99回告白したけどダメでした
105話
「そ、その写真は……山瀬さんの寝顔!!」
「フフ……とある情報筋から入手したのよ、真面目な彼女のこんな無防備な姿……貴方なら喉から手が出るほどほしいんじゃない?」
暁美が持っていた綺凜の写真は、綺凜が机の上で顔を横にして寝ている写真だった。
真面目な綺凜があまり見せない、無防備な姿に誠実は目を奪われた。
「くっ! 卑怯な!」
「おいコラ馬鹿」
「イテ! 何するんだ武司」
「何さりげに胸ポケットに写真をしまってんだよ! それじゃあ、あの先輩の頼みを聞くって言ってるようなもんだぞ!」
「は! そ、そうか……なら……仕方ない……」
誠実は胸ポケットに入れた写真を取り出し、机の上に戻す。
「そうだ、大体写真なんて……」
「2000円で買おう!」
「話しを聞け! そして何買おうとしてんだよ!!」
誠実は財布から金を取り出そうとするが、それを武司が止める。
「残念ね、売り物ではないの。これは報酬よ」
「良し! じゃあこの新聞部のために人肌脱ごうじゃないか!」
「お前は山瀬さんが関わると人が変わるよな……」
呆れた様子で話す武司。
健もあまり乗り気ではないらしく、スマホを弄って遊んでいる。
「フフフ、そこの二人にもちゃんと報酬を用意してるのよ」
「けっ! 俺は誠実みたいに単純じゃねーんですよ!」
「この子、私の友達なんだけどね、女子校で出会いがないんですって、良かったら会ってみない?」
「先輩の写真部は僕が復活させます!」
暁美の差し出した少女の写真に、武司は一発でやられてしまった。
口調も替わり、今は写真を凝視している。
残った健は、ため息を吐きながら誠実と健に言う。
「はぁ……全くお前達は……俺たちの当初の目的を忘れたのか?」
「「先輩の新聞部の復活!」」
「……まぁ、長い付き合いだからな……お前らがそう言う奴らなのは知ってる」
呆れ果てた健は、一人部室を後にしようとドアノブに手を掛ける。
「あら? 貴方は協力してくれないの?」
「俺の当初の目的は、あのデタラメ記事の撤回だ。でも、当人のこの二人がこの調子じゃダメそうだ、俺はもうここに居る意味は無い」
「うふふ、大丈夫よ。新聞部が部として認められた暁には、ちゃんと撤回記事を出すわ。それに、貴方への報酬もあるわよ」
「生憎だったな、俺は別に欲しい物などない! 女だって必要は無いぞ?」
「これ、アイドルグループのエメラルドスターズって言ったかしら? それのライブの特別招待チケットなんだけど……」
「な! そ、それをどこで?! そのチケットは、関係者や一部の人間にしか手に入れる事が出来ない、超プラチナチケットのはず!! 親衛隊隊長の俺でさえ持っていない物をなぜお前が!!」
「うふふ、ジャーナリストにはね、色々と知り合いが多いのよ」
健はそのチケットを見た瞬間、震えが収まらなくなるのを感じた。
アイドル関連以外で欲の無い健だが、アイドル関連になると健は強欲になる。
よって、健も……。
「先輩、俺は何をすればいいだろうか? 何なりと申しつけてくれ」
「フフフ、ありがとう。じゃあ作戦立てましょうか?」
「「「はい! 先輩!!」」」
この後、この三人は気がつく。
自分たちがどれだけ浅はかで、馬鹿なのかと言うことに……。
*
テストが終わった日の放課後、綺凜は美沙と共に帰宅していた。
「いや~今回も難しかったね~」
「……そうだね」
「でも、綺凜がちゃんと学校着て安心したよ~」
「ごめんね、心配掛けて」
綺凜は未だに誠実の事を気にしていた。
酷い事を言ってしまった事を謝りたかった。
やった事への償いをしたかった。
しかし、誠実が綺凜に近づく事は無かった。
それは綺凜も同じだった。
今更どんな顔をして会えば良いか、わからなかった。
「まぁ、とりあえずテストも終わったしカラオケでも行く? 勉強ばっかで疲れちゃってさ~」
「うん、そうだね……」
「……とりあえず、歌ってすっきりしてからで良いんじゃない? 誠実君に謝るのはさ……今日ももう帰った後だったし」
「……やっぱり、わかるんだ」
「まぁ、数ヶ月だけど一緒に居ればなんとなくね! さ、カラオケ行こう!」
綺凜は美沙に手を引かれて、カラオケ店に向かう。
店内は少し混み合っている様子だった。
おそらく考える事は皆同じらしく、テストから解放されて遊びに来た学生でいっぱいだった。
「あちゃー、予約してれば良かったね」
「とりあえず受け付けだけ……あら?」
「どうしたの? 綺凜……あ……」
「「「あ………」」」
カラオケ店の受付の脇には、ドリンクバーが設置してある。
そこで飲み物を選んでいる一団と目が合う綺凜と美沙。
その一団とは、おそらく西星高校一の噂好きの集まりであり、個性的な人間の集まり。
「確か……料理部の?」
「あー!! 部長の敵!!」
「こら! 失礼でしょ!」
「おひさ~、数週間ぶりかな?」
挨拶をしながら美沙と綺凜の方にやってくる料理部の面々。
「偶然だね~山瀬さんも歌いに来たの?」
「えぇ、テストも終わったから」
「ねぇねぇ、綺凜。誰?」
「あぁ、美沙は初対面だったわね、料理部の部員の人たちよ」
綺凜がそう言うと、料理部の一団四人は一人づつ挨拶をする。
「ども~、丘部和波でーす」
「井山千春(いやま ちはる)です……」
「森山伊智よ、よろしく」
「私は島崎鈴だよ~よろしく!」
四人が挨拶を終えると、美沙も挨拶を返す。
「笹原美沙でーす、よろしくね~」
美沙が人見知りしない性格なのは知っていたが、初対面の人間にここまで気さくに接する事が出来るのだろうかと疑問に思ってしまうほど、美沙は気さくに挨拶を返していた。
「ねぇねぇ、良かったら私たちと一緒に歌わない? 部屋予約したんだけど大部屋だからまだ入れるし!」
鈴の提案に、綺凜は少し考える。
この料理部の部長である沙耶香は誠実が好きなのだ。
しかも、美沙も誠実に好意を持っている、その上綺凜はそんな彼からのアプローチを断り続けた挙げ句、利用して捨てたと言っても良いような扱いをした。
先ほど鈴は六人と言った。
おそらく今居るメンバーの他に後二人居るのであろう、その中に部長である沙耶香がいる可能性は大きい。
そんな中に行けば、楽しいカラオケ店が一気に修羅場と化してしまう。
「フフ……とある情報筋から入手したのよ、真面目な彼女のこんな無防備な姿……貴方なら喉から手が出るほどほしいんじゃない?」
暁美が持っていた綺凜の写真は、綺凜が机の上で顔を横にして寝ている写真だった。
真面目な綺凜があまり見せない、無防備な姿に誠実は目を奪われた。
「くっ! 卑怯な!」
「おいコラ馬鹿」
「イテ! 何するんだ武司」
「何さりげに胸ポケットに写真をしまってんだよ! それじゃあ、あの先輩の頼みを聞くって言ってるようなもんだぞ!」
「は! そ、そうか……なら……仕方ない……」
誠実は胸ポケットに入れた写真を取り出し、机の上に戻す。
「そうだ、大体写真なんて……」
「2000円で買おう!」
「話しを聞け! そして何買おうとしてんだよ!!」
誠実は財布から金を取り出そうとするが、それを武司が止める。
「残念ね、売り物ではないの。これは報酬よ」
「良し! じゃあこの新聞部のために人肌脱ごうじゃないか!」
「お前は山瀬さんが関わると人が変わるよな……」
呆れた様子で話す武司。
健もあまり乗り気ではないらしく、スマホを弄って遊んでいる。
「フフフ、そこの二人にもちゃんと報酬を用意してるのよ」
「けっ! 俺は誠実みたいに単純じゃねーんですよ!」
「この子、私の友達なんだけどね、女子校で出会いがないんですって、良かったら会ってみない?」
「先輩の写真部は僕が復活させます!」
暁美の差し出した少女の写真に、武司は一発でやられてしまった。
口調も替わり、今は写真を凝視している。
残った健は、ため息を吐きながら誠実と健に言う。
「はぁ……全くお前達は……俺たちの当初の目的を忘れたのか?」
「「先輩の新聞部の復活!」」
「……まぁ、長い付き合いだからな……お前らがそう言う奴らなのは知ってる」
呆れ果てた健は、一人部室を後にしようとドアノブに手を掛ける。
「あら? 貴方は協力してくれないの?」
「俺の当初の目的は、あのデタラメ記事の撤回だ。でも、当人のこの二人がこの調子じゃダメそうだ、俺はもうここに居る意味は無い」
「うふふ、大丈夫よ。新聞部が部として認められた暁には、ちゃんと撤回記事を出すわ。それに、貴方への報酬もあるわよ」
「生憎だったな、俺は別に欲しい物などない! 女だって必要は無いぞ?」
「これ、アイドルグループのエメラルドスターズって言ったかしら? それのライブの特別招待チケットなんだけど……」
「な! そ、それをどこで?! そのチケットは、関係者や一部の人間にしか手に入れる事が出来ない、超プラチナチケットのはず!! 親衛隊隊長の俺でさえ持っていない物をなぜお前が!!」
「うふふ、ジャーナリストにはね、色々と知り合いが多いのよ」
健はそのチケットを見た瞬間、震えが収まらなくなるのを感じた。
アイドル関連以外で欲の無い健だが、アイドル関連になると健は強欲になる。
よって、健も……。
「先輩、俺は何をすればいいだろうか? 何なりと申しつけてくれ」
「フフフ、ありがとう。じゃあ作戦立てましょうか?」
「「「はい! 先輩!!」」」
この後、この三人は気がつく。
自分たちがどれだけ浅はかで、馬鹿なのかと言うことに……。
*
テストが終わった日の放課後、綺凜は美沙と共に帰宅していた。
「いや~今回も難しかったね~」
「……そうだね」
「でも、綺凜がちゃんと学校着て安心したよ~」
「ごめんね、心配掛けて」
綺凜は未だに誠実の事を気にしていた。
酷い事を言ってしまった事を謝りたかった。
やった事への償いをしたかった。
しかし、誠実が綺凜に近づく事は無かった。
それは綺凜も同じだった。
今更どんな顔をして会えば良いか、わからなかった。
「まぁ、とりあえずテストも終わったしカラオケでも行く? 勉強ばっかで疲れちゃってさ~」
「うん、そうだね……」
「……とりあえず、歌ってすっきりしてからで良いんじゃない? 誠実君に謝るのはさ……今日ももう帰った後だったし」
「……やっぱり、わかるんだ」
「まぁ、数ヶ月だけど一緒に居ればなんとなくね! さ、カラオケ行こう!」
綺凜は美沙に手を引かれて、カラオケ店に向かう。
店内は少し混み合っている様子だった。
おそらく考える事は皆同じらしく、テストから解放されて遊びに来た学生でいっぱいだった。
「あちゃー、予約してれば良かったね」
「とりあえず受け付けだけ……あら?」
「どうしたの? 綺凜……あ……」
「「「あ………」」」
カラオケ店の受付の脇には、ドリンクバーが設置してある。
そこで飲み物を選んでいる一団と目が合う綺凜と美沙。
その一団とは、おそらく西星高校一の噂好きの集まりであり、個性的な人間の集まり。
「確か……料理部の?」
「あー!! 部長の敵!!」
「こら! 失礼でしょ!」
「おひさ~、数週間ぶりかな?」
挨拶をしながら美沙と綺凜の方にやってくる料理部の面々。
「偶然だね~山瀬さんも歌いに来たの?」
「えぇ、テストも終わったから」
「ねぇねぇ、綺凜。誰?」
「あぁ、美沙は初対面だったわね、料理部の部員の人たちよ」
綺凜がそう言うと、料理部の一団四人は一人づつ挨拶をする。
「ども~、丘部和波でーす」
「井山千春(いやま ちはる)です……」
「森山伊智よ、よろしく」
「私は島崎鈴だよ~よろしく!」
四人が挨拶を終えると、美沙も挨拶を返す。
「笹原美沙でーす、よろしくね~」
美沙が人見知りしない性格なのは知っていたが、初対面の人間にここまで気さくに接する事が出来るのだろうかと疑問に思ってしまうほど、美沙は気さくに挨拶を返していた。
「ねぇねぇ、良かったら私たちと一緒に歌わない? 部屋予約したんだけど大部屋だからまだ入れるし!」
鈴の提案に、綺凜は少し考える。
この料理部の部長である沙耶香は誠実が好きなのだ。
しかも、美沙も誠実に好意を持っている、その上綺凜はそんな彼からのアプローチを断り続けた挙げ句、利用して捨てたと言っても良いような扱いをした。
先ほど鈴は六人と言った。
おそらく今居るメンバーの他に後二人居るのであろう、その中に部長である沙耶香がいる可能性は大きい。
そんな中に行けば、楽しいカラオケ店が一気に修羅場と化してしまう。
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