【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

幕間 領主の誤算

アゾレム領は、辺境ではない。辺境だと思われているというのが正しい。儂が治めるようになってからも、ニグラ街や宗教都市ドムフライホーフに居る連中の認識は変わらない。そもそも、儂の領地が一番ニグラ街に近いのに、辺境扱いされているのは、マガラ渓谷とイスラ大森林とスネーク山と海側にできている切り立った山々とイスラ大森林につながる森が原因で、商隊の行き来が難しい事にある。海に船を出して商隊を出しても日数的には同じになってします。儂の領地を抜けて行くと、国境の街シャルムがあるのみになっている。国境の街シャルムは、トリーア王家とマカ王家の共同で管理する事になっている。国境の街シャルムは、街の中央に壁が作られていて、それぞれの王家の者が代々管理を行っている。壁と壁の間は10メル程度離されている。
儂の領地アゾレム領はトリーア王家としては絶対に必要な領地であるといえる。元々は、マガラ渓谷で分割していた領地をマカ王家が内乱状態になった時に、奪い取ったのが始まりだと言われている。そんな扱いにくい領地をアゾレム領として安定させたのが、儂の曾曾曾祖父さんだ。それから、代々ここをアゾレム領として統治している。儂の代になっても、伯爵は無理でも、子爵にはなれると思っている。領地の広さでは男爵の中でも広い方だ。王都におさめている税も男爵の中では多い方だ。ただ、土地がこれ以上増やす事が出来ない事から、男爵家を増やしたりする事が出来なく、子爵にはなれないと言った事情がある。息子に領地を与え准男爵として、幾つかの分家にも同じように働きかえる。その後に今度は儂が子爵になって、準男爵を男爵に押し上げる方法が取れない。他の能無しどもはこの手法をうまく使って子爵になっている。
儂の領地は、ニグラにも近い上に、マカ王家との交易の要になっている。その為に、通行税だけでも年間で大きな収入になっている。イスラ大森林からの魔物の素材や採取物も微々たるものだが収入としてある。ただ、定期的に討伐隊が出せない事から不定期な収入になってしまっている。もう一つの収入源がアロイの宿場町にだ。マガラ渓谷を越えるために、アロイでは一泊する事が多い。その為に、アロイで落とされる金額も懐を麗している。先代は馬鹿なのか正直に申告をしていたが、儂は他の貴族がやっているように、本来の税に少し載せる形で収めさせるようにしている。それだけでもかなりの金額を作る事が出来る。ニグラより西に領地がある貴族や商人は必ずマガラ渓谷を通らなければならない。忌々しいイスラ大森林とスネーク山がアゾレム領の収入を支えていると言う事になる。
十数年前に、イスラ大森林を攻略すべく守備隊400人を送り込んだが戻ってきたのが240名。半数近くを失う大惨敗に終わってしまった。それから、イスラ大森林の表層での討伐だけにし、中層部や深層部には近づかないようにしている。守備隊の人数が減った事で、領内が荒れてしまうからだ。

息子のウォルのパシリカに併せて、王都に呼び出されている。宰相派の他の無能どもからの金の無心なんだろうが、宰相閣下にお願いされては断れない。
暇な馬車の中で、貴族たちへの罵詈雑言を言ってみてもしょうがない。それにしても、ニノサとサビニと言う探検家はどこに消えた。ウォルにつけていた護衛からは、リンとマヤとか言う餓鬼はマガラ渓谷に落としたから心配ないと言う報告を受けたが.....。あの書類は、儂が宰相派から切り捨てられそうになった時の切り札として作成していた物で、今第一王子派のミヤナックなどの手に渡ったら問題になってしまう。馬車の揺れでさえもイライラしてくる。王都の職人が作ったと言うが、大金貨1枚も出したのにこれでは普通の馬車より豪華になっているだけではないか。どうせ、職人を紹介した奴等の手元に金が残されいったんだろう。
馬車は、ニグラに着いた様だ。そのまま宗教都市ドムフライホーフに向うように指示を出した。ウォルは、なんのジョブを得たのかは気になる。騎士や魔法騎士などなら最高だな。そのまま、騎士に取り立てる事も出来る。一応、宗教都市ドムフライホーフの館には、スキルをつける事が出来るという魔道具も用意させている。
館に入ると、行政官をしているティロンが駆け寄ってきた「領主様。ウォルシャタ様のジョブが”ウォリア”になりました。伝説のジョブで、教会の物が言うには、今まで1人しか顕現していなくて、先代のウォリアは宮廷騎士団のトップになって、王国の軍のトップになられた方のようです。その方が持っていない、限界突破リミットブレイクなるスキルも顕現しているそうです」「そうか、でかした!そえでウォルは?」「私の息子とオットーの息子を伴って、仲間を探しに行くとおっしゃって、街に出ています。」「そうか、あいつも男爵家の後継だと言う自覚が出てきたか....。それで、おまえの息子はどうだったんだ?」「はい。息子は、鑑定のスキルを持つ。長剣使いのジョブに目覚めました。」「おぉそれはすごいな。これならば、ウォルに仕えさせれば、商人共に騙される事はないな。」「はっ。オットーの所も、鑑定持ちの長槍使いのようです。ユニークスキルで、麻痺攻撃と麻痺半減に顕現したようです。」「ほぉそれなら、領地の守備隊を、ウォルを隊長にして、二人で支える事もできそうだな。」「はい。」「そうか、ウォルが帰ってきたら、儂の所もこさせろ。話がしたい。」「解りました」
伝説のジョブか、これで中央の煩い奴等を黙らす事ができたら重畳。
家の者を下がらせて、部屋でくつろいでいると、オットーが面会を申し込んできた。「なんだ。入れ」「はっ。おくつろぎの所申し訳ありません。」「いい。何があった。」「はっ宰相閣下が男爵様をお呼びです。なんでも見せたい物があるそうで、至急来られたしとおっしゃっています。」「解った、すぐに行くとお伝えしろ。宰相閣下のお屋敷か?」「いえ、ゴーチエ様の離れだと言う事です。」「ゴーチエ?あの武器商人のか?」「はい。それから、来るときには、裏から入るように言われています。」「解った。手土産も一緒に持っていく忘れないようにしておけ。」
暫く馬車は道なりに進んで、ゴーチエの商店近くまで来てから裏に廻った。そこには、宰相の馬車も既に来ている。同じように数台の馬車が置かれていた。馬車を降り、ゴーチエの家人に到着を知らせた。暫く待った後に、部屋に通された。そこには、宰相とゴーチエ。宰相派の子爵や男爵が数名揃っている。パシリカに併せて来ていたのだろう。
まずは、宰相が「アゾレム。急な呼び出しで悪かったな。至急、確認したい事が出来たのでな」「はっ。なんでございましょう。不詳アゾレム。宰相閣下のお役に立てる事を喜びと感じております。」「そうか、ゴーチエ。此奴に見せてやれ。」「はっ」
そういって、ゴーチエが取り出した物が儂の前まで滑ってきた。一冊の書類に見えるが、見覚えがない。
「開けて見るがいい。その後、おまえの意見を聞きたい。」「はっ」
書類を受け取り中身を確認する。”まずい”これは、ニノサとか言う奴に渡った書類の一部だ。宰相や貴族たち、教会関係者に流した物品や金額を書いた物だ。それ以外にも不正な奴隷売買の履歴も入っている。これだけでは、宰相や貴族たちへの傷にはならないが、これが王家の関係者に渡ったら少しまずいことになる。宰相や貴族に反対していた地方の領主の関係者を攫ってきて、犯罪奴隷や戦争奴隷にしてマカに売りさばいた事が載せられている。
「どうした、アゾレム。書類に見覚えがあるのか?」「・・・・いえ。こんな物知りません。」「そうか、お前の所から流れたのではないのだな。」「・・・・はい。もちろんでございます閣下。」「そうか、もう一度聞く。お前ではないのだな。」「もちろんです。閣下。」「それを聞いて安心した。この程度の事では、儂は痛くも痒くもないが、痛くない腹を探られるのは、好まないからな。この件は、お前の責任で始末しろ。」「・・・。解りました。」
「そうだ、お前の息子のウォルシャタだったかな?」「っはい。息子が何か?」「いやいや。なんでも伝説のジョブに目覚めたとかで、宮廷を騒がしていたからな。」「・・・。」「ゴーチエの所の息子も、ウォルシャタの下で働きたいと言い出したらしくてな。許可してやってくれんか?」「もちろんでございます。閣下。ゴーチエ殿よろしくお願いいたします。」「あぁ私の息子は、テイマーのジョブに目覚めて、早速、ウルフを支配下においている。ウォルシャタ様ほどのジョブではありませんが、十分な力になると思います。こちらこそよろしくお願いする。」
その後は何を話していたのか覚えていない。早く屋敷に帰って、テルメン夫妻を捕えさせて、書類を回収しなければならない。どこに流れたのかわからない以上、下手に動きが取れない。
手荷物の効果が有ったのだろう。その日は解散となった。暫くしたら、王城で御前会議が行われるだろうと言う事だ。その時まで、この地に留まるように厳命された。御前会議で何か出てきたら、儂に詰め腹を切らせるつもりなんだろう。そうならないためにも、なんとかしなければならない。この忙しい時に、ウォルはどこに居るんだ。早く帰ってこい。
ウォルが帰ってきたのは次の日になっていた。「ウォル。どこで何をしていた。」「領民の為に、働くに足りる人材を集めておりました。何か問題でも?」「いや。それはいい。お前。素晴らしいジョブを得たそうだな。」「はい。英雄並のジョブだと教えられました。」「そうか、それでだな」
テルメン夫妻を探し出して捕らえよと命令を出した。捉えた後に、儂にだけ知らせるように伝えた。後、小僧達は何か知っている可能性もかるから、目障りだと伝えた。儂が動ければいいが、派手に動いては、宰相派だけではなく他の貴族に足元をすくわれかねない。
「そうだ、ウォル。後で、ティロンの所に行け。儂が魔道具を渡せと言っていたと言えば解る。」「はい。その魔道具は?」「あぁ物理無効,魔法半減,状態異常半減のスキルが限定的に付く魔道具だ。お前のジョブであるウォリアが持っていても不思議ではない。実際に使うには顕現が必要になるが、ウォリアならそのうち顕現するだろう。付けておけ。」「はい。解りました」「用事はそれだけださがってよい。」「はい。」「どうした?」「テルメン夫妻を探すのに、私が探して来た人材を使っていいでしょうか?後、テルメン夫妻の家には行くことの許可と守備隊を動かす許可を下さい。」「領地には、ティロンとオットーが居るが、奴等に話を通すように手紙を書く。後で取りに来なさい。」「はい。ありがとうございます。」
「あぁそうだ。ウォル。」「はい。」「近々お前のお披露目をこの屋敷でやろうとおもう。そのつもりで居ろ。そのお披露目が終わり次第。お前は領地に戻れ。」「解りました。」
パシリカが終わったばかりにしては、ステータスが高すぎる。これもウォリアの補正が入っているのか?それに、レベルが上がっている。今日一日で何をやってきたのだ?
やつは何かをしようとしているのかもしれない。誰か丁度いい監視役が居ないか探しておく必要がありそうだな。

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