【旧】チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

幕間 その頃ギルド本部では

リン君とマヤちゃんが里に帰ると言い出してから、護衛や受付が少し騒がしい。話を聞いてみると、心配だから着いていきたいと言う事だった。
私もそれは思ったが、多分。きっと、リン君に話をしたら笑って断るだろう。受付は、フェムの仕事があるから我慢してと言い聞かせた。護衛にも同じように、ギルドの仕事を優先してと言ったが、自分達は護衛でリン君とマヤちゃんを守るのが仕事だと言って聞かない。
当日の朝。食堂にリン君とマヤちゃんが居る所で、護衛として付いて行くと言っていた。マリノがその場をとりなしたようだ。後で、マリノに話を聞いたら、本音ではついていきたかったらしいが、マヤちゃんがすごい目つきで睨んでいたので、怒らせる前にやめさせる事を選んだようだ。多分だけど、マヤちゃんはリン君と二人っきりで帰るって言うのが楽しみでしょうがないんだろう。部屋決めの時も、リン君と同部屋だけは何が何でも譲らなかった。二人別々に大部屋って最初は決めたんだけど、後からマヤちゃんが来て、"リンと同じ部屋”と書き込んでしまった。しっかり理論武装して....”兄妹なんだから同部屋。それにこれから人が増えるだろうから部屋は開けておくほうがいい”そう言われたら反論できなくて、同じ部屋になってしまった。隣の部屋もミルが主張して譲らなかった。魔法剣士の方が何か有った時に対処出来るというのが理由だった。私は、その隣を確保出来た。反対側をフェムが使って、一番階段に近い所を、サリーカが使うようになった。
受付も護衛もここでの生活を失いたくないのが本音らしい。この世界の奴隷の待遇がどの程度か解らないが、里に居た奴隷は主人の顔色を見ながら生活していた感じがしていた。確かに、それに比べたら”ここギルド本部"は良いほうなんだろう。お風呂も自由に使える。奴隷にもお風呂を開放しているし、食事も自由に好きな物を食べられるようにしている。リン君とマヤちゃんが里に帰る為にギルド本部を出立していった。私も本当なら里に帰った方が良いだろうけど、なんとなく帰る気持ちにならない。帰ったら、間違いなく結婚の話をされる。精神年齢的には17歳の女子高校生だ。こっちでは13歳の小娘だと言う認識があるが、この世界では、16歳位で結婚が当たり前。13歳で婚約までは行かなくてもお見合いをしたり近い人と結婚前提の話をされる。多分、それが普通なんだろうけど、違和感が出てしまっている。この世界に来て確信した。私は、リン君が好き。逢えた時に、振れた時に、話をして許してもらえた。恥ずかしさと怖さといろんな感情であんな事を言ってしまったのは今でも後悔している。でも、リン君は何も言わないで私に前と変わらない。ううん。それ以上で接してくれる。優しく頼もしく....。
あぁダメ感傷的になっている。里には、手紙を出して終わりにしよう。それで何か言ってきたら、リン君に相談しよう。もしかしたら、婚約者のマネくらいなら引き受けてくれるかもしれない....。顔が赤くなるのが解る。孤児が食堂に降りてきた「あれぇイリメリ姉。顔赤いよ。大丈夫?」おてんばのアクアちゃんがいつものようにモニシャを引き連れて居た。「ありがとう。アクアちゃん。大丈夫だよ」「ほんと?ムリしないでね。」おしゃまな子だなと思いながら、頭を撫でて上げた。「アクアちゃんもモニシャもご飯?」「ううん。ライカとランカがお使いに行っているから、返ってくるのを待ってるの?」「??」「今日、4人でルナ姉から計算を教えてもらう事になっているの。勉強したら、お菓子もらえるから沢山頑張る!!」
これも、リン君が初めた事だ。孤児の子供たちに算数や文字を覚えさせたり、礼儀作法やメイドの仕事を教える。この子達は、奴隷ではない。パシリカを受けた後に独立していく事になる。その時に、スキルに頼らない武器が一つでも有ったほうがいいだろうと言う事だった。私達女子は、アドラが言っていた事は、戦って生き残る事だと思っていた。だから、パシリカが終わったら急いでみんなと合流した。でも、リン君は違った。”有名になる”方に着目して、この異世界を変革しようとしている。時間的にギリギリだとは思っているらしいが、それでも最初のステップを、異世界のご両親のお陰でショートカット出来たと言っていた。
今日の予定はどうだったかな?とりあえず、ギルドの受付に行けばいいかな?私だけかもしれないけど、毎朝予定の確認が出来ないのは不安でしょうがない。イレギュラー的な場合はしょうがないにしても、予定表が欲しいな。
ギルドには、毎日ちょっとだけど依頼が来るようになっていた。教会関係やスラム関係が殆どだけど、職人街から素材の買い付けに来る人もほんのちょっとだけど出てきた。まだ素材の販売は大々的には初めて居ない。サリーカがもう少し安い素材が揃ってからにしないと売れないと行っていた。そこで、私達は護衛を引き連れて自分のレベルアップを兼ねて近隣で狩りをするようになった。そこで倒した魔物から素材を剥ぎ取って店頭においていたら、職人街の人が買っていってくれた。私もレベルが3に上がった。たしか、今日ミルが狩りに行くと言っていた。ベックが食肉が少なくなっているから欲しいと言っていた。
「あ、イリメリ様。おはようございます」リン君が雇った、ブルーノと言う奴隷だ。「うん。おはよう。今日は、ブルーノが受付?」「はい。地下でサリーカ様がカールとホルストと一緒に物品の整理をしています。」「あ、そうなんだ。」「リン様とマヤ様は、既に出立しております。あと、新しい食事担当の奴隷が入ってきまして、今ヒルダさんとクローネさんとルイさんがギルドの事を教えています。」「そう、ありがとう。部屋割りとか、買物とか大丈夫そう?」「はい。ホビット族の3人は屋根裏が良いという事ですので、そちらに、人族の3人は大部屋になりました。後ほど、皆様に挨拶をと言っておりました。」「解った。あとで都合が良くなったら会いにいくよ」「ありがとうございます。」
「「あっイリメリ姉」」元気に、ライカとランカが走り寄ってきた。「ライカ!ランカ!走ったりしたら危ないよ」「「大丈夫!!」」「ギルドのお仕事?」「「うん。スラム街に行ってきたの」」「偉かったね。ほら、ブルーノに報告して」「「はい。」」二人は、ブルーノに持っていた羊皮紙を渡した、先方に荷物を届けたら印を貰ってくるようにしている。今、この当たりの事をもっと簡略化できないか、タシアナが試行錯誤をしている。
「ねぇイリメリ姉。フェム姉かサリーカ姉かルナ姉かミル姉かタシアナ姉がどこに居るか知らない?」「う~ん。ミルなら裏庭だとおもうよ。他はちょっとわからないかな。」「「ありがとう。裏庭に行ってみる。」」二人が中庭を通って裏庭に抜けるようだ。ミルになんの用事なんだろう?何かお願いごとでもされていたのかな?
「イリメリ。おはよう。」フェムが『居住区』から出てきた。「あっおはよう。」「ブルーノから聞いた?」「ん?」「リン君、”また”女の子の奴隷を6人増やしたんだよ!!」「えっ食事係って全員女の子?」「そ!それも、全員14歳らしいよ。」「一個上。。。」「そして、全員美形!!」「え”」「どうする?」「どうするも今まで通り。」「そうだね。」「あの、フェム様。イリメリ様?」「あぁゴメン。ゴメン。なんだっけ?」「新しい奴隷なのですが、家具や着替えなどはどういたしましょうか?女達に行って調整しましょうか?」「あぁいいよ。ヒルダさんが案内しているんでしょ。終わったら、自分で好きな様に買物させよう。ブルーノさん達のときには、どの位の費用だったの?」「詳細はわかりませんが、銀貨5枚だったと記憶しています。それ以外に、必要な道具を買っていただきました。」「そう解った。サリーカが地下に居るとおもうから、後で話をして、銀貨35枚ほど渡して買物に行ってもらおう。今日の夕飯の買い出しとかもあるだろうから、少し多めでいいよね。」「そうだね。誰か付いて行く?初めだから、ヒルダさんについていってもらえばいいんじゃない。」「それがいいね。」
中庭から話声がしてくる。ミルとライカとランカだ。
「あっミル。どうしたの?今日は狩りに行くんじゃなかった?」「あぁ少し事情が変わった。イリメリとフェムも少し時間いいか?」「うん。大丈夫だよ。ブルーノ。後お願いしていいよね」「はい。大丈夫です。」ミルの表情が少しこわばっている。何か有ったのかもしれない。
いつもの食堂に行くと思ったら、ギルドの会議室を使った。ミルは入ってすぐに本題を切り出した。
「それって・・・。」「多分、リン君の商隊に山崎が一緒に居る事になっているんだとおもう。そして、山崎を動かしているのが、領主の息子だって事になる」扉が空いた「領主の息子は、ウォルシャタ・フォン・アゾレム。今年パシリカを受けた私達と同じ13歳。そして、パシリカ前にリン君とマヤちゃんを殺そうとした人物。そして、去年までの私の婚約者」「!!!!!!!婚約者」ルナだった「私は三女で向こうは長男で後継ぎ候補筆頭。うちの領主が、敵対貴族の切り崩しの為に、言い出した事なんだけどね。ハー兄様が激怒して話はなかった事になったんだよ。」「あぁぁぁ有り得そう。あの人ならそうするだろうな。」「シスコン気味だってこともだけど、アゾレム自体の評判も悪いからね。粗暴で暴力的。子供頃に気に入らないってだけでメイドを殺そうとしたらしいからね。」「・・・・馬鹿貴族の見本だな」「って話は別にして、ミル。どうする?」
具体的にどうしたらいいのか答えが出ない。私としては、護衛を連れてリン君の後を追いたかった。皆同じ気持ちなんだろう。でも、それが最善策でない事も解っている。話が堂々巡りになてきた。ルナが、たしか夜会が行われるからそれに潜り込めるか考えてみると言い出した。ミルもそれがいい。自分が乗り込むと言い出して、私とフェムにはギルドを守って欲しいと言ってきた。正直荒事はまだ苦手だ!段々慣れては着ているが、それでも対魔物に対してだ、同級生かもしれない人間と対峙して動けるか自信がなかった。それはフェムも同じようだ。でも、ミルは”私なら大丈夫”。ミルに全面的に任せる事にした。私達は、ギルドの仕事を作っていく事にした。
ルナとミルが、ミヤナック家に向かった。
「「・・・・・・」」残されたフェムの顔を覗き込んでしまった「ねぇ」「なに?」「やっぱりそうだよね?」「だから何が?」「あの二人もだよね?」「うん。でも、ちょっと違う感じがする」「違う?」「うん。ルナは、神崎凛じゃなくて、リン=フリークスで、ミルは違う感情の方が強い見たい。」「あぁそうだね。」「うん。」「たいへんだね。」「そうだね。」「・・・・」「でも一番の強敵は一緒に行っているんだよ。」「あっそうだ!!」「「・・・・・ハッハハハハ」」
「そうだ、フェム。」「何?」「二階の食堂に掲示板みたいな予定表みたいな物作らない?」「??」「人数も増えてきたし、誰が何をしているのかってわからなくなってきそうだし、食事係や受付もシフトを組むんでしょ?」「うん」「今日誰だったかな?とか解った方が良くない?何か頼み事をする時に、空いている人に頼みやすいからね」「あぁそうだね。それに、私達も狩りに出たりするから、書いておけば護衛のシフトにも便利かもね」「そ。」「いいね。今日の夕飯の時にでも話をして、作ろう。」「うん。」
ギルドがまだ立ち上げ初めだからと言う事もあり、時間が許す限り、夕飯は全員で食堂で取る事にしている。人数的にギリギリだから、そのうち出来なくはなるだろうけど、最初だからなるべく親睦を深めたいと思ってそうしている。そのうち、代表者で定期的に会議をするとかの方が良いのかもしれない。まだそこまでするほどの規模ではないと思っている。
今日の夕飯には、ミルは帰ってこなかった。ルナが言うのは、特訓を受けていると言う事だった。リン君からの依頼であった"領主の息子”を調べる為に潜入捜査をしているらしい。
掲示板は、2、3修正点はあったが皆も必要性を理解してくれた、作成が決まった。タシアナが、孤児達に作らせて欲しいと言ってきた。多数決で満場一致で決定した予算は銀貨10枚までで作る事も併せて決まった。子供たちには内緒だが、残ったお金は子供たちのお小遣いになる事になった。ヘルダーさんの娘さんと受付のレーゼルの妹も参加が決まった。作業場所は、『居住区』の屋根裏部屋にした。タシアナが全面的に面倒を見る事になった。こうしてちょっとづつだけど確実にギルドは作られている。早く、リン君とマヤちゃんが帰ってきて全員揃って何か初められたら楽しいだろうな。

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