甘え上手な彼女
♯8
「自分が痛い訳でも無いのに」
「か、感情的になってたんだよ……」
誰だって、目の前で死にそうな人が居たら、感情的になって心配する。
血まみれだったら、なおのこと危機感は増す。
しかも、それが中学生の少年だとしたら、とても冷静では居られない。
「第一、なんで俺の名前を知ってるんだ?」
「八重が、救急車呼ぶ為に携帯で電話掛けてた時に、自分の名前を名乗ってたのを覚えてたのよ」
「あぁ……そう言えば、名前を教えたな…」
電話で救急車を呼んださい、自分の名前を名乗った事を思い出す高志。
あのときはとにかく、助けなくてはという気持ちでいっぱいで、どんな受け答えをしていたのかも、良く覚えていない高志。
「結局犯人はすぐに自首してきて、私は足の骨を折って入院。八重はその後、私の前に姿を現さなかった」
「警察に色々聞かれたり、したからな……でも、すぐに犯人が自首してきたから、そこまでじゃなかったけど」
そんな話しをしている途中、紗弥は高志の肩に頭を置いて寄りかかる。
「あの後、名前だけを頼りに八重の事を探したのよ……それで、ようやく見つけたのが、高校の入学式の前日」
「そ、そうだったのか……それならそうと、早く言ってくれれば……」
「最初はすぐにお礼を言おうとしたのよ? でも、私は多分そのときから八重の事が好きだったから、知りたくなったのよ、八重がどんな人なのか」
「それで、一年俺を見ていたと?」
「まぁね、ストーカー見たいよね、私」
「で、どんな人だった?」
高志はすこし気になり紗弥に尋ねる。
正直、いままでの行動から、答えは大体わかる気がした高志。
しかし、第三者から見た自分は、どんな人間なのだろうかと気になった事が本音だった。
「正直普通」
「……ま、まぁ……そうだよな……」
もっと違う言葉を期待していた高志は、普通と言われ、若干ショックを受ける。
しかし、紗弥の言葉はそれで終わりではなかった。
「でも…凄く優しい人なんだって……思った」
「え……」
それはどう言う意味なのか、続けて尋ねようとした高志だったが、紗弥の表情を見て、聞くのをやめた。
紗弥の顔はどこか安心したような表情で、頬を赤く染めていた。
「入学したばっかりの時、アンタ一人で孤立してる男子に、声掛けたりしてたでしょ?」
「あ、あれは単純に話して見たかっただけだよ……」
「一緒に捜し物を探してたりしたのは?」
「暇だったから、手伝っただけで……別に意味は……」
「そう言うところ」
「え?」
紗弥は高志を見上げながら、柔らかい笑みを浮かべて話す。
「そう言う、自然に他人の為に何か出来るところが好きなの」
「……えっと……その……」
女子からそんな事を言われたのは、初めてだった高志は、顔が熱くなるのを感じた。
高志は咄嗟に紗弥から顔を背けて、顔を隠した。
「そんなの他の奴だってやってるだろ……」
「なかなか出来ないと思うよ? 意外と人に優しくするって難しいよ」
紗弥は、顔を反らす高志を無理矢理こちらに戻す。
高志の顔に手を当て、紗弥は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、高志に尋ねる。
「信じてくれた?」
自分に微笑む紗弥を間近で見て、高志は更に顔を赤く染める。
どうやら、本当に紗弥は自分の事が好きなのだとわかってしまった高志は、先ほどとは違う意味でドキドキしていた。
「う、疑って……その…ごめん……」
「いいよ、普通いきなり「好きだ」なんて言ってくる女を信じる方がおかしいよ。でも、正直もう少しこのことは隠しておきたかったな……」
「なんでだよ?」
「もっと、感動的な感じでバラしたかっただけ」
「それだけかよ……」
「うん、それだけ」
紗弥と高志は、その後食事を済ませ、屋上で二人で話しをした。
事故の後の事や、どうやって高志を探したのかなど、ほとんどが事故関連の話題だった。
そして、あっという間に昼休みは終わり、高志と紗弥は教室に戻ろうとしていた。
「お弁当はこれからも私が作るから、一緒に屋上で食べましょう」
「いや、そんなの悪いよ…大変だろ?」
「一個作るのも二個作るのも変わらない。それに……胃袋掴んでおけば、私から離れられなくなるし」
「そう言う布石もあるのね……」
紗弥は自分と最終的に結婚するつもりなのだろか?
そんな事を考えながら、教室に戻っていくと、教室内の空気がよどんでいる事に気がついた。
高志と紗弥はそれぞれ自分の席に座り、教科担当の先生が来るのを待った。
「なぁ、高志」
「ん? なんだよ優一」
後ろの席の優一が、高志の名を呼んだ。
高志は後ろを振り返り優一に尋ねる。
「どうだったよ……二人っきりのお昼休みは」
「あぁ、別に普通に飯食って、話ししただけだぞ?」
「なんだそのリア充みたいな行動は、ぶっ殺すぞ!」
「なんで弁当食っただけで、殺されなくちゃ行けないんだよ……」
「やかましい! しかも相手はあの宮岡だぞ! 羨ましいったらありゃしない!」
拳を握りしめながら話す優一に、高志は呆れた表情でため息を吐く。
高志と優一が話しをしていると、教科担当の先生がやってきた。
「ほら、授業始まるぞ?」
「くそぉ~……なんでお前ばっかり……」
高志は、殺意の視線を向けてくる優一から、体を黒板に戻し授業を聞き始める。
授業中、紗弥の方を無意識に見つめてしまう高志。
可愛いなと目の保養のつもりで眺めていた少女が、今では自分の彼女。
そう考えると、自分は一生分の幸せを使ってしまったのではないか?
などと考える高志は、これから悪い事が続くのでは無いかと、不安になる。
そんな謎の恐怖を感じながら、紗弥の事をちらりと見ると、紗弥がこちらに気がつき、目が合った。
(あ、やば!)
見ていた事がバレ、咄嗟に目を反らす高志。
恐る恐る再び紗弥の方を見ると、紗弥はまたしても悪戯っぽい笑みを浮かべながら、頬に手をついて高志を見ていた。
そんな紗弥を見て高志は再び顔を赤らめ、視線を黒板に向ける。
(なんだかなぁ……)
どうやら、自分自身も紗弥を意識し始めている事に気がつく高志であった。
「か、感情的になってたんだよ……」
誰だって、目の前で死にそうな人が居たら、感情的になって心配する。
血まみれだったら、なおのこと危機感は増す。
しかも、それが中学生の少年だとしたら、とても冷静では居られない。
「第一、なんで俺の名前を知ってるんだ?」
「八重が、救急車呼ぶ為に携帯で電話掛けてた時に、自分の名前を名乗ってたのを覚えてたのよ」
「あぁ……そう言えば、名前を教えたな…」
電話で救急車を呼んださい、自分の名前を名乗った事を思い出す高志。
あのときはとにかく、助けなくてはという気持ちでいっぱいで、どんな受け答えをしていたのかも、良く覚えていない高志。
「結局犯人はすぐに自首してきて、私は足の骨を折って入院。八重はその後、私の前に姿を現さなかった」
「警察に色々聞かれたり、したからな……でも、すぐに犯人が自首してきたから、そこまでじゃなかったけど」
そんな話しをしている途中、紗弥は高志の肩に頭を置いて寄りかかる。
「あの後、名前だけを頼りに八重の事を探したのよ……それで、ようやく見つけたのが、高校の入学式の前日」
「そ、そうだったのか……それならそうと、早く言ってくれれば……」
「最初はすぐにお礼を言おうとしたのよ? でも、私は多分そのときから八重の事が好きだったから、知りたくなったのよ、八重がどんな人なのか」
「それで、一年俺を見ていたと?」
「まぁね、ストーカー見たいよね、私」
「で、どんな人だった?」
高志はすこし気になり紗弥に尋ねる。
正直、いままでの行動から、答えは大体わかる気がした高志。
しかし、第三者から見た自分は、どんな人間なのだろうかと気になった事が本音だった。
「正直普通」
「……ま、まぁ……そうだよな……」
もっと違う言葉を期待していた高志は、普通と言われ、若干ショックを受ける。
しかし、紗弥の言葉はそれで終わりではなかった。
「でも…凄く優しい人なんだって……思った」
「え……」
それはどう言う意味なのか、続けて尋ねようとした高志だったが、紗弥の表情を見て、聞くのをやめた。
紗弥の顔はどこか安心したような表情で、頬を赤く染めていた。
「入学したばっかりの時、アンタ一人で孤立してる男子に、声掛けたりしてたでしょ?」
「あ、あれは単純に話して見たかっただけだよ……」
「一緒に捜し物を探してたりしたのは?」
「暇だったから、手伝っただけで……別に意味は……」
「そう言うところ」
「え?」
紗弥は高志を見上げながら、柔らかい笑みを浮かべて話す。
「そう言う、自然に他人の為に何か出来るところが好きなの」
「……えっと……その……」
女子からそんな事を言われたのは、初めてだった高志は、顔が熱くなるのを感じた。
高志は咄嗟に紗弥から顔を背けて、顔を隠した。
「そんなの他の奴だってやってるだろ……」
「なかなか出来ないと思うよ? 意外と人に優しくするって難しいよ」
紗弥は、顔を反らす高志を無理矢理こちらに戻す。
高志の顔に手を当て、紗弥は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、高志に尋ねる。
「信じてくれた?」
自分に微笑む紗弥を間近で見て、高志は更に顔を赤く染める。
どうやら、本当に紗弥は自分の事が好きなのだとわかってしまった高志は、先ほどとは違う意味でドキドキしていた。
「う、疑って……その…ごめん……」
「いいよ、普通いきなり「好きだ」なんて言ってくる女を信じる方がおかしいよ。でも、正直もう少しこのことは隠しておきたかったな……」
「なんでだよ?」
「もっと、感動的な感じでバラしたかっただけ」
「それだけかよ……」
「うん、それだけ」
紗弥と高志は、その後食事を済ませ、屋上で二人で話しをした。
事故の後の事や、どうやって高志を探したのかなど、ほとんどが事故関連の話題だった。
そして、あっという間に昼休みは終わり、高志と紗弥は教室に戻ろうとしていた。
「お弁当はこれからも私が作るから、一緒に屋上で食べましょう」
「いや、そんなの悪いよ…大変だろ?」
「一個作るのも二個作るのも変わらない。それに……胃袋掴んでおけば、私から離れられなくなるし」
「そう言う布石もあるのね……」
紗弥は自分と最終的に結婚するつもりなのだろか?
そんな事を考えながら、教室に戻っていくと、教室内の空気がよどんでいる事に気がついた。
高志と紗弥はそれぞれ自分の席に座り、教科担当の先生が来るのを待った。
「なぁ、高志」
「ん? なんだよ優一」
後ろの席の優一が、高志の名を呼んだ。
高志は後ろを振り返り優一に尋ねる。
「どうだったよ……二人っきりのお昼休みは」
「あぁ、別に普通に飯食って、話ししただけだぞ?」
「なんだそのリア充みたいな行動は、ぶっ殺すぞ!」
「なんで弁当食っただけで、殺されなくちゃ行けないんだよ……」
「やかましい! しかも相手はあの宮岡だぞ! 羨ましいったらありゃしない!」
拳を握りしめながら話す優一に、高志は呆れた表情でため息を吐く。
高志と優一が話しをしていると、教科担当の先生がやってきた。
「ほら、授業始まるぞ?」
「くそぉ~……なんでお前ばっかり……」
高志は、殺意の視線を向けてくる優一から、体を黒板に戻し授業を聞き始める。
授業中、紗弥の方を無意識に見つめてしまう高志。
可愛いなと目の保養のつもりで眺めていた少女が、今では自分の彼女。
そう考えると、自分は一生分の幸せを使ってしまったのではないか?
などと考える高志は、これから悪い事が続くのでは無いかと、不安になる。
そんな謎の恐怖を感じながら、紗弥の事をちらりと見ると、紗弥がこちらに気がつき、目が合った。
(あ、やば!)
見ていた事がバレ、咄嗟に目を反らす高志。
恐る恐る再び紗弥の方を見ると、紗弥はまたしても悪戯っぽい笑みを浮かべながら、頬に手をついて高志を見ていた。
そんな紗弥を見て高志は再び顔を赤らめ、視線を黒板に向ける。
(なんだかなぁ……)
どうやら、自分自身も紗弥を意識し始めている事に気がつく高志であった。
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コメント
HARO
いいですねぇ~
Nayayaya
こういう系超絶好きだわw
アホの子は俺だ!
それな!
ペンギン
いいなぁ〜