武技ユニークスキル:(隠蔽)鑑定
うん。十分人外の領域になってきている。「どうする?隠蔽する?」「いい。ある程度、高いステータスを見せたほうが、抑止力になるとおもう。」「そうだね。白と紫だけ隠しておこうよ。面倒な事になりそうだからね。教会関係者とかに会ったとき」「そう...か。任せる。」「了解。少し触れるよ。」ミルの手を握りながら、隠蔽を行った。隠蔽だけなら、自分でも出来るだろうけど、僕がやったほうが、鑑定で見抜けなくなる。
「マヤは?」「お願い。リンのすきにして!」真命:マヤ=フリークス・アルセイド(3)ジョブ:森魔法師(改竄:アルセイド)体力:360魔力:4800腕力:280敏捷性:600魅力:220魔法:(隠蔽)精霊魔法(9)魔法:黄(9)、黒(8)、青(7)スキル:(隠蔽)鑑定、念話エクストラスキル:(隠蔽)マガラ神殿管理(9)、(隠蔽)祝福付与(9)
ぶっ飛んでいる。ジョブがアルセイドになっているので、前の森魔法師に戻しておく、それから、精霊魔法を隠蔽する。同時い、マガラ神殿管理と祝福付与も隠蔽する。もう魔法はいいかな....魔力もぶっ飛んでいるけど、しょうがないよな。
改竄を終えて、マヤとミルと雑談をしていた。主に、神殿に新しく施設を作った事だ。ミルからは、施設内に魔物が出てくれば、鍛錬と同時に魔素の提供を行って素材も得られるし、人も沢山来る。一石数鳥の施設になるのではと言われた。もともとそんなつもりは無く、地上に繋げたのも僕とマヤが助かったことへの言い訳の為でもある。ミルがフェムとサリーカに相談して見れば良いだろうと言ってくれた。細かい事は、イリメリが考えるだろうと...。何故か、マヤも同じ意見の様で、フェムやイリメリやミルなら大丈夫とまで言っている。きっと何か有ったんだとおもう。実害があるわけじゃないからスルーが基本かな...。
ドアがノックされる音がした。すっかりこの場所が王城だって事を忘れていた。
「はい。」「どうぞ、ご案内いたします。」執事風の男性に連れられて、豪華なドアの部屋の前につれてこられた「リン=フリークス様。マヤ=フリークス様。ミトナル=セラミレラ様。お連れしました。」
豪華なドアが内側から開かれた。そこには、二人の見知った人間が座っていた。ファンの姿が見えなかったが、どこかに居るのだろう。そして、すすめられるがまま部屋の中に入って、椅子に腰をおろした。
「それで、リン君。話って何かな?ルアリーナ嬢を嫁にくださいって話なら、そこで不貞腐れている、バカ兄貴に言ってあげてね。今なら受けるかもしれないよ。」「!!!」「確かに、アゾレムの所にやるくらいなら、そこの米搗き飛蝗リン=フリークスの方がましだな」「!!」「何が有ったのですか?」「ルナが嫁入り?」「ウォルシャタのところにありえない!」「あぁ結婚自体はなくなっているんだけどね。僕達の勢力が伸びるのを警戒している中立貴族が昔の婚約を引っ張り出してきてね。話をされていたんだよさっきまでね」「あぁそれでハーレイ様は不機嫌になっているんですね。」「そうなんだよ。アゾレムも結構やばい立場になってきているから余計になりふり構わずって事なんだろうけどね」「何か有ったのですか?」「先に、その話をしようか?」「はいお願いします。」
アゾレム領主は、リンが渡した書類の出処だと疑われていて、疑われているけど、確たる証拠もないという状態が続いていたんだけど...。つい先日コンラート家が書類の一部だと思われる部分で、一部の教会関係者が不正にお金を貰っていた証拠を提出して、教会内部で弾劾が行われたんだと言う事で、その際に、息子のパシリカの時にしっかり護衛が出来なかった事や、スキルを持った人間を食客として雇う為に、教会関係者しか見れない書類を横流しさせていた事とかが明るみに出て、立場的に追い詰められているらしい。ようするに自業自得だと言う事だ。
「結局、ルナはどうなるのですか?」「何も変わらないよ。そこのシスコンの下で過ごす事に変わりはないよ。でも、僕達の派閥も中立貴族を少し逃がしちゃったから、さっきまで、シスコンをネチネチ虐めていただけだよ。」「そうだったんですね。その程度なら良かったです」「おい蛆虫リン。何が良かったんだ?やっぱり、お前は俺の可愛いルナが欲しいんだろう?米搗き飛蝗リン=フリークス答えろ!」「えぇそうですね。アゾレムのバカ息子ウォルシャタが嫁にする位なら僕が貰っていきますよ。」「!!!」
沈黙が流れた「話はそれで終わりでしょうか?僕の話を初めて良いでしょうか?」「あぁ」不機嫌そうにハーレイが答えた。ローザスは笑っている。「ローザス様。ハーレイ様。先般話にありました。布の紋章を使おうかと思っています。ですが、継承権などはいりません。僕が開放したマガラ神殿の所有とイスラ大森林・スネーク山の領土を認めてほしいのです。」「紋章の件は了解したよ。多分、君ならそういうと思っていて、この場を用意したんだからね。領地の件なんだけど、僕の一存では決められないけど、イスラ大森林とスネーク山でいいの?両方共形的には王家の直轄領だから問題にはならないとおもうけど、それに、マガラ神殿って何?そんなものあるの?」「はい。順を追って説明します。」
前回ここでの話の後で、マヤの最後の地を尋ねたら、マヤが倒れていた事。そして、それがマガラ神殿と言うマガラ渓谷の最下層部に広がる神殿だった事。元々、僕をマヤが矢で傷つけられた状態で助かったのは、偶然が重なった結果だと言う事。弓で射られて、谷底に落ち着時に途中の岩に引っかかった状態になったこと。その状態で動いた先に不思議な空間がり、空間の先に神殿と言うには大きすぎる建造物があった。その先に、マガラ神殿の心臓部と言うべき施設があり、そこで名前の登録を行う事で神殿を支配下に置くことが出来たのだと言うシナリオを語った。
「ローザスどうおもう?」「どうおもうと言われても、リン君が嘘を僕達に言うメリットはないからね。多少の時系列の違いはあるかもしれないけどね。」「そうか、改めて、リン=フリークス。貴殿にお願いがある。」「はい。何でしょうか?」「貴殿の願いは可能な限り、ローザスが聞き届けよう。特に、領地の事は私では返答できない。いいよな。ローザス。」「あぁ多分、問題になるのはイスラ大森林だろけど、今なら潰せるだろう」「そういう事だ。次に、そろそろ君達の事を教えてほしい。」「それは....」「いや、今でなくていい。」「はぁ」「次に、マガラ神殿に我らも行く事は出来るか?」「出来ます。招待いたします。」
「リン。どうやって一緒に行くの?転移門トランスポート使うの?」「うん。ハーレイとローザスには概ねすべての事を話すつもりだよ」「そう、リンが決めたのなら、私はそれに従う」「私も問題ないよ。今から行く?」
「どういたしましょか?すぐに出立いたしますか?」「今からかい?」「はい。」「もう辺りは暗くなってしまうし、マガラ海峡の深層部だと時間も準備も必要にならないか?」「いえ。ギルド本部までご足労頂ければ大丈夫です。」「「??」」「来て頂ければ説明致します。」「どうする。ローザス。私は、ルナが居るから行くことになっても問題はないが.....。」「ファン。ファン。ちょっと付き合え。面白い物が見れるぞ。これで問題ない。さぁ一緒に行こう。」
軽い人たちだと思いながら信頼されているようで嬉しくおもう。ミヤナック家の馬車で、ギルド本部に向う。説明がうまい人間が居てくれるといいな。イリメリかフェム辺りが良いんだけどな。ルナは今日はダメだろうな。そんな事を考えていたら、馬車がギルド本部に着いた。
まず、ローザスに聞かれたのが、ギルド本部の隣に建つ宿屋の事だ。まぁまぁとギルド本部の中に連れて入った。「ルナ!」「げっハー兄様。何しにここに来たの?ローザスさんやファンさんまで....。」「僕達はリン君に招かれてきたんだよ。話をしに来たんだよ。」「本当?リン?」「うん。いろいろ話しておこうと思ってね。この先信頼出来る味方は多いほうがいいからね。」「そう。解った。ハー兄様に何か言われたら私に言ってね。私はリンの味方をするからね。」「ルナぁぁ」なんか情けない声が聞こえてきた。どうも、喧嘩中の様だ。「そうだ、ルナ。イリメリかフェムは居る?」「二人共居るわよ。呼んでくる?」「うん。お願いする。会議部屋に居るからすぐに呼んできて」「了解。」
「さて、二人ともこっちで少し待って下さい。僕が説明するよりも、うまく説明出来る人間に説明させますからね」「ねぇリン君。今通ってきた部屋の壁になんか板に書かれていたよね?あれ何?」「あぁギルドの依頼票ですよ。」「依頼票?」「えぇ。素材を探している職人さんや商人が、依頼と言う形で持ち込んでもらって、その素材を持っていたり、採取行ける知識と力を持った人が、その依頼をうけて実行する。その後、素材をギルドで受け取って、依頼時に預かった依頼料を渡す。僕らは、紹介料を少しだけもらうと言った感じです。護衛とかも出てきますよ。」「へぇ前に聞いた時にも思ったけど、動き出すと面白いね。例えば、僕でも依頼は出せるの?」「問題ないですよ。でも、初めての取引だったりするので、依頼料は全額最初にいただく事になっています。今この辺りの新しい仕組みづくりをしている所なんですよ」「ほぉ例えばだけど、本当に例えばだけどね。ニグラからメルナまでの街道に出てくる魔物の退治とかをお願いしたらどうなるの?」「そうですね。ミル。奥にナッセ居るよね?呼んできてもらえる。」「了解。」「僕は、金額的な事はわからないのですが、護衛任務なら受けられます。」「違う。違う。護衛じゃなくて、時々ゴブリンやコボルト。時々オーガやトロールと言った魔物が出て商隊に被害が出るんだよ。定期的に、守備兵なんかを出して退治しているんだけどね。手が届かなかったり、いろいろあるんだよ」「その時には、討伐依頼としてお受けいたしますよ。ローザス様。ハーコムレイ様。ご無沙汰しております。」「ナッセ。ナッセって貴方の事だったのですか?」「お二人は、ナッセの事を知っていたのですか?」「あぁ散々しごかれた。」「昔の話しです」「そうだな。ナッセ。ここは良いところか?」「はい。今まで以上に過ごしやすく心休まる場所です。」「そうか、それならいい。」「はい。」「それで、討伐依頼とはどういった事なんだ?」「はい。まだ今仕組みを作っているのですが、フェム様が言うには、そのうち領主や先を見る目がある貴族から、討伐依頼が来て、街道の魔物の退治依頼が来るようになる。その時に、慌てるよりは、仕組みを作っておこうと言う事になりましてね。簡単に言えば、定額依頼と言う事です。信頼出来る貴族や王族の方に、定額で”20日で金貨1枚”分の魔物を倒せと言われた時に、ゴブリンが一匹辺り銅貨5枚とか定額設定をして倒してきた者に報酬を支払う。報酬を安めにしているのは、素材は狩った者達の物にしてこちらで買い取ることも出来ると言う事にしているからです。そして、討伐部位としてゴブリンなら右耳とかわかりやすい物を採取してくる事で討伐と認める。そういった感じです」「ほぉそれなら貴族も乗りやすいな。今まで守備隊の維持や武器防具を揃える事を考えても、それで揃えていざ行ってみたら一匹も居なかったなんてことも多いからな。」「えぇそうなんですけど、これには落とし穴もありましてね。遠方で大量にゴブリンを倒してもそれが判断しにくい事にあるんですよ。」「そのあたりはしょうがないと割り切るしかないだろう?」「えぇそれで今その辺りを解決できないかと試行錯誤をしている所ですよ。ローザス様もハーコムレイ様もまだリン様達の話を聞いていない事だと思いますが、驚かれますよ。この老いぼれが年甲斐もなく興奮してしまいましたからな。おぉ丁度来られましたな。私はこのあたりで席を譲ります。リン様よろしいですか?」「あぁ悪かったな。また何かあれば助けてくれ。」「もちろんです。」
ナッセが一通りの説明を終えて席を立った時に、ドアからイリメリとフェムが入ってきた。ローザスとハーレイの前に座って改めて自己紹介をした。
そこから、二人は僕に向き直して、「リン。防御結界を張って、それから、眷属を呼び出す準備をしておいて」「了解。」【結界魔法-遮音】イリメリが仕切るようだ。「お二人には不快かもしれませんが、結界を張らせていただきました。部屋の中の音が外に洩れないようにいたしました」「!!媒介なしで、それも詠唱もしていないし、魔道具もなかったぞ。」「はい。リンの魔法に寄るものです。」「は?リン君の魔法?リン君は、紫魔法が使えるだけじゃないのか?」「はい。やっぱり、イリメリの予想通り、ローザス様も”見える”人なのですね。」「・・・・。僕は、鑑定持ちじゃないよ。」「はい。それも解っています。だから、遮音の結界を張らしてもらいました」「・・・。君達はどこまで見えるの?」「そうですね。私には見えません。仲間では、ミルが一番見える方だと思います。」「そうか」「はい。でも、今はそれはそれほど重要な事ではないと思います。」
イリメリは、ローザスとハーレイに一通りの事を説明した。以前にマヤに説明していた。転生者ではなく、生まれ変わりだと言う説明をしている。以前よりも洗練されていて、地球と日本と言う事を言っていないだけで、嘘ではない。そして、立花達との関係・僕とマヤと他のメンバーとの関係。マガラ神殿発見の経緯とイスラ大森林とスネーク山を領地に望む理由として、魔物の里の存在。最後に、僕の古代魔法の話と隠蔽の事を簡単に話をした。ローザスとハーレイは段々渋い表情になり最後まで聞いていた。
「ローザス。どうおもう?」「ん?リン君達がここまで信頼してくれているんだよ。僕達も一歩踏み出す時じゃないかな?」「お前がそうおもうのならそれでいい。」「イリメリちゃん。説明ありがとう。僕は君達が言った事を信用するよ。そして、僕の事も少しだけ話すけどいい?」「??」「僕の名前は、『アルフレッド=ローザス・フォン・トリーア』この国の第一王子で継承権第一位の人間になる。まぁそんな事はどうでもいいね。僕のスキルに心読ココロスキャンと言うスキルがあってね。話した言葉が、嘘なのか本当なのか色で解るようになるんだよ。」「!!」「リン君辺りなら大体解っていたんじゃないかな?」頷いて答えた「うん。君も見える人なんだね。他にもミルちゃんもだろ?」
それから、答え合わせのように話が進んだ。ハーレイが、ルナの雰囲気が変わったから何か有ったんだと思って調べ始めた所、僕達の存在が引っかかった。その後も監視をしていたが、敵対する様子も無く、代表者らしき人物との接触もできたが、高いステータスやスキル率から何かあるはずと予想をしていたと言う。決定的だったのは、ルナの真命が書き換わっていた事にあるようだ。パシリカ後すぐに確認した人間の話と食い違っていた。”読めない表記”だった物が一般的な真命になっていた事。そして、ミルの異常なステータスが決め手になっていた。
一通りの説明をしたが、まだ話していない事がある。僕のステータスだ、マヤの事は大筋隠す事になっている。教会だけでなく、王家にバレてもろくな事にならないのは明白だ。
「リン。ワクとボレアスを召喚出来る?」【召喚-ワク】【召喚-ボレアス】「「ご主人様。御前に」」「二人とも悪いね。用事があるのならすぐに返すよ。」「いえ。イリメリ様より、今日呼び出すからと言われていましたので、待機していました。」「そうか、ありがとう。ワク。ボレアス。姿を解除して、挨拶をして」「はい。」ヒト型から魔物の姿に戻って、ボレアスとワクが挨拶をした。「これが、リン君の本来の力?」「本来の力の一部です。僕のステータスを確認して見てください。」僕は、隠蔽の一部を開放した。差し出した手をハーレイとローザスが触る。「「!!!!」」「見ていただいてわかると思います。古代魔法が数種類使えるようになっています。実際には、召喚魔法もその一部です。」「君は一体何をしたんだ?」「何もしていません。魔物を眷属化してその力の一部を僕が使えるようになっただけです。それらを除くと....」もう一度偽装したスキルを見せる。「こんな感じになります。」「!!」「リン君。このスキルは他人にも影響するなんて事はないんだよね?」「いえ。隠蔽に関しては、他人のスキルの隠蔽にも使えます。例えば、マヤには鑑定のスキルがありますが、僕の力で隠蔽しています。これは、相手が鑑定持ちでも確認する事が出来ません。」「・・・・。ルナのスキルも調整しているのか?」「はい。本人の希望を優先して隠蔽・改竄しています。まずは、仮想敵とはいえ、アゾレムの関係者に見つかりたくはなかったですからね。」「そうか、解った。僕は、君を君達を全面的に支援するよ。そこのお調子者がダメだって言ってもね」「ハーレイ。それはないんじゃないんか?リン君。君の力は解った。眷属の力を取り込む事もなんとなく理解できた。」「はい」「眷属は今は何人って言ってい言うのかな?何名がいいのかな?」「どちらでも....」「主要眷属は7名になります。それ以外に、89名が僕の眷属です」「!!!」「全員、そこのボレアスさんの様なステータスなんですか?」「どうなの?ボレアス?」「はっ種族の特性もありますので、一概には言えませんが、戦闘系の種族で上位種に進化している者は、私以上のステータスになっています。また、生産系のステータスに目覚めた者も多く居ます。そちらは私のステータスよりはスキルの補正が出ています。」「だと言うことです。」「全員。ヒト型にはなれるの?」「いえ、なれる者となれない者が出てきています。もともと、ヒト型に近い種族は、比較的ヒト型になれる率が高いのですが、獣系の魔獣ですと、ヒト型になれない場合が多く出ています。その代わり、魔獣系の上位種は、身体のサイズが変えられるために、小さくなれば人里に居る獣に溶け込む事も出来ます。」「へぇそうなんだ。今度魔物の里に行った時に、紹介してね。」「は、主ならば呼び出す事も出来ると思います。」「あぁそうか、でも、今度話を聞きに行くよ。」「お願いします。皆喜ぶと思います。」「うん。」「ワク。ワク以外で陰移動が出来る眷属は居る?」「わかんないです。でも、何名かは陰移動スキルが使えるって言っていたよ。あっと、長から伝言が有ったんだった。魔物の里の進化の話を聞きつけて、知恵ある魔物が集まり始めているがどうしたら良いのかって主とマヤ様に聞いておいて欲しいと言っていたよ。」「了解。今度、マヤと長の所に行くよ」
「リン君。全く話しについていけないんだけど....」「あぁすみません。説明の中に有った、魔物の里には、僕の眷属と同じように、言葉を理解して意識ある者が沢山居るんですよ。そこのまとめをしているのが、ダークエルフのドラウと言う人物でして、その人の元に魔物が集まり始めていると言う事なんです。」「??魔物は全部眷属になれるんじゃないのか?」「はい。そうですね。僕が眷属に出来るのは”動物”に限られるのです。」「??」「そうですよね。余計にわからないですよね。今度、魔物の里に行く時に一緒に行きますか?そのほうが話が早いように思えるのですが.....。」「ハーレイ。僕は、こんな面白そうな事にさそっておいて、自分ひとりだけ行くなんて事が許されると思っていないよね?」「ローザス。お前の立場解っているのか?」「それでもだ!」「はい。はい。」「リン君。ローザスから先に言われてしまったが、ここまで来たらローザスが納得するまで付き合います。」「はい。解りました。」
「さて、長くなってしまいましたが、今日の本題です。今から、マガラ神殿に行こうと思います。」「あぁお願いする。」
ヒト型になったワクとボレアスを先頭に、”関係者休憩所”に入った。部屋の奥には、不自然にドアが設置してある。ミルが「転移門トランスポートをこっちに移したんだね。」とぼそっと言ったのはスルーした。
ボレアスが転移門トランスポートを起動させて、ワクを先頭に入っていく。ワク・ミル・イリメリ・フェムと続いて、ハーレイとローザスとファンが続いて入った。ボレアスが入ってから僕とマヤが最後に続いた。
転送後は、施設の紹介をイリメリとフェムにお願いした。一通り、施設を見学してきて、ローザスが少し興奮気味に「リン君。ここを一般に開放するのか?」「はいそのつもりです。」「ローザス落ち着け。お前の言いたいことは解る。だから、少し落ち着け。」「はぁすまない。リン君。でも、君があまりにもここの価値を解っていないのでね...。」「価値?ですか?」「あぁそうだよ。」「あぁ最初に言っておきますが、軍事利用はするつもりはないですからね。やるとしても、転移門トランスポートを設置して流通時間を短くするとか、商隊が損傷なしに物資のやり取りが出来るとかその程度ですよ。」「お!!軍事利用に気がついていたのか?」「そのくらいはわかりますよ。最初に考えたのが、アゾレム領内の領主の館に転移門トランスポートを作成して一気に兵力となる眷属をなだれ込ませて、一気に殺す事ですからね」「なぜそれをしない?君がそれをやるだけの事を、彼らは君にしたんだぞ」「それじゃ奴等は恐怖しないまま楽に死ねるんですよ。そんな事出来ないですよ。」「・・・・(怖)」「解った、それじゃ君の真意を聞かせてくれ。それさえ納得できたら、君を貴族に推挙して、ここ一帯を領地にする事を認めるように働きかけるよ。」「ありがとうございます。それほど難しい事ではありません。僕の予測も含まれるのですが.....」
遠くない将来。アゾレムの息子であるウォルシャタは仲間9名を使って、アゾレム領を乗っ取ること。その上で、王を宣言するか、もしかしたら、ニグラに戦争をふっかけるかもしれない。その時の為に、アゾレム領から一番近くて一番無価値に思える場所に領地を作って、戦争をふっかけるくらいに冗長したウォルシャタを殲滅する。後は、物流の革命を興す事を説明した。転移門トランスポートを設置する場所は相談する事にはなるが、設置できる数を絞るなどして、アゾレムが属する派閥の領内には設置しないなどの事を行えれば、それだけでかなりの経済的なダメージになるかもしれない。また、転移門トランスポートを設置した街や村にはギルド支社を作成して魔物や素材で困っていた場合に、冒険者を派遣して魔物討伐や素材採取の仕事をしてもらえれば、安全になるし防衛費を多少でも減らせるかもしれない。あと、大きいのは物流もだけど、情報の移動が早くなる。今でも、ニグラから一番近い場所にあるアゾレム領までもマガラ渓谷があるからと言っても最短でも7日かかる。それが、この神殿を経由する事で1日あれば情報を届ける事が出来る。急げばもっと短くなる。これは、軍事利用しないといいながらかなりのアドバンテージになる。
「!!」「ウォルシャタがそんな事をするかは解らないが、彼の事はリン君達の方が解っているだろう。それ以外は、まさにそうだな。でも、そうなると、宰相派の人間も転移門トランスポートを使う恩恵を受ける事にならないか?」「はい。そこで....ワク。地下4階に、タシアナかカルーネが居るとおもうんだけど呼んできてもらえる?その時に、試作品を持ってきてって伝えて」「ご主人様。解りました。」
二人が上がってくるまでの間、転移門トランスポートの質問を受けた。設置場所の条件や数が主な事だったが、実際の所は解っていないと答えた。ここに設置できるだけ設置出来る事は分かっているけど、数の上限があるとは聞いていない。それらを話していたら、タシアナが試作品を持って上がってきた。
「リン。転移門トランスポート事の認証に成功したよ。まだ権限の上書きが出来ないからもう少しって所だけどね。」「そうか、権限はランク事と個人認証の2つがほしいけど可能か?」「うん。ドラウに古代魔法の事を聞きながら、資料を調べていたら元々そういう使い方をしていたみたいだから、出来るよ!」「ほぉそりゃぁすごいそれができれば実用化に一歩近づくな」「うん!」「ほら、リン。また横道にそれていく。」「あぁゴメン。」
「ハーレイ。ローザス。さっき言っていた、宰相派の人間に転移門トランスポートを使わせない方法の答えですよ」「??」「リン君。これってパシリカ球?違うよね?あれは教会が全部管理しているはずだから....。」「えぇ似て非なる物です。あれは、この球体の劣化版になります。」「!!」「え”」「パシリカについての話は今は置いておきます。話がややこしくなるので....」「・・・あぁ」「・・・」「この球体は、触れた人物のステータスを書き出す事が出来ます。そして、その板を持った物しか、転移門トランスポートを使えなくする機能ももうすぐ出来ると思います。タシアナ。この試作機は球体だけど球体じゃ無くても良いんだよね?」「うん。魔法陣の安定とかがあったから球体にしただけ、四角箱でも問題ないよ。もしかしたら、量産するのならそのほうが楽かも....。」「そうか、少し考えてみてね。なんでも、眷属で生産系のスキルに目覚めた者も居るみたいだからそのうち連れて行くよ。」「うん。了解。」
「って事ですが....どうしました?ハーレイもローザスも呆れた顔して、そういう時の顔って最近良く見るんですけど、僕なんかおかしかったですか?」「はぁローザス。俺は勘違いしていたよ。」「あぁそうだな。」「君は自分がしようとしている事が分かっているのか?」「そこそこには....」「いや。全然解っていないだろうな。」「うんうん」何故か、マヤとフェムとイリメリが同調しているのが気になる。「君が今言った事は実現できるだろう。それだけの財力もあるだろうし、正直この施設を利用した物資の輸送の時に、通行料を積み荷の5%を取っても使う商隊は後を絶たないだろう。護衛料や搬送時の物資の損失を考えれば、20%でも高くないとおもうだろう。」「はぁ」「まだわからないのか?」「えぇそれは当然の事だと思っていましたし、だからこそ、それで仕事がなくなってしまう護衛の人たちに新たに稼げる場所として魔物退治や素材収集の依頼を出すと考えていたのです」「あぁそうだな。そして、定期的に教会にポーションの素材をおろしていけば、教会とも良好な関係を築けるし、宿屋連合も無視出来る状態ではなくなるだろう。職人も提供される素材が多くなれば喜ぶだろう。この環に入れた人間は誰しもが損をしない形になる。」「えぇそのつもりで考えています。」「うん。その後で発生する事は?」「後でと言われても、入れないのは宰相派閥というか、アゾレム家に連なる奴等です。あいつらが干やがるのを待つだけです」「あぁそうだな。確実に数年で干やがるだろうな。物資は輸送費がかかる分高くなるし、もしかしたらこの神殿から出される技術革新に乗れなくなるかもしれない。そういう意味では衰退するだろう。」「はい。そう考えています」「リン君。まだ解らない?」「はぁ僕の目的はそこですからね。それで、ウォルシャタの奴等に無茶な状態で開戦させる。そこを叩き潰す。」「・・・。はぁそうだったな。」「・・・??」「ハーレイダメだよ。はっきり言わないと解らないようだよ」「??」「リン君。君は、経済と言う武器を使って、この国だけじゃなくて、この大陸を制覇しようとしているのか?」「はぁ?そんな面倒な事をするわけ無いですよ。僕は、僕と僕を慕ってくれてる人たちが安全に安らかに過ごせる場所が欲しいだけです。制覇なんて面倒な事はやりたい人がやればいい。」「やっぱりね。気がついていなかっただけじゃなくて、考えても居なかったんだね。ほらね。ハーレイ。テルメン家と言う家系はどこまで権威や権力を必要としない家系なんだよ。」「・・・・?」「ニノサがニグラから出ていくときにね。幼かった僕とハーレイが聞いたんだよ。ニグラに残って権力を握らないの?それだけの力があるのにって聞いた事が有ったんだよ」「・・・へ!?」「そうしたら、ニノサは笑いながら、権力なんて欲しい奴等がつかめばいい。”俺は、自分の家族が笑える場所が欲しいだけで、それはニグラでは到底得られない。だから出て行くだけだ”ってね。」「パパらしいね。リン。」「あぁそうだな。あのバカらしいな」
「ローザス。僕は、満足できる回答を聞いた。お前はどうする?」「ハーレイ。ずるいな。僕は、前から言っているよ。リン君を僕達の陣営に引き入れようってね。そのためには、君の妹を嫁に出すと命令する事も厭わないとね」「あぁそうだったな。でも、それは許さない。ルナが自分から嫁に行きたいと言ってきたのなら、小指の先ほど考慮する。それ以外は認めん。」
話がそれそうだったが、一応、概ねの目標は達成出来た。ローザスとハーレイという権力の中枢に近い所にいて、それでいて話がわかりそうな人物をこちらの陣営に引き入れる事が出来た。向こうもそう思っている間は仲良くできそうだ。
次にこれからの手順を話し合った。次は王城で印が僕に馴染むのかを検証することになるらしい、その上で貴族名を名乗って、今までの経緯を話せる範囲で公にして、ニノサとサビニが殺されているだろう事も併せて公表して、僕がマガラ渓谷とメルナの宿場町とスネーク山。イスラ大森林を領地にする事を発表する事になった。メルナを含めたのは、マガラ神殿を最初から持っているのは問題だと言う事で、最初は、メルナの宿場町に屋敷を構えてそこで悠々自適の生活を送る感じにして、その後でマガラ渓谷に落とされた経験から何かあると考えて、探索チームを編成して、マガラ渓谷を探索して、マガラ神殿を発見すると言うシナリオにする。アロイを含めてしまうと、アゾレムが何か言ってくるだろうから、含めないで、何時まで経っても開発が進まないイスラ大森林をニノサ・サビニ殺害の嫌疑を引っ込める代わりにもらう受ける事にすると言ったシナリオが、イスラ大森林は、王国の1/20程度の広さを持ち、スネーク山を含めると、1/15にもなるが、魔物が跋扈している上に開発の旨味も少ないために、殆どが手付かずになっている。各派閥の調整が必要にはなるが、それほど大きな問題にはならないだろうと言う事だ。そもそも、開発が進んでいないから王家が取り上げても文句は出ないだろうと言う事だ。
内部的な事もあるので、3日後位になるだろうと言う事だ。領土の問題はもう少し掛かるかもしれないが、最悪は王家の強権発動でなんとかなるだろうと笑っていた。明日にも予定を確定させて連絡すると言う事だ。

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