草食系男子が肉食系女子に食べられるまで
第12章 後編7 草食系とお嬢様
「まさか昨日の今日で来ることになるとは……」
屋敷についた雄介は、大きな屋敷の前でそんな事をつぶやく。
「今日は旦那様が不在なので、居るのは使用人とお嬢様だけです」
「そうなんですか、社長さんは今日も仕事ですか?」
「えぇ、今はお忙しいようで、あまりこの屋敷に帰って来ないんです。あ、こちらです」
雄介と倉前さんは屋敷の中を進み、目的の部屋に向かった。そこは使用人が談話室として利用している部屋らしく、普通の部屋よりも少し大きく、ソファーとテーブルに大きめのテレビが設置されている。
「すいません、急にお誘いしてしまって、紅茶で大丈夫ですか?」
「あ、すいません」
倉前さんは雄介をソファーに座らせ、目の前のテーブルに紅茶を出し、少し離れて雄介の斜め前のソファーに座った。
「実は、雄介さんには詳しくお話するべきだと思って、お誘いしたんです」
「はぁ…それで話というのは?」
「はい、お嬢様がああなってしまった理由です」
倉前さんは、真剣な表情で話を始める。雄介も倉前さんの話には興味があり、話に耳を傾けた。 少し間があった後、倉前さんはゆっくり話し始めた。
「もう11年ほど前になります。当時お嬢様はまだ幼稚園を卒園する頃でした。いつも楽しそうに幼稚園に通い、友達と元気に遊んでいました」
懐かしさを感じるように、倉前さんは目を閉じて話を進める。雄介も織姫の昔の様子を想像しながら、話を聞くがいまいち元気に遊ぶ織姫が想像できない。それもそのはずで、雄介はまだ、本人の顔を直接見たことが無いのだ。
「今では考えられないと思いますが、好奇心旺盛で活発な子だったんですよ」
「それは確かに……考えられない……」
この話には、倉前さん自身も笑いながら雄介に話ていた。雄介はそんなに元気だったのに、一体何があったのか、今後の話が気になり始めていた。
「ですが、ある事件が起きたのです」
「事件ですか?」
「はい、いわゆる誘拐事件です」
「誘拐……」
誘拐という言葉に、雄介自身も少し昔を思い出す。 金持ちの家の子供は狙われやすいと言われるが、織姫もそんな経験があるなんて、雄介は少し驚いた。
「もちろん誘拐されたのはお嬢様で、犯人は会社に恨みを持った人たちでした。目的はお金で、当時は屋敷中大パニックでした」
「すぐに解決したんですか?」
「はい、犯人たちの計画の甘さがあって、すぐに犯人は捕まったのですが、お嬢様が……」
「何かされたんですか?」
「はい、犯人たちから暴力を受けたらしく、発見された時は体中に打撲や切り傷だらけでした。犯人グループが全員男だったこともあり、それ以来お嬢様は男性を拒絶し、この屋敷から外に出なくなってしまいました」
「……」
倉前さんの話を聞き終えた雄介は、織姫の経験と自分の経験を重ね合わせて考えていた。雄介も女性からの暴行が一つの原因で今のような体質になってしまい、今でもこの体質を悩んでいた。だからこそ、雄介には織姫の気持ちがわかった。見知らぬ人間から、言われない暴力や悪意有る言葉を言われ続ける、あの苦痛が……。
「私は、雄介さんがなぜ女性恐怖症になったかは、聞かされていません。ですが、お嬢様と同じような体質の貴方なら、なにかお嬢様の力になってくださると思い、昨日お願いをしたんです」
「そうだったんですか……」
「お願いをしているのに、お嬢様の情報が何もないのはあまりにも無責任かと思いまして」
やわらかい笑みを浮かべて、倉前さんは雄介に言葉を掛ける。
「そういえば、倉前さんはいつから織姫さんとお知り合いに?」
疑問に思っていたことを雄介は聞いた。倉前さんすごく綺麗で若く見える、それこそまだ20代前半ではないかというレベルなのだが、11年前の事件を知っているという事は、そのころには働いていたことになる。高卒だったとしてもおそらく30歳かそれ位の歳だろうと雄介は思っていた。
「私はお嬢様が5歳のころ、私がまだ中学生だったころに知り合いました。母がこの屋敷でメイドをやっていて、良くお嬢様の遊び相手になっていました」
「あ、あぁ…そうだったんですか!」
そう考えるとこの人はやはり20代後半である事が確定するのだが、見た感じは本当に若いので、雄介は言葉に詰まってしまった。
「私の事、いくつなんだろうって思いました?」
「え! いや……まぁ…正直…」
まるで雄介の心を読んだかのように、雄介に尋ねる倉前さん。倉前さんの問いに驚き、雄介はあいまいな返事をする。
「フフ、良く言われます。私は今年で26になるおばさんですよ」
「いや、そんな事ないですよ。正直20代初めなのかと思ってました」
「あら、ありがとう。うれしいわ~」
その後も軽い雑談が続いた、結局織姫の話は最初の誘拐の話だけで終わってしまい、あとは他愛もない雑談だけをして時間が流れて行った。
「あ、すいません。自分はそろそろ失礼します…」
「あら、もうこんな時間、ごめんなさいね、急に突き合せたりして」
「いえ、色々話を聞けて良かったです」
事項は現在お昼を過ぎて13時。もうそろそろお腹が減ってきた雄介は、帰宅することにした。 長い廊下を進み、大きな玄関ホールを後にして、雄介は玄関のところで、倉前さんに別れを告げる。
「それじゃあ、色々ありがとうございました」
「それはこっちのセリフです。これかもどうか、お嬢様をお願いします」
「はい、それじゃあ自分はこれで…」
「お気をつけてお帰りください。それでは…」
雄介は屋敷に背を向けて歩きだす。思いがけない出来事で、織姫の過去を知ってしまった雄介。雄介の中で、また昔を思い出してしまったのと同時に、同じような経験から男性恐怖症になった織姫を何とかしてやりたいと思い始めていた。
「聞くんじゃなかったかな……」
雄介は若干の後悔をしながら、帰りにバス停までの道をとぼとぼと歩いていた。
屋敷についた雄介は、大きな屋敷の前でそんな事をつぶやく。
「今日は旦那様が不在なので、居るのは使用人とお嬢様だけです」
「そうなんですか、社長さんは今日も仕事ですか?」
「えぇ、今はお忙しいようで、あまりこの屋敷に帰って来ないんです。あ、こちらです」
雄介と倉前さんは屋敷の中を進み、目的の部屋に向かった。そこは使用人が談話室として利用している部屋らしく、普通の部屋よりも少し大きく、ソファーとテーブルに大きめのテレビが設置されている。
「すいません、急にお誘いしてしまって、紅茶で大丈夫ですか?」
「あ、すいません」
倉前さんは雄介をソファーに座らせ、目の前のテーブルに紅茶を出し、少し離れて雄介の斜め前のソファーに座った。
「実は、雄介さんには詳しくお話するべきだと思って、お誘いしたんです」
「はぁ…それで話というのは?」
「はい、お嬢様がああなってしまった理由です」
倉前さんは、真剣な表情で話を始める。雄介も倉前さんの話には興味があり、話に耳を傾けた。 少し間があった後、倉前さんはゆっくり話し始めた。
「もう11年ほど前になります。当時お嬢様はまだ幼稚園を卒園する頃でした。いつも楽しそうに幼稚園に通い、友達と元気に遊んでいました」
懐かしさを感じるように、倉前さんは目を閉じて話を進める。雄介も織姫の昔の様子を想像しながら、話を聞くがいまいち元気に遊ぶ織姫が想像できない。それもそのはずで、雄介はまだ、本人の顔を直接見たことが無いのだ。
「今では考えられないと思いますが、好奇心旺盛で活発な子だったんですよ」
「それは確かに……考えられない……」
この話には、倉前さん自身も笑いながら雄介に話ていた。雄介はそんなに元気だったのに、一体何があったのか、今後の話が気になり始めていた。
「ですが、ある事件が起きたのです」
「事件ですか?」
「はい、いわゆる誘拐事件です」
「誘拐……」
誘拐という言葉に、雄介自身も少し昔を思い出す。 金持ちの家の子供は狙われやすいと言われるが、織姫もそんな経験があるなんて、雄介は少し驚いた。
「もちろん誘拐されたのはお嬢様で、犯人は会社に恨みを持った人たちでした。目的はお金で、当時は屋敷中大パニックでした」
「すぐに解決したんですか?」
「はい、犯人たちの計画の甘さがあって、すぐに犯人は捕まったのですが、お嬢様が……」
「何かされたんですか?」
「はい、犯人たちから暴力を受けたらしく、発見された時は体中に打撲や切り傷だらけでした。犯人グループが全員男だったこともあり、それ以来お嬢様は男性を拒絶し、この屋敷から外に出なくなってしまいました」
「……」
倉前さんの話を聞き終えた雄介は、織姫の経験と自分の経験を重ね合わせて考えていた。雄介も女性からの暴行が一つの原因で今のような体質になってしまい、今でもこの体質を悩んでいた。だからこそ、雄介には織姫の気持ちがわかった。見知らぬ人間から、言われない暴力や悪意有る言葉を言われ続ける、あの苦痛が……。
「私は、雄介さんがなぜ女性恐怖症になったかは、聞かされていません。ですが、お嬢様と同じような体質の貴方なら、なにかお嬢様の力になってくださると思い、昨日お願いをしたんです」
「そうだったんですか……」
「お願いをしているのに、お嬢様の情報が何もないのはあまりにも無責任かと思いまして」
やわらかい笑みを浮かべて、倉前さんは雄介に言葉を掛ける。
「そういえば、倉前さんはいつから織姫さんとお知り合いに?」
疑問に思っていたことを雄介は聞いた。倉前さんすごく綺麗で若く見える、それこそまだ20代前半ではないかというレベルなのだが、11年前の事件を知っているという事は、そのころには働いていたことになる。高卒だったとしてもおそらく30歳かそれ位の歳だろうと雄介は思っていた。
「私はお嬢様が5歳のころ、私がまだ中学生だったころに知り合いました。母がこの屋敷でメイドをやっていて、良くお嬢様の遊び相手になっていました」
「あ、あぁ…そうだったんですか!」
そう考えるとこの人はやはり20代後半である事が確定するのだが、見た感じは本当に若いので、雄介は言葉に詰まってしまった。
「私の事、いくつなんだろうって思いました?」
「え! いや……まぁ…正直…」
まるで雄介の心を読んだかのように、雄介に尋ねる倉前さん。倉前さんの問いに驚き、雄介はあいまいな返事をする。
「フフ、良く言われます。私は今年で26になるおばさんですよ」
「いや、そんな事ないですよ。正直20代初めなのかと思ってました」
「あら、ありがとう。うれしいわ~」
その後も軽い雑談が続いた、結局織姫の話は最初の誘拐の話だけで終わってしまい、あとは他愛もない雑談だけをして時間が流れて行った。
「あ、すいません。自分はそろそろ失礼します…」
「あら、もうこんな時間、ごめんなさいね、急に突き合せたりして」
「いえ、色々話を聞けて良かったです」
事項は現在お昼を過ぎて13時。もうそろそろお腹が減ってきた雄介は、帰宅することにした。 長い廊下を進み、大きな玄関ホールを後にして、雄介は玄関のところで、倉前さんに別れを告げる。
「それじゃあ、色々ありがとうございました」
「それはこっちのセリフです。これかもどうか、お嬢様をお願いします」
「はい、それじゃあ自分はこれで…」
「お気をつけてお帰りください。それでは…」
雄介は屋敷に背を向けて歩きだす。思いがけない出来事で、織姫の過去を知ってしまった雄介。雄介の中で、また昔を思い出してしまったのと同時に、同じような経験から男性恐怖症になった織姫を何とかしてやりたいと思い始めていた。
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