99回告白したけどダメでした

Joker0808

190話

「女の子はそう言うの気にするの!」

「そう言うもんか? 俺は食わないより、食う方奴の方が好きだぞ?」

「あ、アンタなんかに好かれても……しょうがないのよ…」

「そうでございますか……てか、お前くらいのルックスなら、飯多く食っても男からの好感度は下がらねーよ」

「ほ、褒めても何も出ないわよ……」

 武司の言葉に、志保は頬をほんのり赤く染める。
 そんな志保の変化にも気がつかず、武司は欠伸をしながら外を眺めていた。

「ん? あれって……」

「どうしたの?」

 外を見ていた武司は、窓の外の駐車場に見知った顔を発見した。
 
「健? なにやってんだ?」

 窓の外に居たのは、私服姿の健だった。
 何やらキョロキョロしながら、誰かを待っているような様子だった。
 
「何? 誰か居たの?」

「あぁ、健が居るんだがって……えぇ?! お、女?!」

 志保の方に一度視線を向けた後、もう一度視線を戻すと、そこにはパーカー姿の女子と歩く、健の姿があった。
 今まで、女の存在なんて皆無だった健が、女連れで歩いている事に、武司は驚きを隠せない。

「な、なんだ! あいつに一体何が!?」

「いや、アンタと違って古沢君モテるんだから、デートとかじゃないの?」

「いや、あのアイドルオタクが、簡単にアイドル以外の女に興味を抱くとは思えないんだが……」

「誰だって、心代わりくらいするわよ」

「よし! 追うぞ!」

「はぁ!? 何言ってるのよ! 古沢君に迷惑でしょ!」

「じゃあ、お前は気にならねーのかよ!」

「そんなのメチャクチャ気になるわよ!」

「よし! ならさっさと行こうぜ!」

「その前に帽子買っていくわよ! 見つからないように」

「お前の方が乗り気じゃん……」

 二人は店を急いで後にし、健を追った。
 




 俺はアイドルの綾清ゆきほと出会っていた。
 普通のアイドルオタクや一般人は、興奮してサインをお願いしたりするのだろうが、俺は違った。
 俺は、地面に膝をつきショックを受けていた。

「お、終わった……」

「あ、あの! ちょっと大丈夫ですか!」

「最悪だ……厄日だ……なんで俺がこんな目に……」

「あの! 急に態度変えられると、どう対応して良いかわからないんですけど!」

 俺は激しいショックで、空を見上げながらぶつぶつと呟いていた。
 ゆきほちゃんは、俺の態度にどう対応して良いかわからず、アタフタしていた。
 そんな事をしている間に、警察が近くにやってきた。
 サイレンの音が近くで止まると、ゆきほはビクッと方を振るわせて、その場を走って逃げ出した。

「やば!」

「ん……おい!」

 気がつき声をかけた健だったが、ゆきほはそのまま路地を後にし、人混みの中に消えて行った。

「何で逃げたんだ?」

 ゆきほの行動に疑問を抱きながら、健は立ち上がりカラオケ店に戻ろうとする。
 警察に見つかっては、色々と厄介になると思い、俺は警察が到着する前に入ってきた方とは逆の方から抜けてカラオケ店に戻る。

「あぁ……にしても最悪だ……今日は行く気になれない……」

「あ、リーダー!」

 カラオケ店に戻った俺は、他のメンバーとカラオケ店のレジで合流した。
 時間が来たのだろう、丁度料金を支払っているところだった。

「何してたんですか? 遅かったですね」

「いや……ちょっとな……悪いが俺はちょっと急用が出来てしまった}

「「「えぇ!?」」」

「きゅ、急にどうしたんですか!!」

「そうですよ!」

「いや、ちょっとな……悪い、みんなで楽しんできてくれ……」

 そう言って俺は鞄を受け取り、その場を後にする。
 みんなには本当に悪いとは思っているが、コレは俺の中で決めているルールだ。
 そのルールは、アイドルにイベントやライブ以外で遭遇しないと言うルールだ。
 こんな事を言うと、十人が十人、何故だと尋ねて来るだろう。
 その答えは簡単だ。
 俺にとってアイドルという存在は、画面の中の存在で良い。
 一生手に届かない存在で良い。
 逆に、そうだから良い。
 アイドルと言っても一人に女。
 俺は女というものを信じていない。
 もちろん全員ではない、中には信頼に値する女性も居ることはわかっている。
 しかし、俺は基本的に女を信用しない。
 だから、俺の中でのアイドルは、ステージでキラキラと輝いているだけで良いのだ。
 それなのに……。

「なんで、今日に限って遭遇しちまうんだよ……」

 楽しみにしていたゲリラライブだと言うのに、気分は最悪だ。
 一瞬にして萎えてしまった。
 俺はとぼとぼと家に帰る道を歩きながら、音楽プレイヤーを取り出して音楽を聴く。

「あ……昨日聞いてたままだった……」

 流れてきたのは、三日前に発売された、エメラルドスターズの新曲だ。
 俺は直ぐに他の今日に切り替えようと、音楽プレイヤーを操作する。
 すると、操作に集中しすぎてしまい、俺は人にぶつかってしまった。

「あ、すみません……」

「あ、いえいえ、大丈夫で……あぁぁぁ!!」

「え………あ……」

 ぶつかった相手を見て俺は、思わず声を漏らした。
 その相手は、先ほど出会った、というか出会ってしまった、ゆきほちゃんだったからだ。

「あなた! 追いかけて来たんですか!?」

「そんな訳ないだろ……はぁ、君はどれだけ俺を不幸にすれば気が済むんだ……」

「別に私は何もしてません!」

 また合ってしまった。
 最悪だ、もう今日は本当に最悪だ。
 神様の悪戯か、またしてもゆきほちゃんと出会ってしまった。
 俺はなんだか夢から覚めた気分だった。
 もう、どうでも良くなり、俺はゆきほちゃんに尋ねてみた。

「君、エメラルドスターズのゆきほちゃんだろ? こんなところに居ても良いのかよ」

「う……あ、あなたも私のファン?」

「いや、今さっきやめた」

「何それ!?」

「だからもうファンじゃない」

「この状況下で言う事じゃないけど、なんか悲しい」

「そう言うことだから、早く今日のゲリラライブ行った方が良いんじゃない?」

「そ、そこまで知ってるのに、もうファンじゃないの!?」

「良いからさっさと行けば? 楽しみにしてるファンもいるだろ?」

「貴方に言われたくないわ……」

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