99回告白したけどダメでした

Joker0808

30話




 誠実は、現在3人の美少女と商店街を歩いていた。
 普通ならうれしい出来事のはずなのだが、誠実は自分でもなぜだかわからないが緊張していた。
 理由は、この3人の少女の空気にあった。

「……」

「……」

「……」

 なぜか無言で歩く3人の美少女。
 誠実はそんな3人の後ろを気まずそうに歩いていく。

「あ、あのぉ……」

 気まずそうに誠実が声をかけると、栞が笑顔で振り向き、優しく答える。

「どうかしましたか? 伊敷君」

 優しい栞の対応に、心の安らぎを覚え、誠実の顔は少し緩む。
 それを見ていた美奈穂は、そんな誠実が面白くないようで……。

「おにぃ、気持ち悪いよ? そんなにその人と話せてうれしいの?」

 美奈穂はすこぶる機嫌が悪く、誠実に対して悪態をついてばかりだ。
 この前の事で、少し距離が戻ったと思った誠実だったが、なんだか前に戻ってしまったような感じで、少し悲しい。

「ちげーよ! なんかわからないけど、空気が重いから……そんなときに優しく応えてもらえたら安心すんだろ! てか、どこに向かってんだよ!」

「状況を整理したいの! 良いからファミレスに行くわよ!」

「なんの状況だよ! さっき説明したろ? この人は先輩で、沙耶香はクラスメイトだって!」

 校門前で鉢合わせした3人の少女は全員、誠実の事を知ってはいるが、互いを知らなかった。
 だから、誠実が説明をしたのだが、何やら3人とも誠実の説明では納得がいかないらしく、別な場所で状況を整理するという事になり、商店街の先にあるファミレスを目指して歩いていた。

「誠実君、妹さんは良いとしても、先輩とは何でこんなに仲が良いのかな? ねぇなんで? 目をそらさないで教えてよ」

「さ、沙耶香さん……怖いです」

 誠実が一番怖いのは沙耶香だった。
 自分に好意を持っていることを知っている上に、誠実が他の女生徒と仲良くしているとヤキモチを焼く。
 こんな状況だと、沙耶香が何を言って来るか、わからない上に既に何か怒っている感じがする誠実。
 何とか、沙耶香が変なことを言って、状況をややこしくしないようにしなければと、誠実は注意していた。
 歩いて数分で、ようやく目的のファミレスに到着し、4人は席に案内される。
 ファミレスは昨晩に美奈穂と誠実が飯を食べに来たファミレスで、今日も店員さん達は、美奈穂と誠実が居る席に注目を集めていた。

「ご、ご注文、お決まりでしょうか?」

「「「ドリンクバー4個」」」

「は、はい!! かしこまりました!!」

 3人の少女の威圧感と、異様な空気に圧倒され、店員さんは注文を聞いてすぐにバックヤードに戻って行った。

「で、本題に入りたいんですけど……まず、貴方は兄の学校の先輩で……」

「はい、でもちゃんとお名前を教えたのは今日なので、知り合って一番期間が短いですね」

「貴方は、兄のクラスメイト……」

「うん、そうだよ? ところで美奈穂ちゃんだっけ? 私の事はおねぇちゃんって呼んで良いからね?」

「え、遠慮します……」

 沙耶香の言葉に、若干身を引く美奈穂。
 知らない人に緊張しているのか? と誠実は美奈穂が心配になり美奈穂の隣で補足の説明を入れる。

「沙耶香には、料理部でお世話になってな、以来こうして仲良くしてもらってるんだ……基本良い奴だから、そんな緊張すんな」

「緊張なんてしてないし……ていうか、あんま顔近づけないでよ……」

「あ、悪い悪い」

 頬を赤らめながらそう言って来る美奈穂に、誠実は謝罪し、顔を離し、正面を向く。

「仲が良いんですね」

「いや、コレでも前まではあんま口きかなくて……」

 誠実と美奈穂の向かいに座る栞が、微笑みながら誠実に言う。
 栞だけは、態度を変えることなく、朝と同じ穏やかで優しい表情のまま話をしてくる。
 そんな栞に、誠実は安心感を覚えながら、話をするが……。

「ねぇ、誠実君。本当に妹さんだよね? 隣の中学生の幼馴染とかじゃないよね?」

「さ、沙耶香さん……どうしたの? いつもの沙耶香さんに戻って!」

 校門前からずっと笑顔の沙耶香だが、目は笑っておらず、黒いオーラを放ちながら、誠実にいつもの感じで話をしてくる。
 いつも通りの話し方なのが余計に怖かった。

「そ、そう言えば、先輩俺に用事があったんじゃ……」

「いえ、見かけたので声をかけただけです。私も丁度帰るところだったので……」

「あ、そうだったんですか、部活の帰りとかですか?」

「いえ、生徒会の仕事で、遅くなってしまって」

「そうなんですか、大変ですね……ところで美奈穂」

「何?」

「机の下で、俺の足をぐりぐりするのやめてくれない? 顔に出さないけど、すごく痛いんだよ?」

 机の下では、誠実の隣に居る美奈穂が、先ほどから誠実の足を踏みつけ、かかとでぐりぐりしていた。
 誠実はそんな美奈穂の攻撃に耐えていたのだが、流石に限界だった。

「あ、ごめん。わざと」

「それ、謝罪とは言わないからな! なんなんだよ! いきなり一緒に登校してみたり! 迎えに来たり! 機嫌悪くなったり! お前ここ数日おかしいぞ?」

「うっさいわね、毎日おかしいあんたに言われたくないわよ」

「おかしくねーよ!」

「本当に仲がよろしいんですね」

「どこが?!」

 美奈穂と誠実の様子を見ながら、栞が笑顔でそう言ってくる。
 誠実はとっさに突っ込み、ため息を吐きつつ、踏まれていた足をさする。
 そんな状況で、誠実のスマホが音を出して震えだした。

「ん、電話か、ちょっと出てくる」

 誠実はそのまま店外に出ていき、残った3人はようやく本題に入れる思った。

「御二人に聞きたいことがあるんですけど、良いですか?」

「私は構いませんよ? 何かしら?」

「なんでも聞いてね」

 美奈穂の言葉に、二人は表面上は快く了承する。
 何を聞いてくるか、二人には大体想像がついていた。

「うちの兄とはどういう関係なんですか?」

 美奈穂のこの一言から、三人の静かな戦いが幕を開けた。
 ファミレス店員やその場に居合わせた客までもが、この3人の会話に注目していた。

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