99回告白したけどダメでした
65話
「ま、お前がどんな彼女を連れて来るのかなんてわかんねーけどよ。自分が惚れた女は泣かしちゃなんねーぞ」
忠志にそう言われ、誠実は気が付いた。
そうだ、考えれば単純な事だった。
綺凛は確かに誠実の心を踏みにじるようなことをしたかもしれない。
でも誠実はいまだに彼女を忘れることが出来ない。
好きなままなのだ。
恋愛は惚れた方が負けだと、何かで読んだようなきがすると誠実は思いながら、スッキリした様子で忠志に言う。
「わかってるよ……んな事」
誠実はずっとモヤモヤしていた。
美沙になんで助けたいのかを聞かれたあの日から、ずっと考えていた。
しかし、ようやくわかった。
答えなんて単純だった。
ただ好きな子が泣かされそうだから、ただ綺凛が好きだから。
誠実は綺凛の悲しげな表情を見たくないから、助けるのだ。
「親父」
「ん? どした?」
「……俺、頑張るよ」
「なんだよ真剣な顔で気持ち悪い……」
「今日の親父には言われたくねーんだよ!!」
誠実と忠志はそんな言い争いを続けながら、自宅に帰宅する。
*
家に帰ると時刻は19時をちょっと過ぎたくらいだった。
誠実と忠志はそろって帰宅したところを母親の叶に捕まり、現在はリビングで家族会議が行われていた。
しかし、その家族会議に美奈穂の姿は無かった。
モデルの仕事で出かけており、まだ帰って来ていないのだ。
「誠実! あの子は誰なの? ちゃんと説明なさい! 彼女なの? それとも恋人? それとも最愛の人?」
「母さん、とりあえず落ち着いてくれ、しかも全部同じ意味だし……」
「これが落ち着いて居られますか! あんた、うまく行けば逆玉よ!」
「だから、そういう関係じゃないって……」
叶が言っているのは、栞の事だと誠実は直ぐに気が付いた。
今朝、叶は栞を見てからというものずっと気になっていた。
まさか自分の息子があんなに可愛い子と知り合いな上に、家に遊びに行くような間柄だとは思っていなかったからだ。
「なんだ、栞ちゃんと会ったのか?」
「え? な、なんでお父さんがその子の事知ってるのよ!?」
「んだって、俺はお前に追い出されたあと、栞ちゃんのお父さんと色々遊んできたからな。今度遊びに来いって言われたんだが……どんな家だろうな?」
「親父、俺が言えるのは、家じゃなくて城だったって事だけだ」
「マジか!? 金持ちは違うなぁ~」
誠実と忠志が蓬清家の話をしている間、叶は疑問でいっぱいだった。
なぜ息子にあんな可愛いお嬢様の知り合いが居るのか、そしてなぜそのお嬢様の父親と自分の旦那が知り合いなのか。
しかし、叶にとって今はそんな話はどうでも良い。
重要なのは、誠実と栞の関係だった。
「で! あんたは今日なんで栞ちゃんの家に呼ばれたの!! ちゃんとアプローチしたの? あんまりぐいぐい行ってないでしょうね!!」
「だから落ち着けって! 今説明すっから!」
誠実と忠志は今日の出来事を叶に説明した。
説明を聞き終えた叶は、何かを考えながら腕を組む。
「これはチャンスね……」
「何がだよ……」
「両親が友達! しかも栞ちゃんも誠実を気に入っている! 彼女なんて一生できないと思っていた息子にもしかしたら彼女が……」
「おいコラ、失礼だろ」
涙を浮かべながら、本気で感激する叶に誠実は言う。
誠実は、そんなに自分はモテる感じがしないのだろうか? と疑問に思いながら、叶の話を聞く。
「誠実! あんまりガツガツ行っちゃだめよ! とにかく優しく接しなさい! そうすれば悪い印象は与えずに済むは! でも付き合ったら、ガツガツ行きなさい! あんまり奥手だと愛想尽かされるわ!」
「だからそういう関係じゃないって言ってんだろ!!」
呆れた様子で叶に言う誠実。
そんな時、玄関の方からドアの開く音が聞こえて。
どうやら美奈穂が帰って来たようだ。
「ただいま……って何やってんの?」
「美奈穂! ちょっと聞いてよ! 実はね……」
叶は興奮した様子で美奈穂に誠実と忠志から聞いた話をする。
そういえば、先輩と美奈穂は面識があったな、なんてことを思い出す誠実。
叶の話を聞き終えた美奈穂は、どこか不機嫌そうな表情で誠実を見る。
「あっそ、私疲れてるからお風呂入るね」
「なによ美奈穂、反応が薄いわね…」
「別にどうでも良いわよ、おにぃがどんな女の人と付き合おうと私には関係ないし」
美奈穂はそういうと、リビングを後にし二階の自分の部屋に戻って行く。
そんな美奈穂を見て、誠実はこの反応が普通ではないだろうか? と思いながら、自分も椅子から立ち上がり、部屋に戻ろうとする。
「話は終わり。早く飯作ってくれよ、腹減った」
「誠実! 絶対落とすのよ! 何が何でも!」
誠実は最後の叶の話を聞き流し自分の部屋に戻って行く。
*
伊敷美奈穂は機嫌が悪かった。
帰って早々に、母親から聞いた話が、自分にとって全く面白くない話しだったからだ。
美奈穂は部屋着に着替えた後、ベッドに横になりながら、昨日誠実と出かけた際に隠し撮りした誠実の写真をスマホで眺め、文句を言う。
「バカ! おにぃのバカ!」
言っても仕方がないのは分かっていたが、言わなければ収まらなかった。
まさか栞の家に行っていたなんて、美奈穂は思わなかったし、それを知っていたら誠実にお土産のアドバイスなんてしなかった。
イライラしながら美奈穂は今日仕事で一緒になった、男性モデルからのメッセージをスルーし、仕事のマネージャーに連絡する。
『当分仕事には出れません』
そう一言だけ打つと、美奈穂はスマホをベッドに放り投げる。
うかうかしていたら、誠実が取られてしまう。
美奈穂はそう考え、自分も本気になろうと決意し、モデルの仕事を減らし、誠実との時間を優先することを決意した。
そして、美奈穂はさっそく誠実の部屋に向かう。
忠志にそう言われ、誠実は気が付いた。
そうだ、考えれば単純な事だった。
綺凛は確かに誠実の心を踏みにじるようなことをしたかもしれない。
でも誠実はいまだに彼女を忘れることが出来ない。
好きなままなのだ。
恋愛は惚れた方が負けだと、何かで読んだようなきがすると誠実は思いながら、スッキリした様子で忠志に言う。
「わかってるよ……んな事」
誠実はずっとモヤモヤしていた。
美沙になんで助けたいのかを聞かれたあの日から、ずっと考えていた。
しかし、ようやくわかった。
答えなんて単純だった。
ただ好きな子が泣かされそうだから、ただ綺凛が好きだから。
誠実は綺凛の悲しげな表情を見たくないから、助けるのだ。
「親父」
「ん? どした?」
「……俺、頑張るよ」
「なんだよ真剣な顔で気持ち悪い……」
「今日の親父には言われたくねーんだよ!!」
誠実と忠志はそんな言い争いを続けながら、自宅に帰宅する。
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家に帰ると時刻は19時をちょっと過ぎたくらいだった。
誠実と忠志はそろって帰宅したところを母親の叶に捕まり、現在はリビングで家族会議が行われていた。
しかし、その家族会議に美奈穂の姿は無かった。
モデルの仕事で出かけており、まだ帰って来ていないのだ。
「誠実! あの子は誰なの? ちゃんと説明なさい! 彼女なの? それとも恋人? それとも最愛の人?」
「母さん、とりあえず落ち着いてくれ、しかも全部同じ意味だし……」
「これが落ち着いて居られますか! あんた、うまく行けば逆玉よ!」
「だから、そういう関係じゃないって……」
叶が言っているのは、栞の事だと誠実は直ぐに気が付いた。
今朝、叶は栞を見てからというものずっと気になっていた。
まさか自分の息子があんなに可愛い子と知り合いな上に、家に遊びに行くような間柄だとは思っていなかったからだ。
「なんだ、栞ちゃんと会ったのか?」
「え? な、なんでお父さんがその子の事知ってるのよ!?」
「んだって、俺はお前に追い出されたあと、栞ちゃんのお父さんと色々遊んできたからな。今度遊びに来いって言われたんだが……どんな家だろうな?」
「親父、俺が言えるのは、家じゃなくて城だったって事だけだ」
「マジか!? 金持ちは違うなぁ~」
誠実と忠志が蓬清家の話をしている間、叶は疑問でいっぱいだった。
なぜ息子にあんな可愛いお嬢様の知り合いが居るのか、そしてなぜそのお嬢様の父親と自分の旦那が知り合いなのか。
しかし、叶にとって今はそんな話はどうでも良い。
重要なのは、誠実と栞の関係だった。
「で! あんたは今日なんで栞ちゃんの家に呼ばれたの!! ちゃんとアプローチしたの? あんまりぐいぐい行ってないでしょうね!!」
「だから落ち着けって! 今説明すっから!」
誠実と忠志は今日の出来事を叶に説明した。
説明を聞き終えた叶は、何かを考えながら腕を組む。
「これはチャンスね……」
「何がだよ……」
「両親が友達! しかも栞ちゃんも誠実を気に入っている! 彼女なんて一生できないと思っていた息子にもしかしたら彼女が……」
「おいコラ、失礼だろ」
涙を浮かべながら、本気で感激する叶に誠実は言う。
誠実は、そんなに自分はモテる感じがしないのだろうか? と疑問に思いながら、叶の話を聞く。
「誠実! あんまりガツガツ行っちゃだめよ! とにかく優しく接しなさい! そうすれば悪い印象は与えずに済むは! でも付き合ったら、ガツガツ行きなさい! あんまり奥手だと愛想尽かされるわ!」
「だからそういう関係じゃないって言ってんだろ!!」
呆れた様子で叶に言う誠実。
そんな時、玄関の方からドアの開く音が聞こえて。
どうやら美奈穂が帰って来たようだ。
「ただいま……って何やってんの?」
「美奈穂! ちょっと聞いてよ! 実はね……」
叶は興奮した様子で美奈穂に誠実と忠志から聞いた話をする。
そういえば、先輩と美奈穂は面識があったな、なんてことを思い出す誠実。
叶の話を聞き終えた美奈穂は、どこか不機嫌そうな表情で誠実を見る。
「あっそ、私疲れてるからお風呂入るね」
「なによ美奈穂、反応が薄いわね…」
「別にどうでも良いわよ、おにぃがどんな女の人と付き合おうと私には関係ないし」
美奈穂はそういうと、リビングを後にし二階の自分の部屋に戻って行く。
そんな美奈穂を見て、誠実はこの反応が普通ではないだろうか? と思いながら、自分も椅子から立ち上がり、部屋に戻ろうとする。
「話は終わり。早く飯作ってくれよ、腹減った」
「誠実! 絶対落とすのよ! 何が何でも!」
誠実は最後の叶の話を聞き流し自分の部屋に戻って行く。
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伊敷美奈穂は機嫌が悪かった。
帰って早々に、母親から聞いた話が、自分にとって全く面白くない話しだったからだ。
美奈穂は部屋着に着替えた後、ベッドに横になりながら、昨日誠実と出かけた際に隠し撮りした誠実の写真をスマホで眺め、文句を言う。
「バカ! おにぃのバカ!」
言っても仕方がないのは分かっていたが、言わなければ収まらなかった。
まさか栞の家に行っていたなんて、美奈穂は思わなかったし、それを知っていたら誠実にお土産のアドバイスなんてしなかった。
イライラしながら美奈穂は今日仕事で一緒になった、男性モデルからのメッセージをスルーし、仕事のマネージャーに連絡する。
『当分仕事には出れません』
そう一言だけ打つと、美奈穂はスマホをベッドに放り投げる。
うかうかしていたら、誠実が取られてしまう。
美奈穂はそう考え、自分も本気になろうと決意し、モデルの仕事を減らし、誠実との時間を優先することを決意した。
そして、美奈穂はさっそく誠実の部屋に向かう。
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